追跡! ワイナリー最新情報!『了美 Vineyard & Winery』ぶどう品種ごとの個性を引き出す栽培と醸造ができた2021年

宮城県黒川郡大和町の見晴らしのよい丘の中腹にある「了美 Vineyard & Winery」は、2017年に開業したワイナリー。自社のぶどう畑と醸造所、さらに地元の味を楽しめて、美しい景色も堪能できるレストランが併設されている。

了美 Vineyard & Wineryを開業したのは、これまでも地元でさまざまな事業を営み、町づくりに貢献してきた、早坂了悦さんと早坂美代子さん夫妻。消滅の可能性がある地方都市のひとつとされた、生まれ故郷の大和町に人を集め、農業で地域貢献をしたいとの思いからだった。

自社のぶどう畑3.3haでは、11種類の品種を栽培。ぶどうにとって最適な方法で、適切な圃場管理をすることにこだわり、質の高いぶどうを育てている。

目標とするのは、ボルドーワインのような味わいだ。ぶどうが持つもっともよい状態をすぐにワインにすることで、ぶどうのポテンシャルを最大限に引き出す醸造方法を採用。熟成期間を長く置いて、「ぶどうの特性と品種特性を活かしたワイン」を生み出している。できあがるのは、「日常のちょっと特別な場面」で食事にあわせて楽しむ、人々を笑顔にするワインだ。

今回は了美 Vineyard & Wineryのぶどう栽培やワイン造りについて、醸造責任者の樫原信元さんに伺った。最新ヴィンテージの状況や進化したポイントを詳しく紹介しよう。ぜひ最後までご覧いただきたい。

『了美 Vineyard & Winery 2021年のぶどう栽培』

まずは、了美 Vineyard & Wineryが、ぶどう栽培の面で特に力を入れた取り組みについて紹介しよう。天候には比較的恵まれた年だった2021年。前年の苦労を教訓に、獣害への対策を重点的に実施したそうだ。

具体的にはどんな取り組みをおこなったのか、さっそくみていこう。

▶美しい自然に囲まれているため、獣害は避けられない

「2021年は雨量が多かったものの、気候に関していえば、恵まれていたと思います。雨やくもりの天候が続き、日照量が思うように上がらない時期はありました。また、気温が下がった影響も多少は感じられましたが、ぶどうの品質や収穫量には影響はあまりみられなかったのが幸いでした」。

年ごとに異なる天候への、柔軟な対応が求められるぶどう栽培では、天候に恵まれた年は貴重だ。

ただし、獣害の多さには悩まされた。了美 Vineyard & Wineryは、美しい大自然のなかにあるワイナリー。3.3haのぶどう畑も、見渡す限り広がる雄大な自然に囲まれている。

「圃場の実りの時期は、野生の動物にしてみれば、目の前に美味しそうなごちそうがあらわれた状況です。そのためシーズン中は、さまざまな野生動物が畑に入ってきてしまうのです」。

姿をみせる野生動物は、イノシシやウサギ、キツネやタヌキ、ハクビシンなど。また、上空からは鳥が熟したぶどうを狙う。2020年は獣害が多く、特に鳥の被害でぶどうの半分近くがダメージを負った。

▶獣害対策の強化で、大きく被害を抑制

「豊かな自然の中にさまざまな動物が生息しているのは素晴らしいことですが、ぶどう畑に被害があれば、心穏やかではいられません」。
2021年、了美 Vineyard & Wineryでは前年の教訓をいかし、獣害対策に力を入れた。

以前からぶどう畑の周りに柵を張り巡らせてはいたものの、改めて見直して補強。また、垣根仕立てで植えているぶどう畑の両サイドにネットを貼り、鳥やほかの野生動物の被害を防ぐための対策も実施した。

「非常に手間と時間がかかったものの、獣害対策を強化したことで、2020年に比べて被害を大きくおさえることができました」。

『2021年は自社畑の収量が増加』

2017年に開業した了美 Vineyard & Wineryのぶどう畑の樹は、まだ若い。そのため、樹の成長とともに、収穫量が年々増えてきている段階だ。

「少しずつ収量が増えてきているので、2020年にはじゅうぶんな量が収穫できなかった品種の収量も増えてきています。徐々に前進してきたと感じますね」。

▶品種ごとの特徴を捉える

了美 Vineyard & Wineryでは、2020年までに新規の植え付けは終了しており、現在はぶどうの生育状況を注意深く見守っている段階だ。

「天候の影響によるものなのか、2020年に比べると、メルローの収穫タイミングがやや遅かったのが特徴的でした。東北の気候で育てる場合には、収穫タイミングが難しい品種なのかもしれませんね」。

自社栽培のぶどうの品種ごとの特徴のパターンをインプットし、今後少しずつ、土地の特性や各品種がどのように育っていくのかが明らかにされていくのだろう。それぞれの品種ならではの、年ごとのキャラクターの差が明確に出てくるには、もう少し時間がかかりそうだ。

▶ワインの出来は上々、今後につながる仕上がり

2021年は、今後につながる結果の出た年だった。はじめて収穫できたぶどうに、白ワイン用ぶどうのモンドブリエという交配品種がある。
また、同じく白ワイン用ぶどうのゲヴェルツトラミネールも、少量ではあるが収穫できたので、ほかの品種とブレンドで仕込んだ。

「ゲヴェルツトラミネールの持つ芳しい香りが、ブレンドした状態でもしっかりと表現できました。次のヴィンテージでは単体で仕込んで、品種特性がじゅうぶんに発揮されたワインにしたいですね。ぜひ楽しみにお待ちください」。

2021年に収穫し、仕込んだワインは春先まで熟成される。ワインの出来は上々。自社の畑で収穫したぶどうでの醸造は2年目ではあるが、品質のよいワインができあがりそうだ。

樫原さんも手ごたえを感じているという了美 Vineyard & Wineryのワインに、期待が高まる。

▶土地にあうぶどう品種を見つけるため、試行錯誤

了美 Vineyard & Wineryでは、土地にあうぶどう品種を模索している。了美Vineyard & Wineryのぶどう畑は、標高330mに広がる。特別標高が高い土地ではないが、東北らしい気候が特徴だ。

「冷涼な気候の圃場なので、適応性を考えれば、晩熟系の赤ワイン用品種は栽培が難しい面もあります。試験栽培しているカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーでは、収穫時期がなんと11月になってしまうのです。そのため、土地に向かない可能性も検討しています」。

一方、メルローは収穫が遅めにはなるものの、成果が期待できる品種だとわかってきた。また、ピノ・ノワールやガメイも、最適なタイミングで収穫できる品種だという感触がある。

「土地に適していると考えられる品種のぶどうが、今後どう育つのかワクワクしますね。スタッフ一同の期待が集まっています」。

土地に合うワイン用ぶどうを探すために、試験的に植えている品種が多いなか、検証を重ねて数年後には、いったいどの品種が残るのか。了美 Vineyard & Wineryの今後のぶどう栽培から、目が離せない。

『2022年のワインの出来に自信あり』

2021年は2020年にくらべて、栽培作業のシステム化がすすみ、うまく回りはじめたという了美 Vineyard & Winery。自社畑でのぶどう栽培への取り組みが、前進してきていることを実感している。

新しいシーズンに向けた、さらなる課題もある。シーズン中の忙しさのなかで、人の手がいきとどきにくい部分を、いかにカバーしながらすすめられるかという点だ。

また、ぶどうの生育状態を安定化させ、収穫量を増やしていくことも目指す。了美 Vineyard & Wineryのぶどうの樹は成長途上。これから、ぶどうそのものの熟度がどの程度あがってくるのかなど、楽しみな面も多い。

2021年の年末には仕込みはすべて終わり、発酵もすべて終了。タンクや樽で熟成をしたあとは春先から瓶詰をはじめ、品種ごとに夏くらいまでかけて作業をおこなうという。

▶自社畑で栽培したぶどうを使った赤ワインと白ワイ

2021年、自社畑のぶどうを使って醸造したワインは、赤と白がそれぞれ1種類ずつ。白ワインは4品種をブレンドし、赤ワインも4品種を1本にブレンドした。

白ワインは、ゲヴェルツトラミネールやシャルドネの香りがよく表れた1本に仕上がった。赤ワインは、ボディがしっかりした味わいが楽しめそうだ。

「自社畑での栽培では苦労したことも多かったものの、すべてが報われたと感じられる品質のワインができました」と、樫原さんは自信をのぞかせる。

最終的にはワインの状態を見ながら澱下げをして、濾過するかどうかの判断ののち、瓶詰をして出荷する。

▶ぶどうそのものの味わいをストレートに表現

了美 Vineyard & Wineryでは、前年からの醸造方法に大きな変更はない。ただし、樽熟成をしているワインについては、各ワインをどのタイプの樽と組み合わせるかを試行錯誤しているという。樽由来の香りは、ワインの仕上がりを大きく左右するポイントだ。

ぶどう自体に問題があったり、ワインの味わいやバランスが気になれば、醸造段階で補正する必要が出てくる。しかし、了美 Vineyard & Wineryで自社栽培したぶどうに関しては、高品質だったために、補正の必要はまったくないと自信を感じているそうだ。

自社の畑でぶどうを栽培する最大のメリットは、収穫したぶどうをすぐに仕込めることだ。この利点をいかすため、了美 Vineyard & Wineryでは、ぶどうを収穫してすぐに下処理して発酵させる。

冷涼な気候で育った健全なぶどうは、ほどよい酸味があり、特に白ワインはキリッとしたスタイルが特徴。もちろん減酸はせず、補糖もほとんどおこなわない。ぶどうそのものの味わいをストレートに表現しているのだ。

▶2022年は年間3~4万本を出荷予定

了美 Vineyard & Wineryでは、2022年は3~4万本のワインを出荷する予定だ。春から夏にかけて瓶詰作業を実施。ワインの状態を観察しながら発売のタイミングを決め、少しずつリリースする。

ワイナリー設立当初は、植えたばかりの自社畑での収穫はなく、仕入れたぶどうでワインを仕込んでいた。だが、少しずつ自社のぶどう畑で収穫ができるようになったこともあり、買いぶどうを減らし、自社畑で収穫したぶどう中心に移行している。年を重ねるごとに自社で育てたぶどうの収穫が増えていくことが予想され、期待が高まる。

了美 Vineyard & Wineryでは、将来的に自社の畑で収穫したぶどうで造ったワインだけのラインナップに変更することも検討中だ。しかし、仕入れているぶどうのなかには自社畑で育てていない品種もあるため、今後の商品展開に関しては、慎重に検討していきたいという。

▶ぶどう作りやワイン造りは、取捨選択の日々

今後さらに自社圃場を拡大し、常にぶどうの状態を見ながら最適なタイミングで収穫したぶどうを仕込みたいと語ってくれた樫原さん。

しかし、作業量が際限なく増えては、対応が難しくなる。現実的には、できることに限りがあるので、最善を見極めて何をどこまでやるかを取捨選択しつつすすめている。

「できることのなかで、なにを優先させるべきかは、常に悩むところです。宮城のテロワールを表現したワインを造ることが最大の関心ごとなので、目標に向かって、できる限りのことはしていくつもりです」。

日本の気候状況にあった栽培方法を模索し、毎年さまざまな試行錯誤をしながら、挑戦を重ねている。

『SNSでの情報発信とイベント開催にも注力』

了美 Vineyard & Wineryは、FacebookなどのSNSを効果的に活用している。また、実際にワイナリーを訪れたお客様が楽しめる、さまざまなイベントを多く手がけているのも特徴だ。

街中からは離れた場所にワイナリーがあり、アクセスはやや不便だが、都会にはない大自然がある。コロナ禍の中、非日常の空間を求めて多くの人が、了美 Vineyard & Wineryを訪れているのだ。

▶ワイン販売以外にもお客様に楽しみを提供

大自然のなかにたたずむ了美 Vineyard & Wineryの魅力のひとつが、ぶどう畑の前の小高い丘に併設されたレストランだ。目の前に緑が美しいぶどう畑が広がり、反対側には遠く雄大な山々を見ながら食事を楽しむことができる。

そんな唯一無二の場所で、音楽を聴きながら食事を楽しんでもらう。また、ワインと合わせた食事を用意するなど、さまざまなイベントを提供している。単にワインが購入できる場所であること以外にも、お客様に楽しんでもらおうと試行錯誤の毎日だ。

▶ワイナリーを訪れてワインに親しんでほしい

日本にもワイナリーが増えてきているとはいえ、まだまだぶどう畑やワイナリーが身近な存在ではない場合も多い。そのため、了美 Vineyard & Wineryでは、ワインにあまり馴染みのない人にこそ、ワイナリーを訪れてほしいと考えている。

「日常から少し離れた雰囲気で、自然を楽しんでいただければと思っています。また、ワインの醸造過程を知り、さまざまなワインを飲むことの楽しさをお伝えしたいです。料理とあわせることも提案して、ワインにもっと親しんでいただけたら最高ですね」。

『まとめ』

「ぶどう作りやワイン造りは基本的に、毎年同じ工程の繰り返しです」と、樫原さん。また、美味しいワインを生み出すためには、日々の試行錯誤が欠かせない。

自社畑のぶどうの収獲がはじまって3シーズン目となり、少しずつ手ごたえを感じてきている日々だ。それぞれのワイン用ぶどう品種が、自社畑でどのようなキャラクターとして育っていくのか、年を追うごとにはっきりとわかってきつつある。

2022年秋、シャルドネやゲヴェルツトラミネール、ソーヴィニョン・ブランなどが、どのような状態で収獲できるのか。樫原さんは成長に大きな期待を寄せている。

「了美 Vineyard & Wineryのワインを味わって、美味しいと感じていただければ、それが一番うれしいですね」。

飲み手の感性に訴えかけ、感動を与えられるワインを造るワイナリー、了美 Vineyard & Wineryの進化はこれからも続いていく。


基本情報

名称了美Vinyard&Winery
所在地〒981-3625
宮城県黒川郡大和町吉田字旦ノ原36-15
アクセス電車 泉中央駅から車で30分
車 富谷インターから車で20分
HP了美Vinyard&Winery https://ryomi-wine.jp/
了美Wine&Dine https://ryomi-winevalley.com/

関連記事

  1. 『中伊豆ワイナリー シャトー T.S』ワイン・レジャー・料理全てが楽しめる地上の楽園

  2. 『くらむぼんワイン』「自然」を貫きテロワールを追求する、大正古民家ワイナリー

  3. 『Nikkawaワイナリー』地元勝沼を愛する、「生産者の顔が見える」ワイナリー

  4. 『Natan葡萄酒醸造所』ソムリエから一念発起、日常に溶け込むワイン造りを目指す女性ワイナリー

  5. 追跡!ワイナリー最新情報!『BookRoad~葡蔵人~』魅力的なイベントとワインが生まれた1年

  6. 実は農業が盛んな都市・神戸が誇る『神戸ワイナリー』の歴史