『シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー』145年の歴史を守りながら果敢に挑戦し続ける

「日本を世界の銘醸地に」というヴィジョンをかかげ、日本ワインを牽引し続けるブランド、シャトー・メルシャン。現在、シャトー・メルシャンには、「勝沼ワイナリー」「桔梗ヶ原ワイナリー」「椀子(まりこ)ワイナリー」の3つのワイナリーがある。

1877年、シャトー・メルシャンの源流である『大日本山梨葡萄酒会社』が、現在の山梨県甲州市勝沼町に創立された。勝沼のふたりの若者がフランスでぶどう栽培とワイン造りを学び、2年後に帰国。1879年より勝沼でワイン造りをスタートした。

145年の歴史の中で何度か企業の吸収合併を経て、現在のシャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーが誕生。シャトー・メルシャン3つのワイナリーの中でも、勝沼ワイナリーは、もっとも歴史あるワイナリーだ。

今回は、チーフ・ワインメーカー兼勝沼ワイナリー長の田村隆幸さんにお話を伺った。長い歴史の中で培われた、勝沼の人々との強い絆と勝沼ワイナリーの魅力、勝沼ワイナリーの未来について紹介していこう。

『勝沼ワイナリー、誕生秘話』

勝沼では古くからぶどう栽培が積極的におこなわれ、ぶどう産地として名を馳せてきた。また太平洋戦争中は、ワインの醸造で発生する酒石酸の結晶が軍用に使われたため、ワイン造りが奨励された。

戦後施行された「農地法」により、企業が農地を保有することは禁止された。そんな中、1984年から山梨県勝沼地区城の平に「城の平ヴィンヤード」を所有し、自社でぶどう栽培をはじめたシャトー・メルシャン。自社圃場を獲得した背景について見ていこう。

▶︎時代の変化に対応し「城の平ヴィンヤード」を獲得した勝沼ワイナリー

1960年代後半、高速道路建設計画が進み、建設予定地に畑を持つ勝沼のぶどう農家は農地売却を余儀なくされた。山梨農地開発公社は国の支援のもと、同じ町内の「城の平(じょうのひら)」地区に農業団地を造成した。ぶどう農家たちは、造成された農地で新たにぶどう栽培を始めた。農事組合を組織し、観光農園や宿泊施設、バーベキュー施設をつくって一大農場を築いたのだ。

しかし、10年ほどすると経営に行き詰まってしまった。そこで勝沼町はシャトー・メルシャンに「農事組合が耕していた畑を引き継いでくれないか」と申し出た。こうして1980年より、試験農場としてシャトー・メルシャンが城の平に自社畑を所有することになったのだ。

1970年代後半、シャトー・メルシャンでは日本人のワインの趣向の変化によってぶどうの需要が急増したため、ワイン原料のぶどうを探し求めていた。1960年代後半から1970年代前半にかけて、日本では「甘味果実酒」と呼ばれる甘口ワインが人々に好まれていた。だが1970年代半ばになると、ぶどう本来のポテンシャルを生かした「食事に合うワイン」に流行が変化した。

甘味果実酒は、ぶどうを醸造後に香味料やブランデーなどを添加するため、ぶどうの品質が重視されることはあまりない。しかし添加物を入れずにワインを醸造するとなると、品質のよいぶどうが必要だ。

シャトー・メルシャンの社員は海外へ頻繁に足を運び、ヨーロッパや南米でぶどうを買いつけた。​​​​その際、諸外国では垣根仕立てでのぶどう栽培が主流であることを、シャトー・メルシャンの社員は目の当たりにした。当時の日本では、棚仕立てでの栽培が一般的だったのだ。

1976年、日本国内でもぶどう栽培に変化が起こる。「現代日本ワインの父」といわれる故・浅井昭吾(ペンネーム:麻井宇介)氏の指導のもと、シャトー・メルシャンでは長野県塩尻市にある桔梗ヶ原で、契約栽培農家の方々に、それまで主流であったコンコードから、メルローへの改植を依頼、本格的にメルローの栽培を開始したのだ。

『勝沼ワイナリーのぶどう栽培』

現在、勝沼ワイナリーが管理する圃場は3か所ある。

  • 城の平ヴィンヤード
  • 天狗沢ヴィンヤード
  • 鴨居寺ヴィンヤード

それぞれの畑にはどのような特徴があるのだろう。さっそく、勝沼ワイナリーのぶどう栽培について見てみよう。

▶︎当時まだ日本では珍しい垣根栽培をはじめた城の平ヴィンヤード

1984年からシャトー・メルシャンにより植樹が開始された城の平ヴィンヤード。現在、城の平ヴィンヤードでは、カベルネ・ソーヴィニヨンなど4品種が栽培されている。

シャトー・メルシャンが城の平の畑を取得したのは1980年だ。1980年からの4年間、栽培品種が決定するまで、一体どのようなドラマが繰り広げられたのだろうか。

畑を取得した1980年から、さまざまな品種の試験栽培が開始された。甲州、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、リースリング、シャルドネ、ピノ・ノワールなどだ。城の平の土壌に適した品種が徹底的に調べられた。

一方、シャトー・メルシャンでは、浅井昭吾氏の指導のもと、1976年から梗ヶ原の畑でメルローの栽培を開始していた。そして1980年当時には、桔梗ヶ原でのメルロー栽培に大きな手応えを感じ始めていたそうだ。

そこで、桔梗ヶ原のメルローに対して、勝沼ワイナリーの城の平ヴィンヤードではカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培しようという機運が社内に高まったのだ。

また同じ頃、大塚謙一氏という元・国税庁醸造試験所の所長がメルシャンの顧問になった。

「カベルネ・ソーヴィニヨンを垣根式で栽培することにより、シャトー・メルシャンのぶどう栽培とワイン造りの姿勢を世に示していこう」という大塚氏の思想は、「大塚構想」と呼ばれた。

当時、垣根式でぶどう栽培に成功している畑は日本では珍しかったが、「日本ワインの品質を上げるためには、ヨーロッパでおこなわれるような密植の垣根式栽培に挑戦しなければならない」という大塚構想は、次第に社内に浸透していったそうだ。

「幸いなことに、シャトー・メルシャンでは1970年代後半から、原料となるぶどうを買付けるため、社員が海外に頻繁に足を運んでいました。つまり、海外でのぶどう栽培やワイン醸造にも知見を深めていたのです。日本ではまだ未知数の垣根式栽培という領域に足を踏み入れることに、社内ではさほど混乱はなかったと聞いています」。

このような経緯を経て、カベルネ・ソーヴィニヨンが城の平に植樹された。垣根式栽培という、新たな挑戦がスタートしたのだ。

城の平ヴィンヤードでは現在、カベルネ・ソーヴィニヨンのほか、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドの4品種が栽培されている。

▶︎城の平ヴィンヤードの恵まれた気候環境

続いて、城の平ヴィンヤードの特徴について見ていこう。

「城の平の特徴は、甲府盆地に属していながら標高が高い点です。勝沼ワイナリーがある場所は標高300〜350mですが、城の平ヴィンヤードは標高600mの場所にあります。標高が高いおかげで、夜の温度がぐっと下がります」。

東京と甲府盆地の境目である、笹子峠にかかるエリアにある城の平ヴィンヤード。「笹子おろし」という風が山から吹き抜け、ぶどう栽培に適した環境だ。

通常の垣根式栽培では、垣根を南北方向に仕立て、日中の日照時間を可能な限り増やすように作られる。だが城の平では、山から吹き抜ける風の方向が決まっているので、風の向きを考慮している。

1990年代、勝沼ではカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培するワイナリーが増えたが完全に熟さないため、栽培をやめたワイナリーが多かったという。城の平ヴィンヤードでカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培が成功した理由は、標高が高いからではないかと考えられるそうだ。

▶︎雨の多さも味方につける

「城の平は、比較的雨量が多いのが特徴です。もともとの城の平の土壌は山土で、水はけがよいとはいえませんでした。そこで1980年代に、雨対策をおこないました」。

雨対策として、土壌に石灰石をまき、砂礫を混ぜた。さらに、東北から牡蠣の殻を何tも運び、殻を砕いて土に混ぜて排水性の改善を目指した。現在でも城の平ヴィンヤードでは、土の中にキラキラとした白い牡蠣殻を見つけることができる。

雨量の多い城の平でのぶどう栽培は、雨対策が大きな課題となる。だが、勝沼ワイナリーが管理する畑では雨除け設備は導入していない。

「雨が多いことも、勝沼のテロワールだと考えています。雨が多いからビニールを張り雨をシャットアウトしてしまうと、『雨が多い』というテロワールを生かすことができません。また、働くスタッフも頭を使わなくなるでしょう。頭を使ってぶどうをよく観察し、土地のテロワールと向き合いながら試行錯誤することが大切だと考えています」。

勝沼ワイナリーの畑は緑が美しく、畑を見ているだけで気持ちがよいと田村さんは目を細める。人間にとってはぶどう栽培の支障となることも、その土地のテロワールなのだと前向きにとらえているのだ。余分に手をかけず、継続的に農業を続けることが大切だと話してくれた。

 城の平のぶどうは、全体的に皮が薄く、柔らかい。同じカベルネ・ソーヴィニヨンでも、椀子ヴィンヤードのぶどうとは、見た目がまったく違うそうだ。

土地のテロワールに合わせたワインのスタイルを選択することが、なによりも大切であることに気付かされる。

▶︎気候変動への対策

現時点では気候変動の顕著な影響はあまり感じていないという田村さん。しかし、将来に向けて、シャトー・メルシャンではふたつの対策を講じている。

ひとつは、より標高の高いところに畑を展開することだ。勝沼ワイナリーでは2017年、山梨県甲州市内に天狗沢ヴィンヤードを開園した。天狗沢ヴィンヤードの標高は800mで、シラーをメインに栽培している。

もうひとつの対策は、気温の高いエリアでも適合する品種を見つけることだ。2015年に山梨県鴨居寺地区に開園した鴨居寺ヴィンヤードは、標高340m。鴨居寺ヴィンヤードでもシラーを栽培する。

「カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローは、きちんと熟さないとゴボウのような香りが出てしまい、なかなかよいワインになりません。夜温が十分に下がらないエリアでは栽培が難しいのです。その点、シラーは熟度が十分でなくとも著しい欠点が少なく、熟すタイミングもカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローよりも早い品種です。山梨の標高の低い土地でも、うまく育つのではないかと期待しています」。

鴨居寺ヴィンヤードで育ったシラーは7年目を迎え、日本ワインコンクールで金賞および部門最高賞の受賞実績を持つ。

『「城の平 オルトゥス」が代表する勝沼ワイナリーのワイン』

続いて、勝沼ワイナリーで誕生するワインについて紹介したい。

シャトー・メルシャンのワインは、3つのシリーズから成り立つ。世界トップクラスのワインに並ぶ「アイコン」シリーズと、産地の個性を存分に発揮した「テロワール」シリーズ。そして、デイリーに日本ワインの魅力を楽しむ「クオリティ」シリーズだ。

「アイコン」シリーズは、シャトー・メルシャンが所有する3つのワイナリーそれぞれから誕生する、最高峰のワインだ。まずは、勝沼ワイナリーのアイコンワインが目指す姿について見ていこう。

▶︎「日本庭園のようなワイン」を目指して

シャトー・メルシャンのワインが目指す共通の概念は、「日本庭園のようなワイン、フィネス&エレガンス」というスタイルだ。日本庭園が造られるには長い年月がかかり、樹木の成長や風化と共に常に変化し続ける。突出するものはなく、欠けるものもない、完全なる調和が存在する。シャトー・メルシャンが造るワインも、まさにそのような存在であるべきだという考え方だ。

これは、1998年にシャトー・メルシャン醸造アドバイザーとして就任した、ボルドー1級シャトー「シャトー・マルゴー」総支配人兼最高醸造責任者、ポール・ポンタリエ氏のアドバイスを言語化したものだ。

「日本庭園は造り上げるまで非常に時間がかかり、100年ほどのスパンで庭造りをされるそうです。時間がかかるという点が、ワイン造りと非常に似ています。ぶどうを栽培する場所が見つかってから植える品種を選び抜くまでに、城の平では4年かかりました。アイコンワイン『シャトー・メルシャン 城の平 オルトゥス』のリリースまでには、さらに長い時間がかかっています。日本庭園と日本ワインは、どちらも日本らしさをお届けするという点で、よい合言葉になっていると思います」。

▶︎「オルトゥス=起源」に込められた思い

「オルトゥス」とは、ラテン語で「起源」を意味する。名付け親は田村さんだ。

「『オルトゥス』という名前にしたのには、3つの理由があります。城の平ヴィンヤードがシャトー・メルシャンで所有する初めての畑だということと、城の平が垣根式栽培のスタートの地であること。また、城の平こそが、シャトー・メルシャンの目指す夢の原点であるということですね」。

オルトゥスの初ヴィンテージは2013年だが、販売開始は2018年だ。5年の月日を経て世に送り出されたオルトゥスの誕生には、ポール・ポンタリエ氏が大きく関わっている。

「なぜそんなにチグハグなことをするんだ?」

2013年の収穫を終え、醸造したワインが樽に入って1年経過した頃。樽の選抜とブレンド方法についてポンタリエ氏に助言を求めた際、来日したポンタリエ氏が言った。

2012年まで、勝沼ワイナリーのトップに君臨するワインは「シャトー・メルシャン 城の平カベルネ・ソーヴィニヨン」という、カベルネ・ソーヴィニヨン100%のアイテムだった。もっとも品質のよいカベルネ・ソーヴィニヨンの樽を選別し、「シャトー・メルシャン 城の平カベルネ・ソーヴィニヨン」として瓶詰めした。

そして、残ったカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローで、「シャトー・メルシャン メリタージュ・ド・城の平」というセカンドワインも造っていた。その工程を、ポール・ポンタリエ氏は「チグハグなこと」と表現したのだ。

当時、城の平のカベルネ・ソーヴィニヨンは植樹から30年以上経過した成木。一方、メルローは植樹から10年程度の樹だった。

「このメルローの樹は10年経過し、成木のカベルネ・ソーヴィニヨンとのブレンドに充分耐え得るポテンシャルを持っている。2番手のカベルネ・ソーヴィニヨンと合わせるのはもったいないのではないか」。

そこでポンタリエ氏の助言のもと、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローのブレンドが見直された。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローで、新たに2種類のブレンドワインが生まれたのだ。

最も品質のよいワインは「シャトー・メルシャン 城の平 オルトゥス2013」として、2番目の品質のワインは「シャトー・メルシャン 城の平2013」として、どちらも2018年に世に送り出された。

▶︎シャイなワイン

田村さんに「城の平 オルトゥス」の熟成について伺うと、実に興味深い回答を得た。

城の平のぶどうは皮が薄く、実が水分を帯びて全体的に柔らかい。そのため、城の平のぶどうから醸造されたワインは、本領を発揮するまでに時間がかかるという。

「私は、城の平のワインを『シャイなワイン』と表現しています。はじめは少し頼りなさを感じますが、熟成が進むにつれて広がりと奥行きを感じるようになり、香りがどんどん強くなります。グラスからあふれ出るような香りと、しっかりとした骨格が出てくるのです。ゴツゴツしたタンニンがある訳ではないけれど、複雑な味わいがオルトゥスの魅力ですね。オルトゥスならではの特徴がしっかりとあらわれたら、私が出荷のGOサインを出します」。

GOサインを出すときの思いを聞くと、田村さんは照れたような表情で語ってくれた。

「収穫や醸造で起こったハプニングなど、出荷するワインにまつわる思い出がよみがえりますね。我々ワインを造る人間は、天候やぶどうの状態がどうであったかなど、過去のことでも詳細に覚えているんです。仲間とは、そんな思い出話ばかりしていますね」。

▶︎「オルトゥム=上昇」という名の甲州ワイン

「城の平 オルトゥス」以外のおすすめワインを伺うと、田村さんは迷わず甲州の名を挙げてくれた。甲州ぶどうは山梨で誕生したと伝えられる品種だ。しかし、1990年後半から「甲州ぶどうでワインを造ってもあまり特徴あるものが造れない」という理由で、甲州ぶどうの苗木がほかのぶどう品種にどんどん入れ替わりはじめた。

甲州ぶどうから特徴あるワインを造り、甲州ぶどうが減るのを食い止めなければならない。山梨の地で甲州を栽培することは、シャトー・メルシャンの使命だという思いから、シャトー・メルシャンでは、2000年に「甲州プロジェクト」を開始した。

「甲州プロジェクト」の成果として誕生した商品が、ふたつのワインだ。偉大なる発見となった、「柑橘の香りを持つ甲州」である「甲州きいろ香」と、果皮や種などを赤ワインのように醸すことで甲州ぶどう全てのポテンシャルを表現した「甲州グリ・ド・グリ」である。今までにない特徴を持った甲州ワインの製法、いわば企業秘密ともいえるような情報を、シャトー・メルシャンでは勝沼の近隣ワイナリーに公開した。特徴のある甲州ワインが広まったことが功を奏して甲州ぶどうの生産量は確実に下げ止まり、甲州は世界に認められる品種となっていった。

さらに2021年、勝沼の地で新たな甲州ぶどうのアイコンワインが誕生した。「シャトー・メルシャン 岩出甲州  オルトゥム」だ。「オルトゥム」とは、ラテン語で「上昇」という意味を持つ。

オルトゥムの原料である甲州ぶどうは、岩出ヴィンヤードという山梨市の畑で収穫される。岩出ヴィンヤードは、シャトー・メルシャン元工場長、上野昇さんが管理する畑だ。この畑は、甲州ぶどうに柑橘の香りがあることが発見され、「甲州きいろ香」誕生のきっかけとなった畑である。

「きいろ香は、華やかなグレープフルーツや、カボス・スダチといった和柑橘の香り豊かな甲州ワインです。このきいろ香から、さらに新たな香りが発見された甲州ぶどうから造られたワインが『オルトゥム』なのです。甲州ワインのポテンシャルが、今後さらに上がっていくという実感と願いを込めて「上昇=オルトゥム」と名付けました」。

甲州ワインの香りの多様性を確認する、10円玉を使った興味深い実験がある。甲州ワインの入ったグラスに10円玉を入れると、甲州ワインの香りの特徴である「柑橘系の香り」が、一瞬にして消えてしまうそうなのだ。

だが、「シャトー・メルシャン 岩出甲州 オルトゥム」の入ったグラスに10円玉を入れると、消えてしまった柑橘系の香り以外に、甲州ワインの新たな香りを感じ取ることができる。現時点では香り成分を提示できないが、甲州ぶどうの新たな魅力を示唆していると、田村さんは目を輝かせる。

『シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーの未来』

最後に、勝沼ワイナリーの未来の展望について伺った。勝沼ワイナリーが管理している3つの畑である、城の平ヴィンヤード、天狗沢ヴィンヤード、鴨居寺ヴィンヤードから、近い将来どのようなワインが誕生するのだろうか。

▶︎天狗沢のぶどうで造ったワインを世に送り出す

天狗沢ヴィンヤードは2017年、山梨県甲州市塩山の上小田原地区にオープンした。標高800〜850mの高地で栽培されるぶどうについて、田村さんは未来の展望を語る。

「天狗沢ヴィンヤードの土壌は非常に水はけがよく、肥料を貯める力が弱い土地でした。なかなか収穫にたどり着けずもどかしさを感じますが、きっととてもよいワインができると思います」。

天狗沢ヴィンヤードで栽培している品種はシラーがメインだ。標高340mの鴨居寺ヴィンヤードで栽培されたシラーと、標高800mの天狗沢ヴィンヤードで栽培されたシラー。このふたつのシラーを贅沢に飲み比べられる日も、そう遠くはない。

▶︎甲州ぶどうの魅力をさらに追求する

「これまで、シャトー・メルシャンでは甲州ぶどうは、契約農家さんから購入するものがメインでした。ここ数年の取り組みとして、上野昇さんが園主を務める岩出ヴィンヤードをはじめ、自社で管理する畑で甲州の栽培を増やしています。新しい甲州の系統をそろえて栽培していきたいですね」。

マサル・セレクションという、自社の畑の中で優れた樹を選抜し、枝を接ぎ木して育てる技法にもチャレンジしたいそうだ。

マサル・セレクションによって、オルトゥムを造っている甲州ぶどうの樹を試験的に増やし、いずれシャトー・メルシャンのスタンダードとなることを夢みて、勝沼ワイナリーは果敢に挑戦し続ける。

『まとめ』

「田村さんにとってワインとはどのような存在ですか?」と尋ねてみた。

「ワインをやりたくてメルシャンに入り、ずっとワインの仕事をさせてもらって幸せです。ワインとは、飲むだけではなく、人と人とをつなげる素晴らしいツールだと思っています。国内外問わず、たくさんの方とのつながりができました。ワイン好きは、仲間意識が強いですね。こんな魅力的な商材は、なかなかないと思いますよ」。シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー。シャトー・メルシャンの中で最も歴史ある勝沼ワイナリーの魅力は、今後も長い年月を経てさらに追求され、広く世に送り出されていくのだ。

基本情報

名称シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー
所在地〒409-1313
山梨県甲州市勝沼町下岩崎1425-1

Tel:0553-44-1011
開館時間ワインギャラリー
・ワインショップ10:00〜16:30
・テイスティングカウンター10:00〜16:00(L.O)
ワイン資料館9:30〜16:30
営業日シャトー・メルシャンwebサイトにてご確認ください。
アクセスhttps://www.chateaumercian.com/winery/katsunuma/#access-anchor
Webサイトhttps://www.chateaumercian.com/winery/katsunuma/

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