『大三島みんなのワイナリー』大三島の風景を愛する人々が、みんなで造るワイナリー

「大三島みんなのワイナリー」は、瀬戸内海に浮かぶ「大三島(おおみしま)」唯一のワイナリーだ。大三島は愛媛県北部に位置し、すぐ隣の島は広島県。日差し降り注ぎ、瀬戸内海ならではの穏やかな気候が魅力だ。

特産品は柑橘類だという大三島。そんな島に「大三島みんなのワイナリーが」が生まれたきっかけとは?また、どんなぶどう栽培をしているのだろうか?そこで造られるワインの特徴とは?

栽培と醸造を担当している川田佑輔さんに、詳しくお話を伺った。
ワイナリーの歴史とワイン造り、そして大三島の魅力について紹介していきたい。

『大三島の耕作放棄地を復活させたい ワイナリーのきっかけと歩み』

まずは、大三島みんなのワイナリーの歴史を紹介する前に「大三島」についての説明からはじめたい。大三島は、愛媛県のしまなみ海道沿いにある、県最北の島だ。

穏やかな瀬戸内海に囲まれた大三島の主要産業は、農業。
そして愛媛といえば柑橘だ。12月には、島のいたるところに柑橘が実る。

そんな「柑橘の島」大三島で、どうしてワイナリーが始まったのか。
ワイナリー創設のきっかけと理由を説明していきたい。

▶少子高齢化により増える耕作放棄地 島を元気にするために

柑橘類の栽培が盛んな大三島だが、少子高齢化によって柑橘類の畑が耕作放棄地になっているという課題がある。大三島の耕作放棄地問題に目を向けたのが、長野県下諏訪町出身の建築家、伊東豊雄さんだ。

伊東さんは、大三島に「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」ができたことをきっかけに、島に通うことになった。大三島を何度も訪れるうち、島の持つ風景や人々の魅力に強く惹きつけられたという。
若者が出て行ってしまう大三島の現状を見て、「大三島を元気にするための活動ができないだろうか?」と考えたのだ。

耕作放棄地を有効利用するために始まったのがワイナリー事業。ワイン造りのプロジェクトは、2015年からスタートした。大三島の耕作放棄地は、元柑橘畑。
昔から島の人々によって、大切に柑橘類が育てられてきた場所だ。そんな大切な土地を快く地主の方が貸してくれたのだ。

畑を貸してくださったことへの心からの感謝、そして先祖代々使われてきた畑を借りる事への責任感。これらの思いを胸に、ぶどう栽培がスタートした。

▶困難を乗り越えて、初めての収穫と醸造

畑の整備には、数々の困難が立ちはだかる。台風被害や、獣害もあった。2016年には実を付けたぶどうだったが、猪に全部食べられてしまったのだ。

しかし、地元の農家の助けもあり、翌2017年には無事初収穫を迎えることができた。その頃はまだ醸造所ができていなかったので、岡山県のワイナリー「domaine tetta」に醸造を委託。
こうして大三島で初のワインができあがったのだった。

2019年には、念願の醸造所が完成。醸造所の建物は、かつて来島海峡のサービスエリア内にあった解体予定の店舗を解体し、島内に運んで再利用した。
「役目を終えたら壊されるのではなく、また別の形で使う」という伊東さんの理念に基づき、ワイナリーとして使われている。

醸造所ができたことで、自家醸造もスタート。柑橘を使ったワインなど、大三島ならではの酒類も造られている。また委託加工も受け入れており、2020年は9,000本超を醸造。目標としている年間20,000本の醸造のうち、約半分を達成したことになる。
「まだぶどうが育っていない畑もあるので、すべて収穫できるようになったら、目標を達成すると思います」。

継続した取り組みは、島の農家にも影響を与えた。「ぶどう栽培をやってみたい」と興味を持ってくれた農家が現れたのだ。現在4名の農家との契約がある。「大三島は元々、ぶどう農家は皆無です。全くゼロからのスタートで、一緒に勉強と情報共有をしながら進めています」と川田さん。
島の人々との横のつながりを強め、日々ワイン造りに励んでいるのだ。

▶ワイナリーを支える、苗木のオーナー制度

大三島みんなのワイナリーでは、苗木のオーナー制度を行っている。1口1万円を出資すると、3年後にワインになって返ってくる仕組みだ。
「大三島みんなのワイナリーは、オーナーさんと収穫や植え付けといった体験をしながら、大勢で手づくりしているワイナリーです」。
ワイナリー名も、「みんなで造り上げるワイナリー」であることに由来しているのだ。

大三島みんなのワイナリーの苗木オーナーは、今治や愛媛の人々が中心。さらに、日本全国にも広がった。さまざまな場所の人が、ワイナリーを応援している。苗木のオーナーには、半年に1回「大三島みんなのワイナリーTIMES」というワイナリー新聞が配布される。

ワイナリー新聞も、みんなで手作りした新聞だ。島在住のデザイナーにも協力してもらっている。
「ワイン造りの情報と共に、瀬戸内の風景を届けられる内容になっています」。

ワイナリーの新聞を始めとして、苗木のオーナーたちと定期的な交流にも注力している、大三島みんなのワイナリー。
「全国にいるワイナリーファンの存在は、栽培や醸造の力になります」。

2021年現在、1,500口分の苗木オーナーがいる。2020年には、第1期のオーナーに初めてワインを届けた。配布したワインは「島ゆひ」というシャルドネのワインだ。「島ゆひ」は、川田さんの娘さんの名前からとったワイン。
エチケットも伊東さんが瀬戸内の風景を描いたものだ。

▶川田さんと「大三島みんなのワイナリー」との出会い

大学時代から、伊東さんとの親交があった川田さん。山梨大学の醸造学科出身だった川田さんには、ワイナリーをやりたいという夢があった。
どこでワイナリーをやろうかと探していたときに、伊東さんが大三島を盛り上げるためのプロジェクトを検討していることを知る。

「瀬戸内といえば、地中海のイメージ。ワインを造ったらどうか?」との伊東さんの提言に川田さんが参加することで、プロジェクトはワイナリー事業として舵を切ることになる。

大三島の気候に惚れ込んだ川田さん。大三島でのワイン造りを決意し、2015年に移住。川田さんは静岡出身ということもあり、海の近くのワイナリーを探していた。大三島は川田さんにとって、まさに求めていた理想の場所だったのだ。

大学時代から、宮崎県の「都農ワイン」にお世話になっていた川田さん。
都農ワインでの経験から、日本全国どこの土地でも、情熱さえあればワインができるのだと考えていた。

「ワイナリーをやりたくて、北海道や長野なども回りました。しかし海の近くの土地に対する憧れが、ずっと心の中にあったのです。最終的には、瀬戸内の穏やかな風景に落ち着きました」。

大三島のぶどう畑は、本当に「海辺」の畑。近いところだと、海から20~30mほどしか離れていない。しかし塩害は起こらない。また海からの風があるため、ぶどうが苦手とする湿気は吹き飛んでしまう。ぶどう栽培に適している土地なのだ。
さらに、ワインにも海らしさが溶け込むのが面白い。大三島で造るワインは、塩味があるのが特徴だ。

川田さんが探し求めていた場所そのものの、瀬戸内海に浮かぶ島。穏やかに笑い、楽しそうにワインについて話す川田さんからは、大三島への心からの愛を感じる。

『海沿いで育つ大三島みんなのワイナリーのぶどう』

続いて、ワイナリーで育てるぶどうについて紹介していきたい。大三島みんなのワイナリーで育てているぶどうは、赤ぶどう3品種、白ぶどう5品種の計8品種。具体的な品種名は以下の通りだ。

<赤ぶどう>

  • マスカット・ベーリーA
  • メルロー
  • カベルネ・ソーヴィニヨン

<白ぶどう>

  • シャルドネ
  • ヴィオニエ
  • ピノ・グリ
  • アルバリーニョ
  • ゲヴュルツトラミネール

それぞれのぶどうを育てている理由について尋ねた。まずはマスカット・ベーリーAから見てみよう。マスカット・ベーリーAは、大三島みんなのワイナリーで最初に植えられたぶどう品種だ。
選ばれたのは、「日本で生まれた品種」なのが大きな理由だ。マスカット・ベーリーAは日本の気候によく合い、全国各地で栽培されている。さまざまな場所で育てられていることから、土地の個性表現がしやすいのも特徴。大三島の気候をワインで表現できると考え、採用されたのだ。

続くシャルドネも、最初から植えた品種のひとつ。幅広い地域で栽培されている品種である、という点が選ばれた理由だ。シャルドネは、日本を含めた世界各国で育てられているぶどう品種だ。
広い地域・気候風土に適応するシャルドネも、地域による個性が出しやすい。ワイナリーならではの個性を表現するぶどうとしてぴったりだと考えた。

ヴィオニエは南仏系の白ぶどうだ。「南の気候に合うのでは?」との予測から育て始めた品種。そしてピノ・グリを選んだのは、西日本で品質の高いピノ・グリが作られているからとの理由もある。ピノ・グリのワインに可能性を感じ、育てているという。

最後に紹介するアルバリーニョとゲヴュルツトラミネールは、2021年から試験的に育てられているぶどう品種だ。アルバリーニョを選んだのは、スペインの海沿いの地域が原産のため。ゲヴュルツトラミネールは、川田さんが個人的に好きなぶどう品種だからだ。

大三島みんなのワイナリーでは今後も、気候風土に適性のあるぶどう品種を探しながら植えていきたいと考えている。
「既に国内外で大きな競合がいるピノ・ノワールなどの国際品種などを選ぶよりは、大三島の個性が生かせる品種をチョイスしていきたいと思っています」。

▶垣根栽培と棚栽培の、両方を使ったぶどう栽培

大三島みんなのワイナリーのぶどう栽培の手法について伺った。
「垣根と棚、両方で栽培しています。今だと棚栽培の方が多い状況ですね」。

1年また1年と栽培経験が積まれていくなかで、徐々に蓄積されていった栽培ノウハウ。現在では、ワイナリー独自の効果的な棚栽培ができるようになってきたという。

棚栽培は、垣根栽培に比べて管理が難しく、初期投資もかかる。しかし棚仕立てにすることで、ぶどうの収量多くなり、さらに病気になりにくくなるのだ。
大三島みんなのワイナリーで採用しているのは、トンネル状に枝の先端を下に垂らす棚栽培の手法だ。トンネル式の棚栽培は、西日本に多い棚栽培の方法だという。

▶酸を残した収穫へのこだわり

続いて伺ったのが、ぶどう栽培におけるこだわりや工夫について。大三島は日本の大きなワイン産地に比べると、大きく南に寄った地域だ。
大三島のぶどう栽培には、暖かい場所であること、また島独自の気候風土だからこその、こだわりや工夫があった。

「西日本は、日本ワインの2大産地である山梨や長野に比べて温暖です。温暖な気候では、ぶどうの成熟が早くなり、収穫時期に酸が下がります。そのため、酸を残す栽培を心がけています」。

例えば垣根栽培で収量制限をかけると、ぶどうの酸は収穫時期に急激に落ちてしまう。酸を残したワインに仕上げるためには、暖かい地域独自の育て方が必要なのだ。
収穫時期に酸を保つためには、ぶどう樹にある程度の樹勢が必要だ。そのために行っているのが土作りだという。

島の土壌は真砂土(まさつち)。小石混じりの花崗岩質だ。水はけがよい点は、ぶどうにとって大きなプラスになる。一方で保肥力が少なめで、樹勢が弱くなりがちな点が難しい。
ある程度樹勢を強くしながら、収穫まで酸を保つことを心がけている。樹勢を強くするために、少しずつ土作りを行っている最中だ。

『大三島の魅力をワインで表現したい』

次は、大三島みんなのワイナリーの「ワイン造り」や「目指しているワイン」についての話に移ろう。

大三島みんなのワイナリーが目指しているワインの姿は、「四国、愛媛、大三島のテロワールを表現すること」だ。
「しまなみ海道をはじめとした四国エリアには、ワイナリーがほとんどありません。日本ではまだまだワイン産地として認められていない地域なのです。だからこそ『大三島のワインには、どのような個性が宿るのか』が明確に表れるワインを作ることが大きな目標です」。

今後も「大三島ならでは」の魅力を表現にするために、ワイン造りの探究が続いていく。

▶「大三島のワイン」という存在を知って欲しい

大三島でワインを造ることに対する、川田さんたちの思いを紹介したい。それは「大三島で造られるワインを、より多くの人に知ってもらいたい。もっとワインに親しんでもらいたい」という思いだ。

「ただワインを造って外部に売るのではなく、50年、100年先まで島にワイン造りが続くような取り組みにしていきたいのです」と、川田さんは言う。

大三島みんなのワイナリーには「ワイナリーだけが儲かればよい」という発想はない。地域の人たちと関わって地域に還元しながら、一緒にワイン文化を盛り上げていきたいという思いが強いのだ。
みんなでワインを造るからこそ、大三島「みんなの」ワイナリーなのだ。

▶ワインのない場所でワインを始める苦労

ぶどう栽培やワイン造りで苦労したことは、大きく3つほどあるという。最も大きな苦労は「ほかにワイナリーをやっている人がいない」点だ。ワイン造りはおろか、ぶどう栽培についても、島の誰も知識がない。身近にいて気軽に相談できる人や機関がないのは、非常に不安も大きかった。知識や経験、ノウハウをひとつひとつ得ていく過程は、根気と苦労の連続だったのだ。

ふたつ目に感じた苦労は、自然との闘いについて。
「大学時代に勉強していたのは、机上で得られる知識のみでした。自然相手は予想が付かず大変なことばかりだというのは、実際に経験してみて、はじめて分かったことです」。

特に身にしみて感じているのが、獣害の大きさだ。「スズメバチがぶどうを食べる」など、自分の手でぶどうを育ててみなければ、全く分からなかったことがたくさんあるという。
自然と共に生きるぶどうだからこそ、自然の力による苦労は切っても切り離せない。

3つ目の苦労は、ワイン造りが島にとって「初めて」だったことにより、技術的にも経験的にも参考に出来る事が少なかった点だ。

大三島は柑橘農業が主要産業だ。柑橘農家ばかりの中で行うぶどう栽培は、はじめは何もかもが手探りでのスタートだった。
しかし、ワイン造りの夢に賛同してくれた地域の農家や地主さん達の温かい協力やサポートにより、これまでぶどう栽培がされてこなかった土地とは思えないほど、ぶどう栽培・ワイン造りはスムーズに進んでいった。

また、時間はかかったが、徐々に周囲の農家とも信頼感や仲間意識が生まれてきた。
「獣害対策についてなど、地域の農家さんの話はとても参考になります」。新しい挑戦や努力が、時間をかけて島の人々との絆を育んでいったのだ。

▶瀬戸内の空気を感じながら飲んで欲しい

大三島みんなのワイナリーで造るワインは、どんな人にどんな場面で楽しんでもらいたいと考えて造られているのだろうか?

「ワインを飲んで、まずは瀬戸内に興味を持ち、大三島に来て欲しいですね」。
ワインを飲んでもらう場面として一番望んでいるシチュエーションは、大三島の海を見ながら飲むというものだ。

大三島みんなのワイナリーのワインは、日常に寄り添うワイン。瀬戸内の風景や雰囲気が感じられるように造られている。
「エチケット(ワインのラベル)にも、瀬戸内の雰囲気を感じて欲しいという意味が込められています」。

「島紅(しまんか)」「島ロゼ」のエチケットは、代表の伊東さんの手書きスケッチだ。瀬戸内の美しい夕日をイラストにした「島紅2019マスカット・ベーリーA100%」のエチケットは、ワイン雑誌「ワイン王国」のラベルコンテストで2位を獲得。エチケットからも感じられる瀬戸内の優しい風景は、多くの人を魅了する。

大三島には、移住してくる人も多い。猪料理やブルワリー(ビール醸造)など、さまざまな取り組みに挑戦する人々が集まってくるのだ。新しい意見や考えを持つ人々の中で、アイデアを出しあって新しい商品が生まれることもある。

穏やかな自然で、人々を惹きつける大三島。優しい波の音を聞きながら、大三島のワインを飲んで欲しい。ワインが造られる場所を感じながらワインを楽しむ時間は、このうえなく贅沢な時間になるはずだ。

▶大三島みんなのワイナリー自慢のラインナップ

大三島みんなのワイナリーで楽しめるワインについて紹介していこう。まず紹介したいのが「島紅(しまんか)」シリーズの赤ワイン2種類だ。
いずれもステンレスタンクで熟成されている。

2020年のヴィンテージは2種類あり、ひとつはマスカット・ベーリーAとシャルドネ5%がブレンドされたもの。2020年年末に新酒としてリリースした軽めのワインだ。

もうひとつは、2021年2月末にリリースした、マスカット・ベーリーAを100%使用した赤ワイン。しっかりと色が付いたぶどうを選んで造ったワインだ。南の島を思わせる香りがはっきりと感じられ、ほどよいボディがある。
そして最後にはほんのりとした塩味が感じられる、大三島らしい味わいに仕上がっている。比較的しっかりとした口あたりがあり、マスカット・ベーリーAらしい親しみやすさも内包。日常の食卓で楽しめる1本だ。

白ワインには、樽熟成させたシャルドネの「島白2020 シャルドネ100%樽熟成」がある。その特徴は「南の島」を感じさせるトロピカルな香りだ。
南国の太陽を思わせる明るい印象のシャルドネで、樽由来のバニラ香とあわさり、香り高いワインに仕上がっている。2021年現在ワイナリーに熟成用の樽は4本あり、今後は樽も増やしていく予定だという。

ぶどうから造るワイン以外にも、自慢の商品がある。2019年から造っている柑橘のスパークリングだ。現在販売中のヴィンテージは「島みかん 2020温州スパークリング 750ml」。
原料は、大三島の無農薬柑橘だ。瓶内二次発酵の本格的な仕上がりで、ぶどうとはまた違った質感の酸味が魅力。アルコール度数が低めのため、幅広い年齢層の人々に楽しんでもらえる1本だ。

「屋外で飲むイメージで造っています。冷やして夏に海で飲むと、とっても美味しいですよ」。
柑橘を使った商品は大三島ならでは。まさしく「島らしい酒」だ。

まだ大三島でのぶどう栽培・ワイン造りは歴史が浅い。経験や技術も十分とは言えず、できあがったワイン達が大三島の味わいを十分に引き出しているとは言えないそうだ。
「今後更なる改善を重ね『これが大三島の味わいだ』と納得できるワインを生み出せるようにしていきたい」。

また、価格についても気軽に手に取ってもらえるような価格を目指していきたいと大三島のワインについて川田さんは話している。

▶「しまなみ初のワイナリー」としての強み

大三島みんなのワイナリーならではの強みとは、いったいなにか。第1にあげられるのが、しまなみ海道エリア初、かつ唯一のワイナリーである点だ。
四国単位で見ても、ワイナリーはまだ少ない。

もうひとつの強みは、ワイン以外の分野とのコラボレーションだ。代表の伊東さんが建築家で、ワイン以外の方面に顔が広いことが、多様なコラボレーションの可能性を広げている。

小説家の小川糸さんの著書「ライオンのおやつ」をご存知だろうか。実はこの小説の舞台は大三島だ。作中に登場する青年がワインを造るワイナリーは、大三島みんなのワイナリーがモチーフになっている。

ワイン以外の分野とのコラボレーションで、ワイン文化の可能性はどこまでも広がる。今後も面白い活動や、発信が行われていくのだろう。より質を高めていくワイン造りと合わせ、ワイナリー独自の活動からも目が離せない。

『人が集まる場所にしたい 大三島みんなのワイナリーの未来』

最後に尋ねたのは、大三島みんなのワイナリー将来の目標や、未来の展望について。「ワイン造りに関する目標」と「ワイン造り以外に関する目標」の大きくふたつについて伺った。

大三島みんなのワイナリーが考えているワイン造りの具体的な目標は、瓶内二次発酵スパークリングを醸造することだ。シャンパンと同様の製法で造る、瓶内二次発酵のワインに挑戦したいと考えている。
「これからも、固定概念に縛られないワイン造りがしていきたいです」。
いろいろな造り方を、柔軟にかつ積極的に取り入れてワイン造りをしていくという。

大三島ならではの魅力の表現にも、引き続き力を入れていきたいという。地域の特産物を上手に取り入れたワイン造りにもチャレンジする考えだ。

続いては、ワインイベントに関する目標。ワイナリーの敷地内には彫刻の美術館があり、砂浜もほど近い立地。「夏にはワインフェスやマルシェなどを開催したい」と、イベントに関する構想が練られている最中だという。

ただワイナリーがあるだけではなく、地域の人が集まる場所にしたい。みんなでワイワイと、楽しい時間を過ごせる場所にしていきたい。
大三島みんなのワイナリーの夢は、これからも島の人々の笑顔を広げていくことだろう。

『まとめ』

暖かな気候に囲まれ、美しい瀬戸内海を臨む、大三島みんなのワイナリー。地域の特性を生かし、地域と共に生きる「大三島」愛にあふれたワイナリーだ。

「島」というと遠く感じるかもしれないが、東京から4~5時間もあれば行ける場所にある。穏やかな海と自然に囲まれながらゆったりとワインを飲むために、出かけてみてはいかがだろうか。

ワイナリー敷地内には宿泊施設もある。柑橘とワインの香りに囲まれて、優しい時間を過ごせば、いつまでも思い出に残る素敵なひとときになることだろう。

基本情報

名称大三島みんなのワイナリー
所在地〒794-1309 
愛媛県今治市大三島町宗方5208-1
アクセスしまなみ海道 大三島ICから車で約15分 
(大山祇神社参道内「大三島みんなの家」が事務所兼直売所)
HPhttp://www.ohmishimawine.com/

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