『くらむぼんワイン』「自然」を貫きテロワールを追求する、大正古民家ワイナリー

くらむぼんワインがあるのは、山梨県甲州市勝沼。甲州市勝沼は日本でも指折りの一大ワイン産地だ。

そんな「ワイナリー激戦区」でもある勝沼で、自然のワイン醸造を貫くワイナリーが「くらむぼんワイン」。家族経営の小規模なワイナリーではあるが、その歴史は大正からと古い。
ワイナリーの母屋は、大正の面影残る築130年の日本家屋。「山梨古民家倶楽部」に登録されており、国の有形文化財でもある建物だ。

ワイナリーについてのお話を伺ったのは、オーナーであり栽培醸造責任者でもある野沢たかひこさん。静かな話し口ながらも、端々に感じるワインへの熱い思いに圧倒された。

そんな、くらむぼんワインの思いや歴史を紹介していきたい。

『始まりは大正から、ワイナリーの歴史』

大正からの長い歴史があるくらむぼんワイン。1913年(大正2年)創業当初のワイナリーの形態は「協同組合」だった。「田中葡萄酒醸造協同組合」という名称で、何軒かの農家が集まって醸造していたのだ。

その後1962年、オーナーが協同組合の農家から株を買い取り「有限会社山梨ワイン醸造」に形態変更。
資本金なしで株式会社の設立が可能になった2006年には、有限会社から株式会社になった。

そして2014年1月に、社名を「くらむぼんワイン」に変更。今に至るのである。

▶「くらむぼんワイン」になった理由とは?

ワイナリー名にある「くらむぼん」とはどんな意味が込められているのだろうか。ほんわりとした印象を感じる響きだが、この言葉を聞いたことがあるだろうか?野沢さんに、名前の由来を伺った。

「くらむぼん」とは、宮沢賢治の小説「やまなし」に出てくる蟹の台詞。小説の中に「クラムボンはわらったよ」という一節がある。
「やまなし」という小説の一節を使うことで、ワイナリーがある「山梨」とのつながりを表現できると考えたのだ。

また「くらむぼん」という響きはワイナリーのイメージを表現する目的もある。宮沢賢治が目指していたのは「自然と人間との調和」。
くらむぼんワインが行っている、自然なワイン醸造と通じるものがあった。

▶野沢さんをワインの世界に導いたフランスの経験

野沢さんは「田中葡萄酒醸造協同組合」から続く「くらむぼんワイン」の、4代目ワイナリー代表だ。しかし、野沢さん自身は、最初からワイナリーを継ごうと考えていた訳ではなかった。

そんな野沢さんをワインの世界に引き入れるきっかけとなったのが、フランスへの留学だ。大学時代に、自分のやりたいことがなかなか決まらなかった野沢さん。人生勉強として、大学を中退して単身フランスに渡る。

南仏プロヴァンスの地で語学留学を経験し、1年間はブルゴーニュで栽培醸造専門学校に通った。

野沢さんのワイン観を変えたのは、ホームステイ先で飲んだプロヴァンスのワインだった。ステイ先のファミリーが食卓で出していたワインは、1本400~500円ほどの手頃なもの。
日常で飲まれる気軽なワインだったが「地域の料理」と「地域のワイン」の組み合わせは、素晴らしいものだった。

食事と合わせて友達とワインを囲むこと。ワインで楽しい会話を楽しむこと。これがワインの本当のあり方なのだと感じ「日本でもワインで同じことをやりたい」と強く思うことになる。

帰国後、野沢さんは4代目のワイナリーオーナーとなり、自然のままのぶどう栽培でワインを造ることに情熱を燃やす。フランスで感じた「ワインの本当のあり方」への思いは揺らぐことがない。

また、野沢さんはJ.S.A.シニアワインアドバイザー資格を保有している。資格を取得した経緯についても尋ねてみた。資格を取った理由について「色々なワインを知っているべきだと思ったから」と野沢さんは答えてくれた。

日本で日本のワインを造るからといって、日本のワインだけを知っていればいい訳ではない。色々な国、造りのワインを知った上で、自分のワインに対する考え方を決めていきたい、と考えたのだという。
ワインに関する知識を幅広く勉強した上で、ワイン造りの方針を決めたかったのだ。

「フランスなどに行くと、自分が日本人であることをより意識します」と野沢さんは言う。
世界に出たときに「日本の勝沼の地で、その地の特徴あるワインを造っている」ことを表すには、資格を持つことも大切だと考えたのだった。

『土地の味を表現する「くらむぼんワイン」のぶどうとは』

くらむぼんワインの自社畑で栽培されているぶどうは4種類。

最も栽培量が多いぶどうは「甲州」。全体の半分を占めているぶどう品種だ。次に栽培量が多い品種が「マスカット・べーリーA」と「カベルネ・ソーヴィニヨン」。そして、白ぶどう品種の「シャルドネ」が栽培されている。

メインの畑のひとつでは、カベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネが垣根仕立(ヨーロッパで幅広く使われる、ぶどう株の仕立て方)で栽培される。

もうひとつの畑では、南西の日当たりの良い斜面が広がる「鳥居平地区」に甲州が栽培されている。鳥居平の畑は、元来素晴らしい出来の甲州が生まれる地域だったのだ。

「品種として一番大事なのは甲州」だという野沢さん。自社畑の甲州は、化学農薬不使用で自然に即した栽培方法がとられ、フラッグシップシリーズのワインになる。

また、欧州品種を育てている理由としてあげたのが「熟成ワインを造りたかったから」というものだった。今後は、欧州系のぶどう品種をより増やしていきたいと考えているそうだ。

▶自社畑と契約農家のぶどうで造られるワイン

くらむぼんワインでは、自社畑のほかに、契約農家が育てるぶどうも使用している。

自社畑の比率は全体の3割ほどで、ひとりの栽培担当が2haほどの畑を管理している。残りの7割のぶどうを育てているのが、契約農家だ。

くらむぼんワインの年間仕込量は、ぶどう100トンほど。自社畑のぶどうは、そのうちおよそ30トンだ。とてもではないが自社畑だけでは多くのワインを醸造できないため、契約農家の力を借りている。

くらむぼんワインの契約農家は、もともと「山梨ワイン醸造」時代の株主だった人達が多い。一方で、新しく契約した農家もいる。契約農家の数は、全部で30軒ほどだ。契約農家が栽培するぶどうは、甲州とマスカット・べーリーAが中心となっている。

農協を介さない直接契約なので、契約している農家と直接取引や話ができる。「こんなぶどうを作ってほしい、こんな栽培をしてほしい」といった相談が直接できるのが利点だという。
契約農家の中には、様々な農家たちがいる。70~80代の高齢の農家もいれば、若い農家の方々も。年代も違えば、もちろん考え方もそれぞれ異なる。

くらむぼんワインでは、ワインのランクごとにぶどうを分けて仕込む。若くて意欲のある農家は、有機栽培を実践しているところもあるからだ。有機栽培でできた高品質なぶどうは、よりハイクラスなワインの醸造に使用される。

契約農家が大勢いる中で、野沢さんから全農家にお願いしているのは「健全なぶどうを作ってもらう」こと。「みなさんを『まとめる』というよりも、お願いをしながら栽培してもらっています」という野沢さん。

自社畑はもちろんだが、契約農家のぶどうであっても「減農薬」で栽培している。様々な農家さんが育てたワイン用ぶどうも、くらむぼんワインのワインとして生まれ変わっていくのだ。

▶自然のままでぶどうを育てる自社畑

自社畑の土作りについてこだわりを尋ねた。返ってきた答えは「土作りをしないので、土作りのこだわりはないかもしれません」というもの。
「土作りをしない」とは、いったいどういうことなのだろうか?くらむぼんワインのぶどうが生まれる、自社畑の土について紹介したい。

野沢さんは「土は自然にできるものです。雑草も生やしっぱなしですし、土も耕しません」と話してくれた。くらむぼんワインの自社畑は、自然に任せた環境だ。
雑草の根が伸び、土の微生物が土を作っていけば、自然と土が柔らかくなる。自然の営みを邪魔せず見守ることが「その土地のよさ」を出す畑をかたちづくる。

肥料は、土に欠乏症状が出て本当に足りなくなったときにまくくらい。むしろ、肥料のやりすぎは有害だと考える。肥料を与えるとしても、施すのは多少の腐葉土や有機堆肥を少量。
「土をそのままにした方が、土地の風味が出る」と言う野沢さん。人の手が加わっていないのに柔らかい森の中の土。そんな自然のままのふかふかな土が、理想のぶどう畑なのだ。

▶土地の風味をワインに出せるぶどう作り

くらむぼんワインのぶどうには、合成化学農薬を使用しない。使用しているのは、有機栽培でも使用できるボルドー液のみだ。くらむぼんワインの畑では、有機認証を取得できるほどの自然なぶどう栽培を実践している。

減農薬にこだわるのには理由がある。化学的な農薬をまいて農薬が残留すると、ぶどうに付着している天然酵母が死んでしまうからだ。くらむぼんワインでは、自社畑のぶどうを天然酵母で発酵させている。
低農薬で、畑の酵母が残るように育てられたぶどうからは、土地の風味が生きたワインが生まれる。

「結果的に土地の風味が生きたワインを造るために、栽培を自然にして造りを自然にしている、ということになりますね」と野沢さんは言う。手を加えない「土」から「ぶどう」が生まれ、土地の「酵母」で発酵させる。
くらむぼんワインは、見えざるその土地のパワーを「ワインの味」として表現しているのだ。

野沢さんは「甲州」についても話してくれた。やはり甲州は山梨ならではのぶどう品種。甲州の良さは飲み疲れしないことにあるのだという。生食用品種のぶどうにある甘い香りが甲州にはない。
そのため「食事に合わせやすい」という大きな長所があるのだ。食事とともに楽しむワインを造る野沢さん。くらむぼんワインの甲州は、食事とともにある甲州だ。

難しい年だと言われている2020年のぶどう栽培についても、野沢さんに様子を聞いた。

年の前半の長雨には苦労するも、甲州とマスカット・べーリーAは「例年より若干少ないくらいの収量」に収まったそうだ。一方の生食用ぶどうの栽培は打撃が大きく、ヌーヴォー用に育てていた生食用品種は大きく収量が減った。

「2021年はよい年になれば」と言う野沢さん。温暖化の影響もあり、ここ数年は「ワインにとってよい年」がないのだという。ワインの醸造家にとって天候の問題は、どうすることもできないが、大きなウエイトを占める悩みのひとつ。
命をかけてワインを造る醸造家達にとって、今年こそ素晴らしい天候になることを祈りたい。

『造りたいものを造っていく「くらむぼんワイン」のワイン』

くらむぼんワインが目指しているのは「土地の風味が生きたワイン」。土地に適した品種を使い、できる限り人為的なものが介入しないようにワインを造っている。
土地に適した品種といえば、山梨なら「甲州」と「マスカット・べーリーA」だ。くらむぼんワインでは、これらの品種を積極的に使用している。

人為的なものが介入しないワイン造りとしては「濾過を最低限のみにする」「酵母臭を付けない」「補酸をしない」ことを実施している。「あからさまに『人が造ったワイン』にしたくない」という野沢さん。そのために、ぶどうの風味が素直に出るワイン造りをつきつめる。

▶自然派でありつつもワインの最適な状態にはこだわる

「自然派」といえる野沢さんのワイン造りだが、野放し状態でワインを造る「自然派」とは全く異なっている。

昨今ちまたでは「自然派」ワインが人気だ。しかし自然派と呼ばれるワインの中には「発酵だけは天然酵母・無濾過で行うが、ぶどうは外部から買ったものを使っている」というワインもあるのだ。そんなワインの中には、どの品種が使われているかも感じ取れないものもある。
「アルデヒド」「酢酸エチル」などの欠陥臭が強いワインも存在し、元のぶどう品種固有の風味がかき消されてしまっていることさえある。

野沢さんが目指す「自然」は、こういった自然派とは方向性が違う。ワインに有害な微生物の活動は抑えるべきと考えるため、亜硫酸(ワインの酸化防止剤)も適量は使用する。ワインを変質させることは、品質の劣化に他ならないからだ。

フランスの「自然派」と言われるワインの造り手は、化学的な知識をしっかりと持っている人が多い。醸造学に通じた上で、自然に即したワイン造りをしているのだ。醸造学に通じている自然派の造り手であれば、例えば「輸出する際は亜硫酸を多少多めに入れる」などの柔軟な調整を行う。
輸出は長い船旅になるため、変質しやすいワインの劣化を避けるためだ。

自然に造られたワインの味わいを大切にするからこそ「無濾過であれば自然」などといった単純な考え方はしない。丁寧に造るからこそ、ワインの品質を考えた醸造を大切にしている。

「100人醸造家がいれば100通りのやり方が生まれる。何がいいか悪いかではなく、その考え方に共鳴して好きな醸造家が出てきたりするものです」と教えてくれた野沢さん。
ワインは造り手の思想を色濃く反映する。だからこそ、野沢さんは自分の造りたいワインを造り続けるのだ。

▶ワインを助ける醸造

くらむぼんワインのワイン造りの「こだわり」を野沢さんに尋ねた。

「醸造は、ワインになるのを助ける行為」。そのため「こういう醸造法こだわっている」とは答えづらいようだ。ただし「ワインを助ける醸造」として実践していることは4つある。

1つ目は、欠陥臭が出ないように気を付けること。2つ目は、人為的に味を変えてしまう「補酸」や「過剰な濾過」はしないこと。3つ目は、余計な香りを付けないことだ。

例えばくらむぼんワインでは「シュール・リー」を行わない。シュール・リーとは、あえて酵母の澱(おり)と一緒に醸造させることで、酵母の風味をワインに付与する醸造方法だ。通常の甲州ワインには、旨味を付与するためにシュール・リーが使用されるケースも多い。
しかし、くらむぼんワインでは「うちのスタイルではない」として使用しない。人為的に酵母の匂いをワインに付けたくないからだ。また「樽の風味を付けすぎたくない」という理由から、樽醸造は限定的にしか行っていない。

4つ目として、マスカット・べーリーAには「特有の甘い香り」が出ないような造りを心がけているという。マスカット・べーリーAは、アメリカ系のぶどう品種が交配されている。
そのため「キャンディ香」が強く出がちであり、食事に合わせづらいワインになってしまうのだ。

キャンディ香が出ないよう、発酵温度に気を遣っている。この醸造法は、ブルゴーニュでも行われる「低温発酵」だ。ぶどうの茎を使って発酵させることで味に厚みを出し、甘い香りを抑えるための工夫をしている。

味わいのイメージ的には、ブルゴーニュ・ボジョレー地域のワインに近い。くらむぼんワインでは、軽やかながらも厚みのあるマスカット・べーリーAのワインができあがるのだ。

▶試行錯誤と天候の苦労

ワイン造りの苦労について聞くと「ワイン造りの細かい部分について、試行錯誤する大変さ」について話していただいた。「自然に近い状態でぶどうをワインにする」という基本の方針は変わらないくらむぼんワインだが、よりよいものにするための細かい調整は尽きることがないという。

例えば、契約農家のぶどうから造られる甲州のワインについてだ。契約農家が育てた甲州のワイン醸造には、乾燥酵母を使用している。「乾燥酵母をどれにするか」は試行錯誤を重ねてきた。

野沢さんが悩んでいたのは、いかに甲州の「ゆず・かぼす系の柑橘風味」を出すか。甲州ならではの特徴を、しっかりと表現できる酵母を選ぶのが大変だったそうだ。

「どうしたら、食事にあう甲州にできるのか」と考え、試行錯誤した。毎年少しずつ改良を加えていきながらも、軸はぶれずにまっすぐと。
より良い物を目指すため、くらむぼんワインの挑戦は終わることがない。

また、ワイン造りにおいて天候の苦労は大きいのだという。「良い天候であろうと悪い天候であろうと、できたぶどうからワインにしていく必要があるのが難しい点です」と野沢さん。
たとえその年が「良くない天候の年」であっても、採れたぶどうから「それなりに良いワイン」にしていくしかない。醸造家にとっての終わらない悩みであり、いかんともしがたい難しさのひとつだ。

「よくない1年であれば、また1年待たなくてはいけないという大変さがあります」自然を大切にするからこそ、天候の影響も受け入れなくてはならないという苦労があるのだろう。

ただ、天候の難しさは「受け入れる」ことも大切だと、野沢さんは言う。年ごと出来はその土地特有の天候も反映する。ぶどうの味は土地の特徴でもあるから、一概に否定はできない。
「難しい年は」ワイン造りにおいて悪い面もあるが「早飲みワインに適した年」と言い換えることもできる。難しい天候でできたワインは、軽快で爽やかな味わいになるからだ。

「年ごとの特徴をよしとして、受け入れていきたい」という野沢さん。年の違いは、ワインを楽しむ上でのひとつの要素でもある。年によるできあがりの違いを表現するためにも、野沢さんは自然の造りにこだわり続けるのだ。

▶料理に合わせるという神髄を楽しんでほしい

くらむぼんワインをどんな人に、どんな場面で楽しんでほしいか尋ねた。

ワインについて考える野沢さんの頭には「ホームステイしていたときプロヴァンス」のイメージが存在する。四季ごとの食材を使って、料理に合わせられるワインであること。
野沢さんは、ワインを造るときに「料理に合う」をテーマにしている。

「料理があって、話せる人がいて、そんな場所で飲んでほしいです。ひとりで、ちびちびやってもいいんだけど。造り手としては、人がいるところで料理と一緒に楽しくしてほしいですね」と野沢さんは話す。

くらむぼんワインでは、料理と楽しんでほしいという思いはありつつも、ひとりで飲みたい人の気持ちにも応えられるようにシリーズが分かれている。普段飲みに適したシリーズもあれば、自社畑限定のハイクラスシリーズもあるのだ。

「シリーズがたくさんあるので、シーンを分けて色々と楽しんでもらえれば」と野沢さん。

例えば「限定シリーズは月1回の贅沢」に、日常ワインのシリーズは「週2〜3回、食事と合わせて」など、無限の楽しみ方が考えられる。「ワインは、色々な人とのつながりができるもの。
他のお酒とは違ったお酒かなとも思っているのです」と野沢さんは話す。

ワインは造り手の個性が出るお酒。その分、飲む人も好きなワインがはっきりする傾向にあるという。それは、ワインに造り手の考え方が明確に映るからだ。「小さいワイナリーになればなるほど、自分の造りたいワインになっていくのです」野沢さんの思いを感じ、自然に造られたぶどうを感じ、土地の味わいを感じる。
くらむぼんワインのワインは「ワインの持つ個性や思いを感じて、仲間や家族と語り合いたくなるワイン」だ。

▶豊富なラインナップと楽しいエチケット

くらむぼんワインの商品ラインナップには、2021年3月現在5つのシリーズがある。面白いのが、シリーズごとにエチケットの印象が大きく異なる点だ。

シンプルでシックなデザインの「N」シリーズと、カラフルでポップな「KURAMBONBON」シリーズでは、それこそ印象に180度の違いがある。

このように、シリーズでエチケットの雰囲気を変えているのはなぜだろうか。また、くらむぼんワインの「シリーズによる違い」はいったいどんなものか。野沢さんに話を伺った。

くらむぼんワインの5シリーズは、以下の通りだ。

  • KURAMBON(くらむぼん)
  • N(エヌ)
  • KURAMBON SPARKLING(くらむぼんスパークリング)
  • KURAMBONBON(くらむボンボン)

まずは、くらむぼんワインのメインシリーズ「KURAMBON」から解説しようKURAMBONシリーズは、食事に合わせるためのワイン。くらむぼんワインにおける、メインのシリーズだ。KURAMBONシリーズのエチケットには「蟹」「魚」などがデザインされている。これは、宮沢賢治の小説「やまなし」に出てくる生き物たちだ。

2つ目は「蔵」シリーズ。蔵シリーズには、古い日本家屋の蔵を模したデザインのエチケットが貼られている。「蔵」は、デイリーワインのラインナップ。地元の人は一升瓶サイズで購入しているのだという。品種ラインナップは「甲州」の白ワインと、「マスカット・べーリーA」の赤ワインだ。
ワインの味わいも、日頃楽しめる親しみやすい造りに仕上がっている。ワイングラスではなく、湯飲みでもOK。気軽に楽しみたいシリーズだ。

3つ目のシリーズは「N」。くらむぼんワインにおける最高級ラインナップである、限定シリーズだ。自身が造るワインを「おすすめの一本」として決めることはできないという野沢さん。
しかし、野沢さんのワインへの思いや考えが最も強く表れているワインを選ぶとすれば「N」のワインになるという。

フラッグシップワインである「N」シリーズ。名前のNは、自然(ナチュラル)のNと、オーナーである野沢さんのNを意味している。

ワインの種類は現在4つ。自社畑で栽培されているぶどう品種である「甲州」「マスカット・べーリーA」「シャルドネ」「カベルネ・ソーヴィニヨン」だ。「N」は、年間1000本の限定醸造。天然酵母や無濾過による、自然のままのぶどうをじっくりと味わいたい。

4つ目は、スパークリングワインのシリーズである「KURAMBON SPARKLING」。販売しているワインは2種類。甲州の辛口白と、アジロンダックによる甘口赤だ。炭酸ガスを注入して造っているタイプの発泡性ワインであり、価格も抑えられている。
ピュアな果実味がこのワインの大きな魅力。仲間内の気軽な席で楽しみたいスパークリングワインだ。

最後に紹介するのが「KURAMBONBON」。これは甘口ワインのシリーズ。野沢さんの先代が造っていた甘口シリーズで、親しみやすい味わいにリピーターが多い。
お酒に慣れ親しんでいない若い人にもおすすめのシリーズ。ぶどうの甘みが濃厚に感じられるワインになっている。

くらむぼんワインにはシーンに合わせたワインのラインナップがあるため、若いお客さんも多いのだとか。成人したての若者もくらむぼんワインを楽しんでいるという。そんな若いお客さんの中には、甘口のワインを飲んで気に入り辛口に入っていく人も。
初心者から玄人まで楽しめる、バラエティーに富んだラインナップが魅力的なくらむぼんワインだ。

▶魅力は「食事に合うワイン」であること

くらむぼんワインの「強み」について、野沢さんに尋ねた。「造りたいワインを造っているだけだから、強みと言われると難しいですね」という野沢さん。改めて考えたときに感じる強みは「食事に合うワイン」であることだという。

高級ラインの「N」シリーズ以外は、普段の生活に気軽に入れるワインであることが重要だと考えている。そのためワイナリー名やワイン名、シリーズ構成は親しみやすさが表現されているのだ。

2018年には商品のラインナップを整理し、分かりやすいシリーズ構成にした。また、ワイナリー名・ワイン名も「ボトルを手に取れば、ワインの味やよさが分かるように」と考えられている。
ワイナリーの雰囲気が想像できることを第一に考え、デザインやネーミングにこだわっているのだ。

そんな風に「親しみやすさ」を大切にするくらむぼんワインは、食事と合わせられるワインがそろう。特に「KURAMBON」シリーズのワインは、飲食店に提供しているシリーズでもある。まさに食事と合わせることを前提に造られているワインであり、それがくらむぼんワインの強みでもある。

その上、価格的にも扱いやすいのが魅力だ。「KURAMBON」のワインは、ほとんどが1,000~2,000円台で購入できる。

余計な手を加えていないため、味に引っかかりがなくスムーズに喉を通る。日常の食卓と共に楽しめるワインが、圧倒的なコストパフォーマンスで楽しめる。それが、くらむぼんワインの大きな強みなのだ。

『テロワールを感じられるワイン造りを「くらむぼんワイン」の未来』

くらむぼんワインの将来の展望や、目指すワイン造りについて尋ねた。野沢さんの答えは「土地に合った自然なワイン造りを極めたい」というもの。ワイナリーの将来について、具体的な目標を紹介したい。

ひとつは、自社畑の面積を増やすことを目標にする。これからも気候風土に合ったワイン造りを進めていきたいと考えている野沢さん。自社畑を増やすことで、テロワールが感じられるワイン造りを目指す。
テロワールとは、気候、土壌など、ワインに影響を与えるぶどう栽培を取り巻く環境のことだ。

テロワールが反映されているワインでは、隣同士の畑であっても全くワインの個性が異なることがある。だが肥料を施して人間が過度に介入する土作りをすると、本来あるはずの土地の個性が消えてしまう。

土地に元からある物を吸い出していくワイン造りを追求していくこと。そういった「テロワールをはっきりと感じれるワイン」を造っていくことが、変わらない思いでありこれからも大きな軸になるものだ。

もうひとつは、山梨に合う欧州ぶどう品種の栽培を増やしていくという目標がある。温暖化の影響で、その土地に適する欧州系品種が徐々に変化している。現状だとシャルドネやメルローは、山梨より冷涼な長野での栽培の方が適しているのだ。

そのため、くらむぼんワインでは「より温暖な山梨に合う欧州品種」を模索している。シャルドネなどよりも、暖かい地方で育てられている欧州品種が合うと考えている野沢さん。より温暖な気候の南フランスで栽培されているぶどう品種の栽培を増やしている最中だ。将来的には「南仏系の品種」をメインにしていきたいと語る。

野沢さんがワインの道へ進むきっかけになった、フランス留学先の「プロヴァンス地方」も南仏だ。野沢さんとプロヴァンスをつなげるワインの縁。南仏系品種による新たなワインのラインナップを楽しみに待ちたい。

『まとめ』

くらむぼんワインは自然の造りを極め「土地の味、自分たちの味、ワインへの思い」をワインに映し出すことに命をかけるワイナリーだ。野沢さんのワインへの思いに共感したなら、くらむぼんワインのワインを飲んでみてほしい。造り手の個性をワインで味わうことができるだろう。

くらむぼんワインのワイナリーに足を運び、野沢さんが幼少期過ごしたという大正古民家も満喫していただきたい。日本文化と、西洋文化であるワインの優しい融合を感じられるはずだ。

基本情報

名称くらむぼんワイン
所在地〒409-1313
山梨県甲州市勝沼町下岩崎835
アクセスお車で→ 中央自動車道・勝沼ICより5分
電車で→ JR中央本線勝沼ぶどう郷駅より、タクシーで8分。 町内循環バスぶどうの国文化館下車3分
HPhttps://kurambon.com/

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