『日和ワイナリー』勝沼のテロワールを大切にする、プレミアム・クラフトビバレッジ・ブランド

山梨県甲州市勝沼町は、日本ワインの銘醸地のひとつとして優れたワインを数多く世に送り出してきた。今回紹介するのは、そんな勝沼町にある「日和ワイナリー」だ。

日和ワイナリーの代表を務めるのは、早坂茉李さん。上質でポジティブなお酒の文化を広げていくことを目指し、「プレミアム・クラフトビバレッジ・ブランド」として、ワインやトニックウォーターの製造・販売を手がける。

日和ワイナリーがワイン醸造に使用しているのは、勝沼で長く栽培されてきた歴史を持つ品種である「甲州」だ。地域の伝統品種を受け継ぎ、こだわりのワインを醸す。

今回は、醸造家・ソムリエの三宅信行さんにお話を伺った。日和ワイナリーのぶどう栽培とワイン醸造について詳しく紹介していきたい。

『ワイナリー設立までの経緯と、ぶどう栽培』

まずは、ワイナリー設立までの経緯を振り返っておこう。日和ワイナリーは、なぜ山梨にワイナリーを設立することになったのだろうか。

また、勝沼にある自社畑でのぶどう栽培の様子にも迫りたい。勝沼町内の複数の地区のぶどうを使ってワインを造る日和ワイナリー。それぞれの畑の特徴についてもお話いただいた。

▶︎日和ワイナリー設立まで

日和ワイナリーの代表・早坂さんとワインとの出会いは、留学先のロンドンでのことだった。クラフト蒸溜所の隆盛を現地で目の当たりにし、ワインやスピリッツ、カクテルなどの洋酒文化の奥深さに魅了されたという。

そして、帰国後に勝沼のワイナリー関係者と出会ったことなどがきっかけとなり、勝沼にワイナリーとクラフトビバレッジ・ブランドの設立を決意した。

「日和ワイナリーの創業は2018年4月のことでした。勝沼町内の鳥居平地区にある自社畑でぶどう栽培も開始し、優れたワインを造る産地である勝沼のワイナリーとしてスタートを切ったのです」。

▶︎勝沼「鳥居平(とりいびら)」で甲州を作る

日和ワイナリーがぶどう栽培をしている山梨県の峡東地域は、2022年に国連食糧農業機関によって、「峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム」として「世界農業遺産」に認定された。

古くからぶどうなどの果樹栽培がおこなわれてきた土地で農業を継承していくことは、日和ワイナリーにとって非常に重要な取り組みのひとつだ。

そのため、日和ワイナリーのぶどう栽培における最大のこだわりは、甲州をメインの品種として作っていること。甲州を勝沼の地で栽培することに、大きな意義があるととらえているのだ。

ワイナリーを立ち上げて、ぶどう栽培をスタートさせた畑がある鳥居平(とりいびら)地区は、品質のよいぶどうが育つと定評があるエリアだ。鳥居平の地名は、毎年10月に実施される「鳥居焼き」という祭事に由来する。柏尾山の斜面に鳥居の形に設けられた護摩木に点火して、収穫に感謝し、豊穣を祈るという古くから続く催しなのだとか。

そんな歴史ある地区で栽培が盛んな甲州は、一説に平安時代から栽培されているとも言われる品種だ。傾斜のある扇状地はぶどう栽培に適した環境で、勝沼に豊かな恵みをもたらしてきた。

日和ワイナリーは、鳥居平の畑にぶどうを植栽した際、まず土壌作りをすることから着手した。まず土壌中の有機微生物を増やし、自然の力を使って有害微生物を抑制する手法を導入したのだ。ぶどうを植える前に他の植物を排除するのではなく、むしろ多様な植物が生えていることによって生まれる有機微生物を利用して土壌環境を改良する方法を選んだのだ。

「有機微生物の力を借りたぶどう栽培の成果はまだまだ発展途上ですが、健全なぶどうができることは毎年実感しています」。

▶︎鳥居平にある自社畑の特徴

日和ワイナリーの自社畑の甲州は、土地の恵みをしっかりと反映して育つ。甲府盆地の東端にある畑の標高は450〜550mほどで、土壌には豊富なミネラルが含まれている。山からの風に常にさらされるために果皮が厚くなり、病害虫の影響を受けにくいという特性を持つ。

「南西向きの急斜面にある畑は日当たりがよいため、しっかりと熟した健全なぶどうが収穫できます。完熟した甲州は香り成分が飛ぶことなく、ふくよかな香りをたたえていますよ」。

また、鳥居平の自社畑ではシャルドネも栽培している。甲州と同じく、高品質なぶどうが育っているそうだ。

▶︎地区ごとに異なるテロワール

日和ワイナリーでは、自社畑で栽培するぶどう以外に、地元の契約農家が栽培したぶどうを使ったワインも製造している。栽培を手がけているのは、いずれも数十年の経験を誇るベテラン農家たちだ。

同じ勝沼町内とはいえ、地区が違えば風の通りなどの条件はそれぞれ異なる。以下に、日和ワイナリーがワイン造りに使うぶどうが育つ地区ごとの特徴を紹介しておこう。

・小佐手(おさで)地区
鬢櫛(びんぐし)川と田草川に挟まれた、水はけのよいエリア。土壌は小石混じりで、糖度が高く優れた品質のぶどうが収穫できる。

・井戸尻(いどじり)地区
勝沼の扇状地の中心に位置し、食用・醸造用ぶどうや桃栽培が盛んなエリア。

・菱平(ひしだいら)地区
標高450mにあり、粘土質に礫(れき)が混ざったミネラルを含んだ土壌が特徴。風通しがよく、緩やかな丘陵地帯にあるため日当たりもよい。ぶどう畑の景観が美しいエリア。

・夏秋(なつやけ)地区
夏でも秋のように涼しいことが地名の由来で、土壌は水はけがよい。笹子峠の東の谷から吹く「笹子おろし」という涼風により、昼夜の寒暖差が大きいのが特徴。

起伏がある地形の勝沼では、同じ町内であっても地区ごとにテロワールに個性が出る。地名が土地の特徴を表現している夏秋(なつやけ)地区について、少し詳しく触れてみよう。

夏秋地区を地図で見ると、日川沿いの扇状地に位置することがわかる。川に沿って水だけではなく空気も移動してくるため、笹小峠からの冷気が流れ込むのだという。

もともと勝沼は、暑さが溜まりやすい盆地の地形だ。しかも、南アルプスから甲府盆地へ吹き降ろす風がフェーン現象を発生させるため、夏には日本有数の暑さとなることで知られている。

だが、夏秋地区は笹小峠からの冷たい空気が最初に吹き込んでくる地点に位置するため、夏場でも夕暮れ時になるとぐっと気温が下がるのだ。そのため、糖度と酸度を落とすことなく、健全なぶどうを収穫することが可能となる。

日和ワイナリーでは、畑ごとのテロワールを表現するため、あえて畑別にそれぞれ別のワインとして仕込んでいる。畑がぶどうに与える個性を感じることは、ワインを味わう上での大きな楽しみのひとつだといえるだろう。

『日和ワイナリーのワイン醸造』

ここからは、日和ワイナリーのワイン醸造について紹介していこう。日和ワイナリーは、世界中の人に「いい日和」「いい兆し」を感じてもらいたいという願いを込めてワインなどを製造している。 

日和ワイナリーのラインナップには、勝沼産ぶどうを自社醸造したワイン「hiyori(ひより)」と、和のボタニカル素材を用いたプレミアムトニックウォーター「kizashi(キザシ)」が並ぶ。

ぶどうそのものの美味しさと個性を引き出すワイン造りをする中で、醸造工程においてどんな点にこだわっているのだろうか。

また、ソムリエである三宅さんに、日和ワイナリーのワインを飲んで欲しいシーンと楽しみ方についても尋ねてみた。あわせて紹介していこう。

▶︎ワイン醸造におけるこだわり

日和ワイナリーが醸造においてこだわっていることのひとつめは、発酵温度だ。品種由来の香りをしっかりと引き出すために低温発酵をおこなっているという。

フルーティで繊細な味わいを引き出す場合、発酵温度が高すぎると香りが損なわれる原因となる。ぶどうの果汁に含まれる糖分が酵母の働きでアルコールに変化していく際に発生するさまざまな香り成分を残すためには、できるだけ低温で発酵させることが望ましいのだ。

また、醸造工程においては、ワインを酸化させないことにも気を配っているという。ワインの酸化を抑制するためには、液体が酸素と接触するのを避ける必要がある。そのため、二酸化炭素やアルゴンガスをタンクに入れて低酸素状態にすることで、ワインが酸素に触れて劣化するのを防いでいるという。

「現在おこなっている取り組みによる効果がどの程度あるのかは、まだはっきりとわかっていません。引き続き経過観察しながら、さらに美味しいワインを造っていきたいですね」。

▶︎日和ワイナリーのワインの楽しみ方

日和ワイナリーのモットーは、「その日が、吉日」。日々の営みからもたらされる発見や感動を、ワインに込めてお客様に届けることを目指してワイン造りをおこなっている。

そんな日和ワイナリーのワインを、どんなシーンでどのように楽しんで欲しいと考えているか、三宅さんに尋ねてみた。

「日和ワイナリーのワインは、美味しい食事や楽しい会話と一緒に楽しんでいただきたいですね。何気ない日常の中で日和ワイナリーのワインを食卓に出すことで、どんな日でも『ハレの日』として演出することができます」。

大切な人と過ごすかけがえのない時間を楽しみ、毎日を生きる喜びを祝うために味わうワイン。日和ワイナリーが目指すのは、そんな存在だ。

「ご自宅で楽しんでいただく以外にも、大切な人への贈り物にしていただくのもおすすめです。上質な味わいなので、特別な日を祝うワインとしても最適ですよ」。

ソムリエである三宅さんは、ワインの味や香りを言葉にして記憶することで、ワインの楽しみ方がより豊かなものになると語る。

「ワインを口に含んだときに感じた風味を、記憶の中にある味や香りに例えてみてください。例えば、子どもの頃の夏の日に畑で採った、まだ若いメロンの香りや草の香りなどと結びつけて想像するのです。本来は形のない『味』や『香り』に具体的なイメージを持たせることで、ワインをもっと楽しめるようになるでしょう」。

『日和ワイナリー おすすめ銘柄の紹介』

ここからは、日和ワイナリーからリリースされているワインの中から、おすすめの銘柄をいくつか紹介していこう。

勝沼のテロワールをワインボトルに閉じ込めた日和ワイナリーのワインは、風味豊かで上品な味わいが特徴。ぶどうが育った地区ごとに分けて仕込みと熟成をさせているため、いくつかの銘柄を飲み比べてみるのも面白いかもしれない。

気になったワインがあれば公式サイトから購入して、実際に味わってみてほしい。

▶︎「hiyori 勝沼 夏秋(なつやけ) 甲州」

1本目に紹介するのは、夏秋地区の畑の甲州を使った、「hiyori 勝沼 夏秋(なつやけ) 甲州」である。寒暖差が大きく、砂と石が堆積した水はけのよい土地で育った、健全な甲州のみを使用。じっくりと低温発酵させたワインだ。

「完熟した桃やバナナ、パイナップルのような豊かな香りがあります。口に含むと、完熟したぶどうから造ったのだとわかっていただけると思います。しっかりと残る酸味が爽やかに感じられます。夏秋地区の畑で育った甲州ならではの、厚い果皮由来の苦味が、後味を引き締めているのが特徴ですね」。

色味はグリーンがかったイエローで、食事と合わせることでより美味しくなる。ハーブやオリーブオイルを使った地中海風の魚料理や、柑橘ソースを使ったメニューとのペアリングがおすすめだ。

「料理と一緒に楽しむ以外にも、ワインバーなどでワインをじっくり楽しむようなシーンにも最適な1本です。ぜひお気に入りの飲み方を見つけてみてください」。

▶︎「hiyori 勝沼 小佐手 甲州」

2本目に紹介するのは、「hiyori 勝沼 小佐手 甲州」だ。日和ワイナリーでは、小佐手地区を「せせらぎのテロワール」と呼んでいる。ふたつの川が流れ、高低差がある地形のために日当たりと水はけに恵まれた場所で、古くからぶどう栽培がおこなわれてきた歴史を持つ地区だ。

「hiyori 勝沼 小佐手 甲州」に使用している甲州は、栽培歴40年以上の契約農家が小佐手の畑で育てたぶどうのみ。ぶどうの優れた品質は、ワインの味わいに直結する。

「瓶内熟成が進んでいるので、レモンやライムのような香りを感じることができます。味わいにも柑橘の酸味があり、甲州らしい余韻を長く楽しんでいただけますよ」。

合わせる料理も、「柑橘」というキーワードに沿って選ぶとよい。レモンやライムを添えたり絞ったりするメニューが最適だ。爽やかな味わいの料理と合わせることで、料理とワインがお互い味を引き立たせ合う。

さらに、サラダやフレッシュタイプのチーズ、柑橘を使ったドレッシングとの相性も抜群だ。バターとレモンのソースをかけた豚肉料理もよいだろう。

「柑橘の爽やかなアロマが料理を引き立てるので、飽きることなくボトルを1本飲みきってしまうようなワインです。柔らかくフルーティーな果実味を感じていただけますよ」。

▶︎「kizashi トニックウォーター 黄檗(キハダ)

最後に、日和ワイナリーの主力商品として忘れてはならないトニックウォーターについても紹介しておこう。

「kizashi トニックウォーター 黄檗(キハダ)」は、地域の山に自生したミカン科の樹木である「黄檗(キハダ)」を用いたトニックウォーターだ。キハダとは、古来より生薬「オウバク」として親しまれてきた植物で、清々しい苦味と爽やかな香りが特徴。

2019年11月に発売した「kizashi トニックウォーター 黄檗(キハダ)」は、香り高くナチュラルな味わいで人気を博している。

「手にとっていただいた際には、まずはそのまま味わってみてください。豊かな風味に驚いていただけることでしょう。心地よい炭酸感があり、ボトルからそのまま味わっても喉越しよく楽しめます」。

「kizashi トニックウォーター 黄檗(キハダ)」の風味豊かな香りの秘密は、柑橘の爽やかさによるものだ。山梨県富士川町産の柚子果汁をはじめ、カボスやシークヮーサーなどのエキスをブレンドすることにより、バランスのよい柑橘感を表現している。

▶︎オリジナルレシピのカクテル

「kizashi トニックウォーター 黄檗(キハダ)」は、カクテルやノンアルコール・カクテルの割材としても最適だ。苦味が引き立つ大人の味わいがお好みなら、お気に召すに違いない。

三宅さんおすすめのカクテルは、「ジントニック」だ。「kizashi トニックウォーター 黄檗(キハダ)」によく冷やしたジンを適量注ぐと、ジンの深い味わいが生きたカクテルができる。

「フルーツとの相性も非常によいので、桃やぶどうなどの100%ジュースをよく冷やして加えたり、シェーカーでシェイクするのもおすすめです。その際にはぜひ、ワイングラスやシャンパングラスを使って味わってください。より香りが引き立ちますよ」。

「kizashi トニックウォーター 黄檗(キハダ)」は公式オンラインショップのほか、山梨県内の酒販店や、五つ星ラグジュアリーホテルでの取り扱いもある。

また、ブランドアンバサダーとして、「Bar BenFiddich」のオーナー・バーテンダーである鹿山博康氏が就任。鹿山氏は、国内外から注目を集める日本人バーテンダーのひとりだ。

鹿山氏考案の「kizashi トニックウォーター 黄檗(キハダ)」を使ったオリジナル・カクテルやノンアルコール・カクテルで、トニックウォーターのあらたな魅力を国内外に発信している日和ワイナリー。

日和ワイナリーの公式サイトには、「kizashi トニックウォーター 黄檗(キハダ)」を使ったカクテルのオリジナルレシピが掲載されている。白ワインとトニックウォーターのカクテルのレシピもあるので、気になった方はぜひチェックしていただきたい。

『まとめ』 

自然素材の美味しさを引き出し、優れた飲料に仕上げて飲み手に届けることに力を注いでいる日和ワイナリーは、サスティナブルな取り組みにも熱心だ。

「キハダなど、身近にあっても見過ごされがちな素材のよさを見い出し、美味しさを引き出すことによって循環可能な社会に貢献します。我々の活動や商品に共感していただいた都内の高級ホテルやグローバルなバーからもたくさんの支持をいただいています」。

日和ワイナリーの強みは、地域密着のワイナリーであることだと話してくれた三宅さん。ぶどう栽培の長い経験を持つ契約農家との繋がりを大切にして多くのことを教わりながら、これからもまっすぐに進んでいく。

「日本から世界に向けて、上質でポジティブなお酒の文化を広げていきたいと考えています」。

今後も、日和ワイナリーはワイン醸造だけではなく、さらに幅広いジャンルの商品を生み出していく方針だ。ハーブを生かしたベルモットのお酒や、身近な素材のエキスを活用したクラフトコーラ、ジンジャーエールなどの清涼飲料水など、魅力的なラインナップのリリースを予定しているそうだ。ワイナリーの枠に納まりきらない活躍から目が離せない。

基本情報

名称日和ワイナリー(HIYORI Winery)
所在地〒409-1316
山梨県甲州市勝沼町勝沼2543-3

アクセス<車でお越しの場合>
中央高速道路「勝沼インター」より勝沼バイパスを甲府方面へ向かい、下岩崎交差点(2つ目信号)を右折。
「ぶどう橋」を渡りすぐ右折、300m直進。

<電車でお越しの場合>
JR中央本線「勝沼ぶどう郷駅」からタクシーで 約7分
JR中央本線「塩山駅」(特急停車駅)からタクシーで約10分
HPhttps://hiyori-corp.com/

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