今回紹介するのは、大阪府羽曳野市駒ヶ谷にある「河内ワイン」。2024年に創業90年を迎える河内ワインの4代目代表を務めるのは、金銅(こんどう)重行さんだ。
ぶどう栽培とワイン醸造はもちろん、そのほかにもさまざまな取り組みをおこなっている河内ワインが目指すのは、持続可能な事業運営だ。しっかりと未来を見据えながらワイナリーとして何ができるかを考え、周囲を巻き込みながら歩みを進める。
河内ワインの設立の経緯と歴史、現在のぶどう栽培とワイン醸造におけるこだわりとは。また、目指すワインとワイナリー像に迫りながら、地域に愛される河内ワインの魅力に迫っていこう。
『河内ワインの歩み 危機を乗り越え、新生・河内ワインへ』
河内ワインは、現代表である金銅重行さんの曽祖父、金銅徳一氏が興したワイナリーだ。昭和初期からワイン造りを始め、2024年現在に至るまで歴史を紡いできた。
だが、河内ワインの長い道のりは、常に順風満帆だったわけではない。大きな危機を乗り越えて今があるという河内ワインが、これまでたどってきた物語を見ていきたい。
▶︎大阪河内の農業振興のために始まったワイン造り
創業者の金銅徳一氏は、大阪・羽曳野地方のぶどう農家だった。昭和初期の大阪は、全国1位の生産量を誇るぶどうの一大産地。毎年多くのぶどうが生産されたが、台風などの天災の影響により、生食用として販売できないぶどうが大量に発生する事態も生まれていたのだ。
生食用として販売できないとはいえ、大切に育てたぶどうを廃棄するのは忍びない。加工用としてなら使うことができそうだと考えた徳一氏は、河内ワインの前身である「金徳屋洋酒醸造」を設立し、ぶどうを使ってワイン造りをスタートさせた。
▶︎4代目として就任
4代目代表の金銅重行さんは、幼少期からぶどう畑とワインに囲まれた生活を送ってきた。ワイナリー創業家の長男として生を受けた金銅さんにとって、家業を継ぐことは、ごく自然な選択だった。成長するにつれて興味を持ったのは、流通や販売の分野だったという。そこで、修行の一環として東京の酒問屋に就職し、営業職として働き始めた。
「営業の仕事を通して、商品はどのような流れでお客様の手元に届くのか、自社の商品のブランディング戦略はどうすべきかなどを学びました。将来的に家業をどのようにプランニングするべきかを考えつつ3年半くらい勤務してから、ワイナリーを継ぐために大阪に戻ってきました」。
金銅さんがワイナリー代表に就任したのは、2005年のこと。金銅さんの父である前代表は若くして亡くなっていたため、母が家業を担っていたが、決して順調な経営とは言い難い状況だった。休業も視野に入れつつなんとか操業していたものの、母が体調を崩したことをきっかけに、金銅さんが予定を早めて大阪に戻ったのだ。
「会社としてはどん底の状態でしたから、逆にプレッシャーなく始めることができました。よい状態で継ぐと、先代を越えなければならないと考えてしまうものです。その点、退路を断たれた状態で帰ってきたので、自分の好きなスタイルで商売ができる環境でした」。
厳しい状況ではあったが、状況をなんとかプラスに捉えて事業に打ち込む決意をしたという金銅さん。河内ワインを生まれ変わらせるために、会社名以外のほぼすべてを一新した。
▶︎河内ワインの再生
「中小規模のワイナリーは、原料確保や生産量の問題から安定流通が難しくなります。そのため、製品を大手小売店に卸すという方向性ではなく、『お客様に来てもらえるワイナリー』をコンセプトに事業の再生を図りました。過去製品は製造を中止し、数年かけて新生・河内ワインの下地を作った感じですね」。
ワイナリーのイメージを一新するブランディングを推し進め、着任してからの4〜5年は設備や企画への投資に当てた。当然、相応の資金が必要になったが、長く事業をおこなってきたため社会的な信用が高く、問題なく融資を受けられた。
金銅さんの類まれなる行動力と実行力で、大きな改革を実践した河内ワイン。施設周りは歴史の重さも兼ね備えつつ美しく姿を変え、魅力あふれるワイナリーへと進化を遂げたのだ。
『河内ワインのぶどう栽培』
続いてのテーマは、河内ワインが扱うぶどうについて。自社ぶどうと契約農家のぶどう両方を使ってワインを醸造している河内ワイン。
自社圃場では、どのようなコンセプトで栽培をおこなっているのか。また、ぶどう畑に関する栽培以外の取り組みについても見ていこう。
▶︎大阪名産のデラウェアを中心としたぶどう栽培
河内ワインの自社圃場の約半分を占めるのは、デラウェアだ。大阪で栽培されるぶどうとしては代表的な品種である。
そのほかに、金銅さんが代表に就任してから植栽をスタートしたヨーロッパ系品種もある。メルロー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなどだ。
「私が大阪に帰ってきたときに、初めてワイン用品種を植えました。近隣のワイナリーさんが手がけている品種を参考にしながら、早生品種を中心に選びましたね。同時期に防除や収穫が可能な品種なら作業が効率的ですし、収穫時期が早い早生品種は秋雨や台風などの影響を受ける前に収穫できるのです。8月下旬までに収穫できる、メルローやシャルドネをメインに栽培しています」。
以前はカベルネ・ソーヴィニヨンなどを植えていたこともあったが、晩熟品種は収穫前に天候の影響を受けやすく、栽培が難しかったために中止した経緯がある。
ぶどうを原料にワインを造るワイナリーでは、原料を確実に確保するため、さまざまな視点でのリスク分散が重要になる。そのため河内ワインでは、自社ぶどうだけにこだわることなく、契約農家から仕入れるぶどうも使う。地元の農家が栽培したぶどうを中心に、他県のぶどうも取り寄せつつ、安定した原料供給を実現しているのだ。
▶︎オリジナルワイン造りを事業化
契約農家のぶどうを使用している河内ワインだが、近年は地域のぶどう農家の離農が進んでいることが大きな懸念点だ。
高齢化が原因で離農する人が多いが、新規就農者は少ないのが大阪の農業の現状でもある。そこで河内ワインでは、耕作放棄地となってしまったぶどう畑を引き継いで、「ワイン造りにチャレンジしたい法人を応援する取り組み」を実施している。
「世の中には、ワイナリーを経営したいわけではなくても、ぶどう栽培をやってみたいと考えている人たちが大勢いらっしゃいます。そこで、企業内の活動としてワイン造りをしたいという法人さんに、ぶどう栽培と収穫をしてもらっているのです。収穫したぶどうでオリジナルワインを造って、買い取っていただいています」。
醸造設備を持たない新規ワイナリー向けに「委託醸造」をおこなっている醸造所は多い。しかし河内ワインが手がけるこの取り組みは、ワイン事業者向けのビジネスである委託醸造とは本質が異なる。
栽培する上での指導や助言はするが、栽培管理を実際におこなうのは、もちろん参加者だ。中でもいちばんの楽しみは収穫作業のようで、企業の従業員の家族も総出で収穫にやってくるそうだ。
オリジナルワインが出来上がると、樽詰めした状態で買い取ってもらう。醸造したワインは企業の周年記念行事で使用したり、得意先にお歳暮として贈ったりと使い方はさまざまだ。
この施策は耕作放棄地の有効活用という点でも効果を発揮するが、実はそのほかにもワイナリーにメリットが大きい側面がある。
ワイン造りを手がける場合、製造したワインを販売して資金を得るまでに数年以上かかるのが一般的だ。その間に資金繰りが難しくなる危険性も大いにあるだろう。
だが、河内ワインが実施しているオリジナルワイン販売の施策では、ぶどう栽培の時点でワインの販売先が決定しており、樽に詰めた時点での買取となる。そのため、資金調達がしやすいという点においても、有効なビジネスモデルだと言えそうだ。
▶︎自社畑の特徴と、栽培管理におけるこだわり
河内ワインの自社圃場では、棚栽培を採用。大阪で昔から栽培されているデラウェアは棚仕立てが基本なのだ。
耕作放棄地を引き継ぐ場合にも、棚が残っていればそのまま活用する。棚の上に雨よけを設置すれば、天候に関係なく作業が可能になるためメリットは大きい。雨よけによって病気も少なくなるうえ、防除の手間も軽減される。また、収量に関しても、棚と垣根は大きく変わりはない。
雨よけを設置した棚は、作業効率の面以外にも利点がある。天候に関係なくワイナリーのイベントが開催でき、お客様にも来てもらいやすくなるからだ。大阪という土地でのぶどう栽培には、あらゆる面で棚栽培が最適だということなのだろう。
▶︎見学担当スタッフがぶどう栽培?
河内ワインでは、自社畑の見学やワイナリー見学、セミナーなどを積極的に開催している。ワインの原料となるぶどうが栽培されている畑や、醸造がおこなわれているワイナリーを実際に見学できるのは、ワイン好きならずともワクワクしてしまう体験だ。
そして、河内ワインのユニークな取り組みのひとつに、見学ツアーを担当するスタッフが自らぶどう栽培を手がけていることが挙げられる。
「河内ワインの見学やセミナーは、『あの人の説明がおもしろかったからまた来ました』と、何度も来てくださるリピートのお客様が多いのです。そのため、見学のリピートが取れるスタッフを積極的に評価しています。ツアー担当スタッフの話術や説明力を向上させるためには、自分で畑作りをした経験をもとに臨場感ある解説をすることが欠かせません」。
畑の管理方法は、担当スタッフに一任しているという。自分の責任で畑を管理することで、こだわりやぶどうの様子をいきいきとお客様に伝えることができるようになることを目指す。
畑の管理方法は個人の裁量に任せられているため、樹の高さや密植度はひとそれぞれ。自分の判断で違う品種に植え替えるスタッフもいるという。
「見学にリピーターがいると、話の内容を変える必要があるでしょう。また、参加者を飽きさせないためには、ライブ感あふれる説明が必要です。実際にこだわりを持ってぶどうを栽培することで、たくさんの人に興味を持っていただける説明ができるようになりますよ」。
細かいことが得意な人はすぐに栽培技術が上達して、クオリティの高いぶどうを作る。ぶどう栽培には性格が出ると考えている金銅さんはスタッフに、よいものを造るために、自分たちにできることを自ら考えてやって欲しいと常に伝えているという。
幸いにも、河内ワインの近隣エリアはデラウェアの一大産地。ぶどう栽培一筋数十年というベテラン農家がたくさんいる環境だ。そのため、やる気のあるスタッフは自ら農家とつながりを持ちに行き、積極的に教えを受けて技術を向上させていく。
また、デラウェア農家とのつながりを強固にするため、河内ワインがおこなっている事業がある。要請に応じて、ワイナリーのスタッフを農家のもとに派遣する人材派遣業だ。
「農作業量は時期によって変動するため、通年での人材は必要ないけれど、スポットで人が欲しいときがあります。その都度人を探すのは難しいですし、新しい人に毎回仕事を教えるのも大変です。そこで、うちの従業員を貸出してお手伝いさせ、お給料をいただく仕組みを整えました。スタッフと農家さんとのつながりもできるため、栽培に関して色々と教えてもらえて一石二鳥です」。
生食用とワイン用は栽培管理に手がかかる時期が違うため、ワイナリーの閑散期にも仕事ができて、ワイナリーとしても安定雇用を生み出せる。
技術向上の為には、社外のコミュニティを持って地域の人と親睦を深めることが大事だと話す金銅さん。ぶどう栽培には技術が必要だが、その技術を得るためには「人とのつながり」が必要不可欠なのだ。
『河内ワインのワイン醸造』
続いては、ワイン醸造に話題を移そう。河内ワインでは、金銅さんを中心に醸造をおこなっている。
金銅さんが目指すのは、「常に自分が納得できるワイン」を造ること。自分が飲んだときに美味しいと思うものでなければ、店頭で自信を持って勧められないからだ。
金銅さんがワイナリーの代表になった際に銘柄をすべて入れ替えたのも、同様の理由から。自分の血が通っていない商品は、売ることができないと考えた。
河内ワインでは、具体的にどのような銘柄を造り上げているのだろうか。詳しく紐解いていきたい。
▶︎目指すのは、自分が納得できるワイン
ワイン造りに携わることになってからというもの、研修を受けたりいくつものワイナリーで学んだりして、技術を積み重ねてきた金銅さん。その中で、次第に自分のカラーを見出してきた。
また、自分が美味しいと思うワインを造っていたら、自然とワインの味わいが変化してきたという。
「40代になった頃から好みが次第に変化してきて、今は甘口のお酒にも興味をもっています。目指す味わいは、やはり自分の舌にあうものですね。私は白ワインが好きで、特に好んで飲むのはシャルドネです。河内ワインのカベルネ・フランもおすすめですよ。赤ワインは、自分が思い描く味にだんだんと近づいてきたと実感しています」。
▶︎ワイン造りにおけるこだわり
ワイン造りをする上でのこだわりは、大きくふたつあると話してくれた金銅さん。ひとつは、7〜9月の仕込みシーズン、金銅さん自身は醸造作業のみに専念すること。
河内ワインでは、金銅さんを含めた数名体制で醸造を担当している。金銅さん以外のスタッフがおこなう作業ももちろんあるが、出来上がりのワインを見据えた方向性の指示や、全体の管理などの核となる部分は金銅さん自身が担う。
「私はワイナリーの建物内に住んでいます。1階が醸造所なので、醸造シーズンには時間を問わず醸造にかかりきりですね。自分で直接ぶどうを見て、完成形を頭にしっかりと描いたうえで醸造を進めたいのです」。
そしてもうひとつのこだわりは、ワイナリーがいつお客様に見られてもいいように、衛生状態を常にキープしておくことだ。設備の維持管理において最も大事にしているのは「サニテーション」、すなわち衛生管理である。河内ワインでは畑の管理についても清潔感を大事にしているが、醸造所の管理も同様だ。
「ワインの味に関してはお客様それぞれに好みがあるので、万人を満足させるものを造ることはどうやっても不可能です。そこで、『スタッフのトーク力』『ホスピタリティ』『清潔感』などを、お客様の満足度向上に直結する要素として重視しているのです。いつでもワイナリーに遊びに来ていただけるよう、常に施設・設備を徹底的に綺麗にしています。まずは見た目を整えることが、お客様に楽しんでいただくために重要です」。
河内ワインが購買層のターゲットとするのは、「ワイナリーにきて、顔を見て買ってくれる人」。どんな造り手が造っているかがわかるワインでありたいと考えているからこそ、ぜひワイナリーに直接来て欲しいと話す。現地で畑や醸造の様子を実際に見て体験したうえで、ワインを買ってほしいと考えているのだ。
「河内ワインのことをきちんと知ったうえでワインを買って頂けたら、それがいちばん嬉しいですね」。
ワイナリーに直接足を運んでもらうことを大切にしているからこそ、河内ワインは設備投資を惜しまない。ワイナリーを居心地良く、快適にするための投資は迷うことなく実施していくのだ。
▶︎「金徳(こんとく)葡萄酒 SERIES」
ここからは、具体的なワイン銘柄の紹介に移っていこう。まずは、フラッグシップワイン「金徳(こんとく)葡萄酒 SERIES」を紹介したい。「金徳」とは創業者の名前を元にした名前で、創業時の屋号だ。
「金徳葡萄酒 SERIES」は、「河内ワインらしさ」をふんだんに詰め込んだワイン。いずれも単一品種で仕込んでおり、ワインを初めて飲む人にもおすすめだ。
レトロな雰囲気が印象的なイラストのエチケットにも注目したい。描かれているのは、大阪と奈良県の県境にある「二上山(にじょうざん)」。河内ワインの自社圃場は、二上山のふもとにある。
シリーズのボトルを並べた時に気付くのは、エチケットに描かれている「空」が違うこと。太陽や虹、月夜など、二上山の上空の様子が銘柄ごとに異なっている。これにはいったい、どんな意味が込められているのだろうか。
「銘柄ごとに、『描いてある時間帯や天気のときに飲むとおいしいワインですよ』という思いを込めています。例えば、月夜を描いた「金徳葡萄酒 メルロー」などの銘柄は夕食に楽しんでほしいですし、太陽を描いた「金徳葡萄酒 ロゼ」などは、日中にバーベキューでカジュアルに楽しめます」。
大阪の百貨店でも取り扱っている「金徳葡萄酒 SERIES」は、河内ワインを知るための1本として飲んでいただきたい銘柄だ。
▶︎「KIEI SERIES」と「KONTOKUYA SERIES」
続いて紹介する「KIEI SERIES」は、「新進気鋭」という言葉からインスピレーションを受けたネーミング。矢絣(やがすり)模様のエチケットが印象的なシリーズで、造り手の遊び心がふんだんに盛り込まれているのが特徴だ。
「『KIEI SERIES』には、『挑戦』の意味を込めています。いつも変わらない味を目指す『金徳葡萄酒 SERIES』とは対照的に、毎年違った挑戦をすることがコンセプトで、常に挑戦を忘れないようにとの思いを込めているのです」。
トライ&エラーを繰り返し、フラッグシップではできない取り組みを実践するシリーズとしての位置付けである「KIEI SERIES」。ヴィンテージによって方向性はさまざまで、自社ぶどうのみでの醸造、瓶内二次発酵、無濾過無調整など、造り手の自由な発想が光る。
また、河内ワインの基本方針としてほかのシリーズは単一品種のワインが多い中、「KIEI SERIES」にはブレンドワインが登場することもあるそうだ。
さらに、「遊び心のあるワインシリーズ」として忘れてはならないのが、5年ごとに醸造する「ANNIVERSARY SERIES」。2024年には創立90周年を迎えるため、新たな「ANNIVERSARY SERIES」がリリースされることだろう。
そして、最後に紹介するのは、トップキュベの「KONTOKUYA SERIES」。樽熟成がメインで採算度外視、クオリティ重視のシリーズだ。
「『KONTOKUYA SERIES』は極端な話、売れなかったら自分たちで飲もうという気持ちで造っています。このシリーズに使うのは、最高な状態のぶどうのみです。また、醸造スケジュールの最後にじっくりと仕込むようにしています」。
「KONTOKUYA SERIES」は品質にもっとも重点を置くため、ぶどうの出来によっては生産されない年もある。造り手のこだわりを目一杯堪能したい贅沢なワインなのだ。
『河内ワインの未来』
最後のテーマは、河内ワインの今後について。これからの河内ワインはどのような道を突き進むのか。
金銅さんが思い描いている、河内ワインの未来の姿について尋ねてみた。
▶︎たくさんのファンを作る
「私は野球が好きで、会社も野球と同じように団体戦だと思っています。個々の力がいかにあっても、チームプレーとして機能しなければ意味がありません。ファンはチームにつくものなので、スタッフみんなでスクラムを組んで、地域の人たちも巻き込みながら面白いことをやっていきたいですね」。
河内ワインでは、「未来のファン」を獲得するための取り組みも実施している。地元の小学生のフィールドワークとして、ワイン造りを体験してもらったのだ。
「地元の小学6年生と一緒に搾汁と瓶詰めをしました。できたワインは8年間保存して、子供たちが20歳になったらプレゼントする予定です」。
▶︎海外進出で得られるもの
地域外への積極進出はしない方向性の河内ワインだが、「海外展開」は別だと話す金銅さん。現時点で、製造している商品の約15%は輸出用が占めており、主に台湾・シンガポール・香港といったアジア圏に出荷している。
海外に行くことは従業員にとっても大きな刺激になる。語学を学ぼうという向上心が生まれ、新しいことにチャレンジする姿勢が芽生えるためだ。
「日本ワインの市場が成長してきた今、国内市場だけでおさまるのではなく、海外に出て行っていろいろな経験をすることが重要だと考えています。うまくいかないことがあっても、『旅の恥は掻き捨て』と言いますし、長い目で見て結果的に成長の糧になればよいのです。失敗談だって、見学ツアーのネタになるでしょう。無駄なことなんてひとつもありませんよ」。
▶︎10年後の河内ワイン 100周年を目指して
2024年に創業90周年を迎える河内ワイン。10年後には、記念すべき100周年が待っている。
10年後の河内ワインに向けて、金銅さんはいくつかの目標を掲げているという。ひとつは自分自身が健康であること。ワイン造りは体力勝負のため、ワイン造りができるだけの健康を保つことが大切なのだ。
ふたつめは醸造での目標。大阪に根付いたデラウェアを使って、新たにどんなことが出来るかを考え、行動に移していく。また、増え続ける耕作放棄地の活用についても引き続き真剣に取り組み、地域貢献を果たす。
今後も継続して企業価値を高めていきたいと話してくれた金銅さん。古きよき趣きを残して伝統を大切にしながら、今できることをしっかりと掘り下げて真摯に進んでいくことで、河内ワインの魅力を未来に繋げていきたいと考えているのだ。
『まとめ』
河内ワインが大切にするのは、ワイナリーを訪れたときに「旅館のようなおもてなし」を感じてもらうこと。金銅さんの心にいつもあるのは、祖父の座右の銘である「商いは飽きさせたらあかんのや」という言葉だ。
「お客様を飽きさせない仕組みを続けることが重要ですし、ワイナリーに来てくれる地域の人たちに楽しんでいただくことも大切だと考えています。目標は、大阪の半分の人に河内ワインのファンになってもらうことです。今後も、地元の皆さんに喜んでいただけるイベントなどを開催していきたいですね」。
ホスピタリティ溢れるおもてなしを体感し、こだわりのワインを味わうために、ぜひ河内ワインを訪れてみてはいかがだろうか。
基本情報
名称 | 河内ワイン |
所在地 | 〒583-0841 大阪府羽曳野市駒ヶ谷1027 |
アクセス | 近鉄南大阪線「駒ヶ谷駅」より徒歩約8分 |
HP | http://www.kawachi-wine.co.jp/ |