『丘の上 幸西ワイナリー』ぶどうを優しく見つめながら「片丘ワイン」の表現を目指す

ワインとぶどうの街、長野県塩尻市。「丘の上 幸西ワイナリー」は、そんな塩尻市の北部に位置する地域「片丘」にある。

片丘はぶどうで有名な塩尻市の中では珍しく、ぶどう栽培がほとんど行われていなかった地域。そんな片丘で「片丘らしい」ワインの表現を目指すのが、丘の上 幸西ワイナリーだ。

絶景が楽しめることで名高い「アルプス展望しののめのみち」沿いの、風光明媚な場所に広がるぶどう畑。丘の上 幸西ワイナリーは、日本アルプスを見渡せる丘の上でぶどうと向き合いながら、ワイン造りに取り組む。

ワイナリー代表の幸西義治さんに、ワイナリーの歩みやワイン造りについて伺った。幸西さんの思いやエピソードに触れることで、塩尻市片丘の豊かな自然に囲まれたワイナリーの魅力を感じていただければ幸いだ。

『塩尻の観光の力になりたい ワイナリー始まりのきっかけ』

丘の上 幸西ワイナリーは、どうしてこの長野県塩尻市で始まったのか。幸西さんはなぜワイン造りを始めるに至ったのか。順を追って紹介していきたい。

▶就職をきっかけに広島から長野へ

広島県出身の幸西さん。就職をきっかけに、長野県塩尻にやってきたのが40年前のことだった。

幸西さんが就職したのは、時計やプリンターなどの精密機器を作る会社。ワインとは全く異なる業界で働いてきた。
今から10年ほど前までは、自分が「ワイン」に携わることになろうとは全く考えていなかったという。

「出身地である広島は日本酒文化。広島にいた時は、「赤玉スイートワイン」くらいしか飲んだことがありませんでした。学生のころも、飲むお酒といえば焼酎が中心でしたね」。
そんな幸西さんが、なぜワイン造りの道を選ぶことになるのだろうか?

幸西さんがワイン造りの世界に踏み込むことになったきっかけは、ふたつの出来事が関係する。
ひとつは幸西さんが「塩尻というワインの一大産地」に住むことになったこと。
もうひとつは「塩尻市観光ワインガイド」にチャレンジしたことだった。

▶塩尻観光ワインガイドへの応募 ワインを知る大きなきっかけに

「ワインを本格的に知ったのは、塩尻にやって来てからです」と幸西さん。
塩尻に来たこと自体が、幸西さんとワインが出会うきっかけになったのだ。

ただし塩尻にやってきた当初は、ナイアガラやコンコードといった生食用ぶどうから造られたワインが主流の時代だった。
広島にいた時代よりもワインに親しむようになったとはいえ、そこまで頻繁にワインを飲んでいた訳ではなかったという。

幸西さんに転機が訪れたのは、今から10年ほど前のこと。妻である美雪さんのすすめで、長野県塩尻市が主催する認定制度「塩尻観光ワインガイド」に応募したのだ。
塩尻観光ワインガイドとは、2011年に発足した塩尻ワイン専門の市民ボランティア。塩尻ワインのPRや、塩尻ワイン関係のイベント手伝いを行う。
「せっかく塩尻に来たのだから」と考え、幸西さんは塩尻観光ワインガイドにチャレンジすることにした。

しかし「塩尻観光ワインガイド」は、誰でも気軽に参加できるボランティア活動ではなかった。塩尻観光ワインガイドに認定されるには、専門のワイン講習とテストを受ける必要があるのだ。
講習で勉強する内容は実に幅広く専門的だった。塩尻市の気候風土からぶどう栽培、ワイン醸造に至るまでさまざまな専門知識を体系的に学習した。

塩尻観光ワインガイドを目指すことで、本格的にワインに触れるようになった幸西さん。応募してからは「ワインをもっと知りたい」と強く思うようになる。思いの強さに比例し、たくさんのワインを飲むようになった。
そして市が主催する講習のなかでも、ワインの面白さに数多く触れることになる。

ワインに関する勉強を重ねるほどに、ワインが持つ奥深さに魅せられることになったのだ。

▶会社員生活を終えワイナリー経営へ

57歳で長年勤めていた会社を早期退職した幸西さん。新しい何かにチャレンジしたい。そんなことを漠然と考える中で浮かび上がってきたのが、「ワイナリー」を造ることだった。
「塩尻に住んでいるからこそ、ワイン造りにチャレンジできるのでは」と幸西さんは考えたのだ。

ワイン造りへの具体的な1歩として、「ワイン生産アカデミー」の受講を決意する。ワイン生産アカデミーとは、長野県が開催しているワイナリー設立支援事業のひとつ。2013年からスタートしている企画で、幸西さんは2014年に参加した。

ワイン生産アカデミーでは、ワイナリー事業に新規参入するための知識や技術に関する講習を半年間受けることができた。
「ワイン生産アカデミーに参加していた人達は熱意にあふれていました。県外からの参加者もいて、皆さんワインを造りたいという強い思いを持っている。そんな人たちのなかで、自分も感化されましたね」。

ワイン生産アカデミーを受講しながら、さらにワイン造りの勉強を続けた幸西さん。より具体的な知識、ワイナリー経営手法などを身につけるため塩尻市の「ワイン大学」を2014年より4年間受講。

また塩尻ワイン大学を受講するのと並行して「里親ワイナリーによる醸造技術研修」も受けた。長野県内のワイナリーで醸造研修が受けられる制度で、半年ほど実地研修が受けられる。
幸西さんは、サントリーインターナショナル塩尻ワイナリーで醸造研修を受けたのだった。

ワイン造りへの勉強に明け暮れた幸西さん。晴れて2015年にはワイン用ぶどうの栽培を開始。本格的にワイン造りをスタートしたのだった。

「ワイン造りは、やってみると分かるのですが『農業』です。酒造りというより、ぶどうを育てる側面が強い」と幸西さん。
ワインはぶどうが7〜8割といわれるように、何よりも大切なのは健全なぶどうを育てることだ。幸西さんの実家は、江戸時代から続く農家だった。だからこそ「農業としてのワイン造り」は自然なイメージで自分になじんだという。

数多くの講習を受けてきた幸西さんだが、実際にぶどうを栽培してみると分からないことだらけだった。毎年、新しい経験や勉強の連続。ぶどう栽培を実践すると、机上の勉強ではカバーできないたくさんのことが学べるという。

必死にぶどう栽培を続け、2018年には委託醸造で最初のワインができた。2019年には果実酒製造免許を取得し、ワイナリーをオープン。自家醸造でのファーストヴィンテージが造られる。

丘の上 幸西ワイナリーは、日本アルプスを望む美しい景色が広がる場所に建てられている。建物はかわいらしい一軒家。畑のすぐ近くにある。
「塩尻市片丘をワイナリーの場所に選んだのは、眺めが素晴らしかったから。元々塩尻の観光の力になればとワイナリーを始めたので、美しい景色が見られる場所であることが大切だったのです」。

塩尻ならではの美しい山々が広がる場所で、少しでも地元の観光の力になればとの思いでワインを造る幸西さん。これからますます、塩尻の魅力を存分に反映させたワインを造っていくことだろう。

『我が子のように見守り、育てる 丘の上 幸西ワイナリーのぶどう』

続いては、丘の上 幸西ワイナリーで栽培するぶどうについて伺った。栽培するぶどう品種は何か、ぶどう畑の特徴や、栽培のこだわりとは。余すところなく紹介していきたい。

▶丘の上 幸西ワイナリーで栽培するぶどう品種と圃場

丘の上 幸西ワイナリーで現在栽培しているぶどうは、全部で5品種だ。赤ぶどうは以下3種類。

  • メルロー
  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • カベルネ・フラン

白ぶどうは次の2種類だ。

  • シャルドネ
  • ソーヴィニヨン・ブラン

最初のぶどうを植樹したのは2015年。つまり2021年で6年目の若木だ。若木から生まれるワインは、フレッシュな質感を特徴とする。

5種類のぶどうを育てる畑は、広さ0.5haほど。ワイン生産量に換算すると、およそ2000リットルになる。この畑を、幸西さん夫妻ふたりで管理している。

▶畑の特徴 片丘ならではの味とは

ぶどうを育てる畑の特徴についても伺った。「塩尻市はぶどう栽培が有名ですが、その中でも片丘地区ではぶどうがほとんど栽培されてきませんでした。
つまりワイナリーがある片丘は、ワインにとって未知数の場所であるといえますね」。

そんな片丘地区は近年、大手ワイナリーの畑がいくつも作られている場所。今後のポテンシャルを感じさせる、今注目のワイン用ぶどう産地なのだ。

ワインの魅力は、なんといってもテロワールの表現。テロワールとは、ぶどう栽培地の土壌や気候など、ワインの味に影響を与える要因のことを指す。ワイン用ぶどう栽培地として比較的新しい片丘では、片丘ならではのテロワールを探っている段階だ。
「片丘でできたぶどうでワインを造り、片丘らしさを判断するということになっていくでしょう。片丘ならではのワインを造れるという面白さを感じています」。

どんな特徴を持つ土地なのか、どんなぶどうやワインになるのかが、まだ誰も分かっていない片丘の畑。丘の上 幸西ワイナリーで生まれるワインが、片丘の味を代弁するワインになっていくことだろう。
今は片丘ならではの味を模索している最中だ。

▶いつでも駆けつけられる近くの畑 栽培のこだわり

丘の上 幸西ワイナリーのぶどう栽培におけるこだわりは、できる限り自然にぶどうを育てること。可能な限り化学農薬の使用を避け、除草剤は使用しない。

ただし、無理に無農薬にするのではなく、状況に応じて柔軟に対応する。日本ならではの高温多湿な気候は、ワイン用ぶどうに病害虫被害をもたらしやすいからだ。無理矢理に薬をゼロにはせず、極力少なくしつつ必要な時に使用することで、健全なぶどうの栽培に努めている。

できる限り自然にぶどうを育てるために行っているのが、丁寧な観察を徹底したぶどう栽培だ。
「しょっちゅう畑に出向いて虫を取ったり、病気が出ていないかを見たりと観察しています。ぶどう栽培は、観察が第一です」。
細かな部分まで観察するからこそ、病気や害虫の被害を未然に防ぐことができる。また、たとえ被害が起こっても、最小限に抑えることができるのだ。

幸西ワイナリーは、ワイナリーと畑が非常に近い位置にある。育てるぶどうを収穫し、すぐにワインをできるという利点は大きい。近いが故に頻繁に畑に出向けるのも嬉しい点だ。

「子供を育てるように栽培しています」と幸西さん。
近くで見守りつつも、手を加えすぎずに育てる。何かあったら駆けつけられるよう、いつも側にいる。ぶどうは幸西さん夫妻にとってかけがえのない存在だ。

▶垣根栽培の理由とこだわり

丘の上 幸西ワイナリーの一面に広がるのは、垣根仕立てで植えられたぶどう。丘の上 幸西ワイナリーでは、棚栽培ではなく垣根栽培でワイン用ぶどうを育てている。

垣根栽培を選ぶ理由は、大きく分けてふたつある。

最初に紹介する理由は、栽培作業がしやすいという点だ。棚栽培は作業量が多く、設備投資も必要になる。
新規参入者にとっては、手を出しにくい栽培方法だといえる。

一方の垣根栽培は、苗の管理や収量の制限がしやすく、初期投資も少ない。棚栽培と比較すると若干湿気が溜まりやすいという難しさはあるものの、日照量も確保でき摘心作業も行いやすい。
結実するぶどうの量も少ないため、凝縮したぶどうができやすいという利点もあるのだ。

垣根栽培を選ぶもうひとつの理由。それは景観上の理由からだ。
「やはり垣根栽培は見た目が美しい。私達は塩尻の観光に寄与したいという思いが強いため、景観にもこだわりたかったのです」。

幸西さんの言葉どおり、なだらかな丘に広がる垣根の畑はなんとも美しい。ヨーロッパのぶどう畑を連想させつつ、どこか日本的な懐かしさも感じさせる光景だ。
垣根の畑は周囲の見晴らしもよく、360度見渡す限り、山々を望むことができる。自然豊かな里山の風景は、塩尻片丘が誇る宝だ。

▶栽培の苦労は終わらない できることをこなしていく

「鳥害が多い点には苦労します」と幸西さん。付近に位置する城跡や竹藪に、大量のムクドリが生息しているのだ。

ぶどうの実がなる季節には、ムクドリの大群によって空が真っ暗になるという。電線にずらっと並び、ぶどうの実を狙うムクドリ。全ての苗にネットをかけないと、1日で実がすべて無くなってしまうほどだ。

ぶどう栽培においては、対自然の苦労が数多い。鳥害以外で実感しているのが、毎年の気候変動にぶどう栽培を適応させる難しさだという。

幸西さんはぶどう栽培を始めて6年だが、その6年の間にも気温の上昇を身をもって感じている。近年は真冬に-10℃以下を記録することも減っている。6月に発生する夕立も増えた。
昔は夕立が起こるのは7月ごろだった。夏が長くなっているのだ。

気温が上がると、害虫が多くなる。特にハチやガの幼虫の被害は年々増えているという。2021年に関してはマイマイガの幼虫が多く発生した。
しかし殺虫剤は使用せず、手で取って対処している。

「もちろん大変ではあります。しかしやるべきことは変わりません。ただ目の前のことにひとつひとつ、しっかりと取り組むのです」。
淡々とした口調には、自然を受け入れワイン造りを行う、幸西さんの決意が感じられる。

ぶどう栽培の苦労は、1度対策をしたら終わりというものではない。毎年違った形でさまざまな苦労が降りかかる。困難が起これば、自分たちができることをまじめにこなす。
幸西さんは穏やかに話すが、休みなく困難に立ち向かうぶどう栽培は想像を絶する大変さだろう。

すべては大切なぶどうをストレスなくのびのびと育てるため。幸西さん夫妻は畑を見回り続けるのだ。

『基本を徹底し実直に造る 丘の上 幸西ワイナリーのワイン』

続いて丘の上 幸西ワイナリーで醸造するワインについての話題に入ろう。丘の上 幸西ワイナリーが自家醸造を始めたのは2019年。
2021年現在、2回目のヴィンテージである2020年のワインがリリースされているところだ。

丘の上 幸西ワイナリーは、何にこだわりどんなワインを造っているのだろうか。ワイナリーの思いや努力、造るワインについて迫っていこう。

▶基本の作業をしっかりと 醸造のこだわり

丘の上 幸西ワイナリーのワイン醸造について、幸西さんがこだわりを持っている部分や、目指しているワインについての話を伺った。

「まずは研修で教えてもらったことを忠実に守り、美味しいワインを安定して造っていくことが大切だと考えます」。

幸西さんが研修で学んだ醸造のポイントは、実にシンプルな内容。
「よいぶどうを使う、つまりよいぶどうを育てること。そして設備を常にきれいにしておくこと。発酵の温度管理を徹底すること」という3つだ。
シンプルだからこそ突き詰めるほど深い内容であり、徹底するには、たゆまぬ努力が必要になる。

幸西さんは、まずこの基本3箇条を愚直に守りたいと話す。そのため畑仕事の7割は草刈りやぶどう観察に充てる。醸造作業の7割は、タンクを磨いて施設を掃除する。
そして美しく磨かれたタンクにぶどうを入れ、温度管理をしっかりと行っているのだ。

「もちろん、基礎を超えた次なるレベルを目指しています。しかし基本の徹底ができてこそ、次のレベルがあると思うのです」。
幸西さんの誠実さと努力を惜しまない強さが、答えの端々に表れる。

基本に忠実に、愚直にワインを造る中で、自分なりのこだわりや「こうしたい」という思いが出てくるのだろう。
「10年やっても10回しかできない」と話す幸西さんは、どこか寂しそうだ。

よいものを造りたいという、ワイン造りへの思いや探究心は強くなるばかり。来年のワイン、再来年のワインはどのような出来になるのだろうか。丘の上 幸西ワイナリーが造るワインの進化や成長から目が離せない。

▶品種と熟成による違いを楽しんで 丘の上 幸西ワイナリーのワイン

丘の上 幸西ワイナリーのワインは、ぶどう品種単体からなる5種類のワインを基本としている。基本があるうえに、「樽かステンレスか」という熟成方法の違いや「ブレンド」による違いによって、バリエーション豊かなワインが派生していく。

2020年ヴィンテージのワイン銘柄について紹介していこう。2020年のワインは、既に4銘柄がリリースされている。

ほとんどが品種単体のワインだが、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランは、ブレンドして醸造した。
ワインの名前は「カベルネソーヴィニヨン/カベルネフラン2020椿」だ。

ブレンドすることで、まろやかな飲みやすさが生まれているのが特徴だ。そしてワインの名前に使われている「椿」は、2020年に生まれた幸西さんのお孫さんの名前から付けられた。

また2020年ヴィンテージのワインは、2銘柄が新たに2021年秋にリリースされる予定だ。新たなワインは、樽熟成の「メルロー」と「シャルドネ」。
樽香の付いたワインが好きであれば、外せない銘柄になるだろう。

ワインは嗜好品のため「これがおすすめ」という銘柄はないという幸西さん。人それぞれの好みに合ったものを選んで欲しいという。

例えばしっかりとしたボディのワインが好きなら、メルローとシャルドネがおすすめだ。酸味のあるワインが好きならば、2020年の白ワインがよい。レモンを添えるような食事との相性が抜群だという。
「食事によってワイン自体の味が変わる点も面白いところです。色々試してみてもらえると嬉しいですね」。

幸西さんは、自分たちが造るワインについて「気軽に楽しんで欲しい」と話す。まずは地域の方に、気楽に飲んでもらうこと。そして、シンプルに「美味しい」と感じてもらうことが幸西さんの喜びだ。

▶たくさんの人の力で生まれるワイン

「丘の上 幸西ワイナリーのワインは、たくさんの人に助けられてできているワインです」と幸西さんはいう。夫婦2人だけではなく、知り合いや友人の力を借りながらワイン造りをしているというのだ。

人の力を借りたもののひとつとして、「ワインのエチケット」がある。丘の上 幸西ワイナリーのエチケット(ワインのラベル)は、幸西さんが勤めていた会社でデザイナーをしている人物が考案してくれたデザインなのだ。

エチケットに描かれた四角い図形は、ワイナリーの「ぶどう畑」の区画を表現している。ワインに使用されている品種が植えられている部分は色が付けられており「畑のどのエリアでぶどうが育っているのか」を想像させる粋なデザインだ。ワイナリーのロゴも考えてくれたのだとか。
「デザイン料は造ったワインで払いました。本当にありがたい限りです」。

エチケットデザイン以外にも、収穫や仕込みなどの作業で、多くの人に力を借りているという。特に収穫は、朝から晩まで行う過酷な作業。
そんな中、会社員時代の知り合いが駆けつけてくれるという。

一緒に収穫をしてくれるお客様を募集したいと考えたこともあるそうだが、収穫は自然相手であり日程調整が難しかった。
天候やぶどうの熟し具合によって収穫日がずれ込むことがあるため、前もって予定することができないからだ。

しかし2020年の収穫では、たまたま観光に来た方が「収穫をやる時にまた来ます」と声をかけてくれた。
そして収穫の時に知らせると、実際に参加してくれたのだ。多くの人に助けられてワイン造りが続けられているという。
幸西さんの人柄や挑戦に心を動かされ、たくさんの人が手伝いたいと集まってくるのだろう。

『片丘らしいワインを目指したい 将来の展望』

最後に伺ったのは、丘の上 幸西ワイナリーが目指す未来について。これから挑戦してみたいことや、目指していくワイナリー像について話していただいた。

幸西さんが目指すのは「片丘のワインとはこういうものだ」といえるワイン造りをすることだ。片丘らしさをワインで追求し、表現できるワイン造りをしていきたいと決意を話す。

「ワイン造りは千差万別で、やりたいこと全てをやり尽くすことはできません。無限にあるワイン造りの中から、自分が納得できる『これ』というものをみつけたいですね」。
幸西さんは静かに、しかしはっきりとワイン造りへの思いを話してくれた。

丘の上 幸西ワイナリーのワイン造りは、まだ始まったばかりだ。ワイナリーだけでなく、ぶどうの樹齢も若い。
「樹齢を重ねていくぶどうからできるワインも楽しみです」。
造り手自らが、ぶどうの成長や年々のワイン造りの未来を楽しんでいる。丘の上 幸西ワイナリーは「ワイン造りができること」に対する、希望に満ちあふれたワイナリーだ。

『まとめ』

丘の上 幸西ワイナリーは、夫婦ふたりがまるで我が子を育てるようにぶどうを見守るワイナリー。小さなワイナリーだが、ぶどうに対する愛情や塩尻のワイン産業に協力したいという思いの深さが感じられる。

丘の上 幸西ワイナリーに行けば、塩尻市が必ず好きになる。景色の美しさと美味しい空気、豊かな旨味を持つワインのマリアージュに心を動かされるはずだ。

ぜひワイナリーまで実際に足を運んでいただきたい。そしてぶどう畑に囲まれながら、大自然の中で土地のワインを楽しんで欲しい。
「ここに来て、本当によかった」と、心の底から感動できることだろう。

基本情報

名称丘の上 幸西ワイナリー
所在地〒399-0711
長野県塩尻市片丘9965−6
アクセス【電車】
塩尻駅から車で10分
【車】
塩尻ICから車で5分
HPhttps://r.goope.jp/kounishi-wine

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