『Cave d’Eclat』「農業」×「ワイン」で日本ワイン業界をもっと元気に

北海道余市郡余市町にある「Cave d’Eclat(カーヴ・デクラ)」は、ぶどう栽培を始めるまではソムリエとして活動していた出蔵哲夫さんが2016年から始めたぶどう畑だ。

人の手は極力加えず、自然なぶどう栽培をおこなっているCave d’Eclat。委託醸造しているワインは、ぶどうそのもののポテンシャルをしっかりと引き出した造りだ。

Cave d’Eclatは、ボランティアの人たちの力も借りて、楽しくぶどう栽培とワイン醸造をおこなっているのが特徴。ワイン・ラヴァーのみならず、より多くの人にワインの楽しさを分かち合おうとする姿勢こそが、Cave d’Eclatの本質なのだ。

なぜ出蔵さんは、北海道でのぶどう栽培をスタートさせたのか。また、Cave d’Eclatのワイン造りのこだわりとは。ワイナリーの歴史と、ぶどう栽培・ワイン醸造のこだわり、そして今後の展望までを広く紹介していきたい。

『Cave d’Eclatが誕生するまで ワインをもっと多くの人に』

Cave d’Eclatの代表である出蔵さんは、17年ほどにわたって飲食店に勤務していた。ソムリエとして、日本におけるワインの歴史やブームの移り変わりを目の当たりにしてきたのだ。

そんな出蔵さんは、どんなきっかけで自らワイン造りをすることになったのだろうか。Cave d’Eclatが誕生するまでの物語をたどっていこう。

▶︎ワインに関する勉強に明け暮れ、日本ワインに魅了される

北海道出身の出蔵さんが最初に就職したのは、札幌にあるフレンチレストラン。その後は上京し、ソムリエの田崎真也氏がオーナーを務めるレストランに勤務した。

「上京するまではサービス全般を担当していました。上京後は、ワインの知識を得るために奮闘しましたね。世界的なソムリエである田崎さんの元では、レベルの高いワインの知識が必要とされました。日本で造られるワインについて勉強するようになったのも、田崎さんの元で働き始めてからのことです」。

当時はまだ日本ワインを扱うフレンチはほとんどなく、日本で造られているワインについて深く知るために、生産地に通うようになった出蔵さん。出向いたのは主に山梨県で、2007年頃から数年かけて100件近くものワイナリーを訪ね歩いたそうだ。

ちなみに、国税庁によって「日本ワイン」が定義づけられたのは2018年のこと。国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒だけが「日本ワイン」を名乗ることができる。

「当時の日本は、日本産の原料を使用した本格的なワイン醸造をおこなっているワイナリーが、まだ少なかった時代です。最初の1年は山梨のワイナリーを巡って、『地元産のぶどうでワイン造り』をしているワイナリーを探しました」。

自分自身の学びのために始めたワイナリー巡りだったが、出蔵さんの思いは徐々に変化していく。素晴らしい日本ワインの造り手を、もっと世の中に広めたいとの考えが芽生えたのだ。

「行く先々で、日本ワインを愛する同志に出会う機会も増えていきました。試飲カウンターで隣になった人に声をかけて仲良くなり、おすすめワイナリーの情報を教えてもらったりしましたね。その頃に出会った仲間と意気投合し、『日本ワイン振興ネットワーク』という団体を結成しました。日本ワインを学べる場所を造りたいと考えて立ち上げた団体です」。

▶︎日本ワイン振興ネットワークの活動

「日本ワインの勉強」からスタートし、「日本ワインの普及活動」の道へと舵を切った出蔵さん。「日本ワイン振興ネットワーク」は、出蔵さんや東京のワインショップ「カルタ・デイ・ヴィーニ」(2024年2月末に閉業)のオーナー・松本さんなど数名が中心となって「日本ワインのよさを広めること」を目的に立ち上げた。結成した2010年頃は、ちょうど日本ワインが盛り上がりを見せてきたタイミングでもあった。

「当時は日本ワインについて系統立てて学べる場所もありませんでした。そのため、自分たちが中心となって日本ワインを広めたいと思い立ったのです。まず、普段は海外のワインを飲む人たちをターゲットに、日本ワインのよさを知ってもらうためのイベントやセミナーを開催しました」。

「日本ワイン振興ネットワーク」として活動に携わっていたのは、およそ2年ほど。その間に、日本ワインの知名度はぐんぐん上昇。その後、出蔵さんは日本ワイン振興ネットワークの活動にひとつの区切りを感じ始めたという。

「もともとワイン好きの方たちに、日本ワインが注目される時代になってきました。ある程度の知名度を獲得したので、次の段階へと進むことにしたのです。『農業』と『ワイン』の組み合わせで、普段はワインを飲まない層にワインを知ってもらう活動をしようと考えました」。

▶︎「ワイン」×「農業」の力を信じて 日本中にワインを広めるために

どうしたらより多くの人にワインを広めることができるだろうかと考えてたどり着いた答えが、「農業」というキーワード。普段お酒を飲まない人にも、いかにワインとの接点を持ってもらうかということがポイントだった。

「お酒を飲まない人がワインに触れるひとつの方法として、『農業』というワードに辿り着きました。ぶどう栽培とワイン醸造を通じてワインを知ってもらおうというわけです。当時は、アグリ・ツーリズムも流行り始めていました。自分が栽培に参加したぶどうで造ったワインなら、飲んでみたいと思ってもらえるはずだと考えて、就農を決意したのです」。

ワインに詳しいとはいっても、ぶどう栽培をした経験はなかった出蔵さん。就農に対しての不安はなかったのだろうか。

「不安感や危機感はほとんどありませんでしたね。日本ワインを広めるために、自分にはなにができるのかを考えていたら、自然と体が動き出していた感じです」。

若者のアルコール離れが進み、かつてワイン好きだった層は高齢化で飲酒量が大きく減少していることに危機感を持っていた。ワインを飲む人の裾野を広げなければ、日本のワイン業界の未来は先細ってしまう。

「1995年に田崎真也さんがソムリエとして世界一になったことで、ワインはやっと日本人にとって身近な存在になってきはじめました。しかし、それでもなお、ワインは一部の人のみが楽しむお酒にとどまっていたのです。そのため、ワインをもっとオープンな存在にするべきだと考えました」。

たくさんの人に、ワインが身近なお酒だと感じてもらうことを考えた際に、もっとも適任なのは誰だろうか。ワインに近い場所で働いた経験が長く、そのうえ消費者の立場にも近い自分しかいないのではないか。出蔵さんを突き動かしたのは、日本のワインの流れを間近で見ていた者としてのそんな使命感だったのだ。

『Cave d’Eclatのぶどう栽培』

講師の立場から、栽培・醸造へと舵を切った出蔵さん。2014年から2年間の研修期間を経て、2016年に畑を購入した。

Cave d’Eclatの自社畑の特徴や、ぶどう栽培のこだわりについて紹介していこう。

▶︎畑との運命的な出会い

まずは、自社畑との出会いについて紹介しよう。北海道で自社畑を探していたが、なかなかピンとくる土地が見つからなかったため、さまざまな場所を訪れて実際に土地を見て回っていた。ある日、余市で下見をしていたときに、たまたま出会った地元の農家から、畑を買わないかと声をかけられたのだ。果樹栽培に使っていた自分の畑を紹介してくれるということだった。

「声を掛けてもらったのは本当に偶然でした。しかも、私が求めていた条件にマッチする畑だったのです。売り主の息子さんが畑を継がないことがちょうど決まったばかりだったそうで、私にとっては願ってもないご提案でした」。

無事に自社畑を取得することはできた。だが、物事はなかなかスムーズに進まない。なんとワイナリー設立ブームと時期が重なったため、苗木の確保が困難であることが判明したのだ。ぶどうの苗木の需要が一気に増えたため、注文しても入手できるまでに数年はかかるということだった。

その後、なんとか少しずつ苗木を買い集め、5年ほどかけてやっと畑の一区画が埋まったという。慎重になりすぎて出遅れてしまった、と出蔵さんは苦笑する。

「土地を決める前に品種を決めてしまうことはできませんでしたから、今となってはよかったと思っています。結果的には、自分が作りたかったぶどうが栽培できる、思い通りの環境が手に入りました」。

▶︎畑の特徴と栽培品種

続いては、栽培している品種や自社畑の環境など、Cave d’Eclatのぶどう栽培について、より具体的な内容にフォーカスしていきたい。

Cave d’Eclatで栽培しているメインの品種はピノ・ノワールとシャルドネだ。その他に、メルローとゲヴュルツトラミネールも少量栽培している。

Cave d’Eclatで栽培されるぶどうは出蔵さんが作りたかった品種。ブルゴーニュワインの余韻と酸を愛する出蔵さんにとって、ピノ・ノワールやシャルドネは当然ともいえる選択だった。

「せっかくぶどうを一から植えるのですから、自分の好きなぶどうにしようと考えました。フランス系品種の栽培に適する畑を手に入れることができたのは幸いでしたね。自社畑は風通しが良好で、化学肥料や農薬を使わなくてもうまく育つ環境です」。

畑の条件で最も大切な要素は「風通し」だと言う。ぶどうの病気のおもな原因は、湿度や空気の滞留にある。化学肥料や農薬を使えばどのような場所でもぶどう栽培自体は可能だが、自然に近い環境で育てるとなると、風通しのよさが必要不可欠な要素になってくるのだ。

Cave d’Eclatの畑は常に南西の風が流れる場所にある。谷あいに位置するので、海に向かう風の通り道になっているのだ。急斜面にあるため水はけもよく、自然な環境でもしっかりと育つ環境が整っている。

▶︎Cave d’Eclat栽培のこだわり

土地のよさを生かしたぶどう栽培が、Cave d’Eclatの魅力だ。一般的な化学農薬等は使用せず有機の農薬を少量に抑え、可能な限りナチュラルな環境での栽培管理を実践している。

「偏った成長促進や殺菌・殺虫は自然界のバランスを崩すので、できるだけ使いたくないですね。小規模で栽培する農家ならではのこだわりです」。

出蔵さんが考えているのは、ぶどう栽培で自然をいかに表現するかということ。ヴィンテージやエリアならではのアイデンティティをワインに宿すため、つぶさな観察と丁寧な作業で、健全なぶどうを育てているのだ。

『Cave d’Eclatのワイン醸造』

Cave d’Eclatのワインは野生酵母で発酵させている。また、亜硫酸も必要最低限のみ使用。そのため、ワインは体にすっと浸透する「優しい液体」となり、多くの人に愛されている。

出蔵さんはどんな思いで、 なにを目指してワインを造っているのか。醸造のこだわりと、おすすめの銘柄を紹介していこう。

▶︎目指すワイン像は「クリーン・アンド・ナチュラル」

Cave d’Eclatが目指すワインは、「クリーン・アンド・ナチュラル」なスタイルだ。人工的な質感がなく、親しみやすい味わいを求めているという。「ぶどうが行きたい方向に後押しするのが自分の仕事」だと、出蔵さんは語る。

「Cave d’Eclatでは、野生酵母で発酵をおこなっています。培養酵母で造ったワインが嫌いなわけではないのですが、培養酵母を使うと、どこにでもある味になりやすいのは事実だと思います。野生酵母を使って自然な造りにことで、無理なく体に染み込むワインになるのです。普段ワインを飲まない人にも好かれやすいことを経験的にも感じています」。

出蔵さんがワイン造りを始めた目的は「ワインの裾野を広げること」にある。ワイン造りにおいても、出蔵さんの目的と思想が色濃く表れているのだ。

▶︎委託醸造ならではのエピソード 東京での醸造を初体験

Cave d’Eclatは、委託醸造でワインを造っている。委託醸造ならではの苦労や面白いエピソードを紹介しよう。2019年の醸造に関するエピソードだ。

「2019年は北海道全域でぶどうが豊作でした。通常は春先に委託先を決めているのですが、豊作すぎてタンクの空きがなくなってしまい、委託できなくなってしまいました」。

北海道はどの地域も豊作だったため、道内のほかのワイナリーに尋ねても、返ってくるのは「タンクは余っていない」という言葉。困った出蔵さんは、逆転の発想に打って出る。道外のワイナリーに委託醸造できないかと考えたのだ。

委託醸造させてほしいとお願いした先は、以前から懇意にしていただいていたという、東京都にあるワイナリー。練馬区・大泉学園の「東京ワイナリー」と、江東区・清澄白河の「清澄白河 フジマル醸造所」だ。

「収穫したぶどうを宅急便で東京に送り、私は飛行機で移動して東京ワイナリーで仕込みました。東京と北海道では気温に大きな差があるので、今までにない面白い体験でしたね」。

北海道における収穫時期の気温は10度ほどに低下するが、東京はまだ25度もあった。半袖の服装で仕込むのは初めての経験だった。

また、テクニカルな面でも違いがあった。大きな違いを感じたのは、「マロラクティック発酵」という醸造工程についてだ。マロラクティック発酵とは、乳酸菌の力を使って、酸味を和らげる醸造工程である。

マロラクティック発酵では乳酸菌を働かせる必要があるため、ある程度の気温が必要となる。そのため、北海道でマロラクティック発酵が始まるのは、雪が溶けて気温が上がる5月頃から。ゆっくりと乳酸菌が動き出し、7〜8月にかけて完了する。

一方、東京の場合にはマロラクティック発酵はアルコール発酵の直後から始まった。翌年の1月にはマロラクティック発酵の工程が終わるため、北海道との違いに驚いたという。続く2020年も、同じく都内のワイナリーに委託した。

▶︎2022年の委託醸造と今後の展望

続いて、2022年の委託醸造に関するエピソードも紹介したい。2022年も北海道はぶどうが豊作だったそうだが、委託醸造は滞りなく進んだのだろうか?

「2022年も豊作だったので、1t分のぶどうを仕込むためのタンクが足りないと委託先に言われてしまい困っていたところ、北海道上川郡東川町の『雪川醸造』さんに受け入れてもら得ることになり助かりました」。

Cave d’Eclatから雪川醸造までは、300kmほどの距離がある。出蔵さんは4時間かけてぶどうを運び、雪川醸造で仕込みをおこなった。

委託醸造は、委託先を決めてスケジュール調整必要があり、せっかく決めても急なスケジュール変更のおそれもある。想定通りにいかず、ヒヤヒヤすることも多いのだ。そのため、近いうちに自分の醸造所を造りたいと出蔵さんは話してくれた。

「後回しになっていましたが、そろそろ自社醸造所の建設を進めたいと思っています。タンクが足りないというトラブル対応も不要になりますし、自分の好む機材を使えるというメリットもあります」。

委託醸造から自家醸造になれば、出蔵さんの表現の幅はさらに広がるだろう。自社醸造所の建設が非常に楽しみだ。

▶︎手作業にこだわったワイン醸造

Cave d’Eclatでは、「手作業」を大切にしたワイン造りをしている。収穫後にぶどうの粒を梗から外す「除梗」は手作業、「破砕」は足踏みでおこなう。機械を使えばあっという間に終わる作業であっても、手間をかけ愛情を込めて実施しているのが特徴だ。

「作業を手伝ってくれる人を募って、みんなでワイワイと作業しています。収穫や仕込みは初めての方は、皆さん感動してくれますよ。畑での作業や醸造に携わってもらうと、ワインに興味を持って好きになってくださるようです」。

ワインの魅力をより多くの人に伝えたいという、出蔵さんの一貫したテーマを強く感じられる、Cave d’Eclatならではの醸造のこだわりだ。

▶︎さまざまなシーンで楽しんでもらえるワインでありたい

出蔵さんの望みは、「クリスマスや誕生日以外にもワインを楽しんでもらうこと」。また、親族が集合する正月などに開けるお酒として自分のワインを選んでくれたら嬉しいと話してくれた。

あらゆる年代の人、かつワインが初めての人にもぴったりなCave d’Eclatの銘柄をひとつ紹介しよう。

名前は「PACS(パックス) 2021」。アメリカ系品種である「ナイヤガラ」と、フランス系品種である「ピノ・ノワール」をブレンドした、今までにない味わいを楽しめるワインだ。キュートで淡いピンクが魅力的な微発泡のロゼである。

「普通は混ぜることのないふたつの品種をあえて一緒にした、面白いワインになっています。名前の『PACS』にも、普段交わらないものが交わる可能性への思いを込めました」。

「PACS」とは、フランスのパートナーシップ制度の略称だ。「新しい幸せのかたち」をイメージしてワインの名前に採用したという。エチケットに描かれているのは「滅するもの」という意味を持つエジプト神話の神様で、既存の概念を「壊す」という意味が込められている。また、左右で色が違う瞳は、ナイヤガラとピノ・ノワールを表現したものだ。

「PACS」の香りや味わいも紹介したい。まず最初に感じるのは、ナイヤガラの甘い香りだ。生食用ぶどうの香りがするため、ワインを飲まない人にとっても親しみやすさを覚えるだろう。そして、味わいの中盤や後半を支えるのは、ピノ・ノワールの風味。ピノ・ノワール特有のふくよかさと、酸が続く絶妙なバランスが心地よい。

普段ワインを飲まない人も、普段からワインに親しんでいる人も、どちらも満足させられる味わいに仕上がっているのだ。

「ピノ・ノワールの要素が感じられるため、ライトな前菜から白身のお肉まで、幅広く合わせることができます。特におすすめなのは、お寿司との組み合わせですね。生食用品種は魚介とワインにありがちな生臭みが出ないので、安心してペアリングを楽しめます」。

Cave d’Eclatのワインは、オンラインショップではすぐに完売してしまう。「PACS」を始めとした銘柄を楽しみたい場合、2022年ヴィンテージが2024年春に全国の店頭に並ぶ予定とのことなので、楽しみに待ちたい。

『2024年のぶどう栽培とワイン醸造』

最後に見ていくのは、2024年以降の目標について。Cave d’Eclatが今後、ぶどう栽培やワイン醸造で取り組みたいことを、具体的に紹介していきたい。

▶︎収量アップを目指す

まずは、ぶどう栽培に関する目標から見ていこう。出蔵さんが掲げるのは、自社畑の収量を増やすこと。必要最低限の防除を適切に実施しながら、安定的な収穫を目指す。

「今までは、ほぼ無農薬で栽培してきたので、年ごとの収量にムラがありました。普通に農薬を使っている畑と比較すると、10分の1ほどしか収穫できていない計算です。今後も薬を使いすぎることはしませんが、安定生産のためにも収量を確保することは大切です。2024年は収量アップを目指していきます」。

特に意識するのは、病気と害虫への対策だ。つぶさに観察して早めに対処することで、厳しく栽培管理をおこなっていく。

収量の増加と安定的な収穫が実現できればワインの生産量が増加するため、Cave d’Eclatのワインを手に入れるチャンスが増えることだろう。

▶︎コンクリートタンクでのワイン醸造

2024年に自社醸造所の完成を目指しているCave d’Eclat。出蔵さんは、自分の醸造所でどんなワイン造りを実現したいと考えているのだろうか。

「コンクリートタンクで造るワインを増やしたいですね。自分の醸造所にはコンクリートタンクを入れようと思っています。タンクの材質によって酸素透過率が異なるので、ワインの出来上がりが大きく変わります。酸素透過率が高いほど『開けたてはまろやかだが、早飲み向きのワイン』、低いほど『開けたては硬く長期熟成できるワイン』になりますよ」。

委託醸造では主にプラスチックタンクを使っていたため、長期熟成には向かないワインが中心だった。コンクリートタンクならほどよく酸素を通しつつ熟成も可能な仕上がりになるだろう。

「コンクリートタンクは昔から使われていましたが、手入れが大変なので次第に使われなくなっていった歴史があります。しかし、フランスの老舗ワイナリーなどでも、『原点回帰』として使用されることが増えているようです。コンクリートタンクで醸造すると味わい深いワインができるので活用していきたいですね」。

『まとめ』

日本のワイン業界の未来を考え、ひとつずつ着実に行動してきた出蔵さん。親しみやすい味わいを目指したワイン造りからは、「ワインを飲む人の裾野を広げたい」という強い思いが感じられる。

Cave d’Eclatのワインを購入できる場所は限られるが、余市で開催されるワイン関連のイベントなどに出店していることもあるので、北海道を訪れた際にはぜひ足を運んでみるとよいだろう。

自社醸造所のオープンを控えたCave d’Eclatの今後の活躍にも、引き続き注目していきたい。

基本情報

名称Cave d’Eclat(カーヴ・デクラ)
所在地〒046-0002
北海道余市町登町893
アクセスhttps://maps.app.goo.gl/N3uSTz2sKWqo7hcv7

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