『スプリングワイン』山梨県甲府市に誕生!地元愛あふれる、まちなかワイナリー

山梨県甲府市では、古くからぶどう栽培がおこなわれている。また、約150年前に日本で初めて国産ワインを造ったとの記録があり、「日本ワイン発祥の地」と呼ばれているのだ。そんな甲府市の、甲府駅にほど近い商店街に自社醸造所をオープン予定なのが、今回紹介する「スプリングワイン」。

老舗ワイナリーが多く、ぶどう畑に隣接した醸造所でワイン造りをおこなうのが一般的な山梨では、異色とも言える存在だ。

スプリングワインというワイナリー名は、「湧き出す」「はじける・はずむ」という意味を持つ英語の「SPRING」に由来。スプリングワインのワインが、飲み手の幸せの源泉になるようにとの想いが込められている。

スプリングワインはなぜ、甲府市でアーバンワイナリーを目指すのか。また、どんな思いでぶどう栽培とワイン造りをおこなっているのだろうか。

ワイナリーを運営する佐野いずみさん・佐野哲也さん夫婦に、これまでたどってきた道のりと、ワインづくりにかける思いを伺ったので詳しく紹介していきたい。

『スプリングワインの誕生まで』

スプリングワインを設立した佐野さん夫婦はふたり共に、甲府市の職員として勤務してきた経歴を持つ。

夫婦はなぜ、公務員という仕事を手放して、ワイン造りの道に進むことにしたのだろうか。また、どのような経緯でワイナリーを立ち上げたのだろうか。スプリングワインの誕生のきっかけを紐解いていきたい。

▶︎ワインと農業に魅せられて

甲府市で生まれ育ち、甲府市役所に就職したいずみさん。野菜ソムリエの資格取得をきっかけに野菜と果物への興味が深まり、次第に、ワインや農業にも関心を持つようになったそうだ。

ワインの美味しさに感動し、より深くワインを知りたいと思うようになったが、その時点ではまだ、仕事を続けながら好きなことを学び続けていけばよいと考えていた。

しかし、ワインの奥深さに触れたいずみさんが、よりディープな世界に足を踏み入れるまでに長くはかからなかった。ワインの知識を身に着けたいとスクールに通い、日本ソムリエ協会の公式資格「ワインエキスパート」資格も取得したのだ。

「ワインの知識をつけていくうちに、ますますワインに対する思いが大きくなっていきました。そして、せっかく日本ワインの銘醸地と呼ばれる山梨にいるのだから、ワインに関連する仕事をしたいと思うようになっていったのです」。

「ぶどう栽培ができる土地は周囲にたくさんあるので、努力さえすれば、オリジナルのワインを造れるのでは無いかという思いが、自分の中でみるみる大きくなりました」。

仕事を辞めて、本格的にワイン造りを志そうと決意したのは、いずみさんが45歳になったときだった。

「一度きりの人生ですから、自分のしたいことを仕事にしようと決意したのです。みんなに喜んでもらえるような仕事をしたいという気持ちもありました」。

いずみさんが夢に向かって動き出したのは、2018年のことだった。

▶︎ものづくりへの興味から、就農を決意

いずみさんの夫である佐野哲也さんも、ぶどう栽培に携わっている。彼もまた、以前は甲府市役所に勤務していた。

公務員時代の哲也さんは農業関連の部署に所属していたこともあり、農家の人との関わりがあり、甲府の農地の状況も仕事柄よく把握していたそうだ。

「ものづくりにはもともと興味があり、仕事にしたいと漠然と考えてはいました。私にとって農業は身近な存在だったので、いつか自分も作物を栽培してみたいという考えも持っていたのです。しかし、ただなんとなく憧れてのんびりと構えていたら、どんどん年を取っていってしまいます。定年まで待っていたら体力も気力もないかもしれないので、思い切って就農しました」。

2016年に退職した哲也さんは、いずみさんよりも一足先に農業の道に入った。山梨県が管轄する専門学校農林大学校の職業訓練を受けて、基本的な理論から農業機械の操作・整備方法などを習得。また、農家での農業実習をとおして、現場で必要な基礎も学んだ。

お互いの得意分野を生かしながら、力をあわせてぶどう栽培とワイン造りに取り組んでいる佐野さん夫婦。

「ひとりだったら心細いこともありますが、ふたりなら苦労も半減します。どんなことでも一緒に楽しんで、乗り越えていける気がしています。ぶどう栽培はたしかに大変ですが、四季折々の自然の中の作業はとても楽しいですよ」。

ふたりが紡ぐ物語は、まだ始まったばかり。スプリングワインの未来にこれからどんなストーリーが描かれていくのか、期待がふくらむ。

『気候を生かしたぶどう栽培』

続いて紹介するのは、スプリングワインのぶどう栽培について。

スプリングワインでは、異なるエリアにあるふたつの畑でぶどうを栽培している。ひとつは北杜市明野町にある70aの畑。もうひとつは、甲斐市双葉地区にある25aの畑だ。

それぞれの畑で栽培を始めた経緯と、栽培する品種を見ていこう。

▶︎ふたつの畑でおこなうぶどう栽培

北杜市明野町にある自社畑は、いずみさんの親戚から借り受けたものだ。栽培を開始したのは2020年で、栽培している以下の品種はすべて新たに植栽した。

  • 甲州
  • マスカット・ベーリーA
  • シャルドネ
  • メルロー

また、甲斐市宇津谷の双葉地区の畑は、2021年に管理をスタート。いずみさんと哲也さんのぶどう栽培の師匠で、醸造ブドウ生産・栽培コンサルタントの「農業法人アイ・ヴァインズ(i-vines)」代表・池川仁氏が管理していた畑だ。

「池川さんが10年間管理していた畑を引き継ぐことになりました。すでに甲州とマスカット・ベーリーAが植えられていて収穫できる状態だったので、非常にありがたかったですね」。

スプリングワインでは、管理するふたつの畑の特性を生かしながら、それぞれの気候に適したぶどう品種を栽培している。

▶︎品種選定の理由と思い

甲州とマスカット・ベーリーAのほか、シャルドネとメルローも栽培しているスプリングワイン。なぜそれらの品種を選んだのだろうか。スプリングワインで栽培している品種を選定した理由について尋ねてみた。

「日本固有の品種である甲州とマスカット・ベーリーAは、山梨でワイン造りをする以上、絶対に外せません。先人たちへのリスペクトも込めて大切にしたい品種ですね。栽培の歴史が長いということは、この土地で育てやすいということでもあります。高温多湿な気候にも対応できて比較的病気にも強く、安定した収量が期待できますよ」。

また、「多様性」もマスカット・ベーリーAを栽培する理由のひとつ。マスカット・ベーリーAは、ワインにしたときに多様性が強く感じられる品種なのだとか。

「マスカット・ベーリーAは、いろいろな表情を見せてくれるぶどうです。造り方によっては、ヨーロッパ系品種に引けを取らない味わいにもなりますし、和食に合うライトなワインにすることも可能です。また、ロゼワインや熟成させた濃厚な味わいの赤ワインにもなります。マスカット・ベーリーAが生み出すワインのスタイルの多様性に可能性を感じたので、栽培したいと考えました」。

ワインファンの中には、マスカット・ベーリーAの「甘い香り」を苦手とする人もいるという。だが、この甘い香りこそが、実は和食との調和を可能にする要素でもある。醤油や味噌などの調味料に合わせやすい風味が、マスカット・ベーリーAが持つ重要な個性のひとつなのだ。

一方、ヨーロッパ系の品種であるシャルドネとメルローを栽培している理由は、ラインナップの幅を広げるためだ。飲み手にさまざまな味わいを楽しんでもらうべく、日本でも比較的栽培しやすい品種を選択した。

スプリングワインでは、品種それぞれが持つ個性や魅力を活用して、個性豊かなワインを生み出そうとしているのだ。

▶︎ふたつの畑 気候や土壌を生かして

ここで、スプリングワインの2か所の畑、それぞれの特徴を確認しておこう。

まずは、北杜市明野町にある畑から。茅ヶ岳の裾野にあり、標高は720m前後。日本有数の日照量を誇る地域だ。日照量の多さはぶどうの糖度を上げ、鮮やかな色付きを生む。

畑は全体的になだらかな斜面にあるため、水はけは良好だ。朝晩の寒暖差も比較的大きく、ぶどう栽培にとっての好条件が整っている土地である。

「順調に生育してきたので、2023年から本格的な収穫をスタートしました。標高があるためにしっかりと酸が残るぶどうが収穫でき、今後も期待が持てます」。

一方、甲斐市双葉地区の畑も、茅ヶ岳の裾野のなだらかな傾斜地にある。ワイン用ぶどうの名産地である山梨県韮崎市穂坂町に隣接しており、土壌や気候条件も似通っている。年中吹き抜ける風が、ぶどうの健全な生育を促してくれるそうだ。

いずれの畑も、ぶどう栽培にとって最適な環境だ。土地の恵みを存分に生かし、スプリングワインは愛情を込めてぶどうを育てている。

▶︎栽培のこだわり ぶどうと地元に愛を込めて

続いては、スプリングワインの、ぶどう栽培におけるこだわりにスポットを当てよう。いずみさんは、ぶどうが本来持つポテンシャルを最大限引き出せるような管理を心がけているという。

「とにかく、ぶどうが『いきいきと育つ』ことを目指しています。生育ステージごとによく観察し、適度にサポートして見守ることを心がけているのです」。

ぶどうが健全に生育する環境を作り、あとはぶどうの生命力を信じて支えることに徹するのだ。

「甲州は元気な男の子、マスカット・ベーリーAはかわいい女の子のようです。品種によってそれぞれの特徴があり、我が子のように愛しい存在ですよ」。

いずみさん曰く、甲州は樹勢が強く、やんちゃな男の子といった雰囲気。樹勢をコントロールして、あとはのびのびを育てるようなイメージで管理をする。枝を伸ばす方向をそれとなく示し、正しい方向に導くのだとか。一方、マスカット・ベーリーAの場合には、より凝縮感のある果実にするために房数を制限し、ひと房ひと房を大切に育てているのだとか。

また、哲也さんが大切にしているという、栽培管理におけるこだわりも紹介したい。意識しているのは、土地にマッチした栽培方法を意識することだという。

「ぶどう栽培には基本のセオリーがあります。しかし、教科書どおりにやってもすべてが上手くいくとは限りません。なぜなら、地域ごとに気候や土壌などの条件が異なるからです。そのため、『適地適作』という言葉を大切に、土地に古くから息づく栽培の方法を重視していきたいと思っています」。

ぶどう栽培の経験が長い地元農家の声を聞いて、長年の経験に基づいた意見をしっかりと取り入れることも大切。エリアごとの栽培のコツやポイントは、教科書だけでは得られない貴重な学びなのだ。

『スプリングワインのワイン醸造』

スプリングワインでは、2023年までは山梨県甲州市のワイナリー、「機山洋酒工業」にて委託醸造していた。そして2024年、念願の自家醸造をスタートしようとしている。

今まさに新たなスタート地点に立ったスプリングワイン。これから先、どんなワイン醸造をおこない、どんなワイナリーを目指していくのだろうか。

「委託醸造をお願いしていた機山洋酒工業さんは、ワイン科学的な知見に基づいたワイン造りと品質管理をおこなっているワイナリーです。2019年から同社のアルバイトスタッフとして醸造の手伝いをしてきました。醸造はもとより、徹底したサニテーションや無駄のない作業工程など、たくさんのことを学ばせていただきました。これらを踏襲して、健全で良質なワインを目指したいです」。

醸造所の完成は2024年3月で、グランドオープンは4月になる予定だ。

▶︎まちなかワイナリーとしてスタート

スプリングワインの醸造所は、甲府駅から徒歩10分ほどの場所にある「朝日通り商店街」にオープンする予定だ。

「商店街の真ん中で、『こんなところに醸造所があるの?』と思われるような場所ですよ。例えば、商店街で豆腐屋さんが豆腐を造るように、人々が行き交う『まちなか』でワイン造りをしたいと思っていたのです」。

ぶどう栽培とワイン造りの歴史が長い山梨県では、ワイナリーといえば、畑に隣接した場所をイメージする人も多いだろう。そのため、山梨にワイナリーを作るのに、どうしてわざわざ商店街を選んだのか?と、不思議がられるという。

もちろん、佐野さん夫婦が「まちなかワイナリー」を作りたかったのには、はっきりとした理由がある。甲府市の職員として長年働いてきたふたりは、「地方都市の人口流出」という地元が抱える課題を自分ごとのように感じてきた。そのため、退職後も民間の一事業者として、甲府市の課題改善のために貢献したいと考えたのだ。

「郊外への人の流出を阻止するため、ワインというツールを用いて、まちなかに人々を呼び込むスポットを作りたいのです」。

スプリングワインが醸造所をオープンする予定の朝日通り商店街には、クラフトビールの醸造所や飲食店などが続々とオープン。甲府の魅力を発信する新たなスポットとして注目されつつあり、その流れに乗れたのも幸運だった。

「醸造所は2024年春のオープンに向けて準備中ですが、ショップはすでに商店街にオープンしています。県外からのお客様や、散歩中のご近所の方がふらっと立ち寄ってくださることもありますよ」。

▶︎地元食材とのペアリング

スプリングワインの公式ホームページでは、地元食材を使った料理のレシピが紹介されている。いずれも、スプリングワインのワインとのペアリングがおすすめだ。

ペアリング料理のレシピを公開している理由について、いずみさんは次のように話してくれた。

「地元の食材と合わせることで、ワインをさらに楽しめます。ワインと料理を通して、地域の魅力をもっと知ってもらいたいですね。山梨県産の食材とワインのペアリングは、今後も積極的に発信していきたいと思っています。醸造所併設のワインバーでは、地元食材を使ったメニューを提供するつもりです」。


ワインバーでは、アラカルトメニューをメインとして、土地ならではの食材で作った軽食の提供を企画している。造り手おすすめの地元食材とのペアリングがワインが造られた場所で楽しめる、贅沢な空間だ。甲府を訪ねた際にはぜひ立ち寄って、山梨の恵みを堪能したい。

▶︎3種類の銘柄を紹介 

次に、リリース済みの3つの銘柄を紹介しよう。いずれも双葉地区の自社畑で育ったぶどうを使ったワインだ。

ひとつ目は、辛口の甲州白ワイン「SPRING WINE 甲州」。委託醸造先である機山洋酒工業のスタイルを踏襲した、フレッシュでクリアな味わいだ。柑橘系の爽やかな香りが特徴で、天ぷらなどの和食に合わせたい。地元野菜と「SPRING WINE 甲州」のペアリングをいずみさんに提案いただいた。

「野菜や果物系の前菜とよく合いますよ。旬のフルーツのサラダとの相性がよく、『桃とカマンベールの春巻き』『シャインマスカットとカッテージチーズのサラダ』などが美味しかったですね」。

ふたつ目に紹介する銘柄は、「SPRING WINE マスカット・ベーリーA」。ライトボディで、ぶどうそのままの香りと味わいが感じられる。ベリーの香りが可愛らしい印象で、飲む直前に少し冷やすと、より軽やかな印象になるという。

おすすめのペアリングはトマト系の料理。ミートソースや野菜のトマト煮込み、トマトのチキン煮込みなどの料理に寄り添ってくれる優しい赤ワインだ。

そして、最後に紹介するワインは、マスカット・ベーリーAを樽熟成した、「SPRING WINE マスカット・ベーリーA樽熟成」。

「9か月間、樽熟成しました。樽を使っていない『SPRING WINE マスカット・ベーリーA』と比べると、『SPRING WINE マスカット・ベーリーA樽熟成』の方が、より厚みが感じられます。樽由来のバニラやカカオの香りがアクセントになった、完熟ぶどうの美味しさが感じられるでしょう」。

「SPRING WINE マスカット・ベーリーA樽熟成」は、醤油や味噌、みりんといった和の調味料を使った料理によく合う。タレの焼き鳥やうなぎの蒲焼などボリュームある和食や、すき焼きやローストビーフなどの肉料理に合わせるとよいだろう。

▶︎生活に寄り添うワインでありたい

スプリングワインが目指すのは、「日常の料理に合わせて楽しめるワイン」。いずみさんは、いつもの食卓で料理と共に飲んでもらいたいと話してくれた。

「私たちのワインは、気軽に日常的に飲んでもらえる存在になることが目標です。自社醸造をスタートさせたら、気軽に手に取っていただける価格設定にしたいですね。できるだけ多くの人の日常に寄り添えるワインでありたいのです」。

スプリングワインでは今後、日常的に楽しめるラインナップに甲州やマスカット・ベーリーAを、プレミアムラインにはシャルドネやメルローを展開する計画だ。プレミアムラインのワインは仕込み方を変えるなどの工夫をして提供していくつもりだという。

「異なる価格帯のワインが用意できたら、生活のあらゆる場面に寄り添うことができるでしょう。大切な日に飲んでもらうワインとしても選んでいただけたら素敵ですね」。

『スプリングワインのこれから』

最後のテーマは、スプリングワインの未来について。自社醸造所の完成を目前に控え、スプリングワインの展望は明るい。

スプリングワインは、これからどんなワイナリーになっていくのか。また近い未来に実施を考えている企画やイベントなどはあるのだろうか。ワイナリーの「これから」を、少しだけ先取りしてみたい。

▶︎地元とのつながりを大切に

「地元を大切にするワイナリーでありたい」と話してくれた佐野さん夫婦が目指すのは、自社だけではなく、地元全体を盛り上げていく取り組みだ。

醸造所をオープンする予定の朝日通り商店街は、そんなふたりにとって、力強い味方のような存在なのだという。

「朝日通り商店街の一員になれたことは、本当に幸せなことです。商店街に関わる人たちは皆さん温かい方たちばかりですよ。自分たちで商店街を盛り上げて、地元を大事にしようという熱意にあふれています。朝日通り商店街には、昔から地元の人たちと協力しながら活動してきた実績があります。商店街もワイナリーも、『地元の人に愛される存在であること』がベースとしてあるべきだと思うのです」。

栽培・醸造、ワイナリー運営など、やるべきことはたくさんあるが、「街をどう盛り上げていくか」を自分事としてとらえ、関わっていきたいと考えている佐野さん夫婦。そこで、朝日通り商店街のSNS運営を担当し、商店街のイベントなどを積極的に発信しているのだ。投稿への反響も大きく、SNSを見てイベントに来てくれる人も大勢いるそうだ。

「SNSでの反応の大きさには、手応えを感じています。これからも商店街のイベントや地元の活性化を考えながら、『地元の人なら誰でも知っている存在』と言われるワイナリーを目指したいですね」。

▶︎今後のイベントにも注目

地域に根ざすワイナリーとして、イベントを大切にしたいスプリングワイン。地域や商店街とつながりのある学生たちに、「お仕事体験」の場を提供したいという構想などもあるそうだ。

「年3回実施する商店街の大きなイベントには、毎回参加しています。2023年も店頭でグラスワインやぶどうジュースを販売して、好評をいただきました」。

そのほかにも、ワイナリー独自のイベントとして、醸造所のオープニングイベントや収穫イベントなども予定している。これまで収穫イベントは内々で開催してきたが、いずれはSNS等で参加者を公募し、多くの人に参加してもらいたいと考えているそうだ。興味がある人はチェックしてみて欲しい。

『まとめ』

「文化を作るというと大袈裟だですが、まちなかで気軽にワインに親しんでもらえるような流れを作りたいですね。ワインの敷居を下げて、ご近所さんがいつでも立ち寄れる場所にしていきたいと考えています」。

人とのつながりを大切にすれば、人が人を呼び、新たなファンを生み、スプリングワインの輪がどんどん広がっていくだろう。湧き出す泉のように、スプリングワインの将来は明るい希望であふれている。

地域の魅力をどう発信するか。地域をいかに楽しく活気ある場所にしていくか。ワインの「人の輪」を生み出す力で、スプリングワインは地域のために、自分たちができることを真剣に考えているのだ。今後さらに、甲府市で活躍の場を広げていくことに期待したい。

「ぜひ甲府に遊びに来てください」と話す佐野さん夫婦の笑顔は穏やかであたたかい。スプリングワインを訪れて、地元産の食材とワイン、さらに地域のつながりも感じたいものだ。

基本情報

名称スプリングワイン
所在地〒400-0025
山梨県甲府市朝日4丁目5番3号
アクセスhttps://maps.app.goo.gl/nZbj8Tk5naKhwyrT7
HPhttps://springwine.jp/

関連記事

  1. 『シャルマンワイン』素朴で素直なワインを造る、欧州ぶどうの個性を引き出すワイナリー

  2. 『信濃ワイン』ワイン文化への尊敬と愛が生み出す、桔梗ヶ原ならではの味

  3. 追跡!ワイナリー最新情報!『原茂ワイン』天候に恵まれ、高品質なぶどうが収穫できた2022年ヴィンテージ

  4. 『ドメーヌヒデ』潮の満ち引きに従った自然栽培のぶどうで、ナチュラルかつ世界に認められるワインを造る

  5. 『ルサンクワイナリー』香り高くやさしい味わいで、料理を引き立てる綺麗なワイン

  6. 『山野峡大田ワイナリー』心のつながりを大切に。地域の交差点として機能するワイナリー