『シャトー・メルシャン 椀子(まりこ)ワイナリー』旅行者に素晴らしい体験を提供し、世界が注目!

「日本を世界の銘醸地に」というヴィジョンを掲げ、日本ワインを牽引し続けるブランド、シャトー・メルシャン。現在、シャトー・メルシャンには、「勝沼ワイナリー」「桔梗ヶ原ワイナリー」「椀子(まりこ)ワイナリー」の3つのワイナリーが存在する。

なかでも2019年に誕生した椀子ワイナリーは、世界から最も注目を集める日本のワイナリーのひとつだ。

「ワールド・ベスト・ヴィンヤード」は、「旅行者に素晴らしい体験を提供するワイナリー」を選出するために設立された、イギリスのアワードだ。シャトー・メルシャン 椀子ワイナリーは、この「ワールド ベスト ヴィンヤード」に2020、2021と2年連続で選出されるという快挙を成し遂げた。

今回は椀子ワイナリー長の小林弘憲さんにお話を伺った。これまでの歩みと椀子ワイナリーの地元の方との強い絆、世界に認められるワインを造り続ける秘訣とは?
小林さんによって語られた言葉を、余すことなく紹介していこう。

『地元の方との強い絆のもと誕生した椀子ワイナリー』

はじめに、椀子ワイナリーが誕生した経緯を紹介しよう。

長野県上田市にある丸子地区の陣場台地。かつて見渡す限りの桑畑が広がっていたこの地は、特定の作物を同じ畑で長期間栽培することで作物が育たなくなる「連作障害」と、価格の低迷や農家の高齢化が進んだため、1990年代に入ってからはほとんどの農地が遊休荒廃地と化していた。

丸子地区が現在のような美しいぶどう畑として生まれ変わったのは、シャトー・メルシャンと地元の方々の間に生まれた強い絆のおかげだった。

▶︎「農地法」という大きな壁

赤ワインブームが火付け役となり、日本国内でワインの消費量が急激に増えたのが1997年〜1998年といわれている。それまで、日本産ブドウで造られる日本ワインはあまり注目されない存在だった。

ましてや大手ワインメーカーが自社で畑を持ち、ぶどうを栽培しワインにするというケースはごくごく稀だったのだ。そこには、1952年に制定された「農地法」が大きく影響している。

戦後誕生した農地法によると、「農地を所有する者は耕作者でなければならない」という決まりがあった。だが株式会社の場合、耕作者は従業員で、所有者は株主だ。つまり、「農地を所有する者が耕作者でないから、株式会社では農地を所有できない」ということになる。

この規制により、2000年頃はシャトー・メルシャンをはじめ多くの大手ワインメーカーは自社で畑を所有できず、契約農家が作ったぶどうを購入してワインを醸造していたのである。

契約農家に作ってもらうぶどうは素晴らしい品質のものではあった。だが、シャトー・メルシャン以外にもぶどうを出荷している契約農家すべてに自分たちの思いを伝え、ぶどう作りに反映してもらうには限界があった。ワイン造りはぶどうの品質がワインの品質に直結する。シャトー・メルシャンのワインをさらに極めるためにも、自社でぶどうを栽培していこうという機運が高まった。

▶︎地元の方、行政、シャトー・メルシャンが一体となって

「農地法」という大きな壁を乗り越えるため、シャトー・メルシャンはどのような行動を取ったのだろうか。

まず、当時のシャトー・メルシャンの醸造家たちは、自分たちの畑にふさわしい場所を探した。降雨量、日照時間、平均気温など、ぶどう栽培に適した土地を探し求めたのだ。また、将来的に事業規模を拡大するためには、土地の拡張が必要となる。そのため、地元との繋がりと行政の協力なしには、自社管理畑の確保は不可能だった。

その際に白羽の矢が立ったのが、長野県上田市丸子地区「陣場台地」と呼ばれるエリアだ。陣場台地という名称は、江戸時代に戦国武将が陣を張ったといわれることから名づけられた。1960年代から桑畑として活用されていたこの一帯は、1990年代に入ると耕作放棄地となり、遊休荒廃化が進んだ。

荒れた土地を活性化したいという地元の声もあり、地元行政の協力のもと、2000年に「陣場台地研究委員会」が発足。シャトー・メルシャン、地元の方、行政が一丸となって「陣場台地をぶどう畑にしていこう」という活動をスタートさせたのだ。

「私たちのような、海のものとも山のものとも分からない企業の人間に、先祖代々伝わる大切な土地を貸してくれといわれても、地元の方がおいそれと貸してくださるはずがありません。行政の方が土地の所有者を取りまとめてくださり、広大な土地をお借りすることができました。そこから造成工事が始まり、2003年に植樹を開始して『椀子ヴィンヤード』が誕生しました」。

2003年には農地法が一部緩和され、椀子ワイナリーは農業生産法人(現在の農地所有適格法人)を設立した。

椀子ワイナリーは現在でも地元の契約農家との繋がりは深く、契約農家から購入したぶどうを使用してワインも造っている。地元の人たちや、地元行政の協力の協力なしには椀子ヴィンヤードは誕生しなかったと、小林さんは強調する。

『ぶどう栽培について』

続いて、椀子ヴィンヤードのぶどう栽培について話を進めていこう。

シャトー・メルシャンが目指すワインを造るために、椀子ヴィンヤードではどのような取り組みをおこなっているのだろうか。

また、椀子ヴィンヤードの「テロワール」について、小林さんから興味深いお話を伺ったので紹介したい。

▶︎先人の果敢な挑戦によって成功した栽培品種

椀子ヴィンヤードで栽培されているぶどう品種は以下だ。

赤ワイン用ぶどうは以下の6品種。

  • メルロー
  • カベルネ・フラン
  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • プティ・ヴェルド
  • ピノ・ノワール
  • シラー

白ワイン用ぶどうは以下の2品種。

  • ソーヴィニヨン・ブラン
  • シャルドネ

「椀子ヴィンヤードで植樹をはじめた2003年当時、日本ではメルローとシャルドネはうまく育つ鉄板品種といわれていました。しかし椀子ヴィンヤードの地にどの品種が合うか分からず、先輩たちはおおいに悩んだそうです。成功するかどうかはやってみなければ分からないという勢いで栽培が始まりました」。

試験的に栽培をはじめた結果、ソーヴィニヨン・ブランとシラーは非常によいものができるようになったと小林さんは自信をのぞかせる。ソーヴィニヨン・ブランは、冷涼な気候で、かつ昼夜の寒暖差が大きい場所を好む。日本の土地での栽培は難しいといわれるが、椀子で作られるソーヴィニヨン・ブランは柑橘系の香り豊かで品質が高い。

また、シラーは国内外から高い評価を得ている品種のひとつだ。シラーの特徴である、スパイシーな香りが非常に豊かなのだ。世界的にみても、胡椒の香りがしっかりと主張する産地はあまりない。椀子ヴィンヤードのシラーは、「クール・クライメット・シラー(冷涼な地域で栽培されたシラー)」と呼ばれ、一目置かれる存在だ。

ただし、試験品種として栽培したが、うまくいかなかった品種もあるという。例えば、サンジョベーゼは、収穫時期に赤ワインの特徴である苦味や渋みが充実しなかったことを明かしてくれた。

「先輩方が、未知なる環境下でソーヴィニヨン・ブランやシラーという品種を選んで植えてくれたチャレンジ精神が素晴らしいと感じています」。

小林さんの表情からは、先人への深い敬意の念が感じられる。

▶︎恵まれた畑の特徴

続いては、椀子ヴィンヤードのテロワールについて紹介しよう。

日本の年間の平均降水量は1718mmで、世界平均である880mmの約2倍だ。だが、上田市の丸子地区は、年間950〜960mmと非常に降雨量の少ないエリア。さらに、日照時間が非常に長く、小高い丘に位置するため風が吹き抜ける。

降雨量が少なく雨が降った後も風が吹き抜けて、ぶどうがすぐに乾燥する丸子地区では、病気からぶどうを守ることができるという。

土壌は、雨が降ると土の中まで染み込まずに表面だけが濡れるほどの、ガチガチの粘土質だ。雨上がりに土を掘ってみると、表土の30〜40cm下はカサカサに乾いているそうだ。地中に雨水が染み込まないので、水分コントロールがしやすいのが特徴。ぶどう栽培にとって、非常に恵まれた環境なのだ。

「椀子のぶどうは、ぶどうの粒がほかのシャトー・メルシャンのぶどう産地に比べて、ひとまわりくらい小さいんです。降雨量が少なくて、ぶどうの水分が凝縮されているからです。ギュッとしまったぶどうが収穫できますよ」。

椀子のぶどうは見ればすぐに分かると、小林さんは愛しそうに語る。

▶︎気候変動の影響

恵まれた気象条件の畑とはいえ、椀子ヴィンヤードは近年の気候変動の影響は受けていないのだろうか。

「ここ10年ほどで、気温が上昇したことを大いに感じるようになりました。35度を越える、いわゆる猛暑日が増えましたね。平均気温が上昇し、以前よりも夜の温度が下がらない傾向もあります」。

気温の上昇は、収穫タイミングの変化にもっとも顕著にあらわれている。2010年頃は、9月の1〜2週目くらいから収穫していたが、近年では9月に入ったらすぐに収穫開始する。1〜2週間ほど収穫時期が早まったのだ。

また、雨の降り方も変化した。いわゆる「ゲリラ豪雨」といわれる、1時間に40mm程度のまとまった雨が局地的に降るようになった。隣の東御市では降っているけれど、丸子地区には降っていないという現象も多いそうだ。

▶︎健全なぶどうを収穫するために

続いて、椀子ワイナリーでのぶどう栽培のこだわりについて尋ねてみた。

「『健全なぶどうを収穫すること』、このひとことに尽きますね。健全なぶどうを栽培し、ベストなタイミングで収穫するためには、適切に管理することが重要です。『キャノピーマネジメント』を、ベストなタイミングでおこなうよう意識しています」。

キャノピーマネジメントとは、ぶどうの樹の地上に伸びている部分を、バランスのよいぶどうが育つようにコントロールすることだ。新しい枝を誘導する「新梢誘引」作業や、ぶどうの房に光がしっかり当たるよう房周りの葉を取り除く「除葉」など、ぶどう樹を取り巻く環境の管理を指す。また、収穫するタイミングを逃さないことも重要だ。

「私たちが目指すワインのスタイルで重視しているポイントは、白ワインであれば酸のバランス、赤ワインであれば苦味や渋みを生む『フェノール』の熟成です」。

シャトー・メルシャンが目指すポテンシャルあるぶどうを収穫するためにも、もっとも適した熟度のタイミングを見極めて収穫することが大切だ。そのためにも、毎日畑に入ってぶどうをよく見ることを、7名のスタッフに伝えている。

小林さんの口調からは、スタッフ全員に小林さんの思いが浸透している様子が、手に取るように伝わってきた。

▶︎「土地の環境」がぶどうの成分を作っていく

「テロワール」という言葉について、小林さんは興味深い話をしてくれた。

「ぶどうの香りや味わいは、生育環境に左右されるといわれます。しかし、植物の立場からすると、鳥に種を運んでもらうためにどうしたらよいか、外部から攻撃を受けた時にどう保身するのかが重要です。植物の『反応』によって生まれた物質が、果実の香りや味わいに繋がるのです」。

ぶどうの香りや味わいは、「産地の個性」と「産地のテロワール」が大きく影響するといわれる。つまりテロワールとは、もちろん産地が生み出すものではあるが、植物からすると、その土地の個性に呼応して「自分を守ろう」「自分を食べてもらおう」と反応した結果、生まれるものなのかもしれない。

地域によってうまく育つ品種と育たない品種がある。うまく育つ品種とは、植物にとってたまたまその地域が生活しやすい環境だったということだ。しかし、生活しやすい環境が必ずしもよいわけではない。人間と同じように、ときにはストレスも重要な要素になると小林さんはいう。

椀子ワイナリーで造ったシラーが世界的に評価されるようになったのは、丸子地区の栽培環境のストレスにぶどう自身が反応した結果、素晴らしいスパイシーな成分が生まれたといえよう。

『「オムニス」に代表される椀子ワイナリーのワイン』

続いて、椀子ワイナリーのワインについて紹介していこう。シャトー・メルシャンのワインは、3つのシリーズから成り立っている。世界トップクラスのワインに並ぶ「アイコン」シリーズ、産地の個性を存分に発揮した「テロワール」シリーズ、デイリーに日本ワインの魅力を楽しむ「クオリティ」シリーズだ。

「アイコン」ワインは、シャトー・メルシャンの3つのワイナリーそれぞれから誕生する、最高峰のワインだ。3ワイナリーが日々切磋琢磨しながら、品質が世界で認められるよう競い合っている。椀子ワイナリーから誕生したアイコンシリーズ、「シャトー・メルシャン 椀子 オムニス」について紹介しよう。

▶︎「オムニス」=全て

「オムニス」とは、ラテン語で「全て」という意味だ。名前の由来について伺った。

「椀子ワイナリーでは、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドという4種類のボルドー系品種を栽培しています。年によって、メルローが素晴らしい年もあれば、カベルネ・ソーヴィニヨンが優れている年もあります。4品種を使用して、その年のもっとも素晴らしい品種をメインにブレンドし、年ごとの椀子ワイナリーの赤をすべて表現するという意味で『オムニス』という名前をつけました」。

椀子ワイナリーの魅力が凝縮された、まさにヴィンテージごとの最高傑作なのだ。

▶︎日本庭園のようなワイン造り〜フィネス&エレガンスの追求〜

それでは、シャトー・メルシャンの「アイコンワイン」が目指すワインの姿について見ていこう。

小林さんに尋ねたところ、意外なことに「日本庭園のようなワイン造り」というキーワードが飛び出した。日本庭園のようなワイン造りとは、一体どのような意味なのだろうか?

1998年、ボルドー1級シャトーとして名高い「シャトー・マルゴー」の総支配人兼、最高醸造責任者であるポール・ポンタリエ氏が、シャトー・メルシャン醸造アドバイザーとして就任した。

ポンタリエ氏は来日してシャトー・メルシャンの畑やワイナリーを巡り、数々のアドバイスをしてくれたという。

そんなポンタリエ氏が、日本ワインが目指す方向性を「フィネス&エレガンス(調和のとれた上品な味わい)」と表現した。シャトー・マルゴーをはじめ、世界に名を馳せる一流ワイナリーが造る「グラン・ヴァン(偉大なワイン)」には、この「フィネス&エレガンス」が存在する。

「フィネス&エレガンス」という言葉がピンと来なかったシャトー・メルシャンの醸造家たちに向けて、ポンタリエ氏はさらに、「目指すべきスタイルのひとつは、日本庭園のようなワイン造りではないか」といった。

「日本庭園のようなワイン造り」について、シャトー・メルシャンの醸造家たちは次のように解釈した。

「日本庭園には石や池、植木などが絶妙なバランスで配置されている。突出するものはなく、欠けるものもない。すべてが調和し、ひとつの作品となるよう緻密に造られている。このような考え方が、日本庭園のようなワイン造りなのではないか」と。

日本は海外の銘醸地と比べると雨が多く、台風や秋雨もあるため、タンニンが穏やかなぶどうになる傾向がある。主張しすぎない果実味やタンニン。つまり、日本のぶどうはエレガントで、味わいのバランスが取れているのだ。

また、勤勉と繊細さは日本人の強みである。漆細工やクリスタルなど、日本人の職人がつくるものは非常に繊細で美しい。そんな日本人ならではの気質を生かし、日本のフィネス&エレガンスを追求していこうと、シャトー・メルシャンの醸造家たちはポンタリエ氏のアドバイスを理解したのだ。

▶︎選果へのこだわりと、ぶどうにストレスを与えない移動方法

日本庭園のようなワインを造るために、椀子ワイナリーでは醸造過程でどのようなことにこだわり、徹底しているのだろうか。

シャトー・メルシャンでは「2段階選果」を行っている。まず、収穫したぶどうを房のまま選果する。赤ワイン用ぶどうの場合、全体的に色の濃い房、色が鮮やかな房、色が少し薄い房に選別する。その後、ぶどうを果梗から取り外し、粒の状態にしたものから、少し色づきの良くない粒や青みがかった粒を取り除き、熟したぶどうだけをタンクに入れるのだ。

また、「グラヴィティフロー」という、重力を利用して果実をタンクまで移動させる方法も取り入れている。ポンプによって果実を移動させると細い管のなかでぶどうが擦れ合い、種が裂けたり実が割れてしまうため、えぐみや渋みが出ることがある。それを避けるために、ポンプではなく自然の重力でぶどうを移動する。ぶどうの繊細な個性を損なわず、フィネス&エレガンスなワイン造りを可能にする方法だ。

「すべてのぶどうをグラヴィティフローで移動させるには限界があるので、ポンプを使ってぶどうを移動させることもあります。しかしその際もチューブポンプを使い、極力ぶどうにストレスを与えないよう、優しく送り込みます」。

小林さんの言葉からは、ぶどうへの惜しみない愛情を感じる。

▶︎ターゲットは地元の人たちとワイン愛好家

どのような方に椀子ワイナリーのワインを飲んでもらいたいかという質問に対して、小林さんは迷いなく答えてくれた。

「椀子ワイナリーがこの地にオープンできたのは、地元の方々との絆があったからこそです。地元の皆様が気軽に椀子ワイナリーに遊びに来て、ワインを楽しんでいただきたいと思っています。一方で、世界中のワインを知り、日本のワインといえばシャトー・メルシャンの『椀子 オムニス』、桔梗ヶ原ワイナリーのアイコンワインである『桔梗ヶ原メルロー シグナチャー』や勝沼ワイナリーのアイコンワインである『城の平 オルトゥス』もよい、と評価してくださる方にも召し上がっていただきたいですね」。

地元の人たちに楽しんで欲しいワインとして、小林さんがおすすめするワインは、「シャトー・メルシャン 椀子シラー」だ。

「椀子の土地で育ったシラーを100%使用し、海外からも高く評価を受けている銘柄です。関信越・首都圏限定の商品ですが、ぜひ機会があったらお試しください。また、『シャトー・メルシャン 椀子メルロー&カベルネ・フラン』は、椀子ワイナリー限定で販売しています。椀子ワイナリーへ足を運んで味わっていただけると嬉しいですね」。

椀子ワイナリーを訪れて、ワイナリーでしか味わえないワインを思う存分堪能したい。

『椀子ワイナリーの未来』

最後に、椀子ワイナリーの未来について伺った。日本ワインを牽引し続けるシャトー・メルシャンが見据える未来に迫ろう。

▶︎「地域」「自然」「未来」と共生するために

椀子ワイナリーの未来について、「地域」「自然」「未来」という3つのキーワードにそって見ていきたい。

まずは、「地域との共生」だ。椀子ワイナリーは上田市丸子地区の陣場台地という土地で、地元の方、地元行政とシャトー・メルシャンが協力することで設立されたワイナリーだ。椀子ワイナリーが地域の方の拠り所となることがひとつ目の大きなテーマだという。地域交流の場づくりや、地元人材の雇用機会創出などに努めている。

ふたつ目は、「自然との共生」。遊休荒廃地にぶどう畑をつくることで、新たな命を吹き込んだシャトー・メルシャン。近年、陣場台地の土地の生態系は非常に豊かになったという。

人が入らなくなった森は、鬱蒼と植物が生い茂って太陽の光が届かなくなるため、月日が経つうちに生育できる植物が限定されてしまう。また、日光に当たらないため、強い種や外来種が蔓延し、かつて日本の里山や草原に生育していた植物が生存できなくなってしまうのだ。

すると、その草原に生息している植物を食べる昆虫も、その昆虫を食べる野鳥も生存できなくなる。結果として食物連鎖が乱れ、生態系が破壊される。現在、草原を再生させる活動として、椀子ワイナリーでは生物多様性の推進にも積極的に取り組んでいるのだ。

3つ目は、「未来との共生」だ。次世代を担う若い人たちが、椀子ワイナリーとぶどう畑を将来的に活用してくれるよう、学生の学びの場として椀子ワイナリーを提供している。

「地元小学校の食育の活動として、畑の一部をお貸ししています。みんなでジャガイモを栽培して秋に収穫し、調理して食べる様子はとても楽しそうですよ。最近では、大学のツーリズム学部の学生が授業の一環として、ワイン造りへの参加やワイナリーを訪れるお客様の接客を体験しています」。

これらの活動は、シャトー・メルシャンがとりわけ力を入れている活動だ。地域、自然、未来が椀子ワイナリーを中心に繋がり、点と点だったものが線となる。さらには大きな渦となって広がる未来が想像できるだろう。

『まとめ』

「世界中の旅行者に素晴らしい体験を提供するワイナリー」を選出するアワード、「ワールド・ベスト・ヴィンヤード2021」。椀子ワイナリーは日本のワイナリーで唯一、世界第33位にランクインしたワイナリーだ。

椀子ワイナリーの強みについて小林さんに伺うと、「360度ぶどう畑に囲まれたワイナリーであることですね」と、嬉しそうに話してくれた。

ぶどう畑をぐるりと見渡しながらワインをテイスティングできる椀子ワイナリー。「魅せるワイナリー」として、ぶどう畑や醸造所で働くスタッフの様子を間近で見学できるのも特徴だ。

日本ワインを牽引し、「日本を世界の銘醸地に」というヴィジョンを掲げ、日々前進するシャトー・メルシャン。その中でもとりわけ美しく、世界から注目を集める椀子ワイナリーに興味を持ったら、ぜひ一度、実際にワイナリーを訪れてみてはいかがだろうか。

基本情報

名称シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー
所在地〒386-0407
長野県上田市長瀬146-2

TEL:0268-75-8790
開館時間開館時間:10:00〜16:30
(テイスティングカウンター L.O.16:00)
営業日シャトー・メルシャンwebサイトにてご確認ください。
アクセスhttps://www.chateaumercian.com/winery/mariko/#access-anchor
webサイトhttps://www.chateaumercian.com/winery/mariko/

関連記事

  1. 『渋谷ワイナリー東京』ぶどうの個性を生かし、愛されるワイン造りを目指す都市型ワイナリー

  2. 『井上ワイナリー』高知の食に合うワインで地域振興を目指す

  3. 『楠わいなりー』旨味あふれるワインで、飲み手の幸せを生み出すワイナリー

  4. 『武蔵ワイナリー』無農薬無肥料栽培のぶどうのほかは何ひとつ使わない「無垢」なワイン

  5. 『笛吹ワイン』自由にワインを楽しむきっかけになる体験型ワイナリー

  6. 『丘の上 幸西ワイナリー』ぶどうを優しく見つめながら「片丘ワイン」の表現を目指す