『宝水ワイナリー』岩見沢の雪を表現する、透明で凛とした美しいワイン

北海道岩見沢市宝水町にある「宝水ワイナリー」は、北海道の大地に9haにも及ぶ自社畑を有するワイナリーだ。

斜面に広がるぶどう畑は、夏は鮮やかな緑が輝き、冬には一面の雪で覆い尽くされる。北海道ならではの厳しい気候と雄大な自然は、岩見沢らしいテロワールを宿したぶどうを育むのだ。

宝水ワイナリーが手がけるのは、雪と共にある岩見沢ならではの風土が溶け込んだ、岩見沢らしいワイン。

宝水ワイナリーの歴史と、雪国ならではのぶどう栽培・ワイン醸造について、取締役・栽培醸造責任者を務める久保寺祐己さんに伺った。豪雪地帯ならではの栽培管理についてなど、興味深いお話の数々をじっくりと紹介していきたい。

『岩見沢市の補助事業から誕生したワイナリー 宝水ワイナリーの歩み』

宝水ワイナリーの創業は2006年。だが、立ち上げのきっかけを知るには、さらに過去に遡る必要がある。

2002年、当時の岩見沢市市長は、岩見沢で採れる農産物を使った地域振興事業を企画していた。その際、岩見沢市の補助事業の対象として白羽の矢が立ったのが、岩見沢市宝水町で栽培されていた生食用ぶどうだったのだ。

宝水ワイナリー設立までのストーリーに迫っていこう。

▶︎岩見沢市の補助事業でぶどうの持つ可能性に注目

岩見沢市宝水町でぶどうを栽培していたのは、宝水ワイナリー初代代表の倉内氏。倉内家は米と麦の栽培を手がける傍らで、生食用ぶどう品種であるポートランドを栽培していたのだ。収穫したぶどうは、北海道小樽市に醸造所を構える「北海道ワイン」にワイン原料として提供していた。

市長は、宝水町の丘に連なる垣根仕立てのぶどう畑の美しい景観に感動したという。市内でぶどう栽培の実績があるのなら、ワインを造ることも可能なのではないかと考え、岩見沢市の地域振興事業としてワイン造りをする計画を倉内氏に打診したのだ。

▶︎ぶどう栽培の始まりとワイナリーの誕生

岩見沢市が雪深い地域だというのも関係していたのだろうか。2002年当時は、岩見沢市周辺にはまだワイナリーがほとんどない時代だった。

だが、地元で育ったぶどうをワインにすることに魅力を感じた倉内氏。ワイン専用品種の栽培に挑戦することを決意した。こうして立ち上がったのが、「岩見沢市特産ぶどう振興組合」だ。

岩見沢市宝水町でのワイン造りを目指して、まずは4品種、500本ほどの試験栽培をスタートさせた。植栽したのは、赤ワイン用品種であるツヴァイゲルト、ドルンフェルダー、レゲントなど。北海道ワインからのアドバイスを受けて選定した品種だった。雪が多い寒冷地であることを考慮して、耐寒性が高いドイツ系品種が選ばれた。

数年かけて試験栽培を重ね、土地に適した品種を徐々に見極めていった。そして、2006年には市の事業から切り離されて完全民営化。宝水町の農家3組が出資し、宝水ワイナリーが誕生したのだ。

▶︎久保寺さんと宝水ワイナリーの出会い

ここで、栽培醸造責任者である久保寺さんの経歴を紹介しておきたい。久保寺さんの出身は山梨県。宝水ワイナリーへの就職をきっかけに、2014年に北海道に移住した。

山梨出身の醸造家というと、もともと地元でぶどう栽培やワイン醸造と縁があったのではないかと思う人も多いだろう。しかし意外にも、久保寺さんが酒造りと出会ったのは大学時代のことだったそうだ。

「山梨は果樹栽培が盛んなので、ぶどうやそのほかの果樹畑が広がる風景は子供の頃から見慣れたものでした。しかし、私が酒造りに興味を持ったのは大学在学中のことです。偶然の出会いから、醸造の面白さにすっかり心を奪われてしまいました。大学では理系の学問を専攻していたこともあり、化学や生物分野の技術が散りばめられた醸造学に、強く興味を持ったのです」。

醸造学を学びたいという思いを抑えきれなくなり、通っていた大学を中退した久保寺さん。東京にある醸造を学べる専門学校に入学、醸造発酵コースで3年間みっちりと学んだ後に、新卒で宝水ワイナリーに就職した。ワイン造りが盛んな地元・山梨での就職先は考えなかったのだろうか。

「宝水ワイナリーで働きたいと思ったもっとも大きな要因は、栽培から販売まで、すべてに携われる環境だったことですね。ワイン造りの仕事は、栽培・醸造だけではありません。栽培したぶどうの個性を見極めて醸造し、お客様の手に届くまでがワイン造りなので、私が希望する働き方ができる点が宝水ワイナリーの最大の魅力でした」。

また、北海道のワイナリーだけあって、広大な自社畑を保有している宝水ワイナリー。心ゆくまでぶどう栽培に打ち込める環境にも心惹かれたそうだ。

『ぶどう栽培 気候や土壌の特性を生かして』

続いては、宝水ワイナリーが自社畑でおこなっているぶどう栽培について見ていこう。まずは、栽培している品種や畑の特徴について触れておきたい。

また、ぶどう栽培におけるこだわりについても尋ねてみた。北海道ならではのぶどう栽培についてもお話いただいたので、紹介していこう。

▶︎岩見沢に合う品種を探って

宝水ワイナリーで栽培している品種は、シャルドネやピノ・ノワール、ケルナーなどだ。

最初期に植えた品種の中で現在まで栽培を続けているのは、レゲントのみだ。レゲントが残ったのは、岩見沢の「寒さ」と「雪」に適応できたためだという。

岩見沢は北海道のなかでも指折りの豪雪地帯。冬季の累積降雪量は6〜7mにも達し、畑は常に1.7mほどの積雪にすっぽりと埋まる。

「岩見沢に雪が多いのは地形の影響です。ロシアから来る湿った風が積丹半島にぶつかって西寄りの風になり、岩見沢に直撃するのです。この風のせいで、ものすごい量の雪が降るのですよ」。

岩見沢で育つぶどうは、冬の寒さと雪を乗り越えなければならないのだ。

▶︎岩見沢の気候と自然

続いては、宝水ワイナリーの自社畑周辺の気候や環境について、より詳しく見ていこう。

岩見沢は、北海道中央部に広がる石狩平野にある。市の大部分が平野ではあるが、東側には山地が広がっており、宝水ワイナリーの畑はその山の麓にある。

岩見沢といえば降雪量が多いこと以外にも、平均気温が低く、ぶどうの生育期の降雨量が少ないのも特徴だ。

ぶどうの栽培シーズンである4〜10月頃の降雨量は、600~800mmほど。ここ数年はゲリラ豪雨なども増えているものの、本州と比較すると非常に少ない。

また、常に風が吹いていて風通しがよいため湿度も低い。岩見沢は南北が風の通り道となるエリアにあるため年間を通して風が強く、湿気がたまりにくいのだ。夜間は風が落ち着き霧が発生しやすいが、昼間に吹き抜ける風のおかげで湿気が残ることはほとんどない。岩見沢は、極めてぶどう栽培に適した土地だと言えるだろう。

▶︎雪国ならではのぶどう栽培

雨が少なく湿度が低いために病害虫被害が少ない一方で、雪国ならではの苦労もある。雪が降ると畑での作業は中止せざるを得ないため、雪のない時期に集中して、短期間で作業を進めなくてはならない。

岩見沢では10月中〜下旬になると霜が降りて、初雪が降る。霜が当たることで葉が枯れるため、この時期までには収穫をすべて完了させる必要がある。タイミングを見計らって一気に作業を進める必要も出てくるため、天気予報や房の状態を常に確認しながら作業を進めなくてはならない。

「岩見沢の雪はぶどうの樹を完全に覆い隠すので、剪定は積雪が始まる前または雪解け後におこないます。冬季に剪定ができない分、本州のぶどう栽培よりもスケジュールがタイトですね。先回りして動くことを意識して、テンポよく作業を進めています」。

そして、長い冬が終わるのは、雪解けが始まる4月上旬頃。冬の間、樹をすっぽりと覆っていた雪は10~20cmほどにまで溶けて、樹は徐々に芽吹き始める。積雪までに剪定作業が終わっていなかった場合、ぶどうが目覚める芽吹きまでに剪定を終わらせなくてはならない。
「岩見沢の冬は、最低気温がマイナス15度程度で、日中も氷点下以下です。気温だけ見ると凍害が心配かもしれませんが、幸いにも雪が多いエリアなので、雪に埋まった樹は外気から守られます。樹が雪に埋まってさえいれば、寒さで枯れることはほとんどありませんね」。

▶︎土壌の特徴

石狩平野にある岩見沢市だが、宝水ワイナリーの自社畑があるエリアは、プレートとプレートがせり上がってできた小高い丘の上にある。

土壌表層の主成分は粘土やシルトのため水はけがよいわけではない。しかし、傾斜地に広がっており、土中の水は滞留することなく流れていく。

そして、特筆すべきは粘土質の下の地層。かつては海だった場所がせり上がって陸地になった土地のため、下層にはミネラル分が豊富に含まれているのだ。

「ぶどうの根が下層まで張ると、大昔に海だった地層にたどり着きます。カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが豊富な土壌の影響で、ぶどうにもミネラリーな質感があらわれていますよ」。

さらに面白いのは、畑の区画によってミネラル層にたどり着くまでの深さが異なることだ。宝水ワイナリーの自社畑は4つのエリアに分かれていて、斜面の上部エリアでは、50〜60cm掘るだけでミネラル層が現れる。一方、斜面の下部エリアでは陸地になってから堆積した表土が多いために粘土質の層が分厚く、なかなかミネラルの層にはたどり着かない。

「4つのエリアは土壌の質だけでなく、日照も異なります。畑の斜面はいずれも東を向いているのですが、上は日陰になりやすく、下は西日が当たりやすい環境です。同じ品種を育てていても、4つのエリアそれぞれに異なる特徴を持つのが面白いですね。エリアの特徴をうまく生かしてワイン造りに役立てています」。

『宝水ワイナリーのワイン醸造 表現するのは「雪」』

次に紹介するのは、宝水ワイナリーの醸造について。醸造テーマを簡潔にあらわすと、「エリアごとのぶどうの特性を把握し、ぶどうの特性に合ったワインにすること」。

「畑やぶどうの個性を理解できてこそ、よいワインが造れると思うのです。エリアが持つ特性を真に理解せずに醸造すると、チグハグなワインが生まれてしまうことがあります。エリアごとのぶどうの特徴を知った上で、それぞれの特性にマッチする造りにすることを心がけています」。

畑作りの段階から、ワインになったときのことを考えて取り組んでいる宝水ワイナリー。宝水ワイナリーならではの醸造のこだわりと、おすすめのワイン銘柄について詳しく伺った。

▶︎テロワールを映す鏡 「シャルドネ」のワイン造り

さまざまなぶどう品種を栽培してワインを造っている宝水ワイナリーだが、もっとも力を入れているのは、シャルドネで醸すワインだ。

白ワイン用品種では、ほかにもケルナーやバッカスを栽培しているが、品種特有の個性が強く表れるという特性を持つため、よりテロワールを表現できるシャルドネに注目している。

4つのエリアに分かれる自社畑だが、シャルドネは4つすべてのエリアで栽培している。醸造する際には、収穫した4エリアのシャルドネをさまざまな角度で分析し、それぞれの特性に合うブランドに使用する。

「ぶどうの分析は糖度などの数値的なものから、実際にぶどうを目で見た状態まで、多角的におこないます。総合的に評価し、それぞれのぶどうの特徴がマッチする各ブランドに振り分けているのです」。

宝水ワイナリーのシャルドネのワインには、いったいどんな特徴があるのだろうか。

「透明感があって凛とした感じが特徴です。青りんごや白い花などの上品で爽やかな香りがあり、レモンのような酸味も感じられます。熟すと、はちみつやエルダーフラワーといった要素も出てきますよ。また区画によっても香りや味わいが違うので、さまざまな表現が可能です」。

▶︎岩見沢の雪を表現したワインブランド「RICCA」シリーズ

続いては、宝水ワイナリーが展開するブランドとワイン銘柄にフォーカスを当てていきたい。

まず紹介するのは、宝水ワイナリーの自社畑のぶどうのみを使用したシリーズ、「RICCA(りっか)」。雪の別名である「六花」がブランド名の由来だ。エチケットには、雪の結晶をモチーフにしたロゴがデザインされている。

「RICCA」ブランドが目指すのは、宝水ワイナリーの自社畑のテロワールを表現すること。造り手は、岩見沢の自然の象徴でもある「雪」の要素を、「RICCA」のワインに落とし込む。

岩見沢に生きる人々にとって、冬の間に降りしきる雪は生活の一部だ。頭上高くまで積もる雪の中で暮らし、土日になると家族総出で雪かきをおこなう。

「岩見沢という地域を知らない方たちに地域の特色を伝えるには、『雪とともに生きている』ことを伝えるのが一番だと思うのです。私たちはワイナリーですから、ワインで岩見沢を表現します。宝水ワイナリーの何よりの特徴は、雪とともにワイン造りをしていることだと考えています。そのため『RICCA』シリーズでは、透明感・繊細さ・凛とした感じなどの『雪らしさ』を、存分に表現しています」。

醸造段階で手を加えて「雪の感じ」を出すのではなく、ぶどうが持つ特徴を理解して醸造することで、自然に雪の雰囲気が出ると言う。地域を思う造り手の強い願いが込められたワインブランドが「RICCA」なのだ。

▶︎「RICCA  シャルドネ」

宝水ワイナリーのフラッグシップである「RICCA」シリーズの中でも、特に「ワイナリーの名刺代わり」の役割を果たす1本が「RICCA シャルドネ」だ。岩見沢の雪深さと繊細なイメージを表現した銘柄である。

「RICCA シャルドネ」の印象を一言で表すと、「フレッシュ・アンド・フルーティー」。きれいな酸が生まれやすい、自社畑の頂上付近のぶどうを使うことで、透明感や爽やかさが感じられる味わいに仕上がっている。

「『RICCA シャルドネ』からは、岩見沢の雪のイメージを強く感じていただけると思います。辛口寄りですが、やや残糖分もあって優しい甘みが感じられるので、ワインを飲み慣れていない人にも楽しんでいただけますよ。宝水ワイナリーのワインを初めて飲むという方にもおすすめです」。

「RICCA シャルドネ」は、造り手である久保寺さんが自信を持ってすすめる1本だ。おすすめのペアリングは、「北海道アスパラのソテー」とのペアリング。みずみずしくて太く、味が濃い北海道産アスパラとの相性は最高なのだとか。

「また、ホタテのマリネやカルパッチョ、白身魚の料理もおすすめですね。ワインにミネラル感があるので、塩味や酸味ベースのドレッシングで合わせてみてください」。

▶︎「RICCA スパークリング」

続いて紹介するおすすめ銘柄は、「RICCA スパークリング」。シャルドネとピノ・ノワールを使った瓶内二次発酵の本格スパークリングワインだ。

久保寺さんもお気に入りの「RICCA スパークリング」は、自社畑のシャルドネ主体でありつつも、「RICCA シャルドネ」とは違った魅力が楽しめるのが特徴。

「RICCA シャルドネ」との違いは、スパークリングかスティルワインか以外にも、2つあるのだとか。ひとつは、異なるエリアのシャルドネを使用していること。もうひとつは、ピノ・ノワールとブレンドしていることだ。

「『RICCA スパークリング』のシャルドネは、畑の下から2番目のエリアのものを使っています。瓶内二次発酵スパークリングのぶどうは早摘みをするので、西日が当たって熟度が高いエリアのぶどうが最適なのです。樹齢20年近くの古木が多いエリアなので、柔らかくコクがある味わいですよ」。

スパークリングのシャルドネを飲んだ瞬間に感じるのは、ボディ感やはっきりとした香り。その後、余韻とともにシャルドネの風味が柔らかく抜けていく。「RICCA シャルドネ」は酸味が先にくる爽やかなタイプのワインなので、「RICCA スパークリング」との明確な違いを感じられることだろう。

「『RICCA スパークリング』には、ピノ・ノワールを約30パーセント使っています。シャルドネが骨格の役割を果たしており、骨格の上に肉をつけて余韻を足すのがピノ・ノワールの仕事ですね。岩見沢のピノ・ノワールは酸味が高く軽さがあって繊細ですが、近年は温暖化で気温が高くなったこともあって、ボディや余韻が増しているように感じます」。

さて、「RICCA スパークリング」はどの料理と合わせるとより輝くのだろうか。久保寺さんのおすすめは「魚卵」だという。

「すじこやいくらと合わせてみてください。魚卵特有の粘性と濃厚なコクに負けないワインだということがわかると思います。炭酸の喉越しで後味がさっぱりするので、まさに相性抜群ですよ」。

寿司や刺身など、和食との可能性も提示してくれる「RICCA スパークリング」。ペアリングの多様性もあり、たくさんの楽しみ方ができるワインだ。

▶︎幅広いラインナップが魅力

宝水ワイナリーのラインナップはバラエティ豊かだ。2,000円台の気軽に楽しめる銘柄から、6,000円台のハイレンジワインまで、多くのシーンに合うタイプを取り揃えている。

食用ぶどうで醸造したブランド、『宝水ワインシリーズ』は、華やかな場で気楽に飲むのに最適なワインがそろっている。ぶどうのジュージーさが感じられる味わいで、ワインをあまり飲んだことがないという人でも楽しめるはずだ。

オレンジピンクなど可愛らしい色調のものもあり、パーティーなどで開けると場の空気を盛り上げてくれるだろう。

また、本格的にワインに挑戦したいという人には「RICCA シャルドネ」、ワインラヴァーで北海道のエリアの違いを感じたい場合は「RICCA スパークリング」がぴったりだ。じっくりとワインを感じながら楽しむのに向いているだろう。

「造り手としては、多くのお客様に幅広いシーンで飲んでほしいと考えています。ワインを飲むシチュエーションはさまざまだと思うのです。シチュエーションに合ったワインを選んで楽しんでいただけると、非常に嬉しいですね」。

『宝水ワイナリー 今後の目標』

最後のテーマは、宝水ワイナリーの今後について。久保寺さんが考える、ぶどう栽培やワイン醸造の構想とは。また、イベント開催予定はあるのだろうか。

これからの宝水ワイナリーはどのような方向へ歩みを進めていくのか、ワイナリーの未来を少しだけ覗いてみたい。

▶︎気候変動を見据え、栽培品種を再検討

「ここ10年ほどで、岩見沢の気候は大きく変わりました。品種によっては気温が上がって熟しすぎてしまうこともあり、タイミングをしっかりと計らないと、仕上がりが『宝水ワイナリーらしくないワイン』になる可能性も増えてきています」。

気候変動による影響は、岩見沢でも感じるそうだ。夏は最高気温が30度を超えるようになり、降雪の時期も少しずつ変わってきた。

そんな中で今後を見据えた対応の一環として検討しているのが、栽培する品種の見直しだ。

「ちょうど古い区画を植え替える時期なので、20〜30年後の気候を予測して、うまく育ちそうな品種を植えていきたいですね。まだ確定ではありませんが、リースリングやアルバリーニョなどを想定しています」。

リースリングは、近隣のぶどう産地である富良野のワイナリーでも質の高いものができているという。以前は寒さの影響で酸が強すぎたが、温暖化によってちょうどよい味わいになってきているのだ。

▶︎熟成ワインの醸造に挑戦

宝水ワイナリーがワイン造りにおいて視野に入れている目標は、熟成ワインにチャレンジすること。長期熟成でポテンシャルが発揮できるワインを造りたいと、久保寺さんは意欲的だ。

「順調に収量が増え、さまざまなバリエーションのワインが造れるようになってきたので、熟成タイプのワインを作りたいと考えています。自社畑のぶどうのポテンシャルも上がっているので、ぜひ挑戦したいですね」。

熟成ワインを造るために考えているのは、樽熟成の活用と畑の細分化だ。今までの宝水ワイナリーでは、樽熟成をほとんどおこなってこなかったが、今後は樽熟成のシャルドネを増やすことを目標にしている。

また、畑の細分化も進めたいと考えている久保寺さん。エリアごとの特徴をより一層生かしたワインに仕上げるためだという。

樽熟成のワインが出来上がったら、銘柄ごとに比較しながら飲むのがさらに楽しくなるだろう。実現に期待したい。

▶︎ぶどう畑でイベントを

最後に尋ねたのは、イベント開催への意気込みだ。宝水ワイナリーを現地で満喫できる企画は開催されるのか。また、どういった内容のものが想定されているのだろうか。

「新型コロナウイルス以前は、地元の飲食店さんにご協力いただいて、料理とワインが楽しめるイベントを開催していました。今後は、ワイナリーの素晴らしい景観を楽しめるイベントの実施を検討したいと思っています。いつか、ぶどう畑でワインを飲みながらランチを楽しむイベントができたら素敵ですね」。

ワインが造られている場所で味わうことが、ワインを飲むいちばんの醍醐味だと話してくれた久保寺さん。地元の企業とも協力しながら、新たな企画を推進していきたいそうだ。

『まとめ』

岩見沢の美しい自然環境を最大限に活用して、「雪」を思わせる凛としたワインを醸す宝水ワイナリー。久保寺さんは、ワイナリーの強みについて次のように話してくれた。

「岩見沢ならではの特徴をワインに表現できていることと、ワインが地域を発信するツールになり得ていることが強みだと考えます。これからも、宝水ワイナリーが地域ならではの魅力を発信する場でありたいです」。

岩見沢でのワイン醸造を愛する造り手が、魂を込めて造るワインに、心を動かされないはずがない。ぜひ、どこまでも続く美しいぶどう畑が広がる宝水ワイナリーに直接足を運び、岩見沢の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込みながらワインを堪能したいものだ。

基本情報

名称宝水ワイナリー
所在地〒068-0837
北海道岩見沢市宝水町364-3
アクセスhttps://www.housui-winery.co.jp/access.html
HPhttps://www.housui-winery.co.jp/

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