『サントネージュワイン』栽培と醸造を愛する造り手による、「高い志」が感じられるワイナリー

山梨県山梨市にある「サントネージュワイン」は、2022年に創業80年を迎えた。創業からこれまでの期間をとおして、実直にワイン醸造を続けてきたワイナリーだ。

現在サントネージュワインでは、自社畑と契約農家のぶどうを使って、産地とぶどうの個性を映し出したこだわりのワインを醸造している。
今回は、ヴィンヤードマネージャーの宮川養一さんと、営業部所属の河野哲さんにお話を伺った。それぞれの立場から考える、サントネージュワインならではのワイン造りと、ワイナリーのあり方への思いとは。さっそく紹介していこう。

『サントネージュワインが辿った80年の歴史』

まず見ていくのは、サントネージュワインの歴史について。

厳選した西洋ぶどう品種から、こだわりのぶどう栽培をおこなっているサントネージュワインだが、現在の体制になるまでにはさまざまな変遷を辿ってきた。時系列に沿って、サントネージュワインの歴史を紐解いていこう。

▶︎サントネージュワインの歴史

サントネージュワインの歴史がスタートしたのは1947年のこと。山梨県甲府市郊外に誕生したワイン醸造所がサントネージュワインのルーツだ。この後、幾度かの社名変更や経営母体の変更を経て、現在に至る。

1951年に、最初の転換期が訪れた。現在の山梨市駅がある場所の近くに工場を移転し、社名を「太平醸造株式会社」に変更したのだ。

このタイミングで導入されたのが、ヨーロッパ系のワイン用ぶどう品種、セミヨンやカベルネ・ソーヴィニヨンだ。カベルネ・ソーヴィニヨンは、現在のサントネージュワインにおける主要品種でもある。

本格的なワイン造りの取り組みが認められ、1957年には昭和天皇皇后両陛下にご視察いただいたこともあるという。

続く1962年、日本葡萄酒株式会社との合併がおこなわれた。1972年には、ワイナリー名を現在の「サントネージュワイン株式会社」に変更。そして2002年には、アサヒビール株式会社の傘下となった。

▶︎現在のサントネージュワイン

今回、ワイナリーのお話をしていただいた宮川さん。ヴィンヤードマネージャーとして栽培と醸造を担当する宮川さんは、もともと「アサヒビールワイナリー」に勤務していた。

「東京でサラリーマンをしていましたが、ワインに思いを馳せ山梨のワイナリーに就職しました。それから縁あってアサヒビールワイナリーに入社したのです」。

宮川さんのぶどう栽培とワイン醸造の経験は、2022年でちょうど30年になる大ベテランだ。

サントネージュワインの歴史における最後の転機は2021年、株式会社サン.フーズの系列への移行だ。

サン.フーズは、みりんや料理酒などを主として製造している企業。ウイスキーやジンといったスピリッツ類も展開しており、酒類全般を取り扱っている。

2021年に入社した河野さんは、営業を担当。山梨県内のワイナリーに勤務していた河野さんは、営業社員を募集していたサントネージュワインに転職した。

経営母体が変わったことで、サントネージュワインの体質も大きく変化したという。

「母体が変わったことで、より自由に、自分たちの望むワインを追求できる企業体質に変わってきたと感じています」と、宮川さん。

ワイナリー名の「サントネージュ」とは、フランス語で「聖なる雪」という意味。富士山にかかる雪のイメージから、「高い志でよいワインを造ろう」という思いで付けられた社名だ。高い志を胸に、サントネージュワインは、ワイン造りの高みを目指して栽培と醸造をおこなっている。

『シャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨン サントネージュワインのぶどう』

続いて伺ったのは、「サントネージュワインのぶどう栽培」について。

サントネージュワインでは、どんなぶどうを栽培しているのだろうか。栽培のこだわりと苦労、ぶどうに対する造り手の思いとは。

宮川さんのお話から見えてきた、サントネージュワインのぶどうに対するこだわりに迫りたい。

▶︎自社畑で育てるぶどう 厳選の2品種

サントネージュワインでは、自社畑で栽培するぶどうと、契約農家によるぶどうを原料にワインを醸造している。

まずは、自社畑のぶどうについて紹介しよう。栽培品種は3品種で、メインとなるのは2品種。残る1種は、補助品種的な役割を担っている。

「栽培しているのは、白ワイン用ぶどうのシャルドネ、赤ワイン用ぶどうのカベルネ・ソーヴィニヨンです。赤ワイン用の補助品種として、プティ・ヴェルドも育てています」。

メイン品種であるシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンの比率は50%ずつで、プティ・ヴェルドの栽培はごく少量だ。

プティ・ヴェルドを栽培しているのは、カベルネ・ソーヴィニヨンの不安定さを補うため。カベルネ・ソーヴィニヨンは、年によっては品質が不安定なことがあり、単一での醸造が難しいヴィンテージも存在する。その場合の補助として使用するのがプティ・ヴェルドだ。最終的なワインの味を確認しながら、繊細にブレンドされる。

いずれのぶどうも、宮川さんがサントネージュワインにやって来た2005年から、本格的に栽培を開始した品種だ。

「それまでのサントネージュワインでは、20品種ほどのぶどうを伝統的な棚栽培で育てていましたが、カベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネの2品種に厳選したのです。すべて植樹し直して、垣根仕立ての畑に変えました」。

畑がまるっきり別の姿へと変貌を遂げた2006年は、激動の年だった。想像を絶する作業量だったことだろう。

「大規模な畑改革をしたのは、収量を減らしてでも品質を上げ、サントネージュワインの『グラン・クリュ』を造るという目標があったからです」。

カベルネ・ソーヴィニヨンに関しては、栽培当初から特に難しさを感じていたという宮川さん。標高の高さから、酸が落ち切らなかったり、色付きが進まなかったりしたためだ。

しかし、これまで培ってきた経験を元に栽培技術を向上させ、現在では着色良好で高品質なぶどうが収穫できるようになった。

「高品質なことで定評のある、山形のカベルネ・ソーヴィニヨンにも引けを取らないものが栽培できるようになってきたと感じています」と、宮川さんは笑顔を見せる。

▶︎山の斜面に位置する自社畑 高い標高を生かして

サントネージュワインでは、山梨市牧丘地区に自社畑を保有している。畑は南向きの斜面にあり、標高は780mと非常に高いのが特徴だ。畑は南北に長く尾根に沿っており、山風が抜けていく。風によって湿気が抜けるため、病害虫被害に遭いにくい。

畑の土壌についても見ていこう。日本特有の火山灰の腐植土で、粘土質の土壌だ。

「粘土質」と聞くと水はけがよくない印象を持つ人もいるかもしれないが、サントネージュワインの自社畑の土は比較的水はけが良好だ。

理由は「シルト質」土壌であることが関係している。シルトとは、砂より小さく粘土より粗い砕屑物(さいせつぶつ)のことだ。比較的粒子が大きいため、粘土よりも排水性に優れている。また、斜面に畑がある点も水はけに優位に作用し、排水性の向上に大きく役立つ。

畑周辺は山沿いということもあり、天候が不安定になりやすい。また、雨量は山梨の平均的な量か若干多い程度だという。雨対策について宮川さんに尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。

「ビニールの雨除けなどの特別な雨対策は、あえてしていません。ビニールがけをすることで、ぶどう周辺の温度や風通しが変わってしまうデメリットがあるからです」。

ビニールがけは雨除けとしては有効だが、弊害もある。ビニールが邪魔をして、日当たりや通気性が悪くなってしまうという点だ。風通しが悪くなるということはフルーツゾーンの温度も上がってしまう。これは果皮の厚さや香味にも影響してくる。サントネージュワインでは、日照や風通しを重要視しているため、ビニールがけはおこなっていないのだ。

雨除けの最大のメリットは、病気の発生が抑えられるため、収量が上がるという点。しかしサントネージュワインは、収量を犠牲にしても品質を取ることを選んだ。

「雨のひどい年などは、収量が大きく下がることもあります。しかし過剰に雨を避けるより、収量を減らしてでも高品質なぶどうを作りたいのです。雨だと病気は増えますが、生き残ったぶどうの品質がよければ、よいワインができます」。

ビニールがけなどの雨対策を実施しない分、天候の悪い年は通常の栽培管理をより丁寧におこなうことで病気の発生を防いでいる。天候を見て防除回数をやや増やし、丁寧に観察して病気を予防するのだ。できることを確実に、かつ丁寧に行うことで、ぶどうは栽培家の気持に応えるように糖度を上げていく。

なお、雨が多いことは一見デメリットのように思えるが、サントネージュワインの自社畑においてはそこまで大きな影響が出ないことも多い。標高の高さゆえに、より標高が低い周囲の畑に比べて収穫時期が遅くなるからだ。

ぶどうにとって雨の被害が最も大きくなる時期は、主に成熟期と収穫期。特に収穫期には防除作業がおこなえないこともあり、なるべく雨が降ってほしくないところだ。

だが、サントネージュワインの畑では、シャルドネは10月上中旬、カベルネ・ソーヴィニヨンは10月下旬が収穫期にあたる。山梨の気候を見ると、秋が深まると晴天が続き空気が乾燥するケースが多い。ぶどうにとってベストな天候のなか、収穫作業ができることが多いのだ。

「2021年は特に、畑の標高が高いことによる『よい面』が顕著にあらわれました。お盆の時期には雨が降ったのですが、秋口以降は晴天と乾燥が続き、高品質なぶどうが収穫できたのです」。

天候と土地の個性までも味方につけてぶどうの品質アップを目指すのが、サントネージュワインの栽培スタイルなのだ。

▶︎契約農家と協力してぶどうを確保

自社畑だけでなく契約農家のぶどうも使用しているサントネージュワインは、地元のぶどう農家に対して興味深い取り組みをおこなっている。地元農家に対して、ワイン用ぶどうの栽培を増やすよう働きかけているのだ。

「2005年から自社畑でワイン用ぶどうの栽培を続けてきて、素晴らしい品質のぶどうができると証明できました。近隣の農家さんにも、生食用ぶどうからワイン専用品種に、栽培を切り替えていただいています」と、宮川さん。

今後も地元農家に対して、ワイン用ぶどうの栽培を推進する働きかけを継続していくという。

自社畑を増やすと栽培管理により多くの人出が必要になり、品質をキープしつつ畑を維持するのが難しくなってくる。そのため、自社畑を拡張して収量を上げるのではなく、ワイン用ぶどうを栽培してくれる協力農家を増やす方針なのだ。

ぶどう栽培のプロであるぶどう農家の力を借りれば、高品質なぶどうの確保が可能だ。もちろん農家の収入源にもなるため、地元農業の発展と維持にも寄与できる。ワイナリーと地元の農業、双方にとってWin-Winとなる取り組みだ。
なお、地元の農家に栽培を依頼しているぶどう品種は、主に甲州やマスカット・ベーリーAといった日本固有のワイン用ぶどう品種。地元農家による甲州で醸造したワインのファーストヴィンテージは、2019年にリリースされた。今後もサントネージュでは、地元農家が栽培したぶどうからも、積極的にワインを造っていく。

▶︎ぶどうの特徴と栽培のこだわり  高い「酸」を生かす

サントネージュワインのぶどうの、最大の特徴は「キレのある酸」。畑の標高が高いため、収穫期まで酸がしっかりと残るのだ。

酸はワインの軸となる味覚要素のひとつだ。通常、日本の温暖な気候下では酸が抜けやすい傾向にあるため、酸の残るぶどうはワイン造りをする上で大きなアドバンテージとなる。

「酸が残る分、糖度を上げるための努力が栽培の肝です。酸と糖度をともにしっかりと上げることで、ワンランク上のぶどうが収穫できるのが強みですね」。

サントネージュワインが糖度を上げるために実施していることは、ぶどうの葉を健全に保つための管理だ。

「ぶどうの葉がおこなう光合成が糖を生み出します。葉を病害虫の被害から守ることがなによりも重要ですね」。

病害虫被害にあわせないためには、風通しを保ち、株全体を十分に日光に当てることが必要になる。そのためサントネージュワインでは、日照を確保するよう、太陽に向かって枝を伸ばす栽培管理を実践している。ぶどうの葉それぞれに対してまで神経を行き渡らせて管理することで、熟度の高い果実が収穫できるのだ。

丁寧にぶどうを管理することに心血を注ぐ宮川さんには、畑に関するもうひとつのこだわりがある。

それは、いついかなるときも畑が「美しい」状態に保たれているということ。いつ誰が来ても『美しい畑』だと思ってもらえる自信があると、宮川さんは言う。

美しい畑は、丁寧な畑仕事が生み出す賜物だ。畑全体の栽培管理を絶えず意識して作業をしているからこそ、隅々まで管理が行き届いた畑になる。

「サントネージュワインの畑に入ると、造り手が明確な意志と目的をもって枝葉の管理をしているのが自然と感じられるほどです。手をかけている様子が、畑全体から伝わってきますよ」と、河野さん。

いつ誰に見られても恥ずかしくない畑を維持する秘訣とはいったい何か?答えはいたってシンプル、「根性」のみだと宮川さんは笑う。

「人間と同じで、ぶどう畑も第一印象が大切だと思うのです。いつもきれいで美しい畑を保ちたいという普段の心遣いからも、よいワインは生まれるはずです。自分の子供に接するのと同じように、丁寧に畑を管理しています」。

愛情を注がれ、丁寧に手をかけて育てられたサントネージュワインのぶどう。高品質な果実が生まれるのは、造り手の努力のレベルが高いからにほかならない。サントネージュワインを訪れる際にはぜひ、造り手の努力を五感をフルに使って感じ取ってみてほしい。

『サントネージュワインのワイン造り 目指す醸造のスタイル』

サントネージュワインが目指すワイン像は、明確かつ具体的だ。

白ワインなら、メインディッシュに合わせられる「芯」を持ったワインであること。また、赤ワインなら、日本の美しさをイメージできる、なめらかな造りであることだ。

目指すワインを造るためのこだわりと醸造の裏側を紹介したい。

▶︎芯のあるシャルドネ

まず紹介したいのは、サントネージュワインの自社畑のシャルドネで醸造するワインの特徴とこだわりについて。

サントネージュワインの自社畑で栽培するシャルドネは、果実感が強くコクのある風味が特徴だ。鶏肉や豚肉の料理ともペアリングできる強さを持ち、はっきりとしたぶどうの存在感が感じられる。

実は、サントネージュワインのシャルドネが持つ強さは、「ナイトハーベスト」によって引き出されている。

ナイトハーベストについて説明しよう。「ナイト(夜)」「ハーベスト(収穫)」の名のとおり、太陽の出ていない夜間に収穫をおこなうのが「ナイトハーベスト」だ。

日光に当たる前に収穫作業をすることで、ぶどうの持つ本来の香味が最大限に果実に詰まった状態で収穫できる。

「ナイトハーベストをするときは、夜中2時半にワイナリーに集合して、3時には畑に入ります。20〜30人で一斉に作業を開始し、終わるのは朝の6時半頃。そして7時過ぎから、すぐにぶどうの仕込みに入ります」。

なんというハードスケジュールだろう。真夜中から作業が始まり、ようやく太陽が顔を出したと思ったら、立て続けに醸造作業がスタートするのだ。

ナイトハーベストでの収穫作業は、サントネージュワインの社員によっておこなわれる。ナイトハーベストを実施する際には、普段は栽培作業をしていないメンバーも畑に入って収穫をする。

普段は営業を担当する河野さんも、ナイトハーベストに参加したそうだ。「非常に貴重な体験でしたね」と目を輝かせる。

作業中、周囲は真っ暗闇だ。頭にヘッドライトをつけて、ほぼ手元の光のみを頼りにぶどうを摘み取っていくという。

「ナイトハーベストなどの品質を上げる取り組みが功を奏し、ぶどうの果実味の強さに、次第に自信が持てるようになってきました」と、宮川さん。

▶︎自慢のシャルドネの銘柄

ここで、自社畑のシャルドネから醸造された自慢の1本、「山梨 牧丘 倉科畑 シャルドネ」を紹介したい。

このワインの特徴は、なんといっても「コク」が強いこと。より深い旨味を加えるために用いている手法がふたつある。

ひとつは、「醸し発酵」のシャルドネをブレンドして、奥深さを出していること。「醸し発酵」とは、果皮や種と共に発酵させる手法だ。果汁のみを発酵させたワインをベースに、醸し発酵のシャルドネも加えることで、味に多重構造が生まれる。果皮のもつ旨味、種の持つタンニンなどがワインに溶け込み、深みや奥行きが増すのだ。

もうひとつの手法が、「ヘヴィトースト」した樽で熟成すること。内側を強く燻した樽で熟成させると、樽の香ばしさがしっかりとワインに付与される。風味が控えめなワインは樽香に負けてしまうが、サントネージュワインの自社畑のシャルドネは、強い樽香にも負けない。

「樽香に負けない力がぶどうにあるという前提でおこなっている、特別な醸造方法です」。

シャルドネのコクと強さを引き出した「山梨 牧丘 倉科畑 シャルドネ」に、宮川さんがおすすめするペアリングは、「うなぎの白焼き」だ。本当によく合うと、太鼓判付き。ワインから感じられる燻された樽の質感と、うなぎの皮が焼けた香ばしさが絶妙なのだとか。

ワインとうなぎが楽しめるペアリングを、ぜひ一度お試しいただきたい。

▶︎産地表現にこだわり カベルネ・ソーヴィニヨン

シャルドネに続いて紹介するのは、サントネージュワインが醸すカベルネ・ソーヴィニヨンについて。

「産地の風景や味、香りまで思い浮かぶようなワイン造りがしたいですね。特にカベルネ・ソーヴィニヨンは、産地の特性を考えたワイン醸造にこだわっています」。

サントネージュワインが取り扱うカベルネ・ソーヴィニヨンは、ふたつの産地に分かれる。ひとつは、山形県上山の契約農家のカベルネ・ソーヴィニヨン。もうひとつは、山梨県牧丘の自社畑で育てるカベルネ・ソーヴィニヨンだ。

それぞれの特徴を見ていこう。山形県は、高品質なカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培している日本有数の産地である。

ぶどうの強い風味、凝縮感をストレートに表現するため、ワインのスタイルは重めを目指す。カベルネ・ソーヴィニヨンの持つ果実の凝縮感を、しっかりと出すように醸造しているのだ。

一方、牧丘の自社畑のカベルネ・ソーヴィニヨンはライトな仕上がりが特徴だ。冷涼な気候ならではの風味が際立つため、和食に合う軽やかさを意識して醸造している。

同じカベルネ・ソーヴィニヨンでも、産地によって個性やワインにしたときの表現方法が全く異なることがわかる。

産地による個性の違いは、どのような技術でワインに表現されるのだろうか?宮川さんに、個性の表現方法を尋ねた。

「醸造行程ごとにぶどうに合った手法を選ぶことで、それぞれの個性を引き出しています。醸造のコントロールをしながら、エレガントさと強さの表現方法を変えていくのです」。

個性表現のための醸造手法は、実に多岐に渡る。例えば、醸し中に果汁を抜く「セニエ」という手法。果汁を抜く割合を変えることで、風味の調整が可能だ。

また、醸す期間によっても味や香りは大きく変わってくる。醸し期間を短くして温度を高く管理するのか、期間を長くとって温度を低く管理するのか。また、樽に入れる期間によっても仕上がりが異なる。

醸造中のあらゆる工程において、細かい選択が無数に存在する。小さな選択の積み重ねによって、世界でたったひとつのワインができあがるのだ。

「産地の個性を伸ばすための醸造レシピを考えているところが、こだわりポイントだといえるかもれません。産地の個性を伸ばすには、ぶどうの特性や育つ環境、育てる人を知ることも大切です」。

産地の個性を深く理解するため、宮川さんは山形の契約農家へ頻繁に足を運ぶ。ぶどうの芽が出てからは、月に2回のペースで視察に行くそうだ。

もちろん並行して、自社畑の管理もおこなっている。ぶどうのためなら、距離も苦労も厭わない宮川さん。ヴェレゾン(色づき)の時期である7月下旬からは、4〜5日かけて山形の契約農家28件の、70か所の畑をすべて回るというのだから驚きだ。

ぶどうとワインにかける情熱が、サントネージュワインの造るワインの魅力と底力を引き出す。サントネージュワインのカベルネ・ソーヴィニヨンのワインを飲んで、産地の違いを比べることで、造り手のこだわりを感じられるだろう。

『サントネージュワインの未来』

最後に伺ったのは、サントネージュワインが掲げる未来への目標について。

宮川さんと河野さん、それぞれの目指すものについてお話いただいた。順に紹介していこう。

▶︎新しいワインへの挑戦

「近年、ロゼワインとオレンジワインの需要が高まっているのを肌で感じています。現状サントネージュワインでは、ロゼやオレンジワインのラインナップは手薄なので、今後増やしていきたいですね」と、宮川さん。

ラインナップを増やす目的は、ペアリングの可能性を広げるためでもある。和食、洋食をはじめとしたさまざまな料理との組み合わせが提案できれば、より幅広いシーンにワインを合わせることができるはずだ。

ワインの種類を増やすことは、消費者の選択肢を増やすことにもつながる。多彩な場面に寄り添えるワイン造りを目指し、宮川さんたちは今後も新しいワイン造りにチャレンジしていく。

▶︎より多くの人の日常にワインを

続いては、河野さんにお話いただいたワイナリーの目標を紹介しよう。河野さんは営業担当として、販売や広報の視点からワイナリーの未来を語ってくれた。

「サントネージュワインが、こだわりを持って高品質なワインを作っていることが、実はまだ世間にそれほど知られていないのが事実です。栽培と醸造の細部にまでこだわってワイン造りをしているということを、より多くのお客様に知っていただくことが、直近での営業目標です」。

ワインには、造り手の思いが宿るという。丁寧に繊細に栽培されたぶどうで醸造した、高品質なワイン。心を込めて造られたワインをより多くの人に、すべてのワインファンに楽しんでもらうことがサントネージュワインの願いだ。

「私たちのワインが、嬉しい場面に寄り添う存在になれたら、とても嬉しいです。記念日やイベントといった大きな幸せ、日々の晩酌などの小さな幸せなど、すべての 『ハッピー』な場面に寄り添えるワインでありたいですね」。

そんな河野さんおすすめの銘柄は、やはり「山梨 牧丘 倉科畑 シャルドネ」だという。晴天の下、晴れやかな気持ちで飲んでほしいと話してくれた。

暑い季節には、しっかりと冷やして飲みたいサントネージュワインのシャルドネ。一方で、ワインの複雑味を隅々まで感じたいのであれば、通常の白ワインよりも温度を上げて楽しむとよいそうだ。

宝探しをするように、サントネージュワインの造るワインの持つ味と香りの要素をひとつずつ発見してみてほしい。

『まとめ』

宮川さんは、サントネージュワインの強みのひとつを、「駅から近いこと」だと話してくれた。サントネージュワインのワイナリーは、山梨市駅南口から徒歩3分の場所にある。しかも、自社畑があるのも同じ山梨市内。ワイナリーの魅力を気軽に楽しめることは、訪れる側にとって非常に大きなメリットだ。

ぶどうにかける愛情の深さと、醸造する上での工夫に余念がないサントネージュワインのワイン造り。

「1970年台からヨーロッパ品種に取り組んでいて、山梨のテロワールをしっかりと反映したワインがあるのも、サントネージュワインの強みです。日本ワインの面白味をしっかりと感じられるシリーズのワインを楽しんでいただきたいですね」。

駅近で気軽に立ち寄れるサントネージュワインを訪れて、日本ワインの魅力と奥深さがたっぷりと詰まっているサントネージュワインの醸すワインを、ぜひ現地で味わってみてはいかがだろうか。

基本情報

名称サントネージュワイン
所在地〒405-0018 
山梨県山梨市上神内川107-1
アクセスhttps://www.sainteneige.co.jp/access/
URLhttps://www.sainteneige.co.jp/

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