『タケダワイナリー』山形の個性と造り手の思いを映す、滋味あふれるワイン

「タケダワイナリー」は、東北のワイナリーのなかでもひときわ長い歴史を持つワイナリーだ。創業は1920年で、5代目の岸平(きしだいら)典子さんが代表を務める。

タケダワイナリーがある山形県上山(かみのやま)市は、ぶどう栽培に適した気候の土地。寒暖差が大きく比較的冷涼で、降水量も少ないのが特徴だ。

土地の持つ力を引き出すぶどう栽培・ワイン醸造をおこなっているタケダワイナリー。典子さんは、自分たちのぶどう栽培を「自然と喧嘩をしない栽培」だと表現する。

自然と喧嘩をしない栽培とはいったいどういうことだろうか?また、タケダワイナリーではどんなワインを造っているのか。興味深いストーリーの数々を、余すことなく紹介していきたい。

『東北で2番目に古いワイナリー 誕生の歴史』

最初に見ていくのは、タケダワイナリーがこれまで辿ってきた歴史について。

タケダワイナリーは東北で2番目に古いワイナリーで、大正からワイン醸造をおこなってきた。ワイナリーの物語を紐解いていこう。

▶︎ぶどう栽培のはじまり 上山市に特産品を

1920年(大正9年)にワイン造りを始めたタケダワイナリー。まずは、ワイン造りを開始するまでの歴史にフォーカスする。

「今ワイナリーがある土地を整えて果樹園を造り、ぶどうや紅柿の樹を植えたと聞いています。当初はワイン造りはおこなっておらず、生食用ぶどうを栽培していました。当時のぶどうは、非常に高級な商品作物だったようですね」。

武田一族によるぶどう栽培はその後も受け継がれ、3代目の武田重三郎の時代には、より力を入れるようになった。

当時、重三郎氏と懇意にしていた、上山市の初代市長である高橋熊次郎氏がぶどう栽培を推進していたこともあり、上山市一帯ではぶどう栽培が広まっていった。

市長が上山市でのぶどう栽培を推進した理由は、貧しい地域だった上山に特産品を作るためだ。上山の土地の多くは急斜面で起伏に富んでいるため平地が少なく、水田や畑が作れなかった。

「初代市長は、斜面でも栽培できる農作物としてぶどう栽培の導入を拡大させました。市民が豊かに暮らせるようにという願いがあったようです。地域には次第にぶどう栽培農家が増えていきました」。

▶︎地域のぶどうを無駄にしないために立ち上がる

稲作のできない上山エリアに根付いたぶどう栽培。だが、上山の農家の栽培が軌道に乗ると、ぶどうの「販売」に関する問題が浮上した。

長期保存が可能な穀類などとは異なり、ぶどうは鮮度が命で非常に傷みやすい果実だ。収穫したら短期間で売り切る必要がある。

しかし当時は、現代と比較すると輸送が難しく、保存技術も発達していない時代。せっかくのぶどうを腐らせて駄目にしてしまうことも多かった。

地域の農家が大切に育てたぶどうを無駄にしたくないとの強い思いで立ち上がったのが、武田家の人々だった。周囲の農家が収穫したぶどうを集め、仙台や新潟などの都市に売りに行ったのだ。

「うちの先代たちが流通を担当したことで、周囲の農家からは非常に喜ばれたようです。しかし残念ながら、完売するまでには至らないことが多かったようですね」。

生食用としてすべてのぶどうを売るのには限界があると考えた重三郎氏。加工品にすれば無駄なく活用できると考え、まずは「ジュース」の製造を開始した。そして、次なる加工品として選ばれたのが「ワイン」だったのだ。重三郎氏には先見の明があり、新しいものへの感度が高い人物だったという。

▶︎ワインの醸造を開始

「当時、東北でワインを造っている会社は、明治時代創業の『酒井ワイナリー』さんだけでした。祖父は酒井さんのことを知っていて、お付き合いがあったようです。酒井さんに感化され、自分たちもワインをやってみようと決意したようですよ」。

酒造免許の取得条件は厳しいものだったが、有言実行が信条の重三郎氏は、1920年に見事に免許を取得。タケダワイナリーは東北で2番目のぶどう酒醸造所となった。

ぶどう酒製造を開始したタケダワイナリーだったが、時代は第二次世界大戦へと向かい、ソナーの原料「酒石酸」を採るためのワイン造りをすることになった。ワインを醸造する過程で生成される酒石酸の増産は国からの指示だった。だが、反戦意識の強い重三郎氏にとっては、苦しい日々だったという。

「醸造所がまるで軍需工場のようになっていたと聞いています。祖父としては、不本意なことが多かったのでしょうね。しかし、家族だけでなく従業員の生活を守るためにワインを作り、酒石酸を献上していたようです」。

やがて第二次世界大戦は終わりを迎え、同じ頃にタケダワイナリーは大きな転換期を迎える。それまでデラウェア、コンコードなど、アメリカ原産の生食用ぶどう品種であるラブルスカ種や、日本で作出されたマスカット・ベーリーAなどを栽培してきたタケダワイナリーに、欧州系品種が導入されたのだ。

典子さんの父である4代目代表、武田重信氏と欧州系品種との出会いに関するエピソードを紹介しよう。

▶︎フランスワインのような「本物」を目指して

典子さんの父・重信氏は当初、家業を継ぐことに前向きではなかったという。東京農業大学に進学して醸造を学び、その後は研究室にも入ったが、ワインづくりにモチベーションや価値を見いだせず苦しんだ。

しかし、あるワインとの出会いが、重信氏のワインに対する考え方を大きく変えた。研究室の教授が飲ませてくれた、ボルドー五大シャトーのひとつ、「シャトー・マルゴー」だった。今まで抱いていたワインの概念が打ち砕かれるほどの衝撃と感動を覚えた重信氏。ワイナリー経営を継いで、自分も「シャトー・マルゴー」のようなワインを造ろうと決心したのだった。

重信氏が最初に注目したのは、ぶどう品種について。シャトー・マルゴーを始めとするボルドーの偉大なワインは、日本とは異なる「欧州系の品種」が使われていることを知ったのだ。さっそく、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを自社圃場で育て始めた。

そして、ワインについてより深く学ぶため、ほかにも、「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ」の「モンラッシェ」も飲んだそうだ。モンラッシェにも感動した重信氏は、すぐにシャルドネを植栽したという。

心動かされたワインを自らの手で再現したいと、深い情熱を持って突き進んだ重信氏。欧州系のぶどう品種の栽培を1970年代からスタートさせた。こうしてタケダワイナリーは、日本のワイナリーの中でも、特に早い時期から欧州系品種を育てたという歴史を持つことになった。

『自然とともに タケダワイナリーのぶどう栽培』

ここからは、タケダワイナリーの「現在」に迫っていこう。タケダワイナリーのぶどう栽培のこだわりや魅力について深掘りする。

どんなぶどう品種をどのように栽培しているのか。まずは、代々受け継がれてきた「自然と共存したぶどう栽培」を見ていきたい。

▶︎栽培品種

タケダワイナリーで栽培している品種を紹介しよう。まずは欧州系の品種から。白・赤それぞれ以下のとおりだ。

白ワイン用ぶどう

  • シャルドネ
  • ヴィオニエ
  • リースリング

赤ワイン用ぶどう

  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • メルロー
  • ピノ・ノワール

また、欧州系以外の品種は次のとおりである。

  • デラウェア
  • マスカット・ベーリーA
  • ブラック・クイーン

山形県が生産シェアナンバーワインを誇るデラウェアの栽培歴は、実に110年以上。さらにマスカット・ベーリーAは、なんと品種が誕生したとされる1927年には植栽という記録が残っているそうだ。

「マスカット・ベーリーAをいち早く導入したのは、マスカット・ベーリーAの生みの親である川上善兵衛さんと、上山市・初代市長の高橋熊次郎さんに交流があったためです。善兵衛さんからもらった苗木を、熊次郎さんがうちの祖父に手渡したという経緯だったようですね。マスカット・ベーリーAには、樹齢80年を越すものもあります」。

地元の農家が豊かになるようにとマスカット・ベーリーAを生み出した川上善兵衛氏。その思いは現代まで確かに続いているのだ。

▶︎自然のサイクルを大切にするぶどう栽培

次に、タケダワイナリーの圃場や栽培方法について紹介しよう。圃場の合計面積はおよそ15ha。古木は棚栽培で、比較的最近に植えたものは垣根栽培だ。畑は標高は180〜200mほどで扇状地帯にあり、東南向きの斜面に広がっている。

そんなタケダワイナリーの圃場では、「自然と喧嘩をしないぶどう栽培」を実践しているという。自然と喧嘩をしないとはいったいどういう意味だろうか?

「うちでは除草剤などの化学薬品を使いません。草刈りも自然のサイクルに合わせて実施しています。下草を豊かにすると自然と土が柔らかくなるので、耕起もしていません。土地に無理をさせず、自然の力に頼っているのです」。

生態系を意識することで、圃場の多様性が圧倒的に増えていくという。自然に無理をさせないことで生えてくる下草の種類が豊富になり、畑の多様性が担保できるというメリットもある。

例えば、窒素が足りないときにはクローバーが自然と生えてくる。クローバーの根粒菌は土に窒素を固定する働きを持つため、肥料を入れずとも土が豊かになる。

畑の多様性が豊かになると土壌の微生物が増え、土に団粒構造ができる。団粒構造とは、土の粒子が適度な大きさの塊を形成すること。団粒構造が形成されると、水はけと水持ちのバランスに優れた、ふわふわとした土になる。微生物の力で土を耕してもらっているイメージだろうか。

多様性豊かなタケダワイナリーの圃場は、一朝一夕でできたものではない。創業以来、自然な農法を実践してきたことが今に繋がっている。

「戦前は除草剤も農薬もなかった時代なので、化学物質を入れることはありませんでした。父が代表になった戦後は化学農薬の台頭が著しかった時代ですが、父自身が自然農法やマクロビオティックといった自然との共生を重視する農法に傾倒していたため、引き続き自然に即した圃場管理をしていたことが幸いしました」。

▶︎気候変動から感じるぶどう栽培の変化

上山市の年間降雨量は少なく、ぶどう栽培に適した地域だ。降雪があるため冬季には水分量が増えるが、ぶどうは休眠期に入っているので影響はほとんどない。

そんなタケダワイナリーでは、気候の変化についてはどのように感じているのだろうか。

「収穫期は、もっとも早いデラウェアが9月上旬ごろ、その後に9月中旬のシャルドネが続きます。10月上旬にメルロー、10月末にカベルネ・ソーヴィニヨンを収穫して終わりです。もともと上山市は秋雨が少なかったのですが、近年は増えてきたと感じています。また、温暖化の影響で気温が下がる時期が年々遅くなってきたせいで、以前よりも晩腐病が増えましたね」。

晩腐病はぶどうの成熟が進むと発生しやすくなる病気だ。かつて上山市では、収穫後期には十分に気温が下がっていたため、晩腐病の病原菌が繁殖しにくい環境だった。しかし近年は収穫後期の気温が上昇したことで晩腐病が増えやすくなっている。

典子さんが気候の変化を感じ始めたのは、20年ほど前からだという。そして、なんとなく感じていた変化が確信に変わったのは、およそ10年ほど前のことだ。

「気候変動に伴って感じるのは、土地に適した品種が変化してきていることですね。例えばリースリングは、30〜40年前に比べて品質がよいものが採れにくくなってきました。反対に、気候変動によって状態がよくなったのが、カベルネ・ソーヴィニヨンです。1990年代にはカベルネ・ソーヴィニヨンにとっては寒すぎると感じていましたが、今では最適な気候になりました」。

また、ヴィオニエについても変化を感じている。ヴィオニエは南フランス原産の品種なので、比較的温暖な気候を好む。上山では気温が上がってきたことが影響したようで、以前よりも品種特徴が出やすくなってきたと感じているそうだ。

だが典子さんは、気候の変動に一喜一憂しても仕方がないと話す。

「気候が変わったのなら、変わった気候に合うように栽培をおこなえばよいのです。栽培の時期を調整し、栽培する品種を気候に合うよう変化させていきたいと考えています」。

「自然と喧嘩をしない」というタケダワイナリーの信念は、気候変動に対しての考え方にも如実に表れている。

▶︎ぶどう栽培でいちばん大切なこと

自然と調和し、自然を捻じ曲げる栽培はおこなわない。そのために、タケダワイナリーが何よりも大切にしていることがある。「畑の観察」だ。

「畑に出て観察することが一番です。観察することで、見えることがたくさんあります。温暖化でぶどうの生育状況が変わってきたことも、観察していれば細かい変化はすぐにわかるのです。変化を感じ取れれば、打つべき手をすぐに考えられます」。

タケダワイナリーでは10名体制で栽培管理をしているため、メンバーは気づいた変化をこまめに報告し合う。

畑で気づいたことは、どんなに小さなことであろうと朝のミーティングで共有するそうだ。どんな作業をしたか、どんな虫を見たか、いつもと違うことはなかったか。話し合われる内容は多岐に渡る。自然と共存するぶどう栽培の根底には、自然へのリスペクトがあるのだろう。

『テロワールの表現がすべて タケダワイナリーのワイン造り』

次に、タケダワイナリーが醸すワインについて見ていきたい。

「『こんな味のワインを造りたい』と考えているわけではなく、土地で採れたぶどうを、どう生かしてワインにするかということだけを突き詰めてワインを造っています。造るのではなく、魅力を引き出すイメージですね」。

上山のテロワールを表現することだけを一心に考えるタケダワイナリーの、ワイン造りの真髄に迫る。

▶︎タケダワイナリーのスタイル

タケダワイナリーのワインは、山形ならではの個性を映し出している。

「私たちのぶどうは、一見穏やかでおとなしい印象を受けるかもしれません。しかし口にすると、じわじわと旨味や甘味、酸味が感じられますよ。寒暖差が大きいため皮に厚みが出るので、噛めば噛むほど皮や種から味が出てくるのです。そのため、ワインにしたときにも山形のぶどうらしさが表現できるのです」。

上山の地で自分たちが精一杯育てたぶどうと、古くから付き合いがある農家から買った大切なぶどうを目の前にしたときに、『このぶどうの個性を出すにはどうしたらよいか』と考え抜き、ワインとして「表現する」ことにこだわっている。

土地に生きる人々や気候風土など、すべての要素をワインに閉じ込めるのがタケダワイナリーのワイン造り。テロワールを素直に表現するワインには、品種個性もはっきりと表れてくる。

例えば、山形の現在の気候にとてもあっている品種だというカベルネ・ソーヴィニヨンは、生き生きと品種個性が輝いたワインになる。

また、シャルドネはややトロピカルな味わいだ。温暖化の影響を受ける前までは冷涼な印象だったが、ここ数年で一気に暖かな印象のシャルドネに変化した。

▶︎選果へのこだわり よいものだけを徹底的に見極める

タケダワイナリーのワイン造りのこだわりのひとつに、「選果」がある。傷んだぶどうは一粒たりとも見逃さず、きれいなぶどうだけを選別する作業を徹底している。

選果作業は2度実施。収穫する時点で腐敗果を取り除くのはもちろんのこと、醸造前にもテーブルにすべての果実をあけ、傷んだぶどうがないかを再度チェックする。

厳しい選果はすべてのぶどうに対しておこなう。ハイレンジワインだけでなく、ベーシックレンジのワインにも、厳しい選果をクリアしたぶどうだけが使われているのだ。

ここまで厳しい選果を始めたのは、典子さんの代になってから。あまりに手間がかかるため、先代と揉めたこともあるのだと話してくれた。

「すべてのぶどうを2度も選果をするというのは、とんでもなく大変な作業です。しかし、しっかりと選果しておくと、後の醸造工程が圧倒的に楽になります。ワインに雑菌が混じらなければ、ぶどうは自然で健全な発酵をしてくれます。選果の丁寧さで仕上がりが決定的に変わりますよ」。

厳しい基準で選果をするのは苦しいと感じるときもあるという。作業の大変さだけでなく、精神的な辛さもあるからだ。

「腐敗していた場合には、隣接した部分も除去しなくてはいけません。傷んだ部分のおよそ3倍ほどを取りますが、自分たちや農家さんが一生懸命作ったぶどうなので、捨てたくないと思ってしまうこともありますね」。

▶︎日本でワインを造るからこそ、「衛生管理」が重要

選果のほかにタケダワイナリーが重要視している醸造のポイントには、徹底的な衛生管理がある。

すべてのタンクは分解したうえで丁寧に洗浄。また、醸造所の床は染みひとつなくピカピカだ。一滴でもぶどうの汁がたれると腐敗して雑菌が増えてしまうため、すぐに掃除することを徹底している。

「タンクの洗浄には、高熱の蒸気を使った殺菌と、念入りなブラシ洗いを繰り返します。残留の可能性があるため洗剤は使いません」。

念入りな清掃を徹底するようになった背景には、典子さんがフランスに留学したときの経験が関係している。

フランス留学中に訪れた美味しいワインを造るワイナリーに共通していたのが、醸造所の衛生面。醸造中のワインの健全な香り以外は一切しない環境で管理されており、衛生管理の重要性を実感した。

また、帰国後に日本とフランスの違いをはっきりと実感したことも、衛生管理への高い意識に繋がった。

「微生物学専攻だったので、もともと衛生管理に対する意識は高い方だったと思います。しかし、帰国時に改めて、日本はカビや雑菌が非常に繁殖しやすい環境であるということを認識したのです。日本でワインを造るなら、より厳しく管理する必要があると感じました」。

余計な菌がいない環境なら、ぶどうが本来の力を100%発揮できる。タケダワイナリーの思いはシンプルに、「土地で採れたぶどうを生かすワインを造る」こと。徹底した選果と衛生管理も、すべてはそこに直結しているのだ。

『タケダワイナリー おすすめ銘柄の紹介と、目指すもの』

タケダワイナリーのワインは、どういった人に向けて造られているのだろうか。

「特定の世代や性別に向けたマーケティングは、あまり考えていないんです」と、典子さん。少し考えてから、「食べるのが好きな人に飲んでほしいですね」と微笑んだ。

タケダワイナリーが理想とするシチュエーションは「食事とともにワインがあること」だ。美味しいものと自分たちのワインを合わせることで、ハッピーになって欲しいのだという。

「ワインは食中酒として発展してきたお酒です。土地の食材と合わせて飲むのがいちばんだと思いますよ」。

タケダワイナリーのおすすめワインと料理のペアリングを、3つ紹介いただいた。

▶︎「タケダワイナリー ルージュ 赤(辛口)」

ひとつ目は、ベーシックレンジの赤ワイン「タケダワイナリー ルージュ 赤(辛口)」。ベーシックレンジとはいえ、選果などの醸造工程はすべてハイレンジワインと同じように造られている。

「山形のマスカット・ベーリーAの特徴がしっかりと出た味わいに仕上がっているワインです。酸がしっかりとしていて、後味には旨味を感じます。ペアリングのおすすめは、山形のジンギスカンですね。山形は蔵王で羊を飼っていた歴史があるので、羊肉が美味しい土地なのです。また、ローズマリーなどの香草を添えた子羊のグリルとも相性抜群ですよ」。

▶︎「タケダワイナリー サン・スフル 白(発泡) 山形県産デラウェア種100%」

続くワインは「タケダワイナリー サン・スフル 白(発泡) 山形県産デラウェア種100%」。デラウエアの瓶内一次発酵ワインだ。

瓶内一次発酵とは、発酵中に瓶詰めすることで炭酸ガスを発生させた微発泡ワインのこと。デラウェアの甘くフルーティーな香りと酵母の澱が持つ旨味により、奥行きがありつつもフレッシュな味わいに仕上がっている。「オールマイティーで何にでも合う」と、典子さん。

「野菜や魚や肉、本当になんでも合うのです。夏に冷やして、ビールの代わりに開けるのが最高ですよ」。

典子さんが実際に試したペアリングで、おすすめのものを教えていただいた。

「ズッキーニなどの夏野菜グリルや、ビネガードレッシングのトマトサラダなどがぴったりでしたので、試してみてください」。

「タケダワイナリー サン・スフル 白(発泡) 山形県産デラウェア種100%」は、フランス・パリにも輸出している銘柄だ。デラウェアは「ラブルスカ種」という分類で欧州系とは異なる系統のぶどう。ラブルスカ種の香りはネガティヴに捉えられることも多いが、フランスでも大好評なのだという。

「取り扱ってくれているフランスのレストランに、ドキドキしながら行ったら、ソムリエさんが大絶賛してくれてとても嬉しかったです。デラウェアに興味津々で、色々と質問されました。日本人はデラウェアを好む方が多いですが、海外でも好まれる香りなのかもしれないですね」。

▶︎「ドメイヌ・タケダ ベリーA古木 赤(辛口)」

最後に紹介するのは、「ドメイヌ・タケダ ベリーA古木 赤(辛口)」だ。「タケダワイナリー ルージュ 赤(辛口)」と同じマスカット・ベーリーAのワインだが、こちらは自社圃場の樹齢80年のぶどうのみを使用した贅沢な1本。

古木のぶどうならではの滋味深くシルキーな質感と、ふわっと香る樽香がエレガントだ。「タケダワイナリー ルージュ 赤(辛口)」と同時に開け、違いを楽しむのもおもしろいかもしれない。

「マグロとペアリングするのがおすすめです。刺し身や寿司はもちろん、カジキマグロの照り焼きにも合いますよ」。

▶︎タケダワイナリーが目指すもの

最後に、タケダワイナリーの未来について尋ねてみた。

「これからも、目指すものは今までと変わりません。土地の味が感じられるワインを造りたいですね。この土地でワインを造る意味をより深掘りし、突き詰めていきたいと思います」。

より土地に合った栽培方法や品種を模索し、さらにクリアでシャープな表現を追求する。目指すのは、ひと口飲んで「これは山形のタケダワイナリーのワインだ」とわかってもらえるものを造ること。

すでに土地の個性を表現したワインを造ることに成功してるかのように思えるタケダワイナリーだが、まだまだ道半ばだという典子さん。

「理想の6割にも到達していないですし、毎年反省の繰り返しです。しかし、だめなところがわかっていれば改善点が見えてきます。今よりもさらにぶどうに無理をさせず、環境負荷にならないやりかたがあるはずなのです。ぶどうが喜んでたくさんの実をつけてくれれば、さらに素晴らしいワインが造れるでしょう」。

『まとめ』

創業以来、山形県産のぶどうのみを使用し、山形の味を表現し続けてきたタケダワイナリー。「土地の個性がはっきりとわかるワイン」を造っていることに、造り手は誇りを持っている。だが、現状に甘んじることなく、さらなる高みを目指していくのだ。

「ワインには、造り手自身の個性も表れると思います。私たちのワインは華やかではありませんが、グラスに開けてじっくりと飲んでもらううちにだんだんと味わいが出てきます。ゆっくり飲むと、美味しさがじんわり伝わってくるワインなのです」。

自分自身が「そんな人でありたい」と思っているということかもしれないですけどね、と微笑む典子さん。自分に厳しくぶどうに優しい造り手がワインに向ける愛は深い。

気候や土壌だけでなく、造り手の個性と思いも映し出されたタケダワイナリーのワインを、ぜひ味わってみてほしい。

基本情報

名称タケダワイナリー
所在地〒999-3162
山形県上山市四ツ谷二丁目6番1号


アクセスhttp://www.takeda-wine.co.jp/visit/
HPhttp://www.takeda-wine.co.jp/

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