イベント体験記:東京のど真ん中で子どもワイン造り体験『清澄白河フジマル醸造所』

こんにちは!東京都江東区にある都市型ワイナリー「清澄白河フジマル醸造所」が主催する「夏休み こどもワイン造り体験」に参加しました。

子どもたちが保護者とペアになってぶどう搾りを体験。その後、できたてのぶどうジュースを飲みながら、シェフ特製ミニランチコースを堪能しました。また、搾ったぶどう果汁のワインが出来上がると、子どもひとりにつきボトル1本プレゼントされるというイベントです。

2015年のオープン以来、毎年開催されているこちらの人気イベント。コロナ禍を経て、今年4年ぶりに開催されました。驚くべきはその参加費。大人も子どもも、なんとひとり1000円なんです。

子どもたちが大きくなってワインを目にした時に、「夏休みにフジマル醸造所でワインを造ったなあ」という経験を思い出してワインを身近に感じてもらいたいという、スタッフの思いが詰まったイベントです。

清澄白河フジマル醸造所を運営する株式会社パピーユは、大阪の地でワインのセレクトショップとして産声をあげました。現在は大阪と東京に都市型ワイナリーとレストラン、ワインショップを展開し、ワインの楽しさを私たちの日常に取り入れる工夫を凝らしています。

都営地下鉄大江戸線、東京メトロ半蔵門線が乗り入れる清澄白河駅から徒歩5分。「清澄白河フジマル醸造所」の1階には醸造所、2階にはレストランが併設されています。階段を昇ると、どこからともなく甘い果物の香りがただよってきます。

「子どもも大人と同じカトラリーとお皿で食事してもらいたい」「レストランでの食事を楽しんでもらいたい」というスタッフ皆様の粋な計らいが感じられます。

『ワイン工場でぶどう搾り体験』

「醸造所は10〜15度と寒いです。また、ぶどうの果汁でお洋服が汚れてしまう可能性があるので、汚れてもいい服装でお願いします」と事前に案内がありました。

お洒落なレストランの奥にある階段には、大きな樽のようなものが所狭しと並んでいます。

階段を降りていくと、そこはまさにワイン工場。

手を石鹸で丁寧に洗い、ビニール手袋を装着します。髪の毛が入らないように不織布のヘアキャップを被り、いよいよぶどう搾り体験がスタートしました。

説明してくれたのは、醸造責任者の佐久間遥さん(写真左)と清澄白河フジマル醸造所店長の仲真賢一さん(写真右)。佐久間さんはふたりのお子さんを持つお母さんです。優しい眼差しと透き通る声で、ぶどうがどのようにワインに変身するのか説明してくれました。

「ワインにはどんな色があるか知ってますか?」

佐久間さんの最初の質問に、「赤!」「白!」という声とともに「ロゼ!」「オレンジ!」などという声も。

「すごい、そんなことまで知っているんだね。お家でお父さんお母さんが美味しそうにワインを飲んでいるんだね。将来有望です」と、工場内はクスクス笑いが渦巻きます。

清澄白河フジマル醸造所は、大阪府柏原市に自社畑を保有しています。畑で採れたばかりのデラウェアが今回のワインの原料。まずはデラウェアの実を茎から取り外す作業からスタートです。

ちなみに茎は「果梗(かこう)」もしくは「梗(こう)」と呼ばれ、梗の部分を取り除く作業を「除梗(じょこう)」といいます。

今回のイベントでは160kgものデラウェアを使いました。ワインに興味津々の子どもたちの手で、ぶどうは果梗からどんどんはずされていきます。

「続いて、バケツの中でぶどうの実を潰してください」と佐久間さん。

はじめは戸惑う子どもたちも、手でぶどうを潰してみると、その感覚が楽しくて仕方ありません。まるでぶどうの砂場で遊んでいるよう。お家ではとてもできないことに、「こんなことしていいの?」「楽しい!」と歓声があがります。

「今度は、ぶどうを房のままバケツの中に入れて、バケツの中で潰してください」と佐久間さん。子どもたちはぶどうをバケツに入れて潰していきます。「ぶどうの実を食べていいよ」と言われ、おそるおそる口に運ぶと、「すっごくあまい!」「ぶどうの種があるよ!」と、子どもたちは新しい発見にキラキラと目を輝かせます。

清澄白河フジマル醸造所では、現在もこのように手作業でぶどうを潰したり、下の写真のような機械を使ってぶどうの梗を取り除き、潰しています。

子どもたちが潰したぶどうがバケツいっぱいになると、佐久間さんは「バスケットプレス」とよばれる機械にぶどうを入れていきます。

バスケットプレスは、上から下に向かって手動で圧をかけてぶどうを潰し、ぶどう果汁を取り出す機械。今でも世界のワイン産地で使用されています。

バスケットプレスから自然に押し出されたぶどう果汁がジュースとなって流れ出てきました。搾りたてのフレッシュジュースを、作業後に飲むことができます。

そして、いよいよ子どもたちの出番です。バスケットプレスの青い棒を子どもたちが回し、圧をかけてぶどうを搾ります。どんどん棒は回しづらくなり、動かすのがたいへんに。

「重い!」「がんばれ!」という掛け声に合わせて、子どもたちは一生懸命ぶどうを搾ります。そして、160kgものデラウェアがぶどうジュースになりました。

『お待ちかねのランチタイム 自分たちで搾ったぶどうジュースの味は?』

作業を終えた子どもたちが、手を洗って2階のレストランに戻ってきました。これからいよいよ、甲山シェフの特製ミニランチコースをいただきます。

まずは搾りたてのぶどうジュースで乾杯。大人は大阪府柏原産のデラウェアで造られたフレッシュな生樽ワインで乾杯です。

「搾りたては透き通っていたぶどうジュースの色が、すぐに変わったのはどうしてですか?」「透明なぶどうジュースはね、空気に触れたとたんに酸化して色が変わるんだよ」と、子どもたちの疑問に、佐久間さんはじめスタッフの皆様は丁寧に答えてくれます。ぶどうをそのまま食べているかのような味わいに、「スーパーで売ってるぶどうジュースとは味が全然ちがう!」と、子どもたちは驚きながら嬉しそうに飲んでいました。

本日のランチメニューはこちら。

  • スープ:北海道産ゴールドラッシュ(トウモロコシ)のポタージュ
  • パン:パーラー江古田 カンパーニュ
  • パスタ:宮崎県産 都萬(とまん)牛のボロネーゼ 自家製タリアテッレ
  • デザート:パンナコッタ

どんなお料理が出てくるんだろうとワクワクしながら背筋を伸ばして緊張の面持ちで待っていると、きれいな色のポタージュスープと、上品に盛られたパンがサーブされました。


こっくりと濃厚な味わい。クリーミーで口当たりまろやかなトウモロコシのスープは子どもたちの大好物。「甘くて美味しいね」「スプーンですくって飲むんだよ」と、子どもたちは大人を真似てスープをいただきます。最後はパンでお皿をぬぐって、あっという間に完食です。

    

大人用に準備いただいた生樽ワインは、香りはバッと弾けるように甘く華やか。口に含むとキリッとした酸味とドライなボディで、甘いトウモロコシのスープを引き立ててくれる美味しさです。

こちらのワインは、瓶ではなくタンクに詰められ、生ビールのようにタップからグラスに注がれます。店頭でしか味わえない最高にフレッシュなワインですよ。

いよいよ、メインのパスタの登場です。宮崎県産の都萬(とまん)牛というブランド牛をたっぷり使ったボロネーゼソースと、フジマル醸造所で作られた自家製タリアテッレが立ちのぼる湯気と共にサービスされました。

モチモチの麺に、ボロネーゼソースがたっぷり絡んだパスタ。この上なく贅沢で、ボリュームも子どもたちにピッタリ。働いて腹ペコの子どもたちは、真剣な表情でパスタを口にはこびます。

「麺がモチモチだよ」「お肉が美味しい」と、危うくママの分まで食べられてしまいそうでした。

デザートは濃厚なパンナコッタです。パンナコッタはイタリアの伝統的なデザートで、生クリーム、牛乳、砂糖を混ぜ合わせ加熱し、ゼラチンで冷やし固めたシンプルなスイーツです。今回はこのパンナコッタに、甘く煮たリンゴとサクサクのクッキー生地が添えられていました。

濃厚なパンナコッタとりんごの酸味、クッキー生地のバランスが心地よく、大満足のミニコースを堪能しました。

「あのぶどうジュースが、どうしてワインになるのですか?」

食事中には子どもたちからこんな質問が出ました。佐久間さんは、ワインがぶどうの力で自然に生まれるお酒だということを、丁寧に言葉を選びながら説明します。

そんな佐久間さんによって大切に造られるワインは、完成するとボトルに詰められて参加者にプレゼント。瓶には白紙のラベルがついているので、子どもたちが思い思いの絵を描くと世界に1本だけのワインが完成します。

11月頃にワインボトルが届くそうです。完成までの経過観測もSNSでアップしてくれるので、待っている時間も楽しみですね。

『まとめ』

清澄白河フジマル醸造所を運営する会社「株式会社パピーユ」代表の藤丸さんは、「夏休み こどもワイン造り体験」について次のように話してくれました。

「10年、20年後もワイン業界が必要とされることを目指して日々活動しています。大阪にある『島の内フジマル醸造所』では、週に1回『こども食堂』も運営し、70人分ほどの食事を提供しています。『ワイン屋さんってこんな楽しいことをしてるんだ』ということを、地元の人や子どもたちにもっと知ってもらいたいですね」。

イベントに参加した子どもたちは将来、「あのワイン屋さんでぶどうを搾ったな」「あの時のごはん美味しかったな」と思いだすのでしょうね。

そして、ワインは彼らにとって「お父さんとお母さんが好きだったお酒」「ワクワクして楽しいお酒」として、心に刻まれていくのかもしれません。

清澄白河フジマル醸造所が主催する「夏休み こどもワイン造り体験」は、大阪府にある「島の内フジマル醸造所」でも開催されます。

ぜひ来年の夏休みの思い出や自由研究として、参加してみてはいかがでしょうか。

イベント:「夏休み こどもワイン造り体験」

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