『HASE de KODAWAAR WINERY』日本ワインの一大産地で「こだわり」の栽培と醸造を

長野県松本市にある「HASE de KODAWAAR WINERY(ハセ ド コダワール ワイナリー)」は、代表社員ワイン醸造マイスターの長谷川福広さんが、自身のこだわりをつめこんだワイナリーだ。

土作りからこだわった自社圃場は、長野県松本市と塩尻市にある。ぶどう栽培に最適な気候で、タンニンが豊富なぶどうが育っている。そして醸造所では、長期熟成を目指した赤ワインやグイグイと飲める白ワインなど、バラエティ豊かなワインが生まれる。

造り手である長谷川さんは、元サラリーマンの醸造家。好奇心から始めたワインの勉強にのめり込み、自分のワイナリーを建ててしまったほどの行動力の持ち主だ。

それでは早速、長谷川さんがワイナリーを持つまでの経緯と、ぶどう栽培・ワイン醸造の「こだわり」について詳しく紹介していこう。

『ワインに魅了されて ワイナリー誕生のきっかけと歩み』

まずは、HASE de KODAWAAR WINERY誕生の歴史をさかのぼっていきたい。代表の長谷川さんがワインに出会ったきっかけ、そしてワイナリーを志した経緯とは。

長谷川さんとワイナリーの歩みをたどってみよう。

▶︎海外経験、そしてサラリーマン勤務 長谷川さんとワインの出会い

HASE de KODAWAAR WINERYの代表、長谷川さんはサラリーマンとして退職まで勤め上げ、その後、自身のワイナリーを立ち上げた。ワイナリー誕生のきっかけを語るにはまず、長谷川さん自身の経歴やワインとの関わりを紐解く必要があるだろう。

新潟県三条市の出身の長谷川さんは、高校卒業後に千葉の大学に進学して土壌学を学んだ。大学卒業後には東京の肥料メーカーに就職するも、「海外で活動する」という夢を捨てきれずおよそ2年で退職。夢を叶えるため、青年海外協力隊に参加しタンザニアへ渡った。

「タンザニアでは、2年間ほどイギリス人のチームに加わって土壌調査をおこないました。タンザニアのムベヤという都市にいたときに、ワインとの最初の出会いがありました」。

長谷川さんが出会ったのは、現地で飲まれていた甘口の赤ワイン「ドドマワイン」。長谷川さんにとって異国の地で飲んだワインの印象は非常に強く残っているという。

充実した2年間の活動を終え、帰国した長谷川さんは日本で再就職を果たす。次の会社は、農薬などの化学製品を製造販売する大手企業だった。営業職として、大阪、山梨、名古屋、仙台と異動を重ねながら定年退職まで勤め上げる。そして定年後も延長勤務を選択し、企業で働き続ける生活を送っていた。

長谷川さんとワインとの2度目の邂逅は、会社員時代、山梨に転勤したときのことだ。日本ワインの大産地である山梨での暮らしは、長谷川さんの意識をワインに向けさせるには十分だったという。

タンザニアと山梨における、2回の印象的なワインとの出会いと、長いサラリーマン生活の終わり。これらふたつの要素に、もうひとつのきっかけが加わったことで、長谷川さんはワイナリー立ち上げへと向かう。

もうひとつのきっかけというのは、新聞で知った「塩尻ワイン大学」の存在だった。

▶︎塩尻ワイン大学に通う日々

「ある日、新聞を眺めていると、塩尻ワイン大学開校の案内が載っていました。これは面白そうだと思って、すぐに応募しましたね」。

最初は自分のワイナリーを作ろうとは考えていなかったという長谷川さん。純粋な好奇心から応募した塩尻ワイン大学の講義だったが、勉強を進めるごとにぶどう栽培とワイン造りにのめり込むことになる。

塩尻ワイン大学に通い始めたのは、2014年5月のこと。延長勤務で会社に通いながら、塩尻ワイン大学の勉強も並行して取り組んだ。1か月に2回の講義を4年間受け続けた。

「塩尻ワイン大学は、小規模ワイナリーを起業する人間を育てるための、塩尻市主催の取り組みです。第1期生として勉強に励むうち、ワイナリーとして独立したいという思いが強くなっていきました」。

2018年3月に修了し、すぐに独立。バイタリティあふれる長谷川さんは、なんと、会社での勤務を続けつつもぶどう栽培とワイン醸造の勉強をし、さらに自分のぶどう畑取得に向けてすでに動き出していたのだ。

▶︎圃場を増やし、自分のぶどうを育て上げる

長谷川さんが取得した最初の畑は、松本市の山辺にある圃場だった。開設したのは2016年春のこと。もともとデラウェア畑だった小さな圃場が運よく空いていたのだ。畑を借りた長谷川さんは、垣根栽培でピノ・グリとリースリングを植えた。

その後、すぐにふたつ目の圃場も取得できることになる。塩尻ワイン大学の紹介で、塩尻市片丘の圃場を借りることができたのだ。耕作放棄地だった場所で、松本市山辺の畑よりも大きな畑だった。片丘の畑は徐々に広げていき、今では約70aほどの広さとなった。

また、2019年には松本市に建設予定の自身のワイナリーの近くに、40aほどの新たな圃場も取得。

そして2022年7月には、念願の醸造所が完成した。HASE de KODAWAAR WINERYは、松本市ワイン特区の制度を利用しながら、自分のこだわりを詰めこんだワイン造りを開始したところだ。

『HASE de KODAWAAR WINERYのぶどう作り』

4つの圃場を保有するHASE de KODAWAAR WINERY。それぞれの畑から生まれるぶどうの品種や特徴、栽培のこだわりを見ていこう。

▶︎好みのぶどうと土地に合うぶどうを育てたい

松本市山辺の圃場では、白ワイン用ぶどうを中心に栽培する。代表的な品種は次の2種類だ。

  • ピノ・グリ
  • リースリング

ピノ・グリを選んだ理由について、長谷川さんは次のように話す。

「自分は酸がおだやかな品種が好きなので、ピノ・グリを選びました。ピノ・グリは酸が控えめで、香りがまろやかなのです。日本酒のように日本食とマッチする白ワインを目指しているので、ピノ・グリが最適だと考えました」。

続いては、塩尻市片丘の圃場に植えられたぶどうについて。圃場に植えられたのは、白ワイン用ぶどうのシャルドネと、以下の赤ワイン用品種だ。

  • ピノ・ノワール
  • メルロー
  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • カベルネ・フラン
  • ネッピオーロ
  • ビジュノワール

片丘は標高約780mの場所にあり、比較的冷涼な気候だ。温暖な地域のぶどうはあまり相性がよくない。そんな中、長谷川さんが手応えを感じている品種は、ピノ・ノワールとメルローだ。

「ピノ・ノワールは栽培が難しい品種ですが、意外と生育がよく驚いています。また、メルローは昔からこの土地に合うといわれているだけあって、土地との相性のよさを感じますね」。

一方、栽培が難しいのがカベルネ・ソーヴィニヨン。2022年、栽培5年目にしてようやくまともな実がついたのだそうだ。それまでは病気で全滅したり、ハクビシンに食べられたりと、災難続きだった。

「2020年にはハクビシンの被害が大きく、全滅した区画もあります。野生動物もおいしいぶどうがわかるのか、熟す順番にきれいに食べていくのです。電柵を設置してからは、目立った害はなくなりました」。

さまざまな困難はありつつも、ひとつずつ乗り越えて成長を続ける。長谷川さんは今後も、新たな困難を乗り越えて進んでいくのだ。

▶︎4箇所の畑 それぞれのテロワール

HASE de KODAWAAR WINERYの圃場は4つのエリアに分かれている。そのため、日照条件や気候条件、土壌の性質などの面でそれぞれに特色がある。土地ごとの特色はその場所で育つぶどうの味に直結する。複数の場所に畑を持つことで、テロワール表現の幅が広がったというわけだ。

もちろん、畑が分散していることにはデメリットもある。移動の手間がかかるなどの不便さだ。しかし長谷川さんは、それぞれの畑の特徴やよさを生かしたぶどう栽培でデメリットを乗り越えることができると考えている。

それでは、HASE de KODAWAAR WINERYの各圃場のテロワールについて確認していこう。

まずは、最初に取得した松本市山辺の圃場について。山辺の圃場は、標高が高く南向きの斜面に広がる。日当たりと水はけがよい、素晴らしい立地だ。古くからデラウェアが栽培されていた場所というだけあって、土壌の性質も申し分ない。山から崩れ落ちた岩からできた轢質が主体の、非常に水はけのよい土なのだ。表土層が厚くぶどうの根が深く張っていける豊かな土をしているが、少し掘り返すとゴツゴツした岩や砂利が出てくる。

唯一の欠点は、畑の面積が狭いこと。しかし補って余りある条件のよさがあり、栽培するぶどうへの期待は大きい。

続いては、塩尻市片岡の畑を見ていきたい。塩尻市の畑も、南向きの斜面に広がる畑だ。塩尻の市街地まで続く、なだらかで大きな傾斜地にある。休火山が近いエリアということもあり、火山灰が堆積している地層だ。火山灰土壌の特徴は、水はけがよく、しかも水持ちのよさも適度にあること。バランスがとれた品質のぶどう栽培がおこなえる場所だ。

最後に取得した松本市の畑は、平地にある圃場。標高650mほどの位置に存在する。こちらも火山灰土壌が主であり、水分管理がしやすいのが特徴だという。

▶︎「作土層」を厚く 畑作りのこだわり

HASE de KODAWAAR WINERYの畑では、下草が生い茂っている。畑の雑草により、土壌の性質を豊かにするための取り組みだ。

「畑作りでは『作土層』をしっかりと作ることを特に大切にしています。作土層とは、地面表層の黒い色をした腐植土層のことで、枯れた雑草などによって作られる層です。作土層には微生物が多く住むため、植物が根を張りやすい環境です」。

土の微生物を重要視しているという長谷川さん。土壌学を専攻していたこともあり、豊かな土壌へのこだわりは大きい。

作土層を広げるためにおこなっているのは、植物性の残渣を入れる作業だ。最初の畑作りの段階では、松の樹皮をチップ状にした農業資材である「バークチップ」を撒いた。

バークチップを入れて土に健全な栄養素を含ませた後は、圃場に下草を生やす「草生栽培」を開始。草生栽培はぶどうにとっていくつものメリットがある。雑草の上部を刈って畑に撒けば肥料になる。土の中に残った根も、微生物を呼び込み土を豊かにする。雑草全体が畑の生態系を循環させる鍵になるというわけだ。

「根も畑の環境をよくしてくれる存在なので、草はすぐに刈り取らず、しっかりと生やすことにしています。うちの畑は、結構草ぼうぼうですよ」と、笑う長谷川さん。

ただし気をつけていることもあるという。「放置しすぎず、ちょうどよい塩梅で草を刈る」という点だ。あまりにも雑草を生やしっぱなしにすると、虫が巣を作ってしまう。また、虫が大量発生したり雑草の種が飛ぶことで、周囲の畑に迷惑がかかってしまうのは避けなくてはならない。

さらに、HASE de KODAWAAR WINERYの畑では、草生栽培以外にもできる限り自然を活用した栽培をおこなっている。たとえば、ぶどうの周囲にハーブを植えているのだ。

緑豊かな圃場で、のびのびとぶどうを育てるHASE de KODAWAAR WINERY。「草はぶどうの敵ではなく友達」と、長谷川さんは言う。植物の多様性は微生物を増やし、土壌のポテンシャルを高める。造り手と自然の共同作業によって、美しく香り高いぶどうを育てているのだ。

▶︎できるだけ自然の力で育てるというこだわり

長谷川さんが実行している「自然を味方にする」という畑作りは、草生栽培だけに限ったことではない。肥料や害鳥対策も、自然の力を借りたものばかりだ。

まずは肥料について紹介しよう。HASE de KODAWAAR WINERYでは、化学肥料を使わずにぶどうを栽培している。理由は、養分の少ない場所の方がぶどうに凝縮感が出るからだ。果実の品質を上げるため、あえて最低限の肥料で栽培する。

「使っている肥料は、天然由来のカルシウム肥料のみですね。なぜカルシウムを加えているかというと、ぶどうは基本的にpHの高い土壌を好むからです。ワイン用ぶどうは、石灰岩質のヨーロッパで盛んに栽培されている植物なのです」。

日本の土壌は弱酸性から酸性に偏った土壌が多い。しかし本来ぶどうは、酸性に寄った場所は苦手としている。ぶどうが自然に生育できる環境を整えるため、圃場には毎年カルシウム肥料を加える。

「ぶどうはやせ地でも育つといいますが、肥料をまったく欲しがらない植物というわけではないのです。肥料があればその分、大きな木になり、たくさんの房を付けます。しかし美味しいワインを目指すなら、『養分の少ないところで頑張って実をつけた』ぶどうの方が、複雑味と凝縮感を出せます」。

また、鳥害対策としておこなっているのは、タカ科の猛禽類である「ノスリ」用の巣箱設置だ。今のところ被害は受けていないが、近隣ではヒヨドリによる鳥害が多発しているため、対策をはじめた。

「近隣の畑では、網を張ってぶどうを狙う鳥を防いでいるようですね。私の畑では、ほかの鳥に助けてもらう作戦をとっています。猛禽類に、ヒヨドリのような小鳥を追い払ってもらおうと考えているのです」。

自然の力を上手く利用しているHASE de KODAWAAR WINERY。長谷川さんのこだわりは、ぶどうを優しく美味しく、豊かに成長させている。

『HASE de KODAWAAR WINERYのワイン醸造』

続いては、ワイン造りにフォーカスして見ていきたい。

まず、赤ワインは、早飲みタイプであれば「フルーティー」要素を、熟成タイプであれば「骨格」をより強調することで、HASE de KODAWAAR WINERYらしさを表現する。

続いては、白ワインについて。日本酒好きな長谷川さんは、「日本酒らしさ」がある白ワインを造りたいと考えている。日本酒のように、酸味が穏やかでグイグイと飲めるワイン。おつまみに合わせてちびちびと楽しめるものが理想だ。「まろやかな風味を引き出したいですね」と、長谷川さんは微笑む。

「ピノ・グリは、長野産りんごのコンポートと合うワインを目指しています。長野といえばりんご栽培が盛んな地域なので、地元のものと合うワインにできたらいいですね」。

赤ワインと白ワイン、それぞれにこだわりを持つHASE de KODAWAAR WINERY。いつか幻のワインと呼ばれるために、こだわりを追求し続ける。

▶︎基本に忠実に ワイン造りの特徴

HASE de KODAWAAR WINERYのワイン醸造は、2022年シーズンで3回目を迎えた。

2021年までの2回の醸造は委託醸造だったため、2022年が自社の醸造所での初醸造だ。そんな長谷川さんがおこなうワイン醸造のこだわりとは?

「まずは基本に忠実に、醸造に取り組んでいます。その上で、独自性を表現できたらと思います。手間暇かけて、自分が納得できるワイン造りをしたいですね」。

醸造する上で長谷川さんが一番気をつけているのは、オフ・フレーバーを発生させない管理の徹底だ。HASE de KODAWAAR WINERYでは発酵の際に低温管理をしている。低温で発酵させると、豊かな香りが出やすくなる一方、オフ・フレーバーも発生しやすくなる。そのため、丁寧に観察して温度管理をおこなうことで、オフ・フレーバーの発生を防ぐ。

また「濾過」にもこだわりがあるという。HASE de KODAWAAR WINERYでは、濾過を控えめにして、ぶどうの美味しさをワインに残すよう心がけている。濾過の工程を経たワインは、クリアで美しくなるが、ぶどう本来の風味や香りが少なくなってしまう。そこで、保存中の品質変化がないレベルで濾過を控えめにし、極力ぶどうの美味しさをのこすワイン造りをおこなっているのだ。

「出来たてのワインは非常に濃く豊かな香りですが、あまりにも不純物が多いと年を経るにつれて風味が劣化することがあります。原因となる邪魔なものを取り除くのが濾過ですが、やりすぎると美味しい要素もとってしまうのでバランスが非常に大切なのです」。

また、今後こだわりたいと考えている醸造のポイントも教えていただいた。それは、早飲みタイプと熟成タイプを分けて醸造すること。現状はすべて同じ醸造方法を採用しているが、今後はよりワインの出来上がりを意識した醸造にチャレンジしていきたいと話す。

「うちの圃場で採れるぶどうは、タンニンが強く出ます。早飲み用のワインではやや渋みが強く感じられるワインになるので、今後はタイプごとに分けて醸造していければと思います」。

HASE de KODAWAAR WINERYの醸造は、まだ始まったばかり。長谷川さんは楽しみながら醸造に取り組み、自身のワインを造り上げていく。タンニンが強いという土地の特性をどう生かすか。目指す赤ワイン、白ワインをどのように表現していくか。歩み出したHASE de KODAWAAR WINERYの挑戦に終わりはない。

▶︎醸造の苦労とやりがい

続いて、ワインの醸造を行う上での苦労とやりがいについて尋ねてみた。もっとも苦労したのは、赤ワインの発酵だという。

「赤ワインの仕込み中に、バター臭が出てくることに悩まされました。低温発酵が原因のオフ・フレーバーですが、温度を上げすぎると腐敗の原因になってしまうのです。最初はあわてましたが、なんとか工夫して乗り越えました」。

塩尻ワイン大学で醸造について学んだ長谷川さんだが、自ら醸造を手がける中で驚くことも多いという。しかし驚きもまた「新しい発見」。長谷川さんは心の余裕を大切に、ポジティブに事態を乗り越える。

また、2022年に自社醸造した「シードル」醸造にも、やりがいを感じたという。

「2021年には委託醸造で完全無濾過シードルを造りました。よりクリアで美しいシードルを造りたいと考え、2022年は濾過の工程も取り入れてみたのです。仕上がりが楽しみですね」。

2022年ヴィンテージのシードルは、2023年6月頃にリリース予定だ。

▶︎長谷川さんがおすすめする2022年ヴィンテージの銘柄

長谷川さんお気に入りの1本は、「HILLS  Pinot Noir(ピノ・ノワール)2022」。日本でピノ・ノワールを栽培するのは難しいといわれているため、挑戦しがいがあると感じているという。2022年ヴィンテージの味を表現すると「面白い味」とのこと。熟成段階ではあるが、フラッグシップワインになるポテンシャルを秘めた銘柄だ。

ところで、「面白い味」とはいったいどんな味わいなのだろうか?

「熟成させる前の段階で、すでに十分な複雑味を感じたのです。ピノ・ノワールは皮が薄い早生品種で、うまく熟さないこともあるのですが、2022年はしっかりと熟成させることができました。そのため、期待は大きいですね」。

そんなピノ・ノワールのワインは、長野の温泉地で宿の料理と一緒に楽しんでほしいという。

「『馬刺し』や『シュトーレンなどの干しぶどうを使ったお菓子』と合わせてほしいですね」。地場のものを味わいたいという人にピッタリな、テロワールを表現したワインだ。

もうひとつ、おすすめの銘柄がある。「HILLS  Rouge 2022」だ。使用したぶどうは、メルローとブラッククイーン。ブラッククイーンは、長谷川さんが個人的に注目している品種だという。樽熟成で厚みを出し、メルローとブレンドする予定だ。

「赤ワインは樽に入れると美味しくなりますが、すべてのワインを樽に入れてしまうと同じような風味になってしまうのが難しいところですね」。

最後に、「やりがい」を感じたというシードルについても紹介しておこう。2022年ヴィンテージの銘柄は「MORGENROT(モルゲンロート)」と「BROCKEN(ブロッケン)」。

このうちMORGENROTは登山用語で「朝焼け」という意味があり、ほんのりと赤味がかった色合いが珍しいシードルだ。

こだわりがつまったシードル、MORGENROT。山をイメージした長野の雄大な自然の力を、シードルから感じてみてほしい。

▶︎実直に目指すワインを突きつめる

今後のワインとシードル醸造について、長谷川さんは次のように話す。

「目標とするワインを、ただひたすらに目指していきます。フルーティーながらも骨格あるワインを生み出していきたいですね。シードル醸造にも興味が出てきたので、ちょっと特別な場面で飲めるシードルを造っていけたらと考えています」。

ワインに関しては、基本に忠実に目指す品質を追求していくという長谷川さん。赤ワインの質を高め、白ワインのバラエティを増やしていきたい考えだ。

白ワインの今後については、長谷川さん自身にも決めきれていない部分があるとのこと。ソーヴィニヨン・ブランやヴィオニエといったフレーバーの強いワインが求められるか?シャルドネの王道路線が求められるか?現時点で主軸としている「グイグイいけるワイン」だけではない白ワインへの取り組みも考えていきたいと、意欲を話してくれた。

シードルについても、今後の展開に期待したい。最初は酒税免許の醸造量をクリアするために始めたシードル醸造だというが、瓶内二次発酵のおもしろさに心奪われたという。

新たな試みに夢が広がるHASE de KODAWAAR WINERYから今後リリースされるワインとシードルを楽しみにしたいものだ。

『まとめ』

長野でワインを醸すHASE de KODAWAAR WINERYは、自然の力を最大限に活用したぶどう栽培と、手間暇かけたワイン造りをおこなう。

長谷川さん自身も、ワイナリーの強みについて次のように話してくれた。

「うちの強みは、おいしいぶどうが作れることと、栽培や醸造に対して自分が納得できるだけの手間暇をかけられることです。よいものを造るなら、心に余裕を持って楽しむことも必要だと思うのです」。

こだわり抜いて造ったワインは、いつか語り継がれる伝説のワインになるかもしれない。ぶどうとワインに夢を託し、長谷川さんはこれからもワインを造り続ける。

基本情報

名称HASE de KODAWAAR(ハセ ド コダワール)
所在地〒399-0024
長野県松本市寿小赤665‐4
アクセス最寄り駅:篠ノ井線線 村井駅
最寄りインター:長野道塩尻北IC
マップ:https://hasedekodawaar.jp(ホームページ最下部)
HPhttps://hasedekodawaar.jp/

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