甘みと酸味を豊富に含み、味のバランスがよく、色と香りのよい果物とは?
ワインラヴァーなら「ぶどう」と答えるかもしれない。しかしよく考えてみてほしい。「いちご」も当てはまるのではないだろうか?芳醇な香りと豊かな甘味、酸味を持つ、日本人が愛してやまない果実だ。
そんな「いちご」を使って、本格的なワインを造る。この夢を実現させたのが、今回紹介する「山元いちご農園」だ。いちごだけでなく、ぶどうやスイカ、豆類なども栽培する大規模農園である。
山元いちご農園が醸すいちごワインは、ワインの味だけでなく製造工程も本格派。醸造の流れはぶどうによるワインと同様で、原料をぶどうからいちごに置き換えただけだ。
知らない人も多いであろう「いちごワイン」の魅力を、代表取締役の岩佐隆さんと、いちごワインプロジェクトメンバーの今野 萌絵さんにお話いただいた。
ワイナリー誕生までの経緯やいちごワインについてのストーリーを、ぜひ楽しんでいただきたい。
『山元いちご農園 誕生の歴史』
山元いちご農園では、自社で育てたいちごを100%使ってワインを醸造している。なぜ山元いちご農園は、「ワイン」を造ろうと思い立ったのか。会社が誕生したきっかけや、ワイン造りを始めた出来事とはいったい何だったのだろうか?
代表・岩佐さんのお話から、山元いちご農園の歴史と歩みを見ていきたい。
▶︎東日本大震災をきっかけに生まれた「山元いちご農園」
山元いちご農園は、東日本大震災をきっかけとして生まれた会社だ。山元いちご農園を設立する以前、岩佐さんは個人でいちご農園を営む生産者だった。父親の代から続く農場で、50年以上にわたりいちごを作り続けてきた。
「震災前は個人経営の農家でいちごを生産していましたが、震災後は地元の農業復興のために会社を立ち上げました。被災農家3軒が集まって生まれたのが、山元いちご農園です」。
宮城県亘理郡山元町は、宮城県南東部の沿岸沿いに位置する。福島県との県境に位置し、津波被害と福島原発事故の風評被害が特に大きかった場所のひとつだった。
「山元町は6400平方kmほどしかない小さな町です。町の面積の4割程度もの部分が、津波の被害を受けました。沿岸部から3kmは津波が押し寄せたのですよ」と、岩佐さんは当時を語る。
岩佐さんが住んでいる地域にも津波は襲いかかった。自身の畑やいちごのビニールハウス、保有していた田んぼなどはすべて流されてしまった。
沿岸部の被害は特に大きく、いくつもあった畑は軒並み流された。土がさらわれてしまい、土地は海水に浸され、そのままでは使い物にならなくなってしまったのだ。
「山元町ではこれ以上農業ができないといって、町を離れる人も大勢いました。地域の農業のためにできることをしようと、地元農業を基盤とした規模の大きい農園を立ち上げることにしたのです。それに、もともと震災前から地域農業を支える仕事がしたいと考えていました」。
岩佐さんには、東日本大震災が起こる前から漠然と思い描いていた夢があった。山元町の農業を次の世代につなぐための活動をしたいと考えていたのだ。
農業を地域の主産業と位置づけるため、自分ができることをしたい。山元いちご園は、「災害からの復興」というきっかけと「岩佐さんの強い思い」のふたつの軸から生まれた会社だったのだ。
「山元いちご農園は、震災で被害を受けた山元町が農業で頑張っている様子を、町や県をはじめ日本に情報発信する目的もありました。おかげさまでたくさんの方々に応援していただいています」。
自分の農園から、山元いちご農園へ。岩佐さんのいちご栽培の実績は、2022年現在、通算して実に60年以上になる。
「震災前に50年、震災後にも11年。60年以上いちごと向き合ってきましたが、これからも
引き続きがんばっていきます。応援してくれた人々にはいちご園に足を運んでもらい、元気で頑張っているところを見せられたら嬉しいです」。
困難を越えて前を向き続ける岩佐さんの姿勢は、どこまでもポジティブだ。
▶︎山元いちご農園がワインを造るようになった経緯とは
山元いちご農園は、東北随一のいちご生産面積をほこる。さらにいちごの製造加工工場まで保有しており、まさに「いちごのテーマパーク」。
そんな山元いちご農園が造るいちごの加工品のひとつとして、注目したいのが「ワイン」だ。まずは、山元いちご農園がワイン造りを始めた経緯について紹介していきたい。
岩佐さんがワインを造ろうと思ったきっかけも、東日本大震災の津波被害にあった。
「自分のひとつ下の後輩がぶどう栽培やワイン造りをしていたのですが、彼やワイナリーは津波に流されてしまいました。そのワイナリーは当時、山元町だけでなく宮城県内でたったひとつのワイナリーだったのです。大切な、意味のあるもの存在だったワイナリーを復活させたい。後輩の無念な思いを受け継いで晴らしたいと思ったのです」。
以前まで、山元町は宮城県の中でも有名なぶどうの産地だったという。しかしだんだんとぶどう生産は廃れていってしまった。せっかく宮城県にあった貴重なワイナリーを蘇らせたい。消えつつあるぶどう栽培やぶどう加工品販売を、再興したい。岩佐さんの思いは強かった。
岩佐さんはワイン造りを目指すと同時に、いちごでワインができないかとも考えるようになる。自分が得意とするいちごが、ワイン造りに応用できないか。果汁にアルコールを添加して造る簡易的な「リキュール」ではなく、いちごをそのまま発酵させてワインが造れないかと考えたのだ。
震災でなくなったワイナリーへの思いと、自分の得意分野をかけ合わせた答えが「いちごワイン」だった。
「とはいえ、やりたいと始めてすぐにワインが造れるようになった訳ではありません。醸造を開始するまでには、5年の歳月がかかりました」。
大きな理由のひとつは、税務署からの認可が降りなかったこと。黒字企業でないと許可を下ろせないと言われていたのだ。
「なんとかがむしゃらに頑張って、3年間黒字を達成して醸造の許可をもらうことができました。こうして2016年、ワイン造りがスタートしたのです」。
山元いちご農園では本格的ないちごワインのほか、自社で育てるぶどうや買いぶどうを使った「ぶどうのワイン」も醸造する。
山元町に復活したワイナリーとして、いちごワインの先駆者として。山元いちご農園の挑戦はこれからも続いていく。
『山元いちご農園のいちご 栽培方法や品種のこだわり』
山元いちご農園では、その名称のとおり「いちご」の栽培が中心だ。育てているいちごの品種や栽培のポイントと、いちご以外の栽培作物についても見ていきたい。
特殊な栽培方法をとる、山元いちご農園のいちご
最初に、農園で育ついちごについて見ていこう。農園で育てているいちごの種類は次の3種類だ。
- とちおとめ
- もういっこ
- にこにこベリー
これらのいちごは、「一季成り品種」と呼ばれている。いちごには「一季成り品種」と「四季成り品種」があるのだ。
一季成りとは、9月ごろに植え付けて11月頃から6月頃にかけて出荷されるいちごのこと。1年間のうち、限られた時期に開花・結実するいちごのことを指す。ちなみに四季成りとは、真夏や真冬以外のほぼ年中花が咲き実がなるいちごのことである。
山元いちご農園のいちごワインには、上記3種類すべてのいちごが使用されている。ぶどうで造るワインと同じように品種の個性を生かすため単体で醸される場合もあれば、複数品種がブレンドされることもある。原料の質や味を確認しながらワインが醸されているのだ。
さて、これらのいちごはどういった環境、栽培方法で育てられているのだろうか。山元いちご農園のいちご栽培方法を紹介しよう。
山元いちご農園のいちごは、1m20cmほどの高さのベンチの中で栽培されている。「高設栽培槽」と呼ばれる栽培の方式だ。
ベンチの中には土代わりの培地としてヤシガラ(ヤシの実の皮を乾燥させたもの)が充填され、培地の中には水と養液が流れる。十分な水分と栄養分が行き渡ったベンチの中で、いちごはすくすくと健康的に育っていく。
なぜ山元いちご農園では、通常の「土耕栽培」ではなく「高設栽培槽」を使用するのか。岩佐さんに理由を尋ねた。
「津波による塩害と、福島原発事故による風評被害が高設栽培槽にした理由です。震災前までは、畑の土で栽培していたのですよ」。
ひとつ目の理由、震災の津波による塩害は今なお続く問題のひとつだ。津波によって山元町にある農地には大量の海水が流れ込んだ。現在も塩害は残っており、畑の土ではいちごが育たない。
またふたつ目の理由も、当時は深刻だった。山元町は福島県原発地域に隣接している。そのため、農作物に対する風評被害が大きかったのだ。原発事故のイメージを払拭するために選んだのが、「土地の土と水を使わない方法でいちごを育てる方法」つまり高設栽培槽だった。水も地下水ではなく飲水を使用している。
「もちろん山元町の土も水も安全です。しかし当時大切だったのは、何よりも消費者に安心してもらうことでした」。
高設栽培槽の栽培管理システムの構築には莫大な資金がかかっている。設備投資や国からの補助を利用することで、手をかけながら大きくしていった畑だ。そのかいあって、山元いちご農園のいちご畑は国内でも最大級の規模になった。いちごの栽培面積は3.2haにものぼる。
山元いちご農園の畑作りは、震災で壊滅した山元町の農業の、新たな基盤を形作る。
▶︎おいしいいちごを育てるために 栽培の工夫
いちごは一般的に、ビニールハウスの中で栽培する。山元いちご農園も例外ではない。外気や天候の影響を受けにくいと思われるビニールハウスだが、どのような点に気を付けて栽培されているのだろうか。
「一番気をつけている点は、いちごに適する環境をキープすることです。大切なのは、温度と日照量ですね。ビニールハウスは温度は一定に保たれていますが、太陽がどのくらい当たるかという問題は別です。曇りが増えたり冬になると日光が足りなくなってしまいます。光合成が盛んになるほど、甘くおいしいいちごになります」。
日照量に気をつけるとは、具体的にどのような対策をしているのか?山元いちご農園でおこなっているのは、人工的な光を当てる方法だ。日照時間が短くなる冬季を中心に、強い光を当てている。
前述のとおり、一季成りいちごの植え付け時期は9月。日照量がどんどん少なくなる時期にあたる。定植後の生育を良好にするため、夕方以降2~4時間ほど電照を付けて、日照時間を延ばすのだ。
「日射と温度の両方の環境管理が重要です。いちごの好きな春先の環境をハウス内で作ってあげることと、こまめに管理することがおいしいいちごを育てるためのポイントです」。
愛情込めて、手間暇かけて栽培される山元いちご農園のいちごは、甘く大ぶりでジューシー。すべては、いちごを知り尽くした岩佐さんたちによる、工夫と努力のたまものなのだ。
▶︎いちご以外の作物も栽培 ぶどうにも挑戦中
山元いちご農園が保有する畑では、いちご以外の作物も栽培している。
畑の中には、沿岸部の被災農地も含まれる。14ha以上の広大な畑だ。震災によって使い手がいなくなってしまった土地に、国が区画整備をして畑を造成した。
「人がいなくなると、農地はとたんに荒廃してしまいます。環境を守るために、その畑を借りて利用しているのです」。
沿岸の農地で育てる作物の中には「ぶどう」がある。目的はもちろん、ワインにするため。マスカット・ベーリーAやシャルドネを栽培しているのだ。
ただし順風満帆というわけにはいかない。なぜなら、沿岸地域は特に塩害が強い地域だからだ。また造成時に運んできた土の影響で、土壌に肥料分が少ない点も難しさに拍車をかける。いくら痩せた土地が好きなぶどうといえど、ほとんど肥料分のない土では生育が難しい。
「時間はかかりますが、なによりも大切なのは土を豊かにする作業です。現在は、ひまわりやクローバーといった緑肥を育てているところです。すき込むと土を豊かにできるのです。何年もかけて、少しずつ土壌を造っていきます」。
先人が造った土地を利用させてもらい、10年以上の歳月をかけて形にしていく。岩佐さんの目に映っているのは、目先の利益や成果ではない。山元町の未来と農業の発展を望むからこそ、気の遠くなるような地道な作業に打ち込めるのだ。
山元いちご農園の活動は、受け継がれてきた土地の大切さや、農業という営みの尊さを教えてくれる。
『オンリーワンのいちごワイン 醸造の魅力生かして』
続いての内容は、山元いちご農園のワイン造りについてだ。山元いちご農園のいちごワインは、しっかりと発酵させて醸した、本格的な醸造酒だ。
いちごワインが目指すものや醸造のポイントなど、いちごワインに関する興味深い話をいくつも伺うことができた。早速ひとつずつ掘り下げながら紹介していこう。
▶︎目指したのは、いちごの「醸造酒」
山元いちご農園が誕生する前にも、「いちごワイン」と名のついた商品は存在していた。
しかしその中のほとんどは「甘味果実酒」や「リキュール」などのアルコール飲料だ。これらのアルコール飲料は、アルコールと果汁をしぼったものをブレンドして造られる。つまり、原料を発酵させる工程を持つ「ワイン」の醸造方法とは大きく異なるものだったのだ。
「自分たちがいちごワインを造るなら、自社栽培の原料100%を発酵させる本格的なワインにしたいという思いがありました」。
いちごの本格ワインを造るという方針は固まったものの、醸造経験を持つメンバーはいない。始まりは手探り状態だった。担当になった社員たちは醸造の勉強を始め、山梨のワイナリーにも足を運んだ。
「山梨や宮城の大学の先生にもお力を借り、教えていただきながら技術を学んでいきました。特に試行錯誤が必要だったのは、酵母選びです。うちの醸造では乾燥酵母を使用しているのですが、何種類もの酵母を試してやっと今の味になりました」。
ワイン造りにおいて、酵母は重要だ。酵母の種類によって味が変化するのはもちろん、香りや色の出方まで変わってしまう。試した酵母の中には「まるで飲めたものではないワイン」が出来てしまったこともあったという。
いちごにマッチする酵母を試行錯誤し続けること、実に1年半。ようやくいちごワインに合った乾燥酵母が見つかった。いちごの芳醇な香りを高め、柔らかなピンク色のワインができる酵母に巡り合ったのだ。
こうして無事に製品化した、山元いちご農園のいちごワイン。ぶどうのワインと同様の工程を経て造られる、ここでしか味わえないワインだ。
▶︎可愛らしい色と香り 女性が心から楽しめるワインを
「いちごワインは、女子会やパーティーなどの場で楽しんでほしいですね。すべてのいちご好きに向けたワインですが、おもなターゲットは女性を想定しています」と話してくれたのは、醸造担当の今野さん。宮城大学で食品加工について学んだ経歴を持つ。
かわいいものが好きなら、いちごワインのボトルを見てキュンとときめくはず。ワインの色は深みと輝きのあるサーモンピンクだ。銘柄によって色の濃淡が異なり、ボトルを並べたときのグラデーションには思わずうっとりしてしまう。もちろんすべて素材本来の色で、着色料などは不使用だ。
「エチケットにもこだわりがあるので、ぜひ注目してください。ワイングラスの中にいちごを敷き詰めた、可愛らしいデザインにしています。生搾りのいちごをそのままワインにしたようなイメージで作りました。いちご100%という、うちの売りを生かしたデザインです」。
見た目の話を聞いていると気になってくるのはワインの「中身」、つまり味や香りだろう。山元いちご農園のいちごワインはいちごの甘やかな香りが特徴だが、その味は意外なほどにスッキリとしている。どんなシーンでも楽しめる「飲みやすさ」も、いちごワインの魅力のひとつだ。
そんな山元いちご農園のいちごワインには、5種類の銘柄がある。5種類それぞれ特徴が異なり、甘口から辛口まで味の幅が広い。食中酒としても、デザートワインとしても、さまざまなシーンに合わせることができるのが強みだ。
いくつかの銘柄と、おすすめのペアリングについてお話いただいたので、紹介しよう。
「中華や和食にあうのは『愛苺(まないちご)』や『咲苺(さきいちご)』です。笹かまぼこや牡蠣、魚介などといった宮城県の食材と合いますよ」と、岩佐さん。
続く今野さんのおすすめのペアリングはこちら。
「『愛苺』や『咲苺』は、肉料理とペアリングもおすすめです。ベリー系のソースを使った肉料理との組み合わせが抜群ですよ」。
いちごワインが、肉料理になじませるソースになるイメージだろうか。なんとおしゃれで贅沢な組み合わせだろう。
ペアリングも存分に堪能できる山元いちご農園のいちごワインは、オンリーワンの魅力を放つ。岩佐さんは、自分たちのワインについて次のように話してくれた。
「ぶどうのワインには、もちろん素晴らしいものがたくさんあります。しかし私たち自慢のいちごで造ったワインは、ほかのどこでも味わえないワインです。これからも、誰にも負けないようないちごワインを造っていけるよう頑張ります」。
▶︎いちごだけでなく、ぶどうのワインも
山元いちご農園のワイン生産量は、年間1万5,000本ほど。実はこの中には、いちごだけではなく、ぶどうのワインも含まれている。
使用しているぶどうは、自社栽培のぶどうと、提携農家からの買いぶどうだ。山形からはシャルドネやマスカット・ベーリーAを、スチューベンは青森から、そして甲州は山梨からそれぞれ買い付けている。
「ぶどうのワインも、自社醸造所で造っています。白・赤・ロゼを展開しています。特にスチューベンのワインは最も評判がよく、得意としている品種です」。
いちごとぶどう、双方のワインを展開することで消費者の選択の幅が広がる。飲み比べの楽しさも味わえることだろう。
また、いちごとぶどう両方のワイン造りをすることは、生産者側の利点もある。
「いちごとぶどうは、収穫時期がずれています。1年をとおしてなにかしらの作業ができるため、雇用を安定させることができるのです。ぶどうの時期にはぶどうを絞り、ぶどうのワイン造りが終わったらいちごの醸造を始めることができますよ」と、岩佐さん。
農業で地域社会に貢献するという、岩佐さんが目指す農業の姿は、ワイン造りにもしっかりと反映されている。若いスタッフの雇用が安定し、よりよい製品が生み出され、町が盛り上がる。山元いちご農園の取り組みは、日本の地方農業を変えるヒントのひとつとなるのではないだろうか。
『山元いちご農園が目指すもの』
最後に見ていくのは、山元いちご農園の未来の姿だ。考えている取り組みの内容や、将来への思いを伺った。
▶︎SDGsの取り組み 持続可能な農業にむけて
山元いちご農園は、SDGsの取り組みにも力を入れている。2021年にはなんと帝国書院の社会科の補助教科書に、SDGsの取り組み事例として掲載されたそうだ。
「うちでは、いちご栽培だけでなくジュースと乾燥、冷凍にいちごを加工して、ワイン・お菓子などに使っています。ここまで多彩な加工製品を提供している企業はそう多くないでしょう。そういった部分が持続可能な農業として評価され、教科書に載りました」。
山元いちご農園は設立当初から、地域で農業を末永く続けるための基盤づくりを模索してきた。SDGs的な考えの先駆者といえるだろう。持続可能な農業を実現するため、栽培した資源を捨てずに加工することを徹底している。
生産者の努力は無駄になることなく生かされ、消費者にとって魅力があり、さらに地球にも優しい。「持続可能な農業」という強みをもっと伸ばし、これからも地域の農業を支えていく。
▶︎若い農業の担い手を育てたい
「若い担い手を育てることも、今後の取組のひとつです。震災の被災地で農業従事者が少なくなっている中で、農地を守り若い農業者を育てることに、前向きに取り組んでいきます」。
岩佐さんが目指しているのは、地域だけの取り組みに留まらない。若い世代の農業を支援する取り組みを、全国に広げたいと考えているのだ。
「志を持った人たちを、ひとりでも多く育てていける環境を整え、考えていこうとしていることが、うちの強みでもあるのです」。
先祖代々伝わってきた農地や農業技術を若い人に受け継いでいき、まちづくりの柱にする。農園の活動は、地域の未来につながっていくのだ。
「常に前向きにやっていきます」と、岩佐さんは朗らかに話してくれた。きっと日本農業の未来は明るいだろう。
『まとめ』
いちご栽培のプロフェッショナルであり、さらにいちご加工のプロフェッショナルでもある山元いちご農園が造るいちごワインは、ワインの常識を覆し、人々の心をつかむ。
ポジティブなパワーを受け取り、いちごワインの味わいを確かめるために、ぜひ山元いちご農園に足を運んでほしい。
持続可能な農業への挑戦を続け、地域農業の未来を変えようとしている岩佐さんたちを、力いっぱい応援しようではないか。
基本情報
名称 | 山元いちご農園株式会社 |
所在地 | 〒989-2201 宮城県亘理郡山元町山寺字稲実60 |
アクセス | 常磐自動車道 山元ICから車で5分 JR常磐線 山下駅から徒歩15分 |
HP | https://www.yamamoto-ichigo.com/ |