『シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー』日本ワインの歴史を変え、新たな挑戦を続ける

「日本を世界の銘醸地に」というヴィジョンを掲げ、日本ワインを牽引し続けるブランド、シャトー・メルシャン。シャトー・メルシャンには、「勝沼ワイナリー」「桔梗ヶ原ワイナリー」「椀子(まりこ)ワイナリー」の3つのワイナリーがある。

3つのワイナリーは、それぞれの土地のテロワールや歴史、地域との絆を大切にしながら個性を発揮。日々、切磋琢磨し合っている。

2018年9月、長野県塩尻市に「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー」がオープンした。かつて、シャトー・メルシャンのルーツのひとつである「大黒葡萄酒」が、桔梗ヶ原の地にぶどうを求めて1938年に「塩尻工場」を創設。当時から使われてきた歴史ある建物をリノベーションして誕生したのが桔梗ヶ原ワイナリーだ。

今回お話を聞いたのは、シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー、栽培・醸造責任者の高瀬秀樹さん。高瀬さんはメルシャンに入社後、9年間研究職に従事し、その後フランスで3年間ワイン醸造を学んだという経歴をもつ。

日本ワインの歴史を大きくゆさぶる存在となった「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー」が生まれた地の過去・現在・未来についてじっくり見ていこう。

『桔梗ヶ原ワイナリーが誕生するまで』

まずは桔梗ヶ原ワイナリーの歴史から紐解いていこう。

1938年にシャトー・メルシャンのルーツのひとつである「大黒葡萄酒」が「塩尻工場」を新設し、その後桔梗ヶ原はぶどう産地として栄えた。1960年代後半から1970年代前半にかけて、日本で流行した甘口ワイン「甘味果実酒」の原料、コンコードやナイアガラを、主に桔梗ヶ原では栽培していた。

その後、日本ワインの歴史が大きく変化する。
きっかけとなった場所が桔梗ヶ原だ。

▶︎桔梗ヶ原メルローが誕生するまで

1970年代半ばになると、日本ではぶどう本来のポテンシャルを生かした「甘くない」ワインが流行し始めた。

「本格ワイン」とも呼ばれた食事によく合うこのワインは、ぶどう本来の品質が重視される。よいぶどうを育てなければ、よいワインは造れない。また、世界で認められる本格的なワインを造るためには、欧州系ぶどう品種で勝負する必要があると考えた。

そこで1976年、「現代日本ワインの父」といわれる故・浅井昭吾氏(ペンネーム:麻井宇介氏)の指導のもと、シャトー・メルシャンは桔梗ヶ原の地で、それまでコンコードやナイアガラを栽培していた農家の方々にメルローへの改植を打診した。

コンコードやナイアガラからメルローへ改植するにあたり、100年以上にわたって桔梗ヶ原でぶどう栽培とワイン醸造をおこなってきた「五一わいん」の林幹雄社長のアドバイスを受けたという。現在の桔梗ヶ原ワイナリーと五一わいんの距離は、徒歩でわずか5分ほど。1976年当時、すでに桔梗ヶ原の地でメルローの栽培を開始していた林さんのアドバイスは、シャトー・メルシャンが世界に名を馳せる道標となったのだ。

なぜ桔梗ヶ原でメルローが栽培されるようになったのだろうか。高瀬さんはこう語る。

「塩尻は冬の寒さがかなり厳しい土地です。私は2021年4月に桔梗ヶ原ワイナリーに来たばかりで、それまでは山梨の勝沼ワイナリーに勤務していました。初めて迎えた桔梗ヶ原の冬の最低気温はマイナス11〜12度で寒さがこたえました。ぶどうはマイナス10度を越えると凍害になり、発芽しないこともあります。メルローはその点で耐寒性に優れ、桔梗ヶ原の土地にとても合う品種なのです」。

桔梗ヶ原でメルローの栽培がスタートした当時は、まだ垣根栽培ではなく、棚栽培がおこなわれていた。地元契約農家の協力のもと、メルローの栽培は順調に進んだという。

そして1989年、初リリースされた「シャトー・メルシャン 信州桔梗ヶ原メルロー 1985」が、権威ある国際ワインコンクール「リュブリアーナ国際ワインコンクール」において「大金賞」を受賞。桔梗ヶ原メルローの名前が一躍世界に知れ渡ったのだ。

▶︎さらなる品質向上を目指して

シャトー・メルシャンの進化はとどまることを知らなかった。1998年、フランス・ボルドーの1級シャトー『シャトー・マルゴー』の総支配人兼最高醸造責任者、ポール・ポンタリエ氏を醸造アドバイザーとして迎え入れたのだ。ポンタリエ氏は来日してシャトー・メルシャンの畑やワイナリーを巡り、数々の助言をした。

ポンタリエ氏は、日本ワインが目指す方向性を「フィネス&エレガンス(調和のとれた上品な味わい)」と表現した。また、シャトー・メルシャンが目指すべきスタイルのひとつを「日本庭園のようなワイン」とアドバイスし、シャトー・メルシャンの醸造家に大きな影響を与えた人物である。

「日本庭園のようなワイン」とは、「突出するところはなく、欠けるところもない、完全なる調和の取れた味わい」を意味するという。まさに、「フィネス&エレガンス」だ。

「より高品質なメルローを桔梗ヶ原で栽培するためにも、フランスやイタリアで伝統的におこなわれる垣根式栽培を取り入れた方がよいのではないか」というポンタリエ氏のアドバイスのもと、1999年より、桔梗ヶ原ワイナリーの中にある小さな畑「箱庭ヴィンヤード」にて、試験的に垣根仕立てのメルローの栽培が開始された。

この「箱庭ヴィンヤード」は、こぢんまりとした畑の大きさから社内では「箱庭」と親しみをもって呼ばれ、現在も新たな品種を試験栽培する場として、また桔梗ヶ原ワイナリーの「知恵の泉」として重要な役割を担っている。

「箱庭ヴィンヤードでメルローの垣根式栽培がうまくいくと確信が持てたので、2000年から桔梗ヶ原ヴィンヤードで、メルローの垣根栽培を開始しました。当時は桔梗ヶ原で収穫したぶどうを勝沼ワイナリーに運んで醸造していましたが、ぶどうに一番近い場所で一環したワイン造りをしたいという長年の願いが叶い、2018年に桔梗ヶ原ワイナリーがオープンしたのです」。

栽培から醸造、構想まで一貫して塩尻の地でおこなうことを可能にした桔梗ヶ原ワイナリー。この地でシャトー・メルシャンがさらなる進化をとげ、今後さらに発展することは想像に難くない。

『桔梗ヶ原ワイナリーのぶどう栽培』

現在、桔梗ヶ原ワイナリーが管理する圃場は3か所だ。

・桔梗ヶ原ヴィンヤード
・片丘ヴィンヤード
・箱庭ヴィンヤード

それぞれの畑の特徴と、桔梗ヶ原ワイナリーのぶどう栽培におけるこだわりについてみていこう。

▶︎気候と土壌の特徴

桔梗ヶ原ワイナリーが管理する圃場の標高は、桔梗ヶ原ヴィンヤードが740m、片丘ヴィンヤードが800m、箱庭ヴィンヤードが730mと、いずれも標高の高い場所に位置する。大陸性気候の影響もあって、放射冷却が進み、冬はかなり冷え込む。だが雪はあまり降らず、降っても積もらないのが特徴だ。マイナス10度を下回るとぶどうは凍害に遭うことがあるので、塩尻では伝統的に幹の部分に藁を巻いて寒さから樹を守る対策を取る。

朝晩の寒暖差は大きい。2021年まで山梨にいた高瀬さんは、桔梗ヶ原の夏の過ごしやすさに驚いたという。

「山梨時代、夏場は毎日クーラーを使っていましたが、こちらに来てからクーラーはまったく使いません。夏場の日中の気温は35度くらいまで上がる日もありますが、湿度が低いので、木陰に入れば快適です。もう暑い山梨には戻れそうにありませんね」。

続いて、土壌について見ていこう。高瀬さんは、桔梗ヶ原ヴィンヤードの土壌はとてもユニークだと話す。

「地表から2〜3mは火山灰に由来する黒ボク土で、その下は粘土質が主体の土壌です。水はけもよく柔らかで、大雨が降っても地中に染み込まずぶどうに悪影響を与えません。乾燥から樹を守ってくれる土壌なので、メルローにとても合っていると思います。海外ではあまりこのような土壌は見かけません」。

高瀬さんの言葉の端々からは、桔梗ヶ原の畑への誇りを感じる。

▶︎3つの畑で栽培される品種

桔梗ヶ原ワイナリーが管理する3つの圃場で栽培されている品種は以下だ。

赤ワイン用ぶどうは以下の2品種。

・メルロー
・カベルネ・フラン

白ワイン用ぶどうは以下の3品種。

・リースリング
・​​ゲヴェルツトラミネール
・ピノ・グリ

寒さが厳しい塩尻の冬に耐えうる品種といえばメルローしかないと長年いわれてきた。しかし近年の温暖化の影響で、メルロー以外の欧州系品種も、塩尻で生育できるようになりつつあると高瀬さんは期待をのぞかせる。

将来的に、塩尻でメルロー以外の高い品質のワインを誕生させたいと考えているのだ。

「今、一番期待している品種は、赤ワイン用品種のカベルネ・フランです。白ワイン用品種ではリースリングやピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールに注目しています。フランスのアルザス地方と桔梗ヶ原の気候が近づいていると考え、アルザスで栽培される品種に挑戦しているのです」。

カベルネ・フランは2017年から片丘ヴィンヤードで、2018年から桔梗ヶ原ヴィンヤードにて本格的に植樹を開始し、2022年9月にはカベルネ・フラン100%のワインが誕生する予定だ。発売後、しばらくは「シャトー・メルシャン プレステージ・パスポート」という、特別会員限定のワインになるそうだ。メルローと飲み比べできる日が今から待ち遠しい。

ピノ・グリは2018年から片丘ヴィンヤードで植樹し、2021年に初収穫を迎えた。2021年ヴィンテージのピノ・グリとゲヴェルツトラミネールを混醸したワインが、2022年秋にリリースされた。こちらのワインも見逃せない。

「リースリングは2021年に桔梗ヶ原ヴィンヤードに苗木を植えたばかり。また、桔梗ヶ原ワイナリーで管理する畑はまだまだ若い樹が多く、片丘ヴィンヤードは2016年に植え付けを開始したところです。今後も新たな苗木の植樹を続け、すべて終わるのは2025年を計画しており、すべての畑が成園化するのは2031年の予定です。長いスパンで、我々ができる作業をひとつひとつおこなっていくことが重要だと考えています」。

▶︎より高品質なメルローを育てるために

新たに栽培したい品種は?と高瀬さんに尋ねると、迷わずこう答えてくれた。

「新しい品種は勝沼ワイナリーや椀子ワイナリーに任せ、我々は今育てているメルローやカベルネ・フランの品質を、より高めていきたいですね」。

桔梗ヶ原のメルローの特徴は、なんといっても「柔らかさ」だ。土壌の柔らかさに由来するものなのか、渋みや厚みがまろやかで、飲んだ後の余韻が長い。柔らかさと余韻の長さが赤ワインには最も重要なので、さらに突き詰めたいという。そのためにも桔梗ヶ原の特徴を全面に表現するワインを目指す。

また、さらに多くの客層に受け入れられるためには、海外のメルローとの違いをより明確にする必要がある。日本のメルローワインの中でも、より際立つ特徴あるワインに仕上げるため、ぶどうの力をあげることが重要なのだ。

「先日、チリのワインメーカーの方と、メルローについてディスカッションをする機会がありました。海外のメルローと日本のメルローを比較すると、改めて果実感やパワー、濃縮感が見劣りするなと感じましたね。柔らかさや余韻の長さという日本のメルローのよさを全面的に出しながらも、海外のメルローと肩を並べられるワインを目指したいと思います」。

チリは晴天が年間300日も続く非常に乾燥した土地だ。一方日本は雨が多く、気象条件がまったく異なる。テロワールの違いを受け入れたうえで、さらに海外のメルローと競い合えるぶどうを収穫するための施策が必要なのだ。

▶︎ポイントは収穫時期と見た目

次に、桔梗ヶ原ワイナリーのぶどう栽培のこだわりを紹介しよう。

「ぶどうの熟度にこだわっています。ぶどうを丁寧に育てあげた集大成として、適正な収穫タイミングを見極めることが重要です。天候を見定め、酸と糖度のバランスはどうか、種まで熟しているかをスタッフの口で確かめて判断することを徹底しています」。

また、ぶどう園やぶどうの樹形の見た目にもこだわっている。見た目とは、ぶどう樹が整然と誘引され、畑の草刈りができた美しい状態が保たれていることだ。

常にその状態を保てば、ぶどうの房周りが整備されて風通しがよく、病気にもなりにくい。ぶどうの品質を保つ以外にも、見た目を美しく整えることには次のような効能がある。

「契約農家の方から、ぶどう畑の管理をシャトー・メルシャンに任されることがあります。塩尻は街中にぶどう園がある街なので、きれいなぶどう園の風景をぜひ維持してほしいと依頼されるのです。美しいぶどう園を維持することが、塩尻の街への貢献になると考えています」。

美しいぶどう園のある街並みで育った子供たちは、きっと将来、ワインを飲むたびに故郷を思い出すだろう。

『「シグナチャー」が代表する桔梗ヶ原ワイナリーのワイン』

ここで、桔梗ヶ原ワイナリーで誕生するワインについて紹介したい。

シャトー・メルシャンのワインは、3つのシリーズから成り立つ。世界トップクラスのワインに並ぶ「アイコン」シリーズと、産地の個性を存分に発揮した「テロワール」シリーズ。そして、デイリーに日本ワインの魅力を楽しむ「クオリティ」シリーズだ。

「アイコン」シリーズは、シャトー・メルシャンが所有する3つのワイナリーそれぞれから誕生する、最高峰のワインだ。桔梗ヶ原ワイナリーのアイコンワインは、​​「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー シグナチャー」だ。桔梗ヶ原ワイナリーが造るワインが目指す姿について見ていこう。

▶︎毎年同じ仕込みはしないというこだわり

「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー シグナチャー」の特徴は、柔らかさとエレガントさ、余韻の長さだ。今後はさらに、海外のメルローワインとも肩を並べられるよう、より果実由来の凝縮感のあるワイン造りを目指し、ぶどう栽培に取り組んでいくのが、シグナチャーを醸造する上での桔梗ヶ原ワイナリーの基本となる考え方だ。

「醸造でのこだわりとしては、毎年新しい手法を取り入れるようにしています。去年と同じ仕込みはしないことがこだわりですね」。

例えば、高瀬さんが桔梗ヶ原ワイナリーで初めて醸造を担当した2021年には、発酵が終わった赤ワインを引き抜き、ステンレスタンクに入れて温める方法を改良し、実施した。1週間ほど温度を28〜29度に保しながら、定期的に窒素パージをすることでタンニンの質が変化し、まろやかで余韻の長いワインになるのだ。ワインが酸化しないよう溶存酸素と温度の管理を徹底することがポイントだという。

また、2022年の醸造では、より細かい区画ごとの仕込み分けを行うことで、品質の高いブドウを産する区画を特定する。また、ルモンタージュ(液循環)やピジャージュ(櫂つき)といった発酵管理の違いを再評価し、ブドウから味わいを抽出する方法を最適化する。柔らかさとエレガントさの中に、ブドウ由来のしっかりとした凝縮感を感じるワイン造りを追求する桔梗ヶ原ワイナリーの新たな試みから目が離せない。

▶︎大事な場面で飲んでもらうワインを目指して

桔梗ヶ原ワイナリーのワインをどのような場面で飲んでもらいたいですか、と高瀬さんに尋ねると、言葉を選びながら丁寧に答えてくれた。

「桔梗ヶ原ワイナリーで造るワインは、決して購入しやすい価格のワインではありません。大切な方と、大切な時間を共有する場面で飲んでもらえたら嬉しいですね。飲んでくださった方に必ず感動してもらえるよう、思い出に残るワインにしなければと日々思いながら造っています」。

ワインは子供の誕生年や結婚記念年など、ヴィンテージに紐付けて飲まれることが多いお酒だ。ヴィンテージで選んでもらうからには、美味しいと思ってもらうことはもちろん、年ごとの気候が反映されたワインを造っていきたいという。

ワインはデリケートな生き物だ。気の緩みや油断で品質に影響が出ないよう、日々自身を戒めワインと向き合う必要があるという。

「ワイン造りでなによりも大切なことは、健全なぶどうを健全な状態で収穫し、出来たワインをボトルに詰めるまで、美しい状態で維持することです」。

高瀬さんの言葉から、ぶどうとワインに誠実に向き合う姿勢が感じられる。

▶︎おすすめワイン

高瀬さんの桔梗ヶ原ワイナリーおすすめのワインを聞いてみた。

「個人的に愛着があるのは、桔梗ヶ原ワイナリーで販売している『シャトー・メルシャン 箱庭ヴィンヤード』です。小さな箱庭ヴィンヤードで収穫されたメルローとカベルネ・フランを同時に収穫し、混醸(ぶどうの段階でブレンドして仕込む醸造法)したワインです。メルロー主体でカベルネ・フランを含むエレガントなワインです」。

シチュエーションとしては、自宅での少し特別な時間に、デミグラスソースのハンバーグやチキンや豚肉のソテーなど、脂分があまり多くない肉料理に合うと提案してくれた。

桔梗ヶ原ワイナリーだけで販売されるワイン。ぜひワイナリーに足を運んで購入してみてはいかがだろうか。

『桔梗ヶ原ワイナリーの未来』

最後に、高瀬さんにこれからの桔梗ヶ原ワイナリーの展望について聞いた。日本ワインの歴史に大きな変化をもたらしたワイン、「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー シグナチャー」。そのアイコンワインを誕生させた桔梗ヶ原の地では、今後どのようなチャレンジが繰り広げられるのだろうか。

▶︎世界に認められることを目指して

桔梗ヶ原ワイナリーのアイコンワイン「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー シグナチャー」と、テロワールワイン「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー」。このふたつのワインの品質をさらに高めていくことが桔梗ヶ原ワイナリーのベースとなる活動だ。

塩尻の地で栽培できる新たな品種を求め、カベルネ・フランの栽培に挑戦する桔梗ヶ原ヴィンヤードだが、目指すのは「さらに桔梗ヶ原メルローの品質を高め、世界で認められるメルローを誕生させること」だ。

また、桔梗ヶ原ワイナリーが管理するもうひとつの畑、「片丘ヴィンヤード」でも新たなチャレンジを進めている。

1877年にシャトー・メルシャンの前進となる「大日本山梨葡萄酒会社」が創立された。150年目の節目の年にあたる2027年までには片丘ヴィンヤードのアイコンワインをお披露目できるようにしたいそうだ。

「片丘ヴィンヤードは、2017年から栽培をスタートしたばかりの若い畑です。畑の区画ごとの収量や、栽培品種に適した区画、適さない区画などがまだ明確ではありません。継続的に調べ、片丘ヴィンヤードのアイコンワインを誕生させます」。

片丘ヴィンヤードで現在栽培中の品種は、メルローとカベルネ・フランのほか、ゲヴェルツトラミネールやピノ・グリなど白ワイン用品種だ。桔梗ヶ原の新たなアイコンワインが誕生する日を楽しみにしたい。

『まとめ』

最後に、高瀬さんに桔梗ヶ原ワイナリーの強みについて尋ねた。

「桔梗ヶ原と片丘、箱庭という3つの畑と、ぶどう栽培に携わってくださる契約農家さん、そして栽培から醸造、梱包、販売まで一貫してこなせる仲間の存在が、桔梗ヶ原ワイナリーの強みであり魅力です」。

高瀬さんはメルシャンに入社後、研究職としてワインの研究に携わった。研究職ははじめから終わりまでひとりで完結する仕事で、知りたいことを追求できるので面白かった。だが、ワイン造りはチームでの仕事だ。

「チームとしてよいワインを造ろうとみんなで一丸となって動くときに、みんなが同じ方向を目指す高揚感が素晴らしいですね」。

日本ワインの歴史を大きく変えた桔梗ヶ原ワイナリーは、今日も新たなチャレンジを続ける。

桔梗ヶ原ワイナリーはシャトー・メルシャンの中では小さなワイナリーのため、一般公開される日が限られている。一般公開では、ワイナリーで働くスタッフが案内と接客を担当するそうだ。公開日を公式サイトでチェックして、桔梗ヶ原ワイナリーのあたたかいおもてなしを体験してみてはいかがだろうか。

基本情報

名称シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー
所在地〒399-6461
長野県塩尻市大字宗賀1298-80
開館時間12:30〜16:00
営業日シャトー・メルシャンwebサイトにてご確認ください。
アクセスhttps://www.chateaumercian.com/winery/kikyogahara/#access-anchor
Webサイトhttps://www.chateaumercian.com/
https://www.chateaumercian.com/winery/kikyogahara/

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