余市の広大な大地に、垣根仕立でぶどうを栽培する「キャメルファームワイナリー」。青い空と緑の大地、どこまでも続く垣根仕立てのぶどう畑は圧巻の光景だ。
冷涼な気候と豊かな自然が高品質なぶどうを育むこの余市で、キャメルファームワイナリーは世界を目指す。ワイナリーの力の源は、人と人とのつながりだ。
今や世界に評価されるワインを醸すワイナリーへと成長を遂げたキャメルファームワイナリーだが、なぜこれほどまでに急激な成長を遂げたのか?その理由は、ワイナリーの歴史や造り手の思いを知れば、自ずと理解することができるだろう。
『未来につなぐ』
まずは、キャメルファームワイナリーのぶどう栽培について紹介しよう。ぶどう栽培へのこだわりについても見ていきたい。
▶︎キャメルファームワイナリーの栽培ぶどう品種
最初に紹介するのは、キャメルファームワイナリーで栽培するぶどう品種。2022年現在、7品種を栽培している。
7 品種
- ピノ・ノワール
- ツヴァイゲルト
- ブラウフレンキッシュ
- レジェント
- シャルドネ
- ケルナー
- バッカス
ラインナップにはドイツ系品種が目立つ。余市の冷涼な気候に合うことを一番に考えて選定された品種なのだ。
キャメルファームワイナリーで醸造するメインのワインとして、スパークリングワインに焦点が当たったのには大きな理由がある。余市の冷涼な気候で育ったぶどうは、豊かな酸が特徴だ。酸の高いぶどうを生かしたワインにするなら、スパークリングワインが向いているのだ。
スパークリングワインの大部分はシャルマ方式(タンク内で二次発酵させる製造方法)だが、一部は瓶内二次発酵で製造している。瓶内二次発酵は、シャンパーニュ地方などで高品質なスパークリングワインを造るときに用いられる製造方法だ。
「スパークリングワインをメインに据える」という決断は、余市のぶどう特性を生かすために考え抜かれたもの。ワイナリーの強みをよりパワーアップさせるために、キャメルファームワイナリーはより高いレベルのワイン醸造に挑むのだ。
▶︎進化を続ける畑
もともと11haだったキャメルファームワイナリーの畑は、拡張して13.5haになった。
畑周辺の気候についても紹介しよう。北海道ならではの冷涼な気候が特徴の余市。日本海を流れる暖流が、余市に温暖な空気をもたらす。
「余市は北海道でも珍しい果樹の町です。道東ほどの厳しい寒さもなく、それでいて適度に降雪があります。ワイン用ぶどうの栽培にちょうどよい、絶妙な気候なのです」。
適量の雪は、冬季にぶどうを凍害から守る。北海道では、冬にはぶどうの樹をすっぽりと雪に埋めて越冬させるのだ。雪に包まれた樹は凍ることなく雪解けまで守られる。
ぶどう栽培に適した気候の余市だが、近年では気候変動の影響もあるという。積雪量が減り、平均気温が上昇しているのだ。
気候変動による温暖化とともに、余市で栽培されるぶどう品種も変化を続けている。1980年代、ワイン用ぶどう栽培を始めた頃は、気候的な制約によってシャルドネやリースリングは育てることができなかったそうだ。だが、ここ数年でシャルドネの栽培が可能となった。気候変動の影響が大きいことがわかるだろう。
キャメルファームワイナリーでは、引き継いだ慣行農法をベースにしつつも、徐々に有機農法への切り替えを進めている。
「安易な気持ちで有機農法を始めたわけではありません。周囲の畑にも影響が及ぶことなので、慎重に進めている最中です。ぶどう栽培を続ける長く手段として、有機農法を少しずつ取り入れています」。
有機農法を取り入れて、2022年には4年目に入った。今では除草剤を一切使用していない。栽培当初と比較すると、農薬も半量に減らすことができた。
「薬を使わない分、自分たちの知識もアップデートさせていく必要があります」。
例えば「虫」への対策だ。薬が減った分、畑には虫が増えた。どんな虫を駆除すべきなのか?見極め方法や特徴とは?こういった情報を、逐一スタッフと共有している。
「新しい虫や、虫の卵を発見したら、必ず写真を撮って全員に連携するようにしています。卵は持ち帰って、どんな虫が生まれるか確認しています」。
すべては、未来のぶどう栽培につなげるために。自分たちの知識や経験を増やすためだけではなく、次世代につながる取り組みでもあるのだ。
「最終的にはきっと、細かいデータの収集と蓄積が、将来につながるのではと思っています」。
自分たちにできることに全力で取り組み、未来を考えたワイン造りに取り組むキャメルファームワイナリー。情熱と未来への思いは、必ずや受け継がれていくことだろう。
『ぶどうらしさを発揮して世界を目指す キャメルファームワイナリーのワイン造り』
続いて見ていくのは、キャメルファームワイナリーが醸造するワインについて。
キャメルファームワイナリーの醸造のこだわりと世界を目指す挑戦を追っていこう。
▶︎キャメルファームワイナリーが目指すもの
キャメルファームワイナリーには、設立当初から掲げていた目標がある。
「目標にしたのは『世界に評価されるワイン造り』をすることです」。
しかしワインの本場と同じ土俵で勝負し評価されることは、並大抵の努力では実現できない。世界に評価されるワインとは?品質の高いワインを造るためのぶどう栽培とは?終わりのない問いかけが続く日々だ。
目標に向かい歩みを進める中、喜ばしい出来事があった。キャメルファームワイナリーのワインが、イギリスの国際的ワインコンクール「Decanter World Wine Awards(デキャンター・ワールド・ワイン・アワード)」で2年連続ゴールドを受賞したのだ。
2021年の受賞ワインは、「ピノ・ノワール プライベートリザーブ 2019」。2022年の受賞ワインは、「ブラウフレンキッシュ プライベートリザーブ 2020」だ。
「コンクールで受賞することがすべてではありません。しかし、目に見える指標で自分たちのレベルを測ることも必要だと思っています。コンクール受賞も目標にしながら、世界と肩を並べるワイン造りに向けて精進していきたいです」。
安定した評価を獲得し、よりレベルの高いワインを醸造するため、さらに高いレベルを目指して歩み続ける。
▶︎ワイン醸造の体制
キャメルファームワイナリーで醸造長を担当するのは、イタリア出身のアンジェロ・トータロさん。
アンジェロさんが常日頃から話しているという、醸造のこだわりを教えていただいた。
「自分たちが何かを加えるのではなく、ぶどうの個性とポテンシャルを引き出すことを何よりも心がけています」。
ぶどうの力を引き出してよいワインにするには、ぶどう自体に高い品質が備わっている必要がある。そのため、畑と醸造の専任スタッフは互いに連携しながら作業を進めている。
「栽培や醸造は、年ごとの天候などによって臨機応変に変えています。醸造施設が整っているので、温度管理などの徹底を心がけています」。
ぶどう本来の味をそのままワインにするために、チーム一丸となってワイン造りに励むこと。それがキャメルファームワイナリーの醸造のこだわりなのだ。
▶︎ワインに込めた思い 「つながり」を胸に
キャメルファームワイナリーのワインは、豊富な商品展開が魅力だ。
ワイン初心者なら、シャルマ方式で造られたスパークリングワインがとっつきやすい。例えば「ケルナー スパークリング」は、柑橘や花の香りが豊かで、辛口ながら女性に人気の高い1本だ。
キャメルファームワイナリーのワインを初めて手に取るワインラバーには、受賞ワインをおすすめしている。受賞ワインからは、濃密な果実感と余市ならではの酸が感じられる。
甘めのスパークリングから濃厚な赤ワインまで、あらゆるジャンルのワインを選ぶことができる。自分の好みに合う1本がきっと見つかるはずだ。
キャメルファームワイナリーのワインを楽しむときには、エチケット(ラベル)のイラストにも注目してみてほしい。
「エチケットには余市の自然美が表現されています」。
エチケットのテーマは「花鳥風月」だ。「ウニタ ロゼ」には花、「ケルナースパークリング」や「レガミ エクストラドライ」には鳥、そして「プライベートリザーブシリーズ」には風と月が表現されている。
かわいらしく素朴なイラストも魅力的だが、同時に注目したいのは、エチケットの端に押された「金色のロゴマーク」だ。
「金色の丸の中には『繋』という漢字がデザインされています。キャメルファームワイナリーが生まれ、発展したのも、人と人とのつながりがあってこそ。私個人も、人と笑顔がつながることを祈ってワイン造りをしています」。
人のつながりを大切にすることは、さらに新たな人との絆を生む。さまざまな絆を力に変えて、キャメルファームワイナリーはさらに突き進むのだ。
『ワイン造りのために キャメルファームワイナリーの未来』
最後のテーマに移りたい。テーマは「キャメルファームワイナリーの未来」。
これからどんなワイン造りをおこなっていきたいのか、どんなワイナリーを目指すのか。
▶︎続けられるワイナリー運営 目標を貫くために
「最初に掲げた目標である、『世界に評価されるワイン造り』を、ぶれずに貫いていきたいです」。
世界に評価されるワイン造りを続けていくためには、品質をがむしゃらに追い求めるだけでは不十分だ。プラスして、「継続するための努力」も必要になってくる。
「よいワインができたらそれでよいわけではなく、自然との共生や続くワイナリー運営を考えていかなくてはなりません」。
環境負荷の少ないワイン造りを少しずつ試し、ワインの味にどう影響するかまで追求していく。畑を引き継いだキャメルファームワイナリーには、未来までワイン造りを続ける責任がある。
「持続可能なワイナリー経営をみんなで考えてきたいです」。
持続可能な農業への取り組みは、これからのキャメルファームワイナリーをより一層輝かせることだろう。
『まとめ』
「世界に評価されるワイン造り」を目指し、たゆまぬ努力を続けるキャメルファームワイナリー。造り手はワイナリーの未来を真剣に考え、人とぶどうに誠実に向き合っている。高品質なワインの味はもちろんのこと、造り手の理念にも心を動かされる。
キャメルファームワイナリーを応援したいと思ったなら、現地でワイナリーツアーに参加するのがおすすめだ。造り手たちの情熱とあたたかな人柄を、よりはっきりと感じられるだろう。
人との絆を大切に、ワイナリーの未来のために行動するキャメルファームワイナリーは、これからも大きく成長を続けていくことだろう。ワイナリーを訪れて、その体験を周囲の人たちに語ることで、私たちもつないでいきたい。
基本情報
名称 | キャメルファームワイナリー |
所在地 | 〒046-0002 北海道余市郡余市町登町1408 |
アクセス | https://goo.gl/maps/kp9n6ZrwXB97VuKh9 |
HP | https://camelfarm.co.jp/ |