追跡!ワイナリー最新情報!『ココ・ファーム・ワイナリー』オンライン収穫祭や新銘柄「ココヌーボー」など、新たな取り組みに挑戦した1年

栃木県足利市田島町にある「ココ・ファーム・ワイナリー」。障がいのある子どもたちがいきいきと生活できる場として、1958年にぶどう畑の開墾を始め、1980年にワイナリーを設立。1984年にワインの醸造許可を得た。

約6haの自家畑で栽培するぶどうは、平均斜度38度の山の土壌を生かす栽培方法が特徴だ。

ココ・ファーム・ワイナリーでは、畑の開墾以来一度も除草剤は使わず、現在は化学肥料も一切使用していない。ぶどうの病気対策は最低限の薬剤散布のみ。

畑に大量に生える草は、ココ・ファーム・ワイナリーの経営母体である福祉施設「こころみ学園」の園生たちが刈り、自然の緑肥になる。
また、病気になったぶどうの粒をひとつずつ手作業で取り除くのも、園生たちの仕事になる。根気のいる作業を丁寧にこなす園生たちが、健全なぶどう作りを支えている。

ココ・ファーム・ワイナリーが目指すのは、ぶどう本来の味を生かしたワイン造り。野生酵母で発酵を促すことで、ぶどう本来の味や土地の味わいを表現する。介護や子育てのようにしっかりと醸造を見守り、世界に通用する品質のワインを造りあげて、その活動が評価されている。

2021年のココ・ファーム・ワイナリーは、どのような年を過ごしたのか。取締役の池上峻さんに、印象的だった出来事などを伺った。早速紹介していこう。

『2021年のココ・ファーム・ワイナリー』

ココ・ファーム・ワイナリーでは2021年、自家畑に雹(ひょう)が降り、甚大な被害を受けた。

6月15日のことだ。足利の自家畑に猛烈な風がふき、バチバチと雹が降ったのだ。

「栽培スタッフが血相を変えて、畑に駆けつけました。しかし、吹き荒れる自然を前に、茫然と立ち尽くすことしかできず、非常に切ない思いを味わいました」。

雹が降った時間は、ほんの15分程度。小さな雹ではあったものの、畑の区画によってはぶどうの枝や葉が大きなダメージを受けた。勢いよく降った雹が、ぶどうの葉を完全に貫通したのだ。

マッチ棒の先ほどのサイズに成長していたぶどうの実も、黒く変色して落ちてしまうなど、被害は甚大だった。池上さんは、「2021年はもうだめかもしれない」と暗澹たる気持ちになったという。

▶クオリティーの維持のため、栽培方法を切り替える

被害を受けたあとの栽培スタッフの努力は、相当なものだったそうだ。高品質なワインを造るためにココ・ファーム・ワイナリーが掲げる、「ぶどうがなりたいワインになれるように」という強い思い。ワイナリーの想いをまっとうするために、スタッフはみな、すぐに頭を切り替えた。

「樹が生き残ってくれるようにと、傷ついた多くの実や枝の中から、再生できるものをより分けて残しました。さらに、果実のクオリティーを落とさないよう、収量を減らしたのです」。

結果、2021年は例年の7割に届くかどうかという収量だった。区画によっては、収穫量がゼロに近い場所もあった。だが、栽培スタッフの頑張りもあり、例年と遜色ないクオリティの実が収穫できたと池上さんは自信をのぞかせた。

▶契約農家の存在や自家畑の分散の大切さを実感

不幸中の幸いだったのは、雹による被害が、まだぶどうの実が小さい6月だったこと。
「実りの時期であれば、もっと大変だったと思います。また、ぶどうの樹の強い生命力に助けられたと感じています。傷ついたぶどうの樹が、以前の状態に戻るには長い期間がかかります。今までどおりの剪定はできず、剪定時に枝や芽の数を少なくするなど、臨機応変な対応を続けていきます」。

今回の降雹被害は、足利のエリアの中でも、ココ・ファーム・ワイナリーのぶどう畑のある谷だけを狙ったかのような自然災害だった。山ひとつ向こう側の地域では被害はほとんどなく、広範囲な災害でなかったため、被害が甚大でも市や県からの補助はない。

「契約農家さんの存在や自社畑の分散など、リスクヘッジの大切さを改めて実感しました」。
ココ・ファーム・ワイナリーでは、かねてより北海道岩見沢市や山形県上山(かみのやま)市に新しい自家畑を開墾しており、その必要性を再確認したようだ。

『2022年以降、新しい品種に高まる期待』

ココ・ファーム・ワイナリーが栽培する主なぶどう品種は、畑の上側から順に、「マスカット・ベーリーA」「リースリング・リオン」「ノートン」「プティ・マンサン」。加えて、日本海側の各ワイナリーでよい味に育っていると評判の「アルバリーニョ」も、数年前から試験的に植えている。

▶「アルバリーニョ」「プティ・ヴェルド」に期待

白ワイン用ぶどう品種である「アルバリーニョ」は、今後さらに作付け面積を増やしていく予定だ。赤ワイン用ぶどう品種では、「プティ・ヴェルド」を試験栽培している。

「プティ・ヴェルド」を植えた当初は、色づきが悪く、あまり手ごたえを感じなかった。だが、除葉のタイミングなど、栽培方法を試行錯誤していくうちに、色づきと味もよくなってきたという。

「アルバリーニョ」と「プティ・ヴェルド」が、期待できる品種として成長してきているようだ。

▶より未来を見据え、奥深い栽培の世界へ踏み出す

どのワイナリーにおいても、植栽する苗木の選定は重要な課題だ。そのため、試行錯誤するワイナリーも多くある。

ココ・ファーム・ワイナリーではさらに、新しいぶどう畑をつくる際にはウイルスによる病気や弊害を防ぐために「ウイルスフリーの苗」を植えるなど、より未来を見据えた試みをしているようだ。

ぶどうの栽培は、専門性が高く学びがいのある奥深い世界。スタッフは楽しそうに取り組んでいるという。

『チームの力を結束し、ぶどう栽培に取り組む』

ココ・ファーム・ワイナリーの栽培長は、「たとえ非常時であっても、新たに加わったメンバーを含めた栽培チームの力を結束・強化するのが、2021年のテーマ」だと考えたそうだ。

▶栽培チームのメンバーそれぞれの個性や考え方を生かす

「畑のある区画では、栽培チームのそれぞれに担当の樹を決めています。剪定など、1年間しっかりと管理するように、責任を持って取り組んでもらうための取り組みです。ただ漫然と毎年同じことをするのではなく、それぞれの個性や考え方を取り入れることで多様な栽培へのアプローチができるという効果も期待できます」。

スタンダードに栽培を進める区画もあるが、それぞれが考え、楽しみながら栽培ができるようにという栽培長の工夫なのだ。

「栽培チームの取り組みは、本当に頼もしく感じています」と笑顔を見せる池上さん。仕事を楽しみ、やりがいを見出しながら栽培すると、その気持ちが飲み手に伝わると考えているのだ。

母体の福祉施設「こころみ学園」の名前どおりに、さまざまな取り組みを「試み」つつ、ぶどう栽培を進めている。

▶さまざまな人に見守られ、美味しいワインになる

ココ・ファーム・ワイナリーでは、醸造の時期に研修生を受け入れている。2021年にも、地域の若者を1名受け入れた。

また、東京の飲食店のオーナーとスタッフも醸造補助に参加。コロナ禍では店を開けても満足なサービスができなかったこともあり、約2か月間、ココ・ファーム・ワイナリーの寮に泊まり込んだ。こころみ学園の園生と同じ釜の飯を食べながら、みっちりと醸造を手伝ってくれたという。

醸造のスタッフの日々の努力はもちろん、さまざまな人に見守られながら、ワイン醸造がすすめられているのだ。

『収穫祭の時期に販売されたココヌーボー2021』

ココ・ファーム・ワイナリーでは、毎年11月の第3日曜日とその前日の土曜日に、収穫祭を実施している。ミュージシャンの演奏がワイナリーに響きわたり、1日8,000人ほどの人が集まる、音楽フェスのようなお祭りだ。しかしながら、コロナ禍のため2020年と2021年はオンライン開催のみ。そんな中での新しい試みが「ココヌーボー2021」という銘柄のワインだ。

▶全国の人にできたてのワインを飲んでもらいたい

ココヌーボーは、もともと収穫祭のときに来場者限定で振舞っていた「できたてワイン」というワインだ。2020年は現地での収穫祭が中止となったため、市内の限られた人にだけ味わってもらっていた。

しかし、そのワインを全国の人に飲んでもらいたいという思いが高まり、2021年には、新銘柄「ココヌーボー」として販売した。

ココヌーボーは、発売後すぐに完売。うれしい悲鳴をあげた。

▶若々しくフレッシュな味わいのココヌーボー

製造から発送まで大変な作業ではあったが、よかったのは全国のお客様にココヌーボーを喜んでもらえたことだ。濾過をせず、酵母が糖分をほとんど食べきって辛口になったタイミングで瓶詰めして発送した。

「限られた時期にしか飲めない、若々しくフレッシュな味わいと、チャーミングな香りを楽しんでいただけたのではないかと思います。ピンク色が美しく、はつらつとした味わいで、醸造長のセンスが光る1本でした」。

2022年もココヌーボーを販売するかどうかは未定だという。もしかすると、2021年限定の幻の銘柄になるかもしれない。

▶美しい音色がワイナリーに響き渡る収穫祭

「実は、2021年の夏ごろまでは、現地で収穫祭ができると考えていました。そのため、収穫祭は現地とオンラインの同時開催を予定していたのです。しかし、夏を過ぎたころに新型コロナウイルス感染症の第5波が発生しました。スタッフで議論を重ねた結果、オンラインのみでの開催を決断しました」。

2021年の収穫祭はオンラインのみでの開催となったが、ココ・ファーム・ワイナリーの収穫祭は音楽とワインの祭典であることに変わりはない。

収穫祭の様子を記録したライブ配信は、「収穫祭セット」を購入したお客様に配信された。

シイタケを育てている森の中でのチェロの演奏や、タンクルーム内でのアカペラの歌唱。樽室では、世界的なバイオリニストで、ココ・ファーム・ワイナリーの取締役でもある古澤巖さんの音色が響き渡る。オンライン収穫祭の最後は、夕陽に彩られるぶどう畑の山頂で「赤とんぼ」を奏でるサクソフォンの音色で締めくくられた。

特典映像のドキュメンタリーには、こころみ学園の施設管理者や醸造長、栽培長、池上さんのインタビューも収録されている。ココ・ファーム・ワイナリーのファンにはたまらない、貴重な映像だ。

『まとめ』

2021年は、ココ・ファーム・ワイナリーにとって、さまざまな新しい化学反応が起こった年。研修生として参加した飲食店のメンバーが、「こころみ学園」の園生たちにジャンバラヤなどの料理を振舞ってくれた、心温まるシーンがあった。

オンラインでの収穫祭の実施や、ココヌーボーのリリースなど、コロナ禍でも必死に前に進み続けたからこそできあがったものもある。

「流行病の影響で、ややもすると悪者にされがちな酒類ですが、お酒を飲むことはひとつの文化です。お酒にはすばらしさがあり、決して『不要不急』という言葉では表現できない、恒久的な価値があると思うのです」と語ってくれた池上さん。

ココ・ファーム・ワイナリーでは2022年、さらにお酒を人々の身近に届けられる取り組みを、加速していく予定だ。どのようなアイデアが形になるのかを、楽しみにしたい。

基本情報

名称ココ・ファーム・ワイナリー
所在地〒326-0061
栃木県足利市田島町611
アクセス電車 JR両毛線「足利駅」下車 タクシーで約18分
東武伊勢崎線「足利市駅」下車 タクシーで約20分
車 北関東自動車道「足利インターチェンジ」下車 約10分
HPhttps://cocowine.com/

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