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今回は、いつもとは少し趣向を変えて、ワイナリー体験記「フランス編」をお届けします。
ヨーロッパ在住の「Terroir.media」運営メンバーが、夏期休暇を使ってフランスのワイナリーに行ってきました。日本のワイナリーとはまた別の魅力を持つ、フランスのワイナリーを巡る体験記をお楽しみください。
まずはフランスのワイン産地について簡単に紹介します。(ワインラバーのみなさんなら、すでによくご存知の内容かもしれませんね!)下の地図で色づけされた場所がフランスの主なワイン産地。
フランス全土でワインが作られていることが分かります。
この夏に旅してきたのは、フランス南部です。ワインと世界遺産をめぐる、思い出に残る旅でした。
訪れた産地は「ボルドー地方」と「カオール」という街です。
まずは、フランス南西部のボルドー地方へ。北緯45度あたりに位置し、これは日本だと北海道と同じくらい。
ボルドー地方はフランス最大規模のワイン産地です。ぶどうの総栽培面積は約11万ha、ワイナリー数は6000軒以上。ボルドーのワインづくりの歴史は古く、ローマ時代にさかのぼります。12〜15世紀には英国領となり、ワイン貿易で発展を遂げました。
ボルドーワインには格付けがあることで有名です。最も古い格付けは1855年にナポレオン3世が制定したもので、長い歴史を持ちます。
ボルドー地方に行くのは4回目、直近では3年連続での訪問です。滞在中は、ポイヤック(Pauillac)という村の近くを拠点にしました。
ポイヤックは、1級シャトーが3つもある村。メドック地区の中でも「オー・メドック(Haut−Medoc)」と呼ばれる、優れたワインを多く産出する地域にあります。
ボルドーでは、ワイナリーが「シャトー」と呼ばれます。もともとシャトーとは「お城」を示す言葉。ボルドーでは小規模ワイナリーでも「シャトー」ですが、歴史のある大規模ワイナリーの建物は、まさに中世のお城そのものです。
大手、小規模、こだわりのヴァン・ナチュールの造り手などのシャトーがひしめき合います。そこらじゅうシャトーだらけなので、行き先には困りません。
写真は、シャトー名が目白押しの看板です。どちらに進むか迷ってしまいます。
ボルドーでは、赤品種はメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランが中心です。また、白品種はソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ミュスカテルがメイン。ボルドーワインは、単一品種ではなくアッサンブラージュ(ブレンド)のワインが基本です。
ボルドーの中でも、地域ごとに土壌が持つ特徴が異なり、ぶどうの味に深く影響するといわれています。いくつものシャトーをめぐり、味の違いを楽しむのもオツなもの。
昨年と今年はコロナ渦のため、アジアなど遠方からの訪問客は皆無です。しかしもともと、オランダ、イギリスなどからの観光客が大半を占める地域。そのため、近隣諸国からの夏期の観光客は、それほど減っていない印象でした。
シャトー見学や試飲は、大手は完全予約制で有料がほとんどです。一方の小規模、個人シャトーは予約不要で、醸造所や貯蔵庫の案内と試飲が無料。
個人経営のシャトーでは、栽培と醸造を手がけるオーナーが自ら案内してくれます。質問するとかなり専門的な内容でも詳しく説明してくれるので、大変勉強になりました。
子世代が継ぐことが決まっているシャトーでは、設備投資にも積極的なようでした。
高価なボルドーワインはもちろんたくさんありますが、シャトーによって価格帯はさまざまです。
1本5€程度からと、手ごろな価格でもしっかりと美味しいワインが揃うシャトーも。シャトーに行くと、市場に流通している価格より安く購入できます。赤ワインが有名ですが、白やロゼのラインナップも豊富。
メドック地区では地元シャトーを網羅した冊子が毎年作られ、観光案内所や各シャトーで無料配布されています。最新の情報が把握でき、訪問先選びに役立って便利です。
見渡す限り、なだらかな土地に一面のぶどう畑が広がる絶景。なかには、格付けありの大手と、細いあぜ道を隔てて反対側は別の小規模シャトーの畑が隣り合わせなんてこともザラ。
ワイナリーの格付けによってワインの価格がまったく異なるので、隣り合う畑のぶどうで作られたワインの味の違いが気になるところ。次回はそんな視点でのワイナリーめぐりもよいかもしれません。
ボルドーでは近年、地価の上昇と中国資本による買収の2点が問題となっているとのこと。歴史的に外国資本がボルドーのシャトーを買収する例は多かったものの、中国資本による買収には抵抗感を示す人が多いようです。
ボルドーを出発し、次の滞在先に移動する道すがら、サン・テミリオン(Saint-Émilion)にも立ち寄りました。一帯がユネスコの世界文化遺産に登録されている、歴史ある街です。サン・テミリオン産のワインも絶品。
そして旅の終盤に訪れたのは、南仏トゥールーズから1時間程度の場所にある「カオール」という街。カオールは、「マルベック品種」の原産地です。
マルベックは現在、アルゼンチンで最も多く作られている品種。フランスではごく少量の栽培量に留まります。カオールはフランスで唯一、現在もマルベック単体、もしくはマルベックメインのワインを造っていることで有名です。
カオールのワイナリーの畑では、垣根の仕立て方がボルドーとは異なりました。垣根が高めで、ウネの幅も広い印象。カオールは、山岳地帯で石灰質土壌の土地です。
夏に訪れたフランスのワイン産地について紹介しました。
フランスではワインは生活に溶け込んだお酒です。フランス人は「食卓についている時間が最も長い国民」ランキング1位。
食事に合わせたワインを開けるのが日常です。ワインは酔うための飲みものではなく、人生の楽しみのために飲むものなのだそう。
アペリティフや食事に招かれたときの手土産は、ワインとデザートが定番。季節や食事、シーンに合わせてワインを選ぶのも楽しい時間です。ちなみに、家族や友人が集まる食事では、前菜用、メイン用、デザート用など2本以上のワインをメニューに合わせて出すのが一般的。
フランスワインはA.O.C.(Appellation d’origine contrôlée、原産地統制呼称制度)が整っていることで、一定以上の品質が期待でき、安心して購入が可能。価格帯が広いことも、一般の消費者がワインを取り入れやすい要因のひとつです。また価格帯ごとに、それぞれに美味しいワインに出会えるチャンスがあるのも魅力。
魅力たっぷりのフランスのワイン産地、次回はまた別の場所を訪問したいと思っています。