『楠わいなりー』旨味あふれるワインで、飲み手の幸せを生み出すワイナリー

「楠わいなりー」は、長野県北部、須坂市にあるワイナリーだ。ぶどう畑は、山の冷涼な気候に守られ、緩やかな斜面に位置する。
楠わいなりーの自社畑には、欧州系ぶどう品種を中心としたワイン用ぶどうが、一面に広がっている。

ワイナリーの代表・楠茂幸さんは、サラリーマンからワイン造りに転向した経歴を持つ。
楠さんがワイン造りを志したきっかけとは?高品質なワインを生み出すためにしていることとは何か?さまざまなお話を伺った。

ワインに対する数々のこだわりや思いがつまったエピソードから、あふれるワインへの熱意を感じていただければ幸いだ。

『サラリーマンからワイナリー経営への転身』

楠わいなりー創業のきっかけは、社長、楠茂幸さんの人生観と深く関わっていた。

楠さんはなぜワイナリーを始めたのか。ワイナリーでなければならなかった理由とは?そして楠さんが、自分の半生を深く考えることでたどり着いた答えとは何か?楠さんがワイナリーを始めるまでの道のりに迫る。

▶20年のサラリーマン生活で芽生えた思いとは

ワイン造りを始めるまで、航空機リース関連の企業で20年ほどサラリーマン生活をしていた楠さん。折しも、人生も折り返しにさしかかる頃。ある思いがふつふつとわきあがってきた。

それは「残りの人生では『もの造り』に携わりたい」との思い。
残りの半生をどのように生きていこうかと考えた時に、自分の好きなことをやっていきたいという思いを漠然と抱いたのだった。

しかし、もの造りの中でもなぜ「ワイナリー」をすることにしたのかと疑問を持つかもしれない。楠さん自身も、最初から明確にワイナリーをやろうと突き進んだ訳ではなかった。

楠さんは「今後の人生」や「後悔しない生き方」について、時間をかけて徹底的に自分自身を見つめ直した。その先にあった「本当にやりたいこと」が、ワイナリー経営だったのだ。

▶自分が本当にやりたかったこととは?全てを兼ね備えていたのが「ワイン」だった

楠さんがどのような思いを経てワイン造りを目指すに至ったのか。その道のりを紹介したい。

残りの人生を「もの造り」に挑戦したいと思い立った楠さんが最初に考えたのは、どんなもの造りをしたいのか?ということだった。
楠さんのもの造りに対する思いには、次の3つの軸があった。

3つの軸とは「科学」「自然」「芸術」に関わるもの造りであること。
楠さんは理系大学出身。もともとサイエンス分野に関連するもの造りに興味があった。また自然の営みの中でのライフスタイルに対する思いも、サラリーマン生活を送る中で強まっていった。
出身は長野だが、サラリーマン時代は東京やシンガポールなどでの都会生活が中心だった楠さん。都会と田舎、両方の生活を知ったうえで感じていたのが「ゆくゆくは自然豊かな環境で暮らしたい」との思いだった。

自分のやりたい「もの造りの軸」を徹底的に考え抜いた楠さん。次に考えたのが、今までに蓄えた知識を生かせるものは何か?という点だ。そして楠さんが日頃勉強を重ねていたのが「ワイン」だった。

楠さんは、前職の関係でワインの勉強をしていたのだ。ワインの勉強をしていた理由はふたつある。
ひとつは取引先等との食事の場で、ワインによく触れていたから。
もうひとつの理由は、単純にワインが「おもしろい」ものだったからだ。勉強すればするほど、深みにはまっていった。

航空機リースの仕事上、エアライン関係者の方との会食が多かった楠さん。
食事の場ではワインを飲む機会が多く、仕事に生かすためペアリングの研究をしていた。知れば知るほど面白いと気づいたワインの世界。
仕事に生かすための勉強だったが、気づけば自らの興味からワインに関する多くの知識を収集していた。

自分自身がやりたいことと、今まで勉強してきたことを総合すると見えて来たのが「ワイン造り」。自分の半生を懸けた新しい挑戦として、ワイナリー経営を本格的に考え始めたのだった。

▶ワイナリーを始めるまでの苦悩と決意

ワイナリー経営を考え始めた楠さんだったが、簡単に決意できた訳ではない。何よりも二の足を踏ませる理由になっていたのが、資金の問題だった。
海外の大規模ワイナリーを観光した際など、数々の設備を見て、莫大な資金が必要になりそうだと感じていたのだ。

「やはりサラリーマンからワイナリー経営に転向するのは別世界の話なのかな、と感じました」。楠さんは当時を思い出して話す。

そんな楠さんに転機が訪れる。ある本との出会いが、ワイナリー経営に関する楠さんの考えを変えたのだ。
楠さんが出会った本は「スモールビジネスとしてのワインメイキング」についての実践的な内容の書籍だった。

本を読んで分かったのは、小規模ワイナリーであれば1億円くらいの資金でスタートできること。
「もちろん1億円は小さい金額ではないが、多少の無理をすれば手が届くかもしれない」。
興味・知識を生かしつつ、自分のやりたいことと合致したワイン造り。人生を懸けてでも始める意味があると感じたのだった。

悩みのひとつはクリアになったとはいえ、もうひとつの心配も楠さんを悩ませていた。

「ワイン造りへの気持ちは、もしかしたら一時期の気持ちの昂ぶりなのではないだろうか?とも考えたのです。農業経験が無い自分が困難にぶつかったら、途中で投げ出してしまうのでは、と悩みました」。
楠さんは、当時の苦悩について話してくれた。

後悔しないために、と自分の気持ちをあらゆる角度から見直していた楠さん。ワインへの思いを考える日々が続いたある日、ふと20年後の自分が頭に浮かんできた。

浮かんできたのは、天気のよい日に、木陰で友人達と食事をしながら美味しい日本ワインを飲んでいる光景。
「20年後の風景の中にいる自分が、ワイン造りに携わらなかったことに、とても後悔していることが想像できました。『20年前のあの時、決断できていれば』と悔しがっている自分が目に見えるようだったのです」。

自分の気持ちが鮮明に想像できたことで「20年後に後悔しないために」とにかく造ってみようと決意。ワイナリー経営に向けて具体的に動き出すことになったのだ。楠さんは時間をかけて自分がやりたいことや自分の人生を突き詰めて考えていった、結果ワイン醸造の道を選んだのだった。

▶オーストラリア留学を経て、故郷・須坂市でワイナリーを創業

ワイナリー経営をスタートする前に、地元である長野県須坂市に帰ることになる楠さん。父の病気が発覚し、余命一年と宣告されたのだ。高校卒業後に地元を離れていた楠さんは、最後の親孝行にと地元に帰ることを決めた。

地元に戻ってからの楠さんは、父の看病しながら地元のワイナリーで研修を受ける日々だった。ワイン理論は勉強しても難しいうえ、自分には経験も技術もないことを痛感する。

「40歳を過ぎた自分が、時間的な制約がある中で、短期間でワイン造りを身につけるにはどうしたらよいだろうか」。
考えた末に出した結論は、ワインに関する専門教育を受けることだった。父が亡くなった後、楠さんはオーストラリアのアデレード大学へ留学。ぶどう栽培とワイン醸造を本格的に学ぶことになる。

アデレード大学では、ワインに関する多くのことを研究した。
特に「どこでぶどうを造ったらよいぶどうができるのか」「どういうぶどうをどんな仕立て方で、どんな風に作ればよいのか」についてレポートする授業が印象的だった。

気象データを分析し、指標にする数値などを知った楠さんは、日本の気象データを分析することを思い立つ。アメダスのデータを取り寄せて分析したところ、なんと故郷の須坂市がワイン用ぶどう栽培最適地のひとつだと判明したのだ。

長野県須坂市であれば、実家があり土地勘もある。そしてなにより、ぶどう栽培に適している。ワイン造りに最適な要因が、偶然楠さんの故郷に重なったのだ。留学を終え、須坂市に戻った楠さん。故郷である須坂市で、ワイナリーを開くことを決めた。

『栽培適地で、好きなぶどう品種を育てる』

続いて、楠わいなりーで栽培されているぶどうについて、詳しく紹介していこう。楠わいなりーでは生食用ぶどうのほかに、ワイン品種で赤ぶどう6品種と、白ぶどう6品種を育てている。

赤ぶどうの6種類は以下の通り。

  • ピノ・ノワール
  • メルロー
  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • カベルネ・フラン
  • シラー
  • ブラック・クイーン

そして白ぶどうは以下の6種類だ。

  • シャルドネ
  • セミヨン
  • ソーヴィニヨン・ブラン
  • リースリング
  • ヴィオニエ
  • ピノ・グリ

育てているぶどう品種は、どれも楠さん自身が好きなぶどう品種。今までワインを飲んできた中で、気に入った品種を選んで栽培している。特に思い入れがあるのが、リースリングとシラー。オーストラリアに留学していたとき、最初に造ったワインの品種だったからだ。

ピノ・ノワールのワインは、高い評価を得ている。人気があるため順次生産量を増やしている。続くシャルドネは、複雑感のある濃厚な風味が自慢のワインになる。「シャルドネ2014樽熟成」は、軽井沢で開催されたG7交通大臣会議の歓迎レセプションワインとして選ばれた。

▶独自の垣根栽培と、ぶどう栽培の工夫

垣根仕立てと棚仕立ての両方でぶどうを栽培している楠わいなりー。ぶどう栽培における工夫やこだわりについて伺った。

「棚仕立ても垣根仕立ても両方使い、どうすればぶどうがしっかりと完熟するかを試しながら栽培しています」。

それぞれの仕立て方に利点や難しい点があるといい、日々ぶどうの出来を観察しながら、よりよいぶどう造りに生かしているのだ。まずは、楠わいなりーでの棚仕立てについて紹介したい。

楠わいなりーでは、多くの品種を棚仕立てで栽培している。ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンなど、ヨーロッパでは垣根で栽培されている品種であっても、棚栽培を試すようにしているのだ。
実際に棚仕立てでぶどうを栽培してみて感じるのは、棚仕立てでも素晴らしいぶどうが作れること。ただし難しい点もあり、特に栽培作業に非常に手間がかかる。

一方の、垣根仕立てでの工夫を解説していこう。楠わいなりーでは、通常とは違う垣根の仕立て方をしている。通常の垣根栽培は、ぶどうの枝を這わせるためのフルーティングワイヤーを、地上70~80cmほどの場所に設置。上に新梢を伸ばしていく方法をとる。

しかし楠わいなりーでは、フルーティングワイヤーを地上120cmという高い位置に設置。また新梢は、上だけではなく、下にも誘引して仕立てる。

上下両方に新梢を誘引するのには理由がある。その理由とは、ぶどうの葉1枚1枚にしっかりと日光を当てるためだ。

「ぶどうが美味しくなるためには、葉による光合成が必要不可欠です。葉が重なると、光合成効率が悪くなり、よいぶどうが採れなくなるのです」。

新梢を上下に分けることで、風通しや日光の通りが確保できる。むらなく健全に生育し、質のよいぶどうが収穫出来るのだ。

上下に新梢を誘引する理由は、もうひとつ存在する。ぶどうの樹勢をおさえるためだ。世界の銘醸地と比べると、ぶどう生育期間中の降水量が多い日本。
降水量が上がると、過剰な水分により樹勢が強くなりすぎてしまうのだ。

海外の多くのぶどう産地では、日本と比較して降水量が少なく、むしろ乾いている。ぶどうは乾燥を好むので、日本での栽培には樹勢をおさえる工夫が必要だ。

樹勢が強くなると、枝の色々な箇所から新梢を伸ばしてしまう。これでは葉ばかりが茂ってしまい、果実が充実しない。
また、樹勢が強くなりがちな日本において全てを上方向に誘引してしまうと、葉同士が重なりやすくなる。その場合には、「芽かき」をほどこして新梢を少なくする必要性に迫られる。

楠わいなりーでは下向きにも枝を誘引するぶん手がかかるが、芽かきをする必要は無い。葉へのエネルギーが上下に分散するため、樹勢をおさえることができるのだ。

▶ぶどう栽培の適地、須坂市のぶどう畑

楠わいなりーがある長野県須坂市は、「扇状地」の地形。扇状地とは、川によって山が削られてでき、石が堆積することで形成された場所だ。

須坂市は、山から新潟方面に流れる千曲川(信濃川の別称)に沿った傾斜地に位置している。そのため土壌は礫(れき)が多く、水はけが良好。乾燥を好むぶどうにとって、非常に適した土壌なのだ。
須坂市は土壌の水はけがよすぎるため、昔から米作りより果樹栽培が盛んな土地だった。特にぶどうは名産のひとつであり、現在でも高品質なシャインマスカットや巨峰の一大産地だ。

水はけのよさに加えてぶどう栽培にプラスになっているのが、土壌の養分。山から流れてくる養分が集まる肥沃な土壌で、西向きの斜面に面した畑では十分な日照時間も確保できる。

緩やかな斜面と扇状地、十分な日照時間、そして低めの降水量。品質のよいぶどうを育てるための下地がそろう、恵まれた土地なのだ。

『幸せで満たすワイン、楠わいなりーのワイン造り』

続いて紹介するのは、楠わいなりーのワイン造りについてだ。まず伺ったのは、目指したいワイン像。こんなワインを造りたい、こんなワインでありたいといった理想のイメージや思い描いているものについて聞いた。

「目指すのは、人を幸せにするワインであることです。グラスを傾けた時に、香りと味で思わずにっこりしてしまう。人の笑顔を作れるようなワインでありたいです」。
楠さんの柔らかい答えに、思わず顔がほころぶ。

楠わいなりーでは、ワイナリーの訪問客にワインを最大限楽しんでもらえるよう、試飲のグラスを工夫している。サーバーからワインを提供する時には、ワインによってグラスの形を変えているのだ。
ワインで幸せな時間を作り出す楠わいなりー。ワイナリーに満ちているのは、飲み手に楽しんで欲しいとの強い思いと、ワインに対する数々のこだわりだ。

▶ワイン造りのこだわりは「熟成」「酵母」「温度」

続いて、ワイン造りのこだわりについて紹介していきたい。

楠わいなりーでは、樽熟成によるマロラクティック発酵や熟成温度、酵母の選定にこだわりを持っている。

例えば樽熟成しているシャルドネ。樽の中でマロラクティック発酵をさせ、複雑で多層的な味を造るようにしている。なおマロラクティック発酵とは、乳酸菌の力を使った発酵方法のこと。酸をマイルドにし、複雑な味を付与する効果がある。

シャルドネを一次発酵する時は、低温での発酵にこだわる。低温発酵させることで、香気成分がワインの中に溶け込むからだ。

赤ワインに関しては、ぶどう品種ごとに適した酵母を使用して発酵させている。酵母を選別し、品種によって酵母を変えていることで、最適な味を引き出す工夫をしているのだ。全ての赤ワインを樽熟成でマロラクティック発酵させ、味わいに複雑さを付与している。
「ワインができてくるのを待つのは、とても楽しいことです」。

楠わいなりーでは、多くの種類のワインを飲むことができる点も魅力だ。多数のワインを造る理由を尋ねると「せっかくワイナリーに来てくださったお客様に、確実に楽しんでもらうために造っています」との答えだった。

赤白合わせて12品種のぶどうを作る楠わいなりーでは、ワインの種類が多い。そのうえ、ブレンドや買い入れぶどうによるワインもラインナップしているのだ。

買い入れたぶどうを使用している理由は、低価格帯のワインを生産するためだ。自社品種だけだと収量が多くないため、ワインの単価がどうしても高くなってしまう。買い入れたぶどうからは、1,000円台で購入できる手頃なワインを造る。

「デラウエアからオレンジワインを造ったり、ナイアガラで優しい味わいのワインを造ってみたり。ほかにもキャンベル・アーリーをブレンドして香りを楽しんでもらったりと、色々造っていますよ」。

ワイナリーに来た全ての方が楽しめるように、と考えていたら、いつの間にか増えていたワインの種類。ワイン好きもそうでなかった人も、全ての訪問客が楽しめるワインが、楠わいなりーにはあるのだ。

▶さまざまな場面で飲み分けて、楽しい時間をワインとともに

楠わいなりーでは、どんな時にどんな場面でワインを楽しんで欲しいと考えているのだろうか?造るワインと、飲み手への思いを尋ねたところ、「楽しんでもらう場面は、ワインの種類によって変えることを想定しています」との答えをいただいた。

親しみやすい味のものが多い、買い入れたぶどうやブレンドが中心のワインは、バーベキューなどでカジュアルに楽しむのがおすすめ。北米を原産とするヴィティス・ラブルスカ種のキャンベル・アーリーには、スパークリングワインもある。ホームパーティーなどにもぴったりだ。

「泡がピンクでかわいらしいワイン」だという、「キャンベル・アーリー・スパークリングワイン」。イチゴのお菓子をそのまま飲んでいるようなキュートな味わいで、アルコール度数も高くない。
ワインを飲み慣れていない人や、お酒の弱い女性などでも気軽に楽しめる1本だ。

自社畑で栽培したぶどうのシャルドネなどから造られるワインは、ゆっくりじっくり楽しみたいときに最適だ。夫婦の晩酌に、友人との楽しい語らいの場で、少し特別な日の料理に合わせて。「ピノ・ノワール」「シャルドネ樽熟成」など、滋味深く複雑な味わいを持つワインの魅力を心ゆくまで楽しんで欲しい。

楽しい時間を、より楽しくするワインでありたい。楠わいなりーの思いは、ワインの味にしっかりと溶け込んでいる。

▶土地の恵みが、ワインの強み

楠わいなりーの強みは、大地の恵みがワインに溶け込んでいること。
「土壌によるものなのでしょう。須坂市の畑で育ったぶどうから造るワインは、非常に旨味の強いものになります」。

特に土壌の恩恵を感じるぶどうは、ピノ・ノワールだ。楠わいなりーのピノ・ノワールは旨味が深い。香りも味も複雑で、1本のワインがさまざまな表情を見せる。

とりわけ魅力が輝くのは、熟成を経てからだ。暖かみのあるスパイシーな香りが生まれ、さまざまな味の要素が多層的に重なる。品質の高いピノ・ノワールができるのは、土壌の持つ旨味成分のせいなのではと楠さんは考えている。

ぶどう栽培にぴったりの土地で、こだわりの栽培から最高の状態のぶどうが生まれる。最高のぶどうからは、あふれんばかりの旨味を蓄えたワインが造られる。土壌の魅力を映し出したワインがあることが、楠わいなりーの強みだ。

『テーマは「日本食にあうワイン」、楠わいなりーの未来』

最後に、楠わいなりーの将来の目標や展望を紹介していこう。目標としているものは、大きく3つある。

ひとつは、スパークリングワインの銘柄をより充実させること。2021年現在、いくつかのスパークリングを造っている最中なのだとか。満足のいくものができつつあり、引き続きスパークリングワインの醸造に力を入れていく予定だ。

もうひとつが、楠さんの好きなぶどう品種やワインのスタイルを模索すること。特に注目している品種がピノ・グリだ。
自分の好きなタイプやスタイルを目指すうえで、大きな可能性を感じている。またピノ・グリのほかにも、造りたい品種がたくさんあるのだとか。今後のぶどう栽培の展開に目が離せない。

最後の大きな目標は、日本食に合うワインの追求だ。楠わいなりーには「日滝原」というワインがある。セミヨンとソーヴィニヨン・ブランを使用した白ワインだ。
「日滝原」最大の特徴は、海産物をはじめとする日本食全体に相性がよいことだ。今後も大きなテーマのひとつとして「日本食によく合うワイン」を目指していきたいと考えている。

「ワイン単独でもいいけれど、食事と合わせたときにより美味しさを感じられるものがいいですね。目指すのは、ワインがあることで、食事もより美味しく感じられるようなワインです。ワインは食事の場に静かな充足感を満たしてくれる存在。幸せな時間を生み出す存在だと思っています」。

サラリーマンだった楠さんにとって、全く未知だったワインの世界。最初は不安や迷いがあったようだが、現在の楠さんに迷いはみじんも感じられない。

「楠さんがワイン造りの道に進んでくれてよかった!」。
楠わいなりーで愛情込めて造られたワインを飲めば、誰しも心からそう感じるはずだ。

『まとめ』

楠わいなりーでは、ワインへのあくなき情熱を持ち、飲み手の幸せを考えたワインが造られている。
例年開催されている、収穫会とバーベキューイベントも見逃せない。(今年度の開催は未定)

楠さんの人生をがらりと変えたワイン醸造。信念と決意を持ってワイン造りの道を歩む楠さんが生み出すワインは、言葉よりも雄弁にワインの持つ可能性を伝えてくれる。

基本情報

名称楠わいなりー
所在地〒382-0033
長野県須坂市亀倉123-1
アクセス電車
JR長野駅より長野電鉄須坂駅下車車で15分。

高速IC須坂長野東より10分
HPhttps://www.kusunoki-winery.com/

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