『シャトージュン』ぶどう農家と共に歩み新たなカルチャーを創造するワイナリー

「シャトージュン」は、アパレル業界で常に最先端を行く「ジュングループ」が運営するワイナリーだ。生み出すワインは、熟成に耐えうる高品質なもの。
シャトージュンは、飲み頃を待つ時間までも大切に考え、ワインを造っている。

そんなシャトージュンの魅力は、ワイナリーのある山梨県甲州市勝沼で地域密着型のワイン造りをしていること。地元ぶどう農家や、農家が育てたぶどうに対する感謝の思いは何よりも深い。
「農家と共にワインを造る」という意識が非常に強いワイナリーなのだ。

熟成ワインへの挑戦を続け、地元農家とのつながりを大切に考えるシャトージュン。ワイナリー誕生のきっかけや、シャトージュンならではの魅力について、部長の道間さんと、栽培醸造責任者の仁林さんにお話を伺った。

『新しいライフスタイルを提供するために 「シャトージュン」誕生のきっかけ』

シャトージュンの創業は、1979年のこと。アパレルを中心にあらゆる文化を創造する「ジュングループ」の一員として生まれたワイナリーだ。

なぜ、ファッションで有名なジュングループがワイナリー事業を立ち上げたのだろうか?そこには「ライフスタイルを提供する」ことを考え続けてきたジュングループの強い思いが関係していた。

▶「YOU ARE CULTURE.」ジュングループの理念とは

シャトージュン誕生のきっかけにつながる、ジュングループの理念と目指しているものから紹介していこう。

ジュングループの企業理念は「YOU ARE CULTURE.」。
共に文化を探求し、創造し、豊かにしていきたい。こんな思いが込められている。

若い人たちのライフスタイルを作っていこうという事業から始まったジュングループ。生み出してきた物はファッションのみに留まらない。ライフスタイルに関するすべてを創造し、提供し続けている企業なのだ。

実は、今では当たり前に存在する炭酸水「ペリエ」を、日本にまだなかったオープン形式のカフェで提供したのも、ジュングループ。そして日本初のエアロビクスジムを運営したのもジュングループだ。

ファッション、運動、そして食。ジュングループは、あらゆるライフスタイルを多角的に見つめ、新しい「楽しさ」を広めることを使命としている。

▶シャトージュンが目指すもの

ワイン事業であるシャトージュンが始まったのも、新しいカルチャーを提供したいとの思いからだ。当時はまだ、日本の生活に浸透していなかった「ワイン」というお酒。
「ワインは特別なお酒ではなく、日常的に楽しめるお酒なのだ」という新しい常識を広めるべく、シャトージュンが生まれたのだった。

文化としてのワイン・食を提供するため、現在に至るまでさまざまな試みが行われてきた。

ワイナリーが山梨県甲州市勝沼に移転した後は、天然酵母の本格的なパン屋が併設された。「食事と共に楽しむ」という本場西洋のワインと同様、食事と楽しむための本格的なパンを提供したのだ。

またワイナリーでは、輸入した「有機食材」の販売も行っていた。現在では一般に広く浸透した「有機食材」だが、当時は最先端の食文化だった。パンと有機食材は食文化として日本に広く浸透したため、現在では事業が終了している。

今までになかったものを取り入れ、新しいカルチャーとしてライフスタイルを豊かにする試みが、ワイン事業とあわせて行われてきた。

ワインを通じてライフスタイルを豊かにしていくという理念を掲げる、シャトージュン。ワイン文化への深い理解と高い醸造技術が評価され、「Japan Wine Competition」では、11年連続受賞の快挙を成し遂げた。

日本ワインをさらなる魅力あふれるカルチャーに昇華させるべく、高レベルなワイン醸造に励んでいるのだ。

『農家との二人三脚 シャトージュンのぶどう』

シャトージュンで取り扱っているぶどうについて見ていきたい。シャトージュンでは農家から買い取ったぶどうをメインに使用しつつ、一部自社畑でもぶどうを栽培する。

年間の仕込み総量は70t。そのうちの35tは契約農家による「甲州」だ。残り35tのおよそ半分は「デラウェア」「巨峰」「マスカット・ベーリーA」などのぶどう品種が占める。

そして残りの半分は「ワイン用ぶどう」といわれる西洋系のぶどう品種だ。西洋系品種は、多くが自社畑で栽培されている。
また一部の意欲ある農家に、西洋系品種の栽培を依頼している。

▶西洋ぶどう品種を育てる自社畑

はじめに自社畑のぶどう栽培について見ていこう。自社で育てるぶどうは、5~6tほど。栽培している具体的な品種名は以下の通りだ。

  • シャルドネ
  • メルロー
  • カベルネ・ソーヴィニヨン

また試験栽培しているものとしては、以下の品種が挙げられる。

  • ソーヴィニヨン・ブラン
  • ピノ・ノワール
  • プティ・ヴェルド
  • セミヨン

いわゆる「ボルドー系品種」と呼ばれるぶどうを中心に育てているシャトージュン。なぜ自社畑では、西洋品種を育てているのだろうか?理由は大きく分けてふたつあるという。

ひとつは、日本では栽培難易度の高い西洋系ぶどう品種をワイナリー自ら育てることで、農家の生産を補助したいという思いからだ。

「生食用ぶどうを専門に育ててきたぶどう農家にとって、西洋品種の栽培はハードルが高いのです。また、自社でぶどう栽培の様子を体感することも重要だと考えています」。

西洋系ぶどう品種は、日本特有の高温多湿気候下では病気にかかりやすい。契約農家が栽培している生食用品種とは性質が異なるため、安定的な供給が難しいのだ。

西洋系品種を自社畑で育てるもうひとつの理由は、日本ワインを本場ヨーロッパで生産されるワインと正しく比較するためだ。日本の生食用ぶどう品種を使ってワインを造ると、どうしても「本場のワインとは違う」独特の香りが出る。
「ぶどうガム」のようなお菓子を思わせる風味が強いため、料理と合わせるのが難しくなってしまうのだ。

「日本国内の目線だけでワインを造ってしまうと、日本のワイン醸造技術の弱点や、よさが客観的に認識できません。本場ヨーロッパのぶどうと醸造技術を使ったワインを知ったうえで、比較する必要があるのです」。

ワインは西洋世界で生まれたお酒。歴史的にも「西洋ぶどう品種」で造られてきた。そのため日本のオリジナルに固執してしまうと、海外ワインと同じステージに立って評価することが難しくなる。
「日本のワイン産業が、世界から見てどのレベルなのかを確認することも大切だと思っています」。

日本ワインのポジショニングを向上させるため、西洋品種を使ったワイン醸造を行うのだ。シャトージュンは広い視野でワインを捉えつつ、日本ワインのよさを追求する。

▶農家とのつながり 大切にしていること

シャトージュンでは、農家との関係を非常に大切に考えている。話の端々から、農家へのリスペクトや感謝の気持ちが伝わってくる。

ワイン原料の多くを、農家から買い取ったぶどうで醸造しているシャトージュン。通常ワイナリーは「契約農家」からぶどうを買い取るシステムを採用しているケースが多い。
しかしシャトージュンでは、なんと正式な「契約」を交わしているわけではないのだとか。いったいどういうことなのだろうか?ぶどう農家とのつながりや、農家と共に歩むぶどう栽培のこだわりについて話を伺った。

「ぶどうの多くを農家さんから買い取っていますが、実は正式な契約関係ではないのです。来年も頼むね!という関係性ですね」と仁林さんは笑う。
ぶどうを買い取っている農家は、現在20軒ほどあるそうだ。

▶農家の気持ちを尊重したい ぶどう栽培への感謝

農家の気持ちに寄り添い、農家と共にワインを造る姿勢を貫くシャトージュンでは、真の意味で農家との共同作業をしている。農家とのつながりの強さを感じさせる話を紹介したい。

「農家さんこそがぶどうのプロ。我々の基準を押しつけるのではなく、農家さんが『よい』と思ったぶどうを大切にしたいのです」。

シャトージュンでは、ワイン造りのスケジュールを農家に無理やり押しつけることはしない。あくまでも「農家が満足できる状態のぶどう」を収穫し、持ってきてもらうことにこだわっている。
「実際に畑に出向き、管理をしているのは農家さんです。彼らは自分のぶどうが一番だと自信を持って栽培している。だからこそ、できる限り農家さんの意見を尊重します」。

なぜそこまで農家主体のワイン造りを行うのだろうか?その理由は、自信を持って「美味しいぶどうから造ったワインです」というためだ。
ワイナリーの都合で早く、あるいは遅く収穫したぶどうでは、堂々と「美味しいぶどうです」とはいえない。実際に栽培している農家が自信を持てるぶどうこそが、本当に美味しいぶどうだと考えているのだ。

「ぶどう農家さんから『今の状態がすごく美味しいから、すぐにワインにしたほうがいいぞ!』と言ってくれることもあるのです。うちではそんなぶどうを使いたいと思っています」。

だが農家のスケジュールに任せていると、ワイン醸造のスケジュール管理が大変になるのではないだろうか?その点についても伺った。

「確かに、ぶどうの持ち込みが重なることで作業が大変になることもあります。しかしぶどう畑のエリアが少しずつ異なるため、自然とタイミングが分散されるのですよ」。

勝沼は昔、4つの村に分かれていた。当時から「甲州」の味わいには違いがあるといわれていた。昔から品質のよい甲州が生まれると言われていた地区は「棚持ち」といって、長雨にも耐える強さを持つ。そのためぶどうの収穫が、比較的遅い時期でも可能になる。
実がしっかりと熟すまで待つことができるためだ。畑のエリアごとにぶどうの強さ、特性がはっきりと異なるため、ぶどうが持ち込まれるタイミングも上手く分散されるというわけだ。

基本的にはぶどう栽培全般を農家に任せる一方で、まれにワイナリー側が希望する収穫タイミングに合わせてもらうこともある。天候不順などのイレギュラーな出来事が起こった際は、ワイナリー側が指示する収穫タイミングがワインにとって最適な場合もあるからだ。

農家の意図とは違うタイミングで収穫をお願いする場合は、仁林さんらが必ず理由を丁寧に説明する。そしてぶどうを育ててもらったことに感謝したうえで依頼している。

しかもシャトージュンは「収穫してもらって終わり」ではない。農家が望まないタイミングで収穫してもらった場合、できたワインを必ず農家自身に味見してもらうのである。

できたワインを飲んでもらうと「収穫タイミングをずらしてこんなに美味しいワインになるのか!いわれた通りに収穫してよかったんだな」と納得してもらえることも多いのだとか。
むしろ飲んだワインに感動したことで、農家自らが進んで「ワインにとって最適な収穫タイミング」に変えてくれることもあるという。

ワイナリーと農家の密な意見の出し合いは、10年以上かけて続けられてきた。密度の高い交流が実を結び、農家が納得する収穫タイミングと、ワインとして最適な収穫タイミングがマッチングしつつあるという。
シャトージュンと農家との強い絆は、長い月日をかけて少しずつ培われてきた財産だ。

『時間をデザインする シャトージュンのワイン』

続いて、シャトージュンのワイン造りについて紹介していこう。まず伺ったのは「目指すワイン」についてだ。シャトージュンは、どのようなスタイルのワインを目指しているのだろうか?

「ワインの本質は、時間の経過が楽しめることだと思っています。自分がずっと目標にしているのは、熟成の魅力を感じられるワインを造ることです」。

シャトージュンが熟成ワインを目指すのには、大きな理由がある。熟成したワインは「時間をデザインすること」につながるからだ。

ジュングループの企業理念である「YOU ARE CULTURE.」。ジュングループは、アパレル、食やエンターテインメントといった幅広い分野で、人を豊かにする文化を提供してきた。
さまざまなものを「デザイン」しながらカルチャーを生み出してきた、ジュングループの一員であるシャトージュン。熟成ワインを醸造することで「ワインを開けるまでの時間」をデザインしたいと考えているのだ。

目指すのは、10年、20年という時間をデザインできるワイン。年月を重ねたワインならではの美しさを伝えるため、シャトージュンはワインを造り続ける。

▶シャトージュンのワイン醸造

仁林さんはシャトージュンの栽培醸造責任者を務める。しかし2017年に怪我を負ったことが原因で、現在は裏方としてサポートに回っているという。そんな仁林さんに代わって醸造作業を担当するのは、ほかのワイナリーからピンチヒッターとして駆けつけてくれたベテラン醸造家のメンバーだ。

醸造家が代わると、ワインのスタイルが全く違ったものになることも多い。しかしシャトージュンでは、仁林さんが作ってきた「シャトージュンらしさ」がお客さんに支持されている。そのためシャトージュンらしさを表現し続けることにこだわっている。

ワイン造りでとりわけ意識してきたのは「クリアな質感」を表現すること。シャトージュンのワインといえば「しなやかでエレガント」なスタイルのワインが最大の特徴だ。
「パワフルより、しなやかに。ワイルドより、エレガントに。雑味のないクリーンさを出していきたいですね。ワインはきれいなものであって欲しいのです」。そんな仁林さんの思いが込められているのだ。

▶ぶどう農家を尊重するワイン造り

シャトージュンでは「このワインは、この農家のぶどうからできている」という情報を即座に答えられる体制をとっている。ブレンドワインであっても同様だ。「どの農家とどの農家のぶどうが使われているか」が分かる。

なぜワインと農家を紐づけているのかというと、ぶどう農家にワインの出来を伝えるため。ぶどうがワインの味に与える影響を、ぶどうを育てた農家たち自身に知ってもらいたいと考えているからだ。

シャトージュンがワインの完成後まで農家とのつながりを大切にしているのには、大きな理由がある。ワインになった後までを農家と一緒に共有することで、同じ目的を持ちつつお互いに納得して仕事ができるからだ。
またワインの出来を伝えることは、自分のぶどうにプライドを持つ地元農家への礼儀だとも考えている。

「ぶどうをワイナリーに卸したらそこで終わりではありません。飲んでくれる人がいるということも知って欲しいのです」。

ワインの味を共有しているため、シャトージュンと取引のある農家は、顧客の反応を気にしてくれているという。
「『渡したぶどうはもうワインになったか?お客さんはどういっている?』と聞いてくれます」と、仁林さんは嬉しそうに微笑む。

ぶどうがなければ、ワインは醸造のスタートラインにすら立てない。ぶどうを栽培してくれる農家への、敬意と感謝の深さが伝わってくるようだ。シャトージュンのワインは、温かな人の絆を感じさせてくれる。

『長期熟成ワインを増やしていく シャトージュン将来の展望』

最後に伺ったのが、シャトージュンの将来の展望についてだ。強い決意をお話いただいたのは「熟成ワイン」についての思いだった。

「ワインの魅力である熟成について、突き詰めていきたいです。今後はさらに、熟成に耐えうるワインを醸造していきます」。

ワインの長期熟成は、世界中のワイン産地を見ても等しく重要とされている要素だ。現在日本のワイナリーでは、店頭に並んだ時点で「飲み頃」になっているワインが多い。
そういった現状の中で、シャトージュンは「数年後の味」が明確に語られるような、熟成を前提にしたワインを目指す。そのために計画されている具体的な取り組みがふたつある。

ひとつは、山梨の気候条件で「ぶどう農家が栽培しやすい西洋品種」を探すことだ。

もうひとつは長期熟成を可能にするセラーを建設すること。2〜3年後には建設が始まる予定だという。

元々熟成ポテンシャルの高いものが造られていた、シャトージュンのワイン。しかし長期熟成する環境が不十分なことがネックだった。
今後は、より飲み頃のタイミングでワインを出荷できるよう、環境を整えていく計画だ。

もちろん、熟成させずに販売する方が商品の回転は速くなる。しかしシャトージュンでは、目先の利益以上に、「飲み頃」にこだわってワインを提供していきたいと考えているのだ。本当に美味しいタイミングでお客様の元に届けたいという思いが強い。

自分たちが「よい」というものを愚直に追い求め、造り手が心から満足できるワインをお客様に提供する。勝沼で採れたぶどうから「長期熟成」できるワインを造ることこそが、シャトージュンの使命なのだ。

『まとめ』

シャトージュンが大切にしているのは、ぶどう農家とのつながり。そしてぶどう農家と共に生み出したワインで「熟成」ワインの魅力を引き出すことだ。

シャトージュンが造るのは、ワインだけはなくライフスタイルそのもの。ワイナリーの魅力を知るために、ワインを飲むだけでなく、実際にシャトージュンのワイナリーに足を運んでみて欲しい。
人との縁や絆の大切さが感じられる、素敵なワイナリー訪問になるはずだ。

ワイナリーでワインを購入する際にはぜひ、飲み頃を待つ楽しみもある熟成ワインも購入してみて欲しい。しっかりと熟成させ、特別な日に開けてみてはいかがだろうか。
開栓が待ちきれないかもしれないが、そこはぐっと我慢。熟成ワインの醸造に心血を注ぐシャトージュンの造り手に思いを馳せながら、ワインを飲む日を待つのもオツなものだ。

基本情報

名称シャトージュン
所在地〒409-1302
山梨県甲州市勝沼町菱山3308
アクセス車でお越しの方
中央自動車道・勝沼ICより車で10分
交通機関でお越しの方
JR勝沼ぶどう郷駅より徒歩15分
JR勝沼ぶどう郷駅よりタクシーで5分
HPhttps://www.chateaujun.com/

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