『ル・レーヴ・ワイナリー〜葡萄酒夢工房〜』ワイン愛好家、夢の結晶のワイナリー

「ル・レーヴ・ワイナリー〜葡萄酒夢工房〜」(以下「ル・レーヴ・ワイナリー」)は、北海道西部・積丹(しゃこたん)半島の仁木町・旭台にある。

仁木町は良質な土壌と水に恵まれた土地だ。さくらんぼやりんご、ブルーベリーなどの果樹栽培の盛んな地域でもある。
ル・レーヴ・ワイナリーは、日本ではまだ数少ない、広大なぶどう畑の眺めとともに食事とワインを楽しむことができるワイナリー。

2015年から自社畑でのぶどう栽培を始めた。立ち上げからはまだ年数が浅いながらも、魅力的な道産混醸ワインを生み出すワイナリーとして、確固たる存在感を放っている。

仁木町が誇る新進気鋭のワイナリー 、ル・レーヴ・ワイナリーの代表取締役、本間 裕康さんにお話をうかがった。

『ル・レーヴ・ワイナリー創業のきっかけ』

本間さんは20代の頃から、国内外のワイナリーを巡り造詣を深めてきた。筋金入りのワイン愛好家だ。そんな本間さんが、自身の夢だったワイナリーを立ち上げるまでのストーリーを紹介しよう。

▶運命の1本との出会い

ワイナリー設立前は、病院で検査関係の仕事に従事していた本間さん。札幌の病院で16年間勤めた前職を辞め、ワイナリーを立ち上げたのは、ある1本のワインとの出会いがきっかけだった。

「アルザスワインのようなきれいなワインで、北海道でもこんなワインが造れるんだと驚きました」。本間さんがそう語るワインは「クリサワブラン」。
北海道中部の岩見沢市にある「ナカザワヴィンヤード」の混醸白ワインだ。本間さんはそれ以降、日本ワイン、なかでも道産のワインに興味を持ち始める。

ちょうどその頃、脱サラしてワイナリーを始める人もちらほら見受けられるようになった時代が到来した。そのため、自分がワイナリーを立ち上げるのも、決して無理なことではないと考えるようになった。

▶仁木町・旭台の構想のタイミングにシンクロ

その後、2014から15年にかけて醸造を学び、ぶどう栽培の研修を受けた。仁木町の隣、余市で土地を探したが、条件に合った土地はなかなか見つからない。
だが当時はちょうど、仁木町で傾斜地にある地区「旭台」に、ワイナリーを誘致して集約しようという構想が始まるタイミングだったのだ。

ワイナリーがひとつの地域に集約すれば、ワインツーリズムが組みやすくなる。また、ブランドとしてのネームバリューも出しやすい。そのことに可能性を見出した本間さんは、旭台にル・レーヴ・ワイナリーを立ち上げた。

『夢のワイナリー』

ル・レーヴ・ワイナリーは、醸造所とカフェから畑が一望できるワイナリーだ。海外でたくさんのワイナリーを見てきた本間さんには、畑を前にしてワインと食事を楽しめる場所を作りたいという想いがあった。
「ル・レーヴ」とはフランス語で「夢」のこと。ル・レーヴ・ワイナリーは、本間さんが長年抱いてきた夢を形にしたワイナリーなのだ。

▶ル・レーヴ・ワイナリーのカフェ

ル・レーヴ・ワイナリーのカフェでは、近隣の自然栽培を行う農家から仕入れた素材を中心に使用した、ワインが欲しくなるような料理が提供されている。
バターや砂糖不使用の食事用タルトであるセイボリータルトや、フランス語で「塩味のケーキ」を意味するケーク・サレなどが中心だ。

ホームページ上のメニューには、道産のロースト・トマトのセイボリータルトや、野菜たっぷりのラタトゥユのセイボリータルトが並ぶ。
また、余市産の豚肉で作られたソーセージを使用した、イチジクとソーセージのケーク・サレも食欲をそそる。

アラカルト2品とスープとサラダのセットもある。ワイン以外にも、北海道の徳光珈琲などのドリンク類も魅力的だ。

『ル・レーヴ・ワイナリーのぶどう栽培』

2021年現在、赤ワイン用品種はピノ・ノワール、ピノ・ノワールの変異種でシャンパンに使われる品種であるピノ・ムニエ、ドイツで栽培される果実味豊かなドルンフェンダー、メルローだ。

白ワイン用品種はシャルドネ、ピノ・グリ、世界でも最古種のワイン用品種のひとつであるトラミーナ、ピノ・ブランを栽培している。

▶豊富なラインナップを目指して

ル・レーヴ・ワイナリーのぶどう品種選びは、いろいろなラインナップのワインを揃えることを前提に行った。ピノ・ムニエは、日本ではほかにあまり栽培例のない品種。
また、北海道でスパークリングワインを醸造するのに適しているのだ。

ほかの白ワイン用品種もアルザススタイルの混醸ワインを目指して選んだが、シャルドネは単品で樽を効かせたワインに仕上げてもよいという。

赤ワインはピノ・ノワールを使った薄旨系のワインも造れる。色が濃く出る品種のドルンフェンダーは、メルローと混ぜることで、北海道でもしっかりと色の濃い赤ワインの醸造が可能になる。
ピノ・ノワールとシャルドネ、ピノ・ムニエを使って、ブレンドのスパークリングワインも醸造可能だ。

▶山を背負った畑ならではの害

「旭台」という名の通り、朝日の当たる傾斜地にあるル・レーヴ・ワイナリーの自社畑。地域の中でも、もっとも日当たりのよい場所にある。水はけもよく、土壌の質もバランスが取れている。

ぶどう栽培にとって好適地ではあるが、すぐ後ろに山をひかえているため、シカやアライグマなどの獣害には警戒が必要だ。
実際、栽培を始めた初年度は、対策を十分に行っていなかったため、収量の1/3を獣害によって失ってしまう被害にあった。

その後、収穫前には畑の全周を電気柵で囲うなどの対策を行い、獣害に遭うことはほぼなくなった。しかし、対策を行わなければ、大きな被害が出る土地なのだ。

▶大変な越冬作業

北海道ならではの苦労は、なんといっても越冬作業だ。積雪のない地域では、冬季にゆっくり剪定を行えばよい。だが北海道では、雪が降る前に枝の剪定を終わらせなければならない。
幹に結び付けたワイヤーを下ろして、枝を地面に倒しておく必要があるという。積雪によってワイヤーが切れたり、枝が折れたりすることを防ぐためだ。

春には、枝を上げる作業が待っている。そのため、芽吹きの時期でもある春は、時間に追われる大変な季節になるという。

▶栽培のこだわり

山を間近に背負ったル・レーヴ・ワイナリーのぶどう畑では、無農薬でのぶどう栽培は非常に難しい。そのためル・レーヴ・ワイナリーでは、低農薬での栽培を行っている。

「きれいなぶどう作りを心がけています」と本間さん。低農薬でも病気の少ない、状態のよいぶどうを作るためには細心の注意が必要だ。

また、新梢をしっかりと管理することにより、枝が密にならない栽培方法も行っている。通常、枝の誘引は、枝をクロスさせたまま行う農家も多い。
だがル・レーヴ・ワイナリーでは、1本1本真っ直ぐ伸ばして、風通しをよくすることを心がけている。

また、ぶどうの開花時期までに早めの徐葉を行うことで、薬がかかりやすく、使用する農薬の量を減らすことにもつながる。
使用する農薬は、刺激の少ないボルドー液だ。除草剤は不使用。殺虫剤は、春期に発生するツマグロアオカスミカメ対策と、実に穴を開けてしまうブドウトリバが出る時期に1回ずつ使うのみだという。

『きれいなワイン造りを目指して』

ル・レーヴ・ワイナリーでは、2020年からワインの自社醸造を始めたばかりだ。それ以前は委託醸造で、混醸ワインを中心にワインをリリースしてきた。

▶2年の委託醸造を経て得た経験

ル・レーヴ・ワイナリーでは2018〜2019年の2年間、「10R(トアール)ワイナリー」にて委託醸造を行った。10Rワイナリーは岩見沢市にある「カスタムクラッシュワイナリー(受託醸造所)」だ。本間さんは醸造の間、10Rワイナリーに泊まり込んで見学を行い、醸造技術を学んだという。

10Rワイナリーには、北海道から多くの人が勉強のために集まってくる。自分のぶどうを持ち込む生産者も多く、醸造は複数の生産者によって協力しながら行われる。そのため、いろいろな造り手の醸造技術を見ることが可能なのだ。

持ち込まれるぶどうも、状態がとてもよいものや、病気が多いものまでさまざまだ。本間さんが10Rワイナリーで学んだのは、きれいなぶどうは、特別なことをしなくても発酵が順調に開始することだ。
「ワイン造りはぶどう作りが8〜9割だといいますが、本当だなと思いました」。

状態のよいぶどうは、酸化防止剤や亜硫酸塩を入れなくても、最後まで醸造が進みきれいなワインに仕上がることがほとんどだ。逆に病気の多いぶどうであれば、清澄剤や酸化防止剤を入れる必要が出てくる。
場合によっては天然酵母で発酵させられず、ドライ酵母で発酵する必要も出てくるという。

ル・レーヴ・ワイナリーでは、2020年から自社醸造を開始。自分の好きなときにぶどうを絞ることができる自社醸造は、委託醸造に比べると自由度が高い。

ファースト・ヴィンテージは赤1種と白1種のみの醸造だったが、2021年はより多くのワインを造ることができると、本間さんは意気込む。

▶ル・レーヴ・ワイナリーの混醸ワイン『MUSUBI』

『MUSUBI』は、ル・レーヴ・ワイナリーの混醸白ワインだ。2020年は自社栽培のピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、ピノ・グリ、シャルドネ、トラミーナ、ドルンフェルダー、メルローの7種類を使用した。本間さんには混醸ワインに対して特別な想いがある。

「僕はアルザスワインをよく飲むのですが、特に好きなのが『マルセル・ダイス』という混醸メインの生産者なんです。僕が日本ワインに興味を持つきっかけになった『クリサワブラン』もアルザススタイルの混醸ワインです」。

複数の品種のぶどうを使用して混醸を行うことで、ワインの味わいに複雑さが出る。また、合わせられる料理に幅が出るともいわれている。

ぶどうは品種によってそれぞれ収穫時期が違うため、別々にプレスされる。発酵が終わってから混ぜるのが、「アッサンブラージュ」と呼ばれる手法。
一方、同一のタンクで複数の品種を醸造するのが混醸ワインだ。味のまとまりがよくなるのが、混醸ワインの特徴だという。

どの品種を選んで混ぜるのかは、ぶどうの状態を見て決める。そのため、毎年同じ品種が使われるとは限らない。ワインは生き物だ。単品種のぶどうを使ってもワインは毎年決して同じものができないものだが、混醸ワインはさらに年ごとの変化が大きい。その変化を楽しみにするファンは、決して少なくないのだ。

「MUSUBI」という名称には、2つの意味がある。ひとつは多品種が混ざっているので、それらが結ばれてできたという意味。もうひとつは、飲んだ人がよいご縁に恵まれるように、という願いが込められている。「僕たち夫妻は結婚記念日に、エチケットにハートがあしらわれた『シャトー・カロン・セギュール』を飲むんです。『MUSUBI』も、お祝いごとに飲んでいただきたいと思って造っています。商談などの際にもおすすめですね」。

さまざまなぶどうの個性が結び合い、醸造によってひとつになった混醸ワイン。「MUSUBI」は飲む人同士をしっかりと結びつけ、縁をさらに深めてくれるに違いない。

▶ル・レーヴ・ワイナリー初、赤の混醸ワイン『MIYABI』

ル・レーヴ・ワイナリーのカフェでは、2021年の春から『MIYABI 2019 赤』の提供を開始する。ドルンフェルダーとメルローを混醸した、ワイナリー初の赤ワインだ。

「MIYABI」はナチュラルで多彩な味わいが魅力。シャープでスパイシーな風味が特徴の赤ワインだ。現在は少数生産であるためカフェ以外で飲むことはできないが、今後は「MUSUBI」とともに、ル・レーヴ・ワイナリーを代表する存在のひとつになるだろう。

▶きれいなワインを目指して

美しく澄んだ、きれいなワイン造りを目指している、ル・レーヴ・ワイナリーのワイン醸造。なによりも衛生管理を第一に考えている。

小ロットのみの樽醸造シャルドネも含め、ル・レーヴ・ワイナリーのワイン醸造は天然酵母で行われている。天然酵母での醸造では、複雑な酵母の働きが味わい深いワインを産み出す。

しかし一方で、天然酵母を使うと醸造期間が長くなり、雑菌で汚染されるリスクが高まる。そのため、天然酵母でのきれいなワイン造りには、徹底した衛生管理が欠かせない。
ル・レーヴ・ワイナリーの澄んだワインには、本間さんたちの細心の努力が隠されているのだ。

『ル・レーヴ・ワイナリーの今後の展望』

ル・レーヴ・ワイナリーでは、これまで栽培してきたぶどう品種に加え、新たな品種の栽培を始める。2021年にはリースリング、オーセロワ、ミュスカ、ゲヴェルツトラミーナの4種類の品種を追加。畑は1.9haから0.3ha増やし、2.2haに拡張する予定だ。

また、2021年には本格的に酒類製造免許を取得した。すでに取得済みの仁木町の「特区」での醸造免許では、仁木町で作ったぶどうのみの醸造が許されているためだ。酒類製造免許を新たに取得することにより、現在は10Rワイナリーに委託している、余市町で作られたぶどうも、自社での醸造が可能になる。
さらに、現在の年間7,000本から、15,000本へと醸造量を増やしていく予定もあるという。

「フルコースにペアリングできるような、ワインのラインナップを造りたいと思っています。スパークリングから始まって『MUSUBI』のような軽めの白や、少し重めの白。ピノ・ノワールのような透明感のある赤、『MIYABI』のような濃い目の赤までを揃えていきたいのです」。

ル・レーヴ・ワイナリーには、2名まで宿泊可能なゲストルームがある。カフェに併設したゲストルームは、民泊としても機能しているのだ。今後はさらに「オーベルジュ」に進化させる展望がある。
フランスが発祥のオーベルジュは、食事とワインを楽しめる、レストラン付きの宿泊施設のことだ。

傾斜地に広々と広がるぶどう畑を眺めながら、ル・レーヴ・ワイナリーのワインでフルコース料理を楽しむ。ゆっくりと宿泊し、旭台のワインツーリズムをじっくりと楽しんで帰る。ル・レーヴ・ワイナリーの描く、そんな未来は決して遠くなさそうだ。

旭台には現在、ル・レーヴ・ワイナリー以外に2つのワイナリーがある。数年後にはさらに、3ワイナリーが誕生する予定だ。今後ますます活性化することが期待される旭台のワイナリー・ツーリズムの中心的存在を、ル・レーヴ・ワイナリーが担うことになるだろう。

『まとめ』

かつては医療従事者であった本間さん。ワイナリー立ち上げ前のワイン愛好家だった時代から、毎年テーマを決めてワイン産地を訪れ、勉強を重ねてきたほどの研究肌だ。
ワイン醸造家となった今、愛好家としての経験は存分に生かされ、緻密で繊細な美しいワイン造りを可能にしている。

愛好家時代の海外のワイナリー巡りは、畑を眺めながらワインと食事が楽しめるという理想的なル・レーヴ・ワイナリーの現在の姿の原点にもなっている。

ル・レーヴ・ワイナリーは、まさにワイン愛好家にとっての理想郷。ワイン好きなら、心動かされないわけにはいかないだろう。飲み手としてワインを深く愛好していた本間さんだからこそ実現できた、ワイン好きの夢が詰まったワイナリー。それがル・レーヴ・ワイナリーなのだ。

基本情報

名称ル・レーヴ・ワイナリー
所在地〒048-2401 
北海道余市郡仁木町旭台303
アクセス
札幌より高速道路を利用で…1時間10分
電車
仁木駅から徒歩25分
HPhttps://le-reve-winery.com/

関連記事

  1. 『いにしぇの里葡萄酒』ワイン産地塩尻の最新地区「北小野」で世界基準のワイン醸造をめざす

  2. 実は農業が盛んな都市・神戸が誇る『神戸ワイナリー』の歴史

  3. 震災後の三陸に新たな文化創造を目指す、『THREE PEAKS(スリーピークス)』のワイン造り

  4. 若い情熱をかけて ワインにまっすぐな青年二人の「Le Milieu(ル・ミリュウ)」

  5. 厳しい環境で磨かれる『さっぽろ藤野ワイナリー』の優しげな杯に酔ってみたい

  6. 『DOMAINE HIROKI(ドメーヌ・ヒロキ)』ぶどう栽培のプロが実現させた池田町初のワイナリー