『高畠ワイナリー』山形県高畠町で、世界の銘醸地に匹敵するワイン造りに挑戦

山形県の南東部、東置賜郡高畠町にある「高畠ワイナリー」。高畠町は奥羽山脈や吾妻連峰、飯畑連峰、蔵王連峰に囲まれた盆地に位置し、古くから稲作やぶどう、ラ・フランスなどの農作が盛んにおこなわれてきた自然豊かな町だ。「丘や山に囲まれた稔り豊かな住みよいところ」を意味する古語「まほら」に由来し、「まほろばの里」とも呼ばれている。

この町の名前を冠する高畠ワイナリーは、1932年に長野県塩尻市で創業した「太田葡萄酒」を前身として、1990年に高畠町置賜地区では初となる観光ワイナリーとしてオープン。以来、「世界に誇れるようなワインを100年かけても造る」という強い信念のもと、地元農家と協力して常に新しいことに挑戦し続けている。

今回は、高畠ワイナリーの創業秘話と高畠町ならではのぶどう栽培、高品質なワイン造りに対するこだわりまで、代表の高橋和浩さん、醸造責任者の松田旬一さん、広報担当の高橋直彦さんにお話を伺った。

『高畠ワイナリーの設立経緯と、高畠町のぶどう栽培』

高畠ワイナリーの親会社は、九州で焼酎などのアルコール事業に携わっていた「南九州コカ・コーラボトリング」。同社の海外事業部はブラジルとアメリカのナパ・ヴァレーにワイナリーと農園を所有していた。

これは、大手の生産者が推進した「グローバル・ワイナリー構想」で、安定した質と量のブドウやワインを確保するため、世界中の生産拠点群を結び、国内のワイン製造が抱える永遠の命題である「宿命的原料不足」を解決し、高品質のワインを市場展開するものだ。

そのため、技術者を中心に各国の生産地へ派遣して品質を管理するとともに、海外で実践される最先端の技術やワイナリー経営を習得させたのだ。こうして同グループは、高畠町産ブドウからのワイン造りを基盤に、ブラジルとアメリカからのワイン原料を受入れる機能を併せた生産拠点となった。さらには海外で研鑽を積み帰任する人材の受け皿として、ナパ・ヴァレーのワインツーリズムを手本に設立されたのがワイナリーの始まりだ。

「当時、日本のワイン市場はまだ発展途上で、醸造免許を新規取得するのは困難でした。そこで、当時一般的だった手法に則って、醸造免許を有する長野県塩尻市の太田葡萄酒を買収したのです」と、高橋さん。

醸造免許を獲得したことで、ワイン造りにも本格的に乗り出すことになった高畠ワイナリー。太田葡萄酒の敷地だけでは手狭だったことから、長野県だけではなく東日本のあちこちを調査して移転先を探した。その際に出会ったのが、現在高畠ワイナリーがある山形県東置賜郡高畠町だ。

高畠町はデラウェアの生産量日本一を誇るぶどうの名産地ではあったが、ワインの醸造所は存在しなかった。そのため、町をあげての観光拠点となるワイナリー設立の誘致を積極的におこなっていたのだ。両者のニーズが合致したことで、1990年に高畠ワイナリーが誕生した。

「ぶどう作りの環境が整っているうえ、町の協力が得られることが高畠町を選ぶ決め手となりました」。

▶︎高畠町の気候とぶどう栽培地区

四方を山々に囲まれ、天王川、砂川、屋代川、和田川が最上川に合流する扇状地に拓けた高畠町。冬の積雪量は、住宅が並ぶエリアでも1mを超えることもある豪雪地帯だ。

しかし、ぶどうの生育期間である4~10月は降水量が比較的少ない。さらに盆地特有の気候として、夏から秋にかけては昼夜の寒暖差が大きく、糖度と酸味のバランスが取れたぶどうを育てるのに理想的だ。また、ぶどう以外の農作物の栽培にも適しているため、人口の約5分の1が農業に従事しているという。

高畠町は高畠ワイナリーのある糠野目地区をはじめ、二井宿地区、高畠地区、屋代地区、亀岡地区、和田地区の6つに区分されている。そのうち、ぶどう栽培がおこなわれているのは、高畠地区、屋代地区、亀岡地区、和田地区の4か所だ。盆地の中に3つの谷間を有する複雑な地形で、それぞれの土壌には違いが見られる。どの地区のぶどうも個性があって魅力的だが、高橋さんはとりわけ和田地区に注目していると話す。

「和田地区は高畠ワイナリーの東南に位置し、標高250~400mほどです。町内でも高台にあるエリアで、山間盆地でなだらかな丘陵地帯が点在しています。水はけが良好で日当たりもよいため、良質なぶどうが育つのです」。

最も標高が高い上和田地区のシャルドネは、特によく熟して糖度が高いと評判だ。植栽している品種はシャルドネが多いが、ピノ・ブラン、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、モンドブリエも栽培している。

▶︎高畠町の風土に合う雨除けハウスを活用

高畠町はデラウェアの産地として古い歴史を有しているため、ぶどう農家の経験値を生かすことが、町の風土に適した質の高いぶどうが作れる方法だと判断した高畠ワイナリー。

1991年に「高畠ぶどう会」を発足し、27軒の契約農家とともにワイン醸造用の欧州系品種の栽培に取り組み始めた。現在では63軒の農家と契約して原料となるぶどうの供給を受けている。

高畠町におけるぶどう栽培の特徴は、1970年代半ばからデラウェアを栽培する中で培われた。雨除けハウスを活用した棚仕立て方式であるのが特徴だ。長年の経験を生かしつつ、ワイン専用品種向けに改良して使用している。

「雨除けハウスを使うメリットは、雨水が果房や土壌に直接当たらないため、病気のリスクが減ることです。また、水分量をコントロールすることで、ぶどうにある程度のストレスがかかるため、糖度も上がります。さらに、ハウスの側面にビニールがないため、風通しがよいことも利点ですね。高畠町のぶどう栽培は、棚仕立て方式でもワインに適したぶどうが栽培できるのが最大の特徴だと思います」。

雨除けハウスの活用で、降水量が多い年でも収量が安定する。また、雨の影響を最小限に抑えられるために、薬剤散布の回数を減らすことにもつながるのだという。

「ワイン品種用のハウス内は除葉しているため、とても明るいのが生食用品種との違いですね。日光を最大限に浴びられるよう、契約農家さんにはなるべく葉を落としてほしいとお願いしています」。

▶︎自社圃場では赤ワイン用品種を栽培

高畠町では、白ワイン用品種として主にシャルドネを栽培。年間120tがワインの原料として使用されている。赤ワイン用品種は、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、ビジュ・ノワールなどだ。

契約農家のほかに自社圃場でもぶどうを育てており、自社圃場では以下の全7種を手がける。

白ワイン用品種

  • シャルドネ
  • ヴィオニエ
  • ピノ・グリ

赤ワイン用品種

  • ピノ・ノワール
  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • メルロー
  • カベルネ・フラン

「契約農家さんは収量が収入に直結するので、栽培リスクの大きい品種の栽培は依頼していません。一方、自社圃場ではリスクが取れるため、栽培の難しい赤ワイン用品種を中心に扱っています」。

「世界で評価されるボルドー・スタイルのワインを造る」ことを目標に掲げ、赤ワイン用品種の中でも、特にカベルネ・ソーヴィニヨンに力を注いでいる高畠ワイナリー。また、自社圃場は試験農場としての役割もあると考えて新しい品種にも挑戦している。自社圃場での栽培に基づいて得られた結果をもとに、契約農家への情報提供をおこなっているのだ。

最高水準のフラッグシップ・シリーズから、果実味あふれる甘口のフルーツワインまで揃う高畠ワイナリーのラインナップは秀逸だ。高橋さんも、幅広いラインナップが強みだと語る。

「入門クラスもあればハイエンド向けの銘柄もあり、国内のワイナリーとしてはかなり商品構成が充実していると自負しています。いろいろな好みの方がいらっしゃると思いますが、好みにマッチするワインをきっと見つけていただけると思いますよ」。

『高畠ワイナリー ワイン醸造へのこだわり』

ここからは、醸造責任者の松田さんに、高畠ワイナリーの醸造について紹介いただいた。松田さんは1998年に入社し、試行錯誤しながらワイン造りをおこなってきた。入社した頃は、欧州系のワイン専門品種はあまり手がけていなかったと当時を振り返る。

「以前の高畠ワイナリーは、デラウェアなどを使った甘口のワインを造っているワイナリーでした。その後、時代の流れと共に、段々と世界のワインや日本のトップワインに目を向けるようになりましたね。世界に肩を並べるワインを自分たちが造ろうという機運が高まってきたのです」。

2000年頃からは、ワイン造りに樽の使用を開始。前任の醸造責任者が白ワインに注力しており、シャルドネの樽詰めを始めたそうだ。一方、松田さんは赤ワインが好きだったため、当時から今に至るまで、赤ワイン造りに熱心だ。特に、カベルネ・ソーヴィニヨンに主軸を置いて追求している。

「赤ワインを樽に入れて長期熟成を試みましたが、初めの頃は失敗続きでしたね。本当に初歩から少しずつ学んで改良していきました」。

高畠町のぶどう栽培においてはメルローのほうが優れていて、熟度が高く色付きも安定している。しかし、ワインになるとカベルネ・ソーヴィニヨンの魅力には勝てないと話す松田さん。カベルネ・ソーヴィニヨンを追求する取り組みを続けている。

▶︎幅広い分野で、おいしいワインを造る

契約農家にシャルドネの栽培量を増やすよう依頼するなど、本格的に専用品種でのワイン造りに向き合うようになったのは2005年頃からのこと。一方で、もともと造っていた甘口ワインの製造も継続した。

「いろいろなジャンルのワインを満遍なく造ることが会社の方針でした。そして、どの分野においても、自分たちが納得できる上質なワインを目指すことも大切にしてきたのです。どのような味を目指すかではなく、常においしいワインを造るのがモットーですね。少し特殊な視点を持つワイナリーだと思います」と微笑む松田さん。

では、松田さんが感じるおいしいワインとはどのようなものなのか。そう尋ねると、「甘みを感じるワイン」だという答えが返ってきた。

「ぶどうを発酵させると、糖分がなくなってえぐみが出てきます。そんな中でも甘みを感じるのがおいしいワインだと思います。ワインの味わいの中で、酸味が占める割合は0.5%程度、糖分は0.2%ほどなのです。そんなわずかな旨味を、しっかりと引き立てるようなワイン造りをしています」。

ワインのおいしさと目指す造り方に対する認識は、白も赤も共通だと話す松田さん。だが、赤ワイン造りには今でも苦労しているそうだ。
「赤ワインを造る上で、旨味を際立たせるのは難しいですね。単に甘いだけのワインになると飲んでいて飽きてしまいます。タンニンとのバランスがよく、収斂(しゅうれん)味が出ているような、甘みと渋みが共存している赤ワインを造りたいと考えています」。

▶︎新しいことにチャレンジできる社風

続いては、醸造するうえで工夫していることや心がけていることを、松田さんに尋ねてみた。

「毎年新しいことにチャレンジしています。一度やってみてよくないと感じたことは、翌年は排除します。その繰り返しで、段々レベルアップしていますね。我が社のよいところは、何でもやらせてもらえることですね。どんなことでも受け入れて挑戦することを認めてくれるので、思いついたアイディアをどんどん試すことができます」。

また、なんと毎年会社から、勉強のために五大シャトーの最高級ワインが提供されるのだとか。

「世界トップクラスのワインを飲み、味を記憶して近づける試みを毎年おこなっています。おいしいワインを造るには長い年月がかかるため、3年や5年ではまず無理です。私はほかのワイナリーに行っておいしいワインに出合うと、醸造者に『何年でこの味にたどり着いたのか』とよく質問します」。

例えば、赤ワイン「アルケイディア セレクトハーベスト」は、2008年から取り組んだ銘柄で、理想形に近づくまでに9年を費やしたという。

松田さんが現在仕込んでいるワインの中で最も思い入れが強いのは、2021年の赤ワイン。高畠ワイナリーはシャルドネで高い評価を得ているが、2021年や2022年のワインがリリースされる頃には、赤もトップクラスに達するだろうと期待されている。


「『アルケイディア セレクトハーベスト』の2019年ヴィンテージは、2023年の日本ワインコンクールで銀賞を受賞しました。新しいヴィンテージになればなるほど、味がよくなっています。白と赤ではリリースのタイムラグがあるので、2022年の赤ワインが出てくる頃には同じヴィンテージが揃い、一定以上の評価がいただけるのではないかと思います」。

▶︎安全なワインを提供するために衛生管理を徹底

味のよさはもちろん、安心して楽しめる品質管理に重きを置いていることも、高畠ワイナリーの特徴だ。

瓶詰めの際はボトル内の品質を安定して保つため、非常に目が細かく編み込まれた膜を濾材とするフィルターを使用してろ過し、微生物や不純物を徹底的に取り除く。また、基準の厳しい「HACCP(ハサップ)」という衛生管理の手法を採用。出荷するワイン中に微生物が一切存在しないことを絶対条件としている。

「タンクなどの機器に洗浄設備を組み込み、ポンプで洗浄液を送り込んで機器内を自動洗浄する『CIPシステム』を取り入れています。アルカリ洗浄後にクエン酸で中和し、お湯で流すというプロセスをワイン造りの全工程でおこなっているのです。品質的に安全であるという条件を満たしたうえで、味わいを構成していきます」。

常によりよいものを造るべく、さまざまな手法にトライすることも忘れない。シャルドネの醸造でも1種類の樽にこだわらず、いろいろなメーカーのものを試すという。

「テストするという意味でも、多様な樽を使ったり、工法を変えたりしています。現状に満足せず、いつも最良のものを追い求めているのです」。

『国際的なワイン品評会で評価された、おすすめワイン』

次に、高畠ワイナリーがリリースしている数多くの銘柄の中から、おすすめのワインをピックアップして紹介しよう。

ワイナリーの代名詞といえる品種は、なんといってもシャルドネだ。ロンドンで開催される世界最大級のワインコンテスト「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」と「IWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション)」においてそれぞれ金賞を獲得するなど、国際的にも注目を集めている。

ブルゴーニュファンをターゲットとしたワイン造りをおこなっており、高畠で育つシャルドネのポテンシャルを印象付けたといえるのだろう。

▶︎「レ・トロワ・シゾー・ド・オオウラ・エン・上和田シャルドネ」

上和田地区の大浦圃場は高畠町内で最も標高が高く、約370mある。「レ・トロワ・シゾー・ド・オオウラ・エン・上和田シャルドネ」は、大浦圃場で育ったシャルドネを原料とした白ワインだ。栽培時は薬剤の使用を極力控え、自然農法を徹底。さらに独自の長梢自然一文字剪定を実践し、ぶどうの力を最大限に引き出した。

糖と酸のバランスが絶妙で、東北地方産のワインには珍しいトロピカルな香りと完熟した桃を思わせる果実味が特徴の「レ・トロワ・シゾー・ド・オオウラ・エン・上和田シャルドネ」。2021年ヴィンテージは2023年のIWCで日本産ワイン唯一の金賞に選ばれ、2024年のIWCとIWSCでも金賞に輝いた。

また、2022年ヴィンテージの「レ・トロワ・シゾー・ド・オオウラ・エン・上和田シャルドネ」には、一部樹齢8年ほどの若木も含まれる。熟したグレープフルーツやアプリコット、トロピカルフルーツなどの香りと、新樽熟成で生まれたトーストやバニラの香りが複雑に融合している。爽やかな酸味と重厚感あふれる味わいとのハーモニーが良好な仕上がりだ。

▶︎「ラクロチュア・エレクトリック・エン・上和田シャルドネ」

「ラクロチュア・エレクトリック・エン・上和田シャルドネ」は、上和田地区にある契約農家のシャルドネを使用した白ワインだ。

この地区では熊や猿などの野生動物からぶどうを守るために電気牧柵を取り入れていることが、ワインの名前の由来となった。

熟度・糖度が高い高品質なぶどうのポテンシャルを生かし、2014年ヴィンテージから「ラクロチュア・エレクトリック・エン・上和田シャルドネ」をリリース。ブルゴーニュやムルソー産のワインをイメージし、フレンチオーク樽内で発酵して8か月間の樽内熟成をおこなっている。

トロピカルフルーツやグリーンプラム、青リンゴのニュアンスに新樽の香りが混じり合い、華やかでミネラル感のある味わいが魅力だ。

▶︎「高畠フニクリ・フニクラ・デ・木村シャルドネ」

高畠ワイナリーの醸造施設から北東に位置する、高畠地区の木村圃場で育ったシャルドネ原料の白ワインが「高畠フニクリ・フニクラ・デ・木村シャルドネ」だ。この圃場のぶどうは小粒で水分量が少なく、甘みと果実の旨味、フレーバーが凝縮しているのが特徴。果汁が濃厚なぶん、濁度が高く雑味が増える傾向が見られるため、穏やかな特性を持つフレンチオーク樽を厳選して醸造している。

かりんや桃などのフルーツの香りや、ハチミツのような甘くミルキーな香りが融合。厚みとハリを感じる力強さに加えて、酸とミネラル感も楽しめるワインだ。

また、登山列車に乗る赤鬼をデザインしたエチケットがユニークなので注目したい。これは、イタリアの登山列車のテーマソングであり、日本では「鬼のパンツ」というタイトルで知られる童謡の「フニクリ・フニクラ」をモチーフにしたもの。木村圃場は登山列車がほしいと思うほどの急斜面にあり、「木村圃場に行くなら赤鬼も登山列車に乗りたかったのではないか」という発想から名付けられたそうだ。

▶︎「2019 高畠アルケイディア セレクトハーベスト」

最後に紹介するのは松田さんがこだわっているボルドー・スタイルの赤ワイン「2019 高畠アルケイディア セレクトハーベスト」。

契約栽培、露地栽培の熟度の高いカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローをそれぞれ仕込み、その中から最高レベルの原酒をアッサンブラージュした。セパージュ比率はカベルネ・ソーヴィニヨン75%、メルロー21%、プティ・ヴェルド4%。

2019年は天候がよく、ぶどうの着色も上々だったという。ポテンシャルを生かすため、最良の抽出と樽熟成を実施。カベルネ・ソーヴィニヨンらしい力強くしっかりした骨格となめらかな口当たりになった。主張しつつも丸みのあるタンニンとスパイシーな後味が長く続くフルボディタイプが魅力だ。

一切の妥協をせず、バレルセレクトの中から選び抜かれたものだけをブレンドした、高畠ワイナリーのフラッグシップである。

『高畠ワイナリーの取り組みと未来への展望』

最後に、高畠ワイナリーの今後の取り組みや未来への展望について、広報担当の高橋さんにお話しいただいた。

「世界に匹敵する品質のワインを100年かけても造るという『100年構想』を掲げて、ワイン造りをおこなっています。しかし、高畠ワイナリーだけが発展すればよいというわけではありません。『高畠』という地名を冠している以上、高畠町と契約農家さんたちとともに豊かになりたいのです。原料がなければワイン造りはできませんから、高畠町が誇るぶどう栽培という産業への恩返しがしたいですね」。

町の名前と産業の知名度を上げ、地域に貢献できる存在になることが、高畠ワイナリーの思い描く理想の未来像なのだ。

▶︎世界の名産地に伍するワインを高畠町で造る

世界に通用するワインを造るため、高畠ワイナリーが手本としているのは世界の名だたる銘醸地だ。赤ワインはボルドー、白ワインはブルゴーニュ、発泡性ワインはシャンパーニュという生産地のワインと肩を並べる品質のものを、高畠町で造って評価されたいと考えている。

「今後は、当社の主力品種であるシャルドネを大切にする一方で、ボルドースタイルの赤ワイン造りを続けます。レベルをさらに高めることが目標ですね」。

目標を達成するために、選果機付き除梗破砕機や小仕込み用醸造タンクを導入して設備を強化。また、2017年から始めた自社圃場でのカベルネ・ソーヴィニヨンの定植地を拡大し、2025年春にも追加で植栽する準備を進めているそうだ。

▶︎ワインの魅力を多角的に発信

観光ワイナリーとしてスタートした経緯から、ワインのある暮らしや体験を提供できる場としても親しまれている高畠ワイナリー。施設内で製造工程の一部と貯蔵タンクヤード、地下セラーなどが見学できる。さらに、約70種類のワインを揃えたショップ、食事と有料テイスティングが楽しめるグルメスポットも備えているため、豊かで楽しい時間が過ごせる。

「高畠ワイナリーはJR高畠駅から徒歩10分と交通の便がよいところです。ぜひ気軽に足を運んでいただきたいと思います」。

「テイスティング会」、「ぶどう畑散策ツアー」、「ピノ・ノワールの収穫体験」、「シャルドネのナイトハーベスト」といった興味深い催しも定期的に開催。毎年5月の「高畠ワイナリー祭り」や、10月の「ハーベストフェスティバル」といった大型イベントもあり、毎回大盛況だという。

革新的な手法でワイン造りに取り組み、地元を盛り上げる高畠ワイナリーのイベントへの参加を目的とした旅を企画してみたい。

『まとめ』

世界のワインに挑戦するという明確な目標を掲げ、リスクも取りながら新しいチャレンジを続けているのが高畠ワイナリーの魅力。地域に根差し、町とともに発展しようと尽力しているのも愛される理由のひとつだろう。

高畠ワイナリーのワインを初めて味わうなら、国際的なワインコンテストで評価されるまでに成長したシャルドネを選びたい。これまで東北産のワインにはあまりなかったトロピカルフルーツの果実味や香り、フレッシュな酸味に心を奪われるだろう。

また、トライ&エラーを繰り返しながら着実にレベルアップを遂げている赤ワインも見逃せない。特にカベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインは、次のヴィンテージのリリースが待ち遠しくなるほど。ボルドーファンは飲み比べを楽しんでみたい。

年々実力を増している高畠ワイナリーのワインには、長く飲み続けたいと思わせる力がある。豊富なラインナップの中から、自分好みの1本を探しに訪れてみてはいかがだろうか。

基本情報

名称高畠ワイナリー
所在地〒 999-2176
山形県東置賜郡高畠町大字糠野目2700-1
アクセスhttps://www.takahata-winery.jp/contactus/
HPhttps://www.takahata-winery.jp/

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