「Terroir.media」公開レポート:日本ワイナリーの魅力を一挙大公開!①

皆さま、こんにちは!いつも「Terroir.media」をご覧いただき、ありがとうございます。

「Terroir.media」は、個性と魅力あふれる日本のワイナリーを紹介するWebメディアです。日本全国のワイナリーにインタビューを実施して、こだわりのぶどう栽培やワイン造りを徹底取材してお届けしています。

今回から4回にわたり、皆さまに「Terroir.media」公開レポートをお届けします。

はじめに

「Terroir.media」の趣旨は、一人でも多くの方に、「日本の素晴らしいワイナリーを知ってもらう」「日本ワインの魅力を知ってもらう」「各地域の特色あるワイナリーへの訪問を促す情報を伝える」ことです。

2020年11月の創刊以降、記事を掲載したワイナリー数は190軒を越えました。
また、「Terroir.media」では、日本のワイナリーにさらなるスポットを当てる機会を設けたいと、2023年から「Terroir.awards」を開催しています。日本ワインの普及に貢献し、さらには日本ワインを「文化」として定着させることが狙いです。

「Terroir.awards 2024」受賞ワイナリー・ノミネートワイナリー発表記事はこちらからご覧いただけます!

今回、第2回目となる「Terroir.awards 2024」をweb上で開催するにあたり、この3年間の「Terroir.media」のインタビューの成果を、レポートとして皆様にご提供いたします。

レポートは下記のように構成されています。

  • 第1章 日本ワインの現在地
  • 第2章 「Terroir.media」インタビューの特徴と各ワイナリーの取り組みを紹介!
  • 第3章  「Terroir.awards 2024」受賞ワイナリー・ノミネートワイナリーの取り組みを紹介!

第1章では、日本ワインが現在置かれている状況についてお伝えします。

第2章では、「Terroir.media」のインタビューの特徴についてご説明し、さらにはインタビューから得たワイナリー独自の取り組みを、「品種」「栽培のこだわり」「醸造のこだわり」などのカテゴリーから一挙紹介します。
この3年間の「Terroir.media」のダイジェスト版を皆様にお届けします!

第3章では、「Terroir.awards 2024」で設けた各賞の大賞に選ばれたワイナリー、ノミネートされたワイナリー、全部で23箇所のワイナリーの取り組みを紹介します。

今回は、第1章 日本ワインの現在地 をお届けします。

第1章 日本ワインの現在地

この章では国税庁の公式サイトで公表されている“種類製造業及び種類卸売業の概況”(令和5年アンケート)を参考にしながら、「日本ワインの現在地」をレポートしたいと思います。

▶︎「日本ワイン」とは?

ここで改めて、「日本ワイン」の定義について再確認します。

これまで日本で醸造されるワインは「国産ワイン」や「日本ワイン」などさまざまな呼び方をされていました。そこで、国税庁が定める「果実酒等の製法品質表示基準」によって「日本ワインとは、国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒」と基準が設けられ2018年から適用されました。
「日本ワイン」とは、国産ぶどうのみを原料とし、日本で製造されたワインのこと。一方で、「国内製造ワイン」はぶどう以外の果実を用いたいわゆるフルーツワインや、海外から輸入した濃縮ぶどう果汁などを使用し、国内で製造されたワインを指します。このように表示基準によって明確にルール化されたことで、国内で流通するワインは(1)日本ワイン(2)国内製造ワイン(3)輸入ワインの3つに区分されました。

農林水産省HPより

日本ワインとは、「日本生まれ・日本育ち」のワインです!Terroir.mediaでは、日本で製造されている「国内製造ワイン」の中でも、主に「日本ワイン」にスポットを当て、各ワイナリーの取り組みを紹介しています。

▶︎日本のワイナリーの数について


2023年現在、国税庁に登録されているワイナリーの軒数は468軒です。(”2023年国税庁調査結果“参照)10年前に比べて2倍以上軒数が増えています。そして今もなお、新しいワイナリーを創ろうという取り組みがあることを聞くので、その数は近いうちに500軒を超えるだろうと予想しています。

▶︎日本人のお酒の消費量

若年層を中心に「お酒離れ」が進んでいるといわれていますが、日本人のお酒の消費量の実態はどうでしょうか。

(酒類業界を巡る)国内市場の状況は、少子高齢化や人口減少等の人口動態の変化、高度経済成長後における消費者の低価格志向、ライフスタイルの変化や嗜好の多様化等により、国内市場は全体として中長期的に縮小してきています。

国税庁”酒レポート“(令和4年)

国内消費量が減少する動きは今後も進むことが予想されます。国内消費を守り、さらには海外にも販路を広げることが、明治期から築き上げられた「日本ワイン文化」を発展させるヒントになりそうです。

▶︎日本人は年間にどれくらいワインを飲むのだろう?

日本人はどれくらいワインを飲んでいるのでしょうか?海外の人と比べるとどれくらいの差があるのでしょうか?

O.I.V.(国際ワイン・ブドウ機構)の統計では、日本における一人当たりの年間ワイン消費量は、欧州各国と比較すると依然として小さく、3.1Lとなっています。

キリンホールディングス株式会社.”ワイン参考資料”(2023年11月).キリンホールディングスHPより

日本人は年間に750mlボトル約4本くらいのワインを消費しているという計算です。10年前は750mlボトル3.1本だったとのことで、1.2倍増加しています。

一方で、世界の一人当たりの年間ワイン消費量の2022年の統計を見てみると、

1位ポルトガル(67.5L)
2位フランス(47.4L)
3位イタリア(44.4L)

キリンホールディングス株式会社.”ワイン参考資料”(2023年11月).キリンホールディングスHPより

ポルトガル人は1年間で、750mlボトルをひとりあたり90本飲むという計算です!

▶︎日本人が日本ワインを飲む比率はどれくらい?

では、日本人が日本ワインを飲む比率はどれくらいなのでしょうか。

日本ワインの国内市場におけるワイン流通量構成比は、前年の5%から0.4%増の5.4%と増加傾向にあります

キリンホールディングス株式会社.”ワイン参考資料”(2023年11月).キリンホールディングスHPより

つまり、日本人Aさんが年間に20本ワインを飲むとすると、日本ワインの比率はそのうちの1本、ということです。

▶︎日本のワイン生産量の推移

同じく、キリンホールディングス株式会社.”ワイン参考資料”(2023年11月)によると、日本のワイナリー数が増加している一方で、出荷量はここ数年増えているとはいえません。コロナ禍であったこともあり、今後の生産量の推移に注目したいと思います。

▶︎都道府県別のワイナリー数

表① 都道府県別のワイナリー数

出典:国税庁(令和5年)

※データはアンケート調査の収集結果のため、アンケート未回答の業者の数値は反映させていません。

日本ワインは、北海道から沖縄まで全ての県で造られています。唯一ワイナリーが存在していないといわれていた佐賀県にも、近々ワイナリーが誕生するといわれています。沖縄にも日本ワインを造るワイナリーが存在しますよ!「Terroir.media」では、沖縄のワイナリーの記事も近々掲載する予定です。どうぞお楽しみに!

▶︎日本で栽培されているぶどう品種

実際に日本ではどのようなぶどう品種が栽培されているのでしょうか。ワインの原料として受け入れられた国産生ぶどうの数量について、赤ワイン用ぶどう品種、白ワイン用ぶどう品種の数量と主要産地が下記の表です。

表② 赤ワイン用生ぶどうの受入数量(上位10品種)

出典:国税庁(令和5年)

表③ 白ワイン用生ぶどうの受入数量(上位10品種)

出典:国税庁(令和5年)

赤ワイン用ぶどう品種、白ワイン用ぶどう品種共に、日本固有品種が首位となっています。

「Terroir.media」のインタビュー内でも、各地のワイナリーが、もともと植えられていたぶどうの樹を、その土地の風土にあった品種に植え替える取り組みをよく耳にします。
「Terroir.media」の取材でお話いただいた、各ワイナリーの品種への取り組みについては第2章で詳しく紹介します。どうぞお楽しみに!

▶︎海外の日本ワインへの評価

海外では「日本ワイン」はどのように評価されているのでしょうか。
海外の声がリアルに聞ける指標の一つに、ワインコンクールやワインアワードがあります。近年、海外の有名なワインコンクールで日本ワインが評価されることも増えてきました。

ここでは、世界で名を馳せるワインコンクールを紹介します。

◆インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)

イギリスの首都・ロンドンで毎年開催。「世界でもっとも大きな影響力をもつワインのコンテスト」ともいわれ、ウィリアム・リード・ビジネス・メディア社が1984年にワインマガジンの企画として開始、規模を徐々に拡大。2007年からは「SAKE部門」も誕生し、日本酒の海外進出における重要なイベントとなっています。

インターナショナル・ワイン・チャレンジ2023にて金賞を獲得した日本ワインがあります!
高畠ワイナリー(山形)レ・トロワ・シゾー・ド・オオウラ・エン・上和田シャルドネ2021
IWCポイントで、日本ワイン最高の95点を獲得しています!

◆デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)

イギリスのワイン雑誌「デキャンター」が開催するワインコンテスト。出品点数が1万点以上と世界一のワインコンテストで、金賞を取ることが最も難しいとも言われています。

デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード2023にて、日本ワインで唯一のプラチナを獲得したワイン!
サントリー登美の丘ワイナリー(山梨)登美の丘甲州2021 
DWWA2023において、最高得点の97点を獲得しました!

世界的に権威のあるワインコンクールで日本ワインが高得点で評価されていることは、日本ワインが文化として根づいていることを証明しているといえます。

▶︎日本のワインコンクール・ワインアワードにはどんなものがある?

日本にはどのようなワインコンクール・ワインアワードがあるのでしょうか?
主なワインコンクール・ワインアワードと、趣旨を抜粋しました。

◆日本ワインコンクール(Japan Wine Competiton)

日本ワインコンクールは、国産ぶどうを100%使用した「日本ワイン」を対象としたコンクールです。日本ワインの品質や認知度の向上を図るとともに、それぞれの産地のイメージと日本ワインの個性や地位を高めることを目的とし、2003年から開催しています。
このコンクールは、日本の代表的なワイン産地である4道県のワインを醸造している組合(北海道、山形県、山梨県、長野県)、日本ワイナリー協会、(一社)日本ソムリエ協会、(一社)葡萄酒技術研究会、山梨大学ワイン科学研究センター、山梨県が実行委員会を組織して開催しています。

◆ジャパンワインチャレンジ(JAPAN WINE CHALLENGE)

2024年で第27回目を迎えるジャパン・ワイン・チャレンジ(JWC)は、設立以降、年々規模を拡大し、今やアジア最大規模のワイン審査会の一つとなりました。JWCは、ワインが市場で正しく理解されるための重要な手段であると一般的に考えられています。輸出業者、輸入業者、貿易業者にとって、JWCのメダルシールは、そのワインが日本の消費者にとって適切な選択であると判断されたことを証明するものであり、その価値を高く評価することができます。

◆サクラアワード

2014年、ワイン業界で活躍する女性のみが審査を行うという画期的な国際ワインコンペティションとしてサクラアワードは誕生し、2023年に記念すべき第10回目を迎えました。「日本の家庭料理に合うワインを探す」「ワインの消費拡大」「ワイン業界で働く女性の活躍を促す」を目標とするサクラアワードへは、コロナ禍による世界的な情勢不安のなかにありながらも、2023年には28カ国から4,222アイテムというエントリーが寄せられました。これは、日本市場に対する生産者の期待の大きさを物語っています。

◆日本ワイナリーアワード

日本の自然の恵みと、造り手の思いが詰まった日本ワイン。その一本一本が、テロワール(気候風土)や人となりを雄弁に語っています。どれもユニークなものだからこそ、どのワイナリーのワインを選ぶかはとても難しい選択です。消費者のみなさんが、ワインを愉しむ一助となることを願い、ここに優れた品質のワインをうみだすワイナリーを表彰します。

日本ワインコンクール、ジャパンワインチャレンジ、サクラアワードは「ワイン」を評価するコンクールです。なかでもサクラアワードは、日本で誕生した唯一の国際ワインコンペティションとして、近年世界から注目を集めています。

一方で、日本ワイナリーアワードは「日本ワイン」を造る「日本のワイナリー」を評価するアワード。「Terroir.media」が主催する、日本のワイナリーにスポットを当てる祭典「Terroir.awards」の先をいくアワードとして、たいへん刺激を受けています。

▶︎まとめ

ここまでは「日本ワインの現在地」として、日本ワインの現状をお伝えしました。

日本でワイン造りが開始されたといわれるのが1870年ごろ。それから現在まで、わずか150年ほどの間に日本ワインは世界に注目されるワインとして進化し続けています。

2023年11月には、ワイン大国ともいわれるフランス・ブルゴーニュで、日本人による「日本ワイン試飲会」が開催されました。想定をはるかに上回るフランス人が試飲会に駆けつけ、大きな手応えがあったとのことです。
栃木出身岩崎さん、本場仏で日本ワイン発信 初の試飲会が反響 7月から実家で生産、輸出へ.下野新聞.2024-03-06,下野新聞SOON

日本ワインがこの150年ほどの間で躍進した背景には、日本のワイナリーの皆さまの想像をこえるご苦労、努力があったからにほかなりません。

第2章では各ワイナリーの具体的な取り組みについて、「Terroir.media」が創刊以降3年間で取得した情報を、余すことなく紹介いたします!どうぞ、お楽しみに!

©株式会社Henry Monitor 執筆:長島綾子 レビュー:小松隆史


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