追跡!ワイナリー最新情報!『丹波ワイン』歴史と実績を礎に歩み続ける

京都府船井郡京丹波町にある「丹波ワイン」は、1979年に創業したワイナリーだ。創業者は、照明器具メーカーの社長を務めていた黒井哲夫氏。海外で出会ったワインの美味しさに衝撃を受けたことがきっかけで、ワイン造りに乗り出した。

丹波ワインが目指すのは、京都の食文化に合うワインを造ること。丹波の気候に合う品種を探し、実に50種類もの品種を栽培している。品種ごとの個性とテロワールを表現したワインが、丹波ワインの最大の魅力である。

今回は、製造部部長でエノログの内貴(ないき)麻里さんと、販売業務部エグゼクティブマネージャーの坂本泰隆さんに、直近のぶどう栽培・ワイン造りの様子について伺った。気候変動の影響や北海道にある新しい畑、新作ワインに関する話題まで、丹波ワインの最新情報を詳しくお届けしよう。

『丹波ワインの2023年~2025年』

まずは、直近3年間のぶどう栽培を振り返りたい。厳しさを増す西日本の夏をどのように乗り越えてぶどうと向き合ってきたのだろうか。

自社圃場がある京都と北海道における、ぶどう栽培の今についてお話しいただいた。

▶︎様々な変化に直面した3年間

京都の自社圃場では、ここ数年で日照時間と積算温度が大きく増加傾向にあるという。

「2023年以降は毎年、収穫期には晴天が多く、日照時間は十分でした。ぶどうの生育によい影響を与えてくれました。しかし、順風満帆だったわけではありません。気候変動なのか環境の変化や、獣害・病害なども発生しました」。

2023年は鹿による食害に見舞われ、収穫前のタイミングには雨が降った。雨は成熟期の果実に影響を及ぼし、腐敗して酢酸のような臭いを放つ症状「サワー・ロット」が発生したのだ。また、収穫期の後半には晩腐病が広がり、収量が伸び悩んだ品種もあった。同様の傾向は2024年にも見られ、特に晩腐病の影響が大きかった。

続く2025年には、春先に「遅霜(おそじも)」に襲われ、一部の新芽がダメージを受けて収量が減少した。遅霜は2026年にも発生したという。

「近年はぶどうの芽吹きも早く、春先の急な冷え込みが重なると危険です。畑の気温が2℃くらいまで下がることで、一気に霜が降りてしまうのです。柔らかな新芽は霜によるダメージをまともに受けてしまうため、頭を悩ませています」。

遅霜対策として始めた施策が、「霜ガード薬」の使用だ。霜が降りるタイミングに合わせて散布すると被害を軽減できるとされるが、効果のほどは経過観察中である。

鹿による食害については、4枚ある畑のうち2枚に獣害フェンスを設置済みで、効果があらわれたところだ。

▶︎高いポテンシャルを誇る品種

大きく変化する天候の中でのぶどう栽培は難易度を増してきているが、安定したポテンシャルを発揮している品種もある。2023年に好調だったのは、ピノ・ブランとシャルドネだ。

「2023年は、白ワイン用品種が素晴らしい年でした。特にピノ・ブランは糖度がしっかりと上がり、例年よりも力強い印象になりましたね」。

また、シャルドネは糖度が24度にまで達し、とろりとした濃厚なぶどうに仕上がった。「はんなり感」があるいつもの丹波ワインのシャルドネとは、一風違ったものになったそうだ。

赤ワイン用の期待の星である「タナ」にも注目したい。タナは真っ黒に見えるほど濃い色の果皮を持ち、野性的な香りと力強さが魅力の赤ワイン用品種だ。酸度が上がると尖った印象になりがちだが、近年の暑さと収穫時期を極限まで引っ張る栽培努力によって、酸が程よく落ちてバランスのよい状態で収穫できている。

激しい気候変動が、造り手に多くの苦難をもたらしていることは否めない。だが、知恵と工夫で課題を乗り越えた先に、これまでにない「丹波のぶどう」の姿が見えてくるのかもしれない。

▶︎柔軟な対応で気候変動を乗り切る

近年の強すぎる日光と長すぎる日照時間は、日本各地のぶどう栽培に新たな難しさをもたらしている。丹波ワインでも、カベルネ・ソーヴィニヨンを筆頭に、赤ワイン用品種の着色不良が増えている。

「カベルネ・ソーヴィニヨンは、だんだんと着色が難しくなってきました。病気にもかかりやすかったため、全てタナに植え替えることにしたのです。今後はタナの栽培量を積極的に増やしていく方針です。サンジョベーゼも着色に課題を抱えているため、除葉量の調整や、直射日光から守るシートを設置することで対策していきます」。

その他、暑さのせいで、夏から秋にかけて「蜂」による被害も増えている。2025年は遅摘みのセミヨンが蜂の猛襲を受けて、200〜300kgを見込んでいた収量がわずか数十kgに落ち込んだ。

「2026年は、女王蜂が新しい巣を作るために飛び立っていく5月頃に、畑の周囲に大量の蜂トラップを仕掛けました。秋の収穫期にどれほど効果を発揮してくれるか、期待を込めて見守っています」。

暑さはぶどうだけではなく、圃場で働くスタッフにも襲いかかる。涼しい時間帯から作業ができるようにと、シフト制を導入したそうだ。丹波ワインは2026年も、京都の暑い夏に立ち向かって進んでいく。

▶︎栽培管理の工夫で古木を守る

丹波ワインの自社圃場には、樹齢35年ほどを迎えたドイツ系ピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)がある。「京都丹波ピノ・ノワール ヴィエイユ・ヴィーニュ」という銘柄に使用しているぶどうだ。

ドイツ系ピノ・ノワールは、「ヴィエイユ・ヴィーニュ(古木)」として長い年月をかけて京都のテロワールに馴染んだからなのだろう、近年の極端な気候のなかでも安定した強さを見せている。レインカットが功を奏しており、病気もほとんど見られない。

「2025年の京都の夏は、35℃以上を記録した日も多く過酷な暑さでしたが、丹波のピノ・ノワールはしっかりと存在感のある色合いを保っていました。どれほど効果が出ているかは未知数ですが、ピノ・ノワールの畑の地面には、『銀シート(反射材)』を敷き詰める取り組みを続けています」。

反射材を使うことによって、上からの太陽光だけでなく、地面からの反射光がぶどうの房の裏側や下側にまでしっかりと当たるというメリットがある。銀シートを敷いているシーズンは畑がキラキラと眩しく輝くため、びっくりするくらい綺麗な写真が撮れるそうだ。造り手の惜しみない愛情と様々な工夫が、古木を健やかに育てているのだろう。

▶︎遅摘みセミヨンへの思い

丹波ワインの自社圃場では、白ワイン用品種のセミヨンを栽培している。丹波ワインにとって思い入れのある品種のひとつだ。

「遅摘みのセミヨンを使って、極甘口のデザートワインを造っています。他の白ワイン用品種の収穫が全て終わった後も、レインカットをしたセミヨンをそのまま残しておくのです。貴腐菌が付くこともあれば、そのまま乾燥していくこともありますが、最終的には糖度が40度近くまで上がります」。

収穫タイミングを見極めて丁寧に摘み取ったセミヨンは、濃厚でリッチな味わいのデザートワイン「京都丹波 セミヨン レイトハーベスト」になる。蜂の被害も大きくなってきて苦労しているが、今後も造り続けたい銘柄だという。

数多くの品種を育てて、バラエティに富んだワインを造り続ける丹波ワイン。多品種の栽培には、リスク分散するためという戦略的な側面もある。もともとぶどうの名産地ではなかった土地で重ねてきた経験が、今日の丹波ワインの強みとなっているに違いない。

▶︎北海道・壮瞥町でのぶどう栽培

丹波ワインは京都だけでなく、北海道でもぶどう栽培をおこなっている。挑戦の舞台となっているのが、有珠山や洞爺湖に囲まれた壮瞥町(そうべつちょう)だ。北海道でぶどう栽培を始めたきっかけは、法律の変更によって自社や国産のぶどうを一定量確保する必要が出てきたことだった。

「当初は、北海道なら素晴らしいぶどうができるのではと期待していました。しかし、そう簡単にはいきませんでしたね。北海道でも、様々な問題が発生しました」。

2018年の植樹から8年の歳月が流れた今、試行錯誤を繰り返してきた北の大地でのぶどう栽培は、ようやく軌道に乗りつつある。壮瞥町で育ったぶどうには、本州とは明らかに違う魅力があるという。

「ぶどうの『凝縮感』が全く違いますね。糖度は平均20度以上で、品種によっては24〜25度に達します。しかも、酸も落ちることなく高いままなのです」。

京都の「はんなり」とした雰囲気とは対照的な、北海道のぶどう。個性の異なるふたつの産地を持つことで、丹波ワインの表現の幅はさらに広がっている。

壮瞥町の圃場で育てる品種は、ピノ・ブラン、ピノ・ノワール、シャルドネ、ゲヴュルツトラミネール、エーレンフェルザー、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリなど、実に多彩だ。

白はフィールド・ブレンド、赤はピノ・ノワールを軸に、丹波のぶどうと比較できるワイン造りを目指している。

『丹波ワインの注目銘柄をピックアップ』

続いては、丹波ワインが手がける個性豊かな銘柄を紹介しよう。

オレンジワインと清酒酵母を使った新しい試み、そして唯一無二の品種まで。丹波ワインらしい多彩なラインナップを取り上げたい。

▶︎オレンジワイン「デラ・グリ」

オレンジワインは、白ワイン用品種の皮や種を果汁に漬け込むことで、美しい琥珀色と心地よいタンニンを引き出す醸造スタイルだ。

日本でのオレンジワインというと、甲州種を使ったものが多く造られているが、丹波ワインがオレンジワイン用に選んだのはデラウェアである。買いぶどうのデラウェアを使って造った「デラ・グリ」は、お客様からの評価も高い。

「デラ・グリ」の成功を受けて、チャレンジ精神に火がついた丹波ワインの造り手たちは、さらに新たな銘柄を生み出すことになった。

「自社畑で栽培したピノ・グリを使ったオレンジワインも好評でした。また、2025年にはスパークリングタイプの『デラ・グリ スパークリング』も造りました」。

デラウェアやピノ・グリの魅力が輝く、ひと味違ったオレンジワイン。様々な品種の可能性を追求し続ける丹波ワインならではの、フロンティアスピリットみなぎる取り組みだ。

▶︎テーブルワイン「小式部 -koshikibu-」

丹波ワインには「小式部 -koshikibu-」というテーブルワインがある。マスカット・ベーリーAにブラッククイーンをブレンドした造りで、価格は税込み1,650円。

この「小式部」が、「ジャパンワインチャレンジ2025」にて「Trophy for Best Japanese Red Wine」と「金賞」のダブル受賞を果たした。1,000円台のテーブルワインの中での最高評価を得たことを意味する。

「デイリーワインとして造っているものが高い評価をいただいたというのは、本当に喜ばしいことでした」。

和食との相性が抜群で、奥ゆかしい果実感を持つ「小式部 -koshikibu-」は、食材をそっと引き立ててくれる存在だ。毎日の食卓に優しく凛とした気品を添えてくれる、丹波ワインの自信作である。

▶︎安定品質に自信「京都丹波 ソーヴィニヨン・ブラン」

数ある品種のなかでも、特に「京都のテロワールに最も合っている」という手応えを感じ、看板商品として育て上げてきたのが、ソーヴィニヨン・ブランだ。

「京都丹波 ソーヴィニヨン・ブラン」は国内外のワインコンクールで多数の受賞履歴を持つ銘柄で、2024年ヴィンテージは「International Wine Challenge(IWC) 2026」で銀賞を獲得した。

「一般的な海外のソーヴィニヨン・ブランとは異なる個性が楽しいワインです。果実味が豊かでボディ感もあり、温暖な気候を反映して白桃やトロピカルフルーツを思わせる香りも感じられます」。

「京都丹波 ソーヴィニヨン・ブラン」の個性を証明する、面白いエピソードがある。

「以前、ワイン愛好家の方々が集まるブラインド・テイスティングに、『京都丹波 ソーヴィニヨン・ブラン』を持参したことがありました。全員が口を揃えて、『とても美味しいけれど、何の品種だか当てられない』と言うのです。ソーヴィニヨン・ブランですと正解を明かすと、とても驚かれましたね」。

丹波ワインならではの味わいの「京都丹波 ソーヴィニヨン・ブラン」は、京都のテロワールの本質を体現したワインだと言えそうだ。

▶︎清酒酵母を使用「てぐみ清酒酵母発酵 2025」

丹波ワインでは、「清酒酵母」を使ったワインの醸造もスタートした。京都・伏見など酒蔵が集まる土地の特性を生かし、京都の研究機関で開発された清酒酵母を使用している。

「清酒酵母の中から、テストを重ねて選んだのが『51番酵母』でした。開発番号である『51』という数字の語呂合わせから、『京の恋(こい)』という名前がつけられた酵母です」。

「京の恋」酵母を使って甲州種を醸した銘柄が、「てぐみ清酒酵母発酵 2025」だ。吟醸香がふわりと鼻に抜けて、酸の控えめな優しい飲み口が日本酒を思い起こさせる。

「『てぐみ』という名前は、試験醸造していた時にタンクから機械を使わず手作業で瓶詰めしていた『手汲み』に由来しています」。

「てぐみ清酒酵母発酵 2025」は、亜硫酸無添加で造られている点も特徴的だ。魚の不飽和脂肪酸との相性がよいため、新鮮な魚介と共に楽しみたい。特にマグロの刺身・イクラ・ウニとのペアリングがおすすめなのだとか。日本酒のように楽しめる新感覚ワインを試してみてはいかがだろうか。

▶︎唯一無二の個性が光る「サペラヴィ」

最後に紹介するのは、内貴さんがぜひ飲んで欲しいと話す、「サペラヴィ」という品種を使ったワインだ。元々は丹後の契約農家が栽培していたぶどうで、当時日本で唯一の栽培者だったとみられる。

収量が申し分なく、病気にも強いサペラヴィだったが、酸が非常に高く渋みがほとんどないという、赤ワイン用品種としては珍しい個性を持っていた。

「サペラヴィが丹波ワインに持ち込まれたのは、20年以上前のことでした。悩んだ末に、品種個性を引き出そうと採用したのが、スパークリングワインだったのです。タンニンの少なさがむしろ長所となり、酸の豊富さは品質を高める要素になると考えました。1〜2日醸してから搾り、ほんのり残糖感のあるスパークリングに仕上げたところ、サペラヴィの個性が見事にはまりました」。

「京丹後産サペラヴィスパークリング」は、リリースのたびに瞬く間に完売する大ヒット作となった。

「女性人気が特に高く、ひと口飲んだだけでみなさん『美味しい!』と目を輝かせてくれます。丹波ワイン自慢の銘柄になりましたね。どんなぶどうでもワインにするという、私たちの挑戦の歴史と個性を象徴するワインです」。

『まとめ』

数年後には創業50周年を迎える丹波ワインだが、歴史と実績を重ねてきても挑戦し続ける姿勢は変わらない。これからも、飲み手を驚かせる新しいワインを続々と生み出していくのだろう。

直近では、新たな品種の栽培予定もあり、清酒酵母を使用したワインも増やしていくそうだ。例年通り、収穫時期に合わせた体験イベントも開催する。

「畑での収穫体験やバスケットプレスでの搾汁、搾りたてジュースの試飲などを楽しめるイベントは、毎年好評をいただいています。その他、丹波の名産品である黒豆の収穫体験や、ワイナリーではバーベキューも楽しめますよ」。

丹波ワインは京都市内から直線距離でおよそ40km、電車とバスを乗り継いでも1時間ほどという好立地にある。

「8月の半ばぐらいには、畑に50種類ほどのぶどうが実ります。まるで図鑑のような畑の景色は、なかなか壮観です」。

丹波ワインのイベントやワイナリー見学などは、全て予約制だ。最新情報はSNSにて告知されるため、こまめにチェックして足を運んでみたい。



基本情報

名称丹波ワイン
所在地〒622-0231
京都府船井郡京丹波町豊田鳥居野96
アクセスhttps://www.tambawine.co.jp/access/
HPhttps://www.tambawine.co.jp/

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