これまでのワイナリー名称「サントリー塩尻ワイナリー」から、2026年9月1日より「サントリー信州塩尻ワイナリー」に名称変更したサントリー信州塩尻ワイナリー。
1907年に発売され、大ヒットした「赤玉ポートワイン」の原料調達を目的として、1936年にサントリー信州塩尻ワイナリーの前身となる「壽屋塩尻工場」が誕生。塩尻の地元農家と共に歩んだ歴史は、今年で90周年を迎えた。さらには自社管理圃場でのぶどう栽培を開始して10年という節目を迎え、「『信州塩尻』のブランド力を高め、長野県各地の多様な個性を表現しながら世界品質のワインを目指す」という思いを込めて「サントリー信州塩尻ワイナリー」と名称変更した。
今回は、サントリー株式会社が主催した「サントリー塩尻ワイナリー 方針説明会」に参加した内容と、会場にてサントリー信州塩尻ワイナリー所長 齋藤卓さんにインタビューした内容を紹介する。サントリー信州塩尻ワイナリーの覚悟と未来を紐解きたい。
『100年以上続くサントリーの祖業 ワイン事業のさらなる発展を目指して』
ウィスキー、ビール、清涼飲料など、幅広い飲料の製造・販売を手がけるサントリー。サントリーの祖業は「ワイン」だ。ワイン事業のさらなる発展を目指し、サントリー信州塩尻ワイナリーは挑戦を続ける。
▶︎「信州塩尻エリア」の認知を全国で高める役割を担う
「我々には、長野県有数のワイン産地である『信州塩尻エリア』の認知を全国で高めていく役割があると考えます。開設90周年の節目を迎え、高品質なワインづくりを通じて銘醸地信州の発展に貢献したいという意志を込めて、2026年9月1日より『サントリー信州塩尻ワイナリー』に名称を変更いたします」。
サントリー株式会社 マーケティング本部ワイン部長 宮下弘至さんは、方針説明会冒頭で力強く語った。
サントリー信州塩尻ワイナリー(以下、信州塩尻ワイナリー)は、いまや塩尻エリアにとどまらず、長野県各地の多様な個性を表現するワイナリーとなっている。長野県内には「信州ワインバレー」と呼ばれる5つのワイン産地があり、これほどまで個性あふれ、表現豊かなワインが誕生するエリアはなかなかない。
信州塩尻ワイナリーで現在取り扱うぶどうの産地は、長野県内では塩尻、松本梓川、高山村、富士見町、立科町の5か所。さらには青森県弘前市、山形県上山市の契約栽培地からもぶどうを調達しワイン醸造をおこなう。
1960年代に結成された塩尻市周辺のぶどう生産者による「壽屋赤玉出荷組合」は、「サントリー赤玉出荷組合」として現在も活動し、地元生産者との絆が大切に受け継がれている。
信州塩尻ワイナリーでは各地の契約栽培地へ定期的に通い、生産者と対話を繰り返し、日々品質向上に努めている。

▶︎新ヴィンテージを発売
ワイナリー名称の変更を機に、サントリーは信州塩尻を中心とした長野県各産地の魅力、それぞれの土地の個性を表現した新ヴィンテージを9月8日より数量限定で発売する。
高品質のぶどうを産出する塩尻市岩垂原地区産100%のサントリーの日本ワイン最高峰のシンボルシリーズワイン「SUNTORY FROM FARM 岩垂原 メルロ 2022」。今回の節目に合わせ、この2022年ヴィンテージより黒紫色の和紙をラベルに使用し、岩垂原のぶどうの深く濃い色をイメージし、気品ある味わいと凝縮感を表現する。
信州塩尻ワイナリーの中核商品である「SUNTORY FROM FARM 塩尻 メルロ 2023」も同様に新たなラベルデザインに刷新。ラベルには、冷涼な塩尻をイメージした銀色のブランドロゴと、味わいのしなやかさを表現した美しい線画をあしらう。
「我々はワインボトルの中味をつくるだけでなく、ワインの世界観や価値観を、ワインボトルの外観からもお客様にお伝えしたいと考えました。ワイン部全体で何度も対話を重ね、この度新ヴィンテージを発売します」。
信州塩尻ワイナリー所長 齋藤さんによるおすすめワインの紹介はこのあと登場するので、ぜひ楽しみにしてほしい。

▶︎地域のワイナリーと協働し「信州塩尻」の魅力を発信
「信州塩尻ワイナリーと名称を変更した背景には、地元信州の皆様にさらに愛されるワイナリーになる、という思いも込められています」。
「信州塩尻」をワイン産地として定着させるためには、品質向上はもちろんだが、魅力を言語化し、広く認知されることが重要だ。産地を形成するためには信州塩尻ワイナリーだけが行動しても限界があり、地域のワイナリーが手を取り、協働して産地振興に貢献することが欠かせない。
そこで信州塩尻ワイナリーでは地元密着の活動を展開し、地域住民に愛され、産地振興に貢献できる機会を積極的に創っている。
◆「塩尻のヴィニュロンたちによる晩餐会 Château Mercian Kikyogahara Winery × Suntory Shiojiri Winery」(7月25日開催)
長野県松本市内レストランにて、シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリーと初のコラボレーションディナーを開催した。
◆桔梗ヶ原ワインマルシェ(2026年11月21日(土)開催予定)
五一わいん、井筒ワイン、シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー(参加ワイナリーは調整中)と信州塩尻ワイナリーの塩尻市内のワイナリーが合同で開催するイベント。同日に複数のワイナリーを開放し、参加者はワイナリー見学や各種セミナー等に参加できる。昨年11月にも実施し、非常に好評を博したイベントだ。
今後も地域と共に、信州塩尻ワインの価値を体感できる機会を創出し、信州塩尻ブランドのさらなる発展に貢献する考えだ。

名称変更前のサントリー塩尻ワイナリーの外観。
『信州塩尻ワイナリー所長 齋藤卓さんインタビュー』
ここからは、信州塩尻ワイナリー所長 齋藤卓さんにインタビューした内容と、同日に開催された試飲会でのミニセミナーの内容をレポートする。
スタッフとのコミュニケーションを大切にし、共に畑に出て作業するなど「スタッフと同じものを見ながら対話する」ことを重視する齋藤さん。言葉を選びながら誠実に語る齋藤さんの話を余すことなく伝えたい。
▶︎タイミングを見誤らない観察眼で栽培をおこなう
齋藤さんが信州塩尻ワイナリー所長に着任した2023年頃から、塩尻周辺の気候は気象データからも明らかに変化しているそうだ。気温が上昇し、全体の降水量はさほど変化はないが、短時間で大量に降る雨が気になるようになった。品種によっては、大量に降る雨水を一気に吸って実が弾けてしまい、そこから病気が発生することがある。とりわけ塩尻で古くから栽培されてきたコンコードは、いわゆる「玉割れ(裂果)」を起こす傾向にあり、かつては栽培しやすいといわれた品種だが、その様相が変わりつつある。
「スタッフには、なによりも暑い夏を乗り切るため体調管理を徹底するよう日々声がけしています。そのうえで、畑の区画ごとに優先順位を決めて作業に当たるよう努めています」。
個々の畑や区画に期待されるぶどうの品質や、そのぶどうがどの製品になるか、おおよその紐付けはできている。それを意識しながら栽培に当たること。そのうえで、ぶどうの生育状況を丁寧に観察しながら、最適なタイミングで最適な作業を施せるよう、作業手順を組み立てることを齋藤さんはスタッフにアドバイスする。
先を読むことが難しい気候において、全体のバランスを見ながらタイミングを見誤らずに作業することは「言うは易く行うは難し」だ。
齋藤さんがワイナリーにいる時は、朝メンバーと顔を合わせ会話することを欠かさない。時間が許す限り畑に出て、一緒に作業をおこなう。
「畑で同じものを見ながら会話するということが、とても大事なことだと考えています」。

▶︎より精緻な「目標品質」への到達を目指す
収穫したぶどうは、一粒一粒を見極め、ワインに使用したい果粒だけを選別しながら、最後までやさしく丁寧に扱う。醸造、熟成は産地や畑ごと、区画ごとに個別におこない、それぞれの個性を最大限に引き出す工夫を施す。
タンクに投入するまで、また投入した後も、物理的ストレスをかけないよう、最後まで丁寧に扱うことが徹底されている。醸造、熟成の過程でも畑作業と同様に、ぶどうやワインの状態を細かく観察し、最適なタイミングで最適な管理を実施する。
このような工程を経て丁寧につくられた原酒。原酒からワインという作品が完成する過程を、「絵の具」に喩えて話してくれた齋藤さんの話を紹介したい。
「我々は各製品ごとの香りや味わいの特徴を詳細に言葉で定義していて、その文言を『目標品質』と呼んでいます。ぶどう栽培から醸造、瓶詰めに至るまで、全ての工程が目標品質を達成できるよう積み上げるのです。目指す品質が明確に言語化されているため、そこに到達する最後の関門ともいえる原酒の組み合わせは、とても重要になります。絵画を描く時、キャンバスに載せる絵の具の色彩が豊かなほど繊細で複雑な絵が描けるように、各畑や区画の特徴を引き出した原酒が豊富に存在するほど、より精緻な目標品質に到達できると考えています」。
そのため、サントリーでは個々の畑の魅力や個性を丁寧に引き出せるよう、畑や区画ごとに醸造・熟成をおこなうことが徹底されている。
『おすすめワインの紹介』
続いて、信州塩尻ワイナリーのおすすめワインを紹介したい。信州塩尻ワイナリーで注目のエリア、岩垂原と富士見町のぶどうでつくられたワイン。さらにはサントリーのワインづくりの拠点「サントリー信州塩尻ワイナリー」と「サントリー登美の丘ワイナリー」から誕生した、2つのテロワールが見事に融合した新製品を紹介する。
▶︎SUNTORY FROM FARM 岩垂原 メルロ
JR塩尻駅から見て北西に位置する岩垂原は、奈良井川に流れ込む小曽部川が運んだ礫質を多く含み、その上に火山灰が堆積してできた土壌で、数十センチ掘っただけで岩がゴロゴロ出てくるようなエリアだ。
「非常に水はけがよく、赤ワインとして世界に負けない質感のぶどうが採れる産地です」。
齋藤さんの言葉の端々から、岩垂原への敬意が感じられる。
今回発売となる2022年ヴィンテージからは、岩垂原から採れるぶどうの深く濃い色をイメージした「黒紫」色の和紙がラベルに使用されている。
黒紫という色は、日本では古くから紫色の中でもとりわけ気品ある色と言われる。そのイメージを岩垂原のワインにも投影した。
「SUNTORY FROM FARM 岩垂原 メルロ」で表現したいことは、『美しいしなやかさ』です。それが他の産地にはない唯一無二の特徴だと自負しています」。
なお、別ヴィンテージの「SUNTORY FROM FARM 岩垂原 メルロ 2023」は、世界でもっとも影響力のあるワインコンペティションのひとつ、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2026」において銀賞を受賞した。

▶︎ワインのみらい 塩尻 ソーヴィニヨン・ブラン
続いて齋藤さんが「私のおすすめワインです」と紹介してくれたのが「ワインのみらい 塩尻 ソーヴィニヨン・ブラン」だ。2016年から2019年にかけて岩垂原で植え付けられたソーヴィニヨン・ブラン。水はけのよい岩垂原から採れるぶどうは非常に凝縮感がある。
「サントリーでは青森県津軽エリアでもソーヴィニヨン・ブランを手掛けていますが、津軽のソーヴィニヨン・ブランは林檎の名産地だけあって、本当に林檎を思わせるような香り、ゆったりとした味わいが特徴です。一方、岩垂原のソーヴィニヨン・ブランは、林檎や桃に加えて熟したトロピカルフルーツのような香りもあり、中盤から後半にかけてしっかりとボリュームが続くワインに仕上がっています」。
岩垂原のソーヴィニヨン・ブランの高い密度を活かし、醗酵時は樽を使用。岩垂原ならではのオリジナリティを発揮できる品種だと齋藤さんは期待をよせる。「ワインのみらい 塩尻 ソーヴィニヨン・ブラン2025」は日本ワインコンクール2026にて銀賞を受賞した。
信州塩尻ワイナリーを代表するワインとなるように、さらに進化を遂げていくことを期待したい。

▶︎SUNTORY FROM FARM 信州富士見町産 甲州 ブリュット
長野県富士見町(ふじみまち)にある畑は八ヶ岳と南アルプスに囲まれ、標高900メートル、冷涼で昼夜の寒暖差が非常に大きいエリアだ。ぶどうはゆっくりと熟し、キリリとした直線的な酸味とピュアさを兼ね備えた甲州ぶどうを生み出す。
その特徴を活かした高品質な瓶内二次醗酵スパークリングワイン「SUNTORY FROM FARM 信州富士見町産 甲州 ブリュット」は、搾りたての和柑橘の香りと美しい酸が由来した緊張感ある味わいが特徴である。
「SUNTORY FROM FARM 信州富士見町産 甲州 ブリュット 2022」は、「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード 2026」において金賞を受賞、さらには「SUNTORY FROM FARM 信州富士見町産 甲州 ブリュット 2023」が「日本ワインコンクール 2026」において金賞を受賞した。
「コンクールに出品する理由は、もちろん受賞したいという思いもありますが、『目標品質』を掲げてワインづくりをする中で、アプローチが確かであるか、我々は今どの辺りに居るかを確認することを目的にしています。評価していただき、我々のアプローチは間違っていなかったと自信を深めることができました」。

▶︎サントリーならでは 唯一無二の日本ワインを目指す「結の香(ゆいのか)」
最後に紹介するのは、サントリーが長年突き詰めてきた「サントリーとしてのオリジナリティ」を見事に融合させたワイン、「結の香 テロワールアンサンブル」だ。
オリジナリティある日本ワインを世界に広め、ジャパニーズワインとして広めていきたいと考えていたサントリーは、これまでの考え方とは異なる、新たな価値ある赤ワインをブレンドでつくりたいという考えに到達した。
信州塩尻を代表するメルロと、登美の丘を代表するプティ・ヴェルドをブレンド。さらにはサントリーならではの手法として、ミズナラ樽で熟成させたマスカット・ベーリーAを一部ブレンドした。
サントリーとしてのオリジナリティ、日本ワインにしかできない要素を突き詰めたいと考えた時に、ブレンド比率は最大の焦点となった。香り立ちの華やかさをもう少し出したいと、ミズナラ樽熟成マスカット・ベーリーAを当初の比率からほんの少しだけ上げたところ、ブレンドに参加したスタッフが満場一致で「これだ!」と頷いたそうだ。
ミズナラ樽由来のココナッツや白檀を思わせる甘く香ばしい香りと、木苺やクランベリー、カシスなどの果実感が複雑に絡み合う。味噌や醤油など、日本の発酵調味料を使った和食とも好相性だ。
信州塩尻ワイナリーと登美の丘ワイナリー。2つのワイナリーを結ぶという意味合いの「結」。さらには全体を調和させる役割を果たすミズナラ樽マスカット・ベーリーAの香りの個性を「香」で表現した。多彩なテロワールが融合した、サントリーのオリジナリティが凝縮されたワイン。それらの思いを込めて「結の香」と命名された。

『まとめ』
最後に齋藤さんに今後の抱負を伺うと、目を輝かせ未来を見据えて語ってくれた。
「まずはなによりも、よい品質のワインをつくっていきます。『信州塩尻ならでは』と言いますが、この『ならでは』は簡単なことではありません。きちんと自分たちの畑、醸造を見極め、咀嚼して表現したいと考えています。さらにはワインづくりを通じて、我々だけでなく、社会に貢献できるワイナリーでありたいですね。ワインづくりは、農業であるぶどう栽培に始まるため、社会的な課題と接点が多い産業だと思うので、ワイナリーでの活動をきっかけに社会課題の解決に貢献できる機会を増やしていきたいです」。
今秋11月21日(土)に開催する「桔梗ヶ原ワインマルシェ」は、信州塩尻ワイナリーはじめ塩尻市内の複数のワイナリーが合同で開催するイベントだ。JR塩尻駅から徒歩5分ほどという好立地にある信州塩尻ワイナリーを訪れる絶好のチャンスなので、この機会にぜひ塩尻を訪れ、信州塩尻の魅力を存分に体感してほしい。
「信州塩尻」の新たなブランド構築へと大きな一歩を踏み出した「サントリー信州塩尻ワイナリー」。これからの活躍に大いに期待したい。

基本情報
| 名称 | サントリー信州塩尻ワイナリー |
| 所在地 | 〒399-0744 長野県塩尻市大門543 |
| アクセス | https://maps.app.goo.gl/nsxnTLdRPsrXy9mT7 |
| HP | https://japan-wine.direct.suntory.co.jp/pages/shiojiri |
