『BLUE WAX WINERY』愛媛の商店街に誕生した都市型ワイナリー

今回紹介するのは、愛媛県松山市にある「BLUE WAX WINERY(ブルーワックスワイナリー)」だ。ワイナリーがあるのは、松山市の中心部にある商店街のひとつで、地元の人たちや観光客でにぎわう「大街道(おおかいどう)商店街」。全蓋式アーケードを有しており、一帯は市内最大の繁華街となっている。

2025年12月にオープンしたBLUE WAX WINERYにはカフェやレストランを併設し、日本各地で造られたワインを取り扱っている。都市型ワイナリーとして街中でスタートしたBLUE WAX WINERYのファースト・ヴィンテージは、2026年2月にリリースした。

BLUE WAX WINERYというワイナリー名は、コルクで栓をした瓶口の上を蝋(ろう)で覆った「ワックスキャップ」がオーナーが好きな淡い水色であることに由来しているそうだ。

今回は、オーナーの木村賢太さんと、ワイナリーで働く中平雄一さんにお話を伺った。BLUE WAX WINERY設立のきっかけから初醸造の様子、今後の展望などを詳しく紹介していこう。

『BLUE WAX WINERYの誕生まで』

20代で起業し、いくつかの事業を営んできた木村さん。以前は主に東京で仕事をしていたが、50歳を過ぎて地元・松山市に戻ることを決意した。故郷で好きなことをしたいと考えて選んだのが、都市型ワイナリーの経営だったという。

BLUE WAX WINERYが大街道商店街に誕生するまでの経緯を振り返ってみよう。

▶︎新事業として選んだワイナリー設立

ワイナリーを設立するきっかけとなったのは、木村さんが経営していた会社のうちのひとつを売却したことだった。

「会社を売却した資金で別の事業を始めることにしました。私にとって最後の新事業立ち上げになると考えたため、大好きなワインに関わる事業にしたかったのです」。

松山市でワイナリー設立を決めた木村さんは、商店街での都市型ワイナリーオープンを目指して、ワイナリー事業をスタートさせた。

「ちょうど売りに出ていた大街道商店街にあるビルを購入しました。当初はリフォームのみの計画でしたが、築60年ぐらいの古いビルだったので、重たい醸造用タンクを入れるには耐久性が低いということが発覚したのです。そのため、リフォームではなく建て直すことになりました」。

建築費の高騰も重なり、計画が変更になったことで想定をはるかに超える費用がかかってしまったが、自分の好きなことを成し遂げるためだと、さらに気合いが入った木村さん。ワイナリーの設計にもこだわり、満足のいく仕上がりとなった。

▶︎商店街にある都市型ワイナリー

2025年12月2日にオープンしたBLUE WAX WINERYは2階建てで、醸造所にワインショップ、カフェ、レストランを併設している。

「向かって右側は1、2階とも醸造所です。1階の左側にワインショップとカフェ、2階にレストランがあります。提供している料理のコンセプトは『ワインに合うメニュー』です。飲食業を手掛けるのも初めてのため、フレンチ出身のシェフに、ワインに合うオリジナルメニューを考えてもらっています」。

1階のカフェでは、ガレットやクレープなど、レストランのメニューの一部を提供している。さらに、おつまみ系のメニューをグラスワインと共に楽しむことも可能なため、ふらっと気軽に立ち寄ってみたい。

ワインショップでは、自社醸造のワインの他にも多くの日本ワインを取り扱っている。

「BLUE WAX WINERYのファースト・ヴィンテージはもちろん、全国各地で造られた日本ワインを取り扱っています。私自身が気になるワインを仕入れています。取り扱い数を少しずつ増やす予定で、500種類2,000本くらい揃えるつもりです」。

日本ワインのすばらしさをもっと知ってもらいたいと話す木村さん。BLUE WAX WINERYはまさに、ワインと共にワインに合う料理やショッピングを楽しむことができて、日本ワインに気軽に触れられるスポットなのだ。

『高品質な買いぶどうでワインを造る』

BLUE WAX WINERYのファースト・ヴィンテージである2025年、醸造に使用したぶどうは契約農家が栽培したものである。BLUE WAX WINERYでは自社栽培をおこなっていないが、近いうちに畑を確保して栽培をスタートする予定だ。もうすでにお目当ての畑があるという。

BLUE WAX WINERYが醸造に使用したぶどうと、今後予定しているぶどう栽培について詳しく見ていこう。

▶︎長野県と愛媛県のぶどうを使用

BLUE WAX WINERYのオリジナルワインは、長野県高山村と愛媛県久万高原町(くまこうげんちょう)のぶどうを使用している。高品質な醸造用ぶどうの産地である高山村は、標高が高く冷涼な気候だ。雨量が少なく昼夜の気温差が大きい環境は、フランス・シャンパーニュやブルゴーニュに近いと言われるほどだ。

「長野県高山村の『角藤(かくとう)農園』さんのメルローを購入しました。標高600mほどの土地で育った、高品質なぶどうでしたね。高山村といえばシャルドネが有名ですが、とても人気がある品種なので2025年は手に入りませんでした。今後はシャルドネも購入したいと思っています」。

一方、愛媛県久万高原町のぶどうはどんな特徴があるのだろうか。温暖なイメージがある愛媛県だが、久万高原町は高山村の気候と近いそうだ。

「久万高原町にある『竹森ガーデン』さんの畑は標高650mにあり、寒暖差が激しい土地です。愛媛県では竹森ガーデンさんだけが栽培しているカベルネ・ソーヴィニヨンを購入しました。丁寧に作られた美味しいぶどうでした」。

2025年に使用したぶどうの産地以外だと、北海道・山形・青森などの寒い地域のぶどうにも興味を持っている木村さん。地元・愛媛のぶどうを使ったワインに力を入れながら、日本各地のぶどうでワインを造るのが夢だという。

▶︎自社栽培もスタート予定

BLUE WAX WINERYでは、ぶどうの自社栽培にも動き出している。2025年の醸造に使用した竹森ガーデンと同じく、愛媛県久万高原町の畑を購入予定だ。

「久万高原町の畑を購入するつもりで対応中です。自社畑は竹森ガーデンさんに管理していただき、私たちも勉強しながら栽培に参加する予定です。実際に自社畑のぶどうが収穫できるのはまだまだ先の話ですが、不安と楽しみな気持ちの両方がありますね」。

栽培する品種は、木村さん自身が好きなメルローとシャルドネにする予定だ。その他、愛媛の気候に向いている品種を選んでいきたいと考えている。

「ぶどう栽培をするのは初めてのため、勉強しながら取り組んでいきます。植栽する品種はまだ選びきれていませんが、病気に強く、愛媛と似た気候の地域で成功している品種にするつもりです」。

ぶどう栽培が大変なことは覚悟しているが、美味しいぶどうを作る努力をし続けたいと考えているBLUE WAX WINERY。数年後に自社栽培のぶどうが収穫を迎える時を楽しみに待ちたい。

▶︎輸送トラブルがきっかけの新たな発見

2025年のワイン造りに関するエピソードをお話いただいたので、紹介したい。長野県高山村からぶどうを運ぶ際にトラブルがあり、到着までの時間が予定よりも大幅にかかってしまった。冷蔵車での運搬ではあったが、ぶどうの品質に悪い影響が出るのではとの懸念があった。しかし、想定外の結果になったそうだ。

「私たちの不安とは裏腹に、とても味わい深いワインができあがったのです。輸送に時間がかかって冷蔵期間が長かったことが、逆によい影響をもたらしたのではないかという話も出ています。よい結果につながるのであれば、北海道や東北などの遠方から、空輸ではなく陸路で日にちをかけて運んでもよいというわけです。この件は、引き続き検証していきたいですね」。

高山村のぶどうはもともと高品質なため、様々な偶然が重なった結果なのかもしれないと話す木村さん。他社とは違う味わいに仕上がったことに、冷蔵期間が長かったことが影響しているのかどうか、気になるところだ。

『BLUE WAX WINERYのワイン醸造』

BLUE WAX WINERYは、2025年11月中旬に初醸造を開始した。2026年2月22日には、長野県高山村のメルローで造った「青の中へ」という銘柄のリリースイベントを開催。初ヴィンテージとしてリリースしたのは、「青の中へ」が約2,500本と、愛媛県久万高原町のカベルネ・ソーヴィニヨンで造った「Kumacabe(くまかべ)」が約200本だ。

BLUE WAX WINERYのワインボトルのエチケットには、ワックスキャップをモチーフにしたかわいらしいキャラクター「ワックスくん」が描かれているので注目したい。

初の自社醸造について、木村さんと中平さんにお話しいただいた。

▶︎醸造のこだわり「グラヴィティ・フロー」

初醸造は「とにかく時間がかかった」と振り返る木村さん。想定外の輸送トラブルが発生したが、急がず丁寧な作業を心がけたそうだ。

「葉や梗(こう)などの不要な部分を取り除き、丁寧に選果することが重要だと学び、人員を投入して慎重に取り組みました。レストランや事務の担当者まで手伝ってくれたおかげで、よいワインになりましたね」。

BLUE WAX WINERYでは、仕込みの工程で「グラヴィティ・フロー」を採用している。果汁をポンプでタンクに送るのではなく、重力で自然に移動させる方法だ。果汁への負担が少ないため、品質が安定するという。

「グラヴィティ・フローを実現するために、醸造施設を2階建てのロフトのような造りに設計しました。クレーンでタンクを持ち上げて、果汁を重力で落とす作業をしています。タンクの操作や階段の上り下りなどが多く、醸造家にとっては大変な作業ですが、できるだけぶどうに衝撃を与えないように、ゆっくりと時間をかけて造っています」。

手間はかかってしまうが、ぶどう本来の味わいが引き出せると感じているそうだ。ワイナリーはガラス張りになっているため、カフェやレストランから醸造の様子を見ることができる。

▶︎長野県高山村のメルローを使用した「青の中へ」

発売中のワイン「青の中へ」を紹介したい。淡い青色のワックスキャップが、かわいらしい印象だ。

「高山村の品質の高いメルローを使った赤ワインです。初醸造のワインですが、美味しく仕上がっていると思います。ジューシーな味わいで、力強さもある味わいです。開栓した直後は口の中でシュワっと弾ける感覚が楽しめます」。

カシスやブルーベリーを思わせる、フレッシュな味わいの「青の中へ」は、自然発酵・無濾過・グラヴィティ・フローで、極力ぶどうにストレスを与えないよう丁寧に造った。ぶどうが持つ力が十分に引き出されたワインだ。

「青の中へ」は、焼き鳥、和食、トマト料理と相性がよいが、木村さんはパンやスイーツと合わせて飲むのも好きだという。

「『青の中へ』は、半分瓶詰めしましたが、残りの半分はまだ樽の中です。2026年いっぱいは樽で熟成をしてからリリースしようと思っています」。

「青の中へ」は、BLUE WAX WINERYの直営ショップの他、東京にあるワインショップ「ナチュマルワインストア」のオンラインストアでも購入可能だ。もちろん、BLUE WAX WINERYのレストランでも、ワインに合う料理と一緒に楽しむことができる。今後のリリース情報については、公式サイトや公式SNSでチェックしてほしい。

▶︎大好評を博した初醸造ワイン

ファースト・ヴィンテージとしてリリースした銘柄のうち、愛媛県久万高原町のカベルネ・ソーヴィニヨンを使用した「Kumacabe」は、BLUE WAX WINERYのショップのみで販売した。

「本数が少なかったので、東京のワインショップに出荷することができませんでした。BLUE WAX WINERYに直接足を運んでいただいたお客様のみへの販売になってしまいましたが、好評ですぐに完売しました。『青の中へ』よりも『Kumacabe』の方が好きとおっしゃる方もいたほどです」。

久万高原町のカベルネ・ソーヴィニヨンは、長野県の高品質なぶどうに引けを取らないポテンシャルを持っているのだろう。

「社内でも、『青の中へ』と『Kumacabe』は半々ぐらいに好みが分かれました。『Kumacabe』も継続して造っていきたいので、多めにぶどうを作っていただけるよう農家さんにお願いしているところです。2026年は最低でも500本造りたいですね」。

BLUE WAX WINERYのワインの特徴を、中平さんにも伺った。

「実は、私は普段はあまりワインを飲みません。赤ワインはもともとやや苦手なのですが、BLUE WAX WINERYのワインは口当たりがよくて、後味もすっきりしているので飲みやすいです。料理の邪魔をしない味わいなので、どんな料理とも合うと感じます」。

ワインが苦手な人でも美味しいと思えるBLUE WAX WINERYのワイン。体に染みわたっていくようなやさしいワインなので、自信をもってお客様におすすめできると話してくれた。

『BLUE WAX WINERYのこれから』

木村さんは、ワイナリー事業を拡大していくつもりはあまりないという。

「美味しいワインをしっかり造ることが一番なので、人を増やしたり規模を大きくしたりということは考えていません。生産本数は年間1万本程度にとどめて、自分たちが美味しいと思えるワインを丁寧に造っていきたいと思っています」。

今後のBLUE WAX WINERYについて深掘りしよう。

▶︎安定した品質のワイン造りを目指す

BLUE WAX WINERYでは、まずはワイン造りに専念し、その後はイベントへの参加や企画などを検討していく予定だ。

「ワイナリーが始動したばかりで、オリジナルワインも2種類のみです。まずは安定した品質のワインを造り、年間1万本造れるようになってから、大型イベントへの参加や店舗でのイベント開催を考えていきたいです」。

初醸造のワインは大好評で、木村さん自身も美味しいと思えるワインに仕上がったが、まだ納得してはいない様子だ。

「今回は運よく美味しいワインができただけかもしれないので、安心できないという気持ちがありますね。まずはワイン造りに集中していきます。醸造期間の3か月間かけて、ワインの味はかなり変化を見せました。最終的に美味しい味わいが出ましたが、なぜ2025年ヴィンテージの結果が生まれたのかについてしっかりと研究して、技術向上を目指したいです」。

今の段階での目標としては、2025年のワインと同じ味を「狙って」造れるようになることだと話してくれた木村さん。ワイン造りに真摯に向き合う姿が非常に印象的だった。

▶︎都市型ワイナリーとして

BLUE WAX WINERYは、都市型ワイナリーとして人が集まる商店街に誕生した。都市型ワイナリーは街中にあるため、ワイナリーまでぶどうを運搬する必要があるが、飲み手とコミュニケーションが取りやすいのがメリットだ。

「ぶどう畑に囲まれた立地のワイナリーに比べて、ワイン造りをしているという印象が薄いかもしれません。しかし、街中でもこんなに美味しいワインが造れるということを知っていただきたいですね。10年後も楽しくワイン造りができるようにがんばって、都市型ワイナリーの魅力を伝えていきます」。

人が集まる場所としての役割を担う都市型ワイナリーだからこそ、BLUE WAX WINERYはオリジナルワインのほかに全国の日本ワインを取り揃えている。

「都心のワイン専門店をイメージして、自分が好きな店の形を作りました。ワインバーのように日本ワインをずらりと並べて、足を運んでくださったお客様に楽しんでいただきたいですね。地方都市にはワイン好きの方はまだ少ないかもしれませんが、近年の日本ワインは本当に美味しいので、飲んでもらえれば素晴らしさが伝わるはずです。商店街という人が集まる場所で、日本ワインを広く伝えていきたいです」。

『まとめ』

ワイナリーとして始動したばかりのBLUE WAX WINERYの魅力と強みを、木村さんと中平さんに尋ねてみた。中平さんは、アットホームなところが最大の魅力だと話す。

「ぶどうの選果の際に、他の事業部のメンバーも時間を見つけて作業に参加してくれました。ファースト・ヴィンテージは、みんなで造り上げたという達成感があります。ワインの味わいにも、私たちが心をこめて取り組んだことが反映されているのではないでしょうか。今後も、みんなで力を合わせてよりよいワインを造っていきたいです」。

木村さんからは、「強みはまだない」という謙虚な答えが返ってきた。

「40~50年もの醸造歴を誇る大ベテランの方にアドバイスいただきながらワインを造っていますので、弊社独自の強みと呼べるものはまだありません。しかし、5年、10年と時間が経つうちに、自信を持って強みだと言えるものが出てくると思います」。

本格的なワイン醸造に取り組み、都市型ワイナリーならではの魅力も兼ねそなえるBLUE WAX WINERYの、今後のさらなる発展に期待したい。

基本情報

名称BLUE WAX WINERY
所在地〒790-0004
愛媛県松山市大街道1丁目4ー19
アクセスhttps://maps.app.goo.gl/qra99fh9mhFtWJb78
HPhttps://bluewaxwinery.jp/

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