『井筒ワイン』桔梗ヶ原で歴史を紡ぎ、科学的アプローチで品種個性を引き出す

今回紹介するのは、長野県塩尻市の「井筒ワイン」だ。日本ワインの銘醸地・塩尻市桔梗ヶ原の地で、1933年の創業以来90年以上にわたりワイン造りを続けてきた老舗である。

桔梗ヶ原では、アルプスから吹き抜ける風によって生まれた昼夜の寒暖差が、質の高いぶどうを育む。井筒ワインは創業以来、そんな桔梗ヶ原で土地に根ざしたワイン造りを貫いてきたのだ。

伝統的な品種のコンコードやナイヤガラを用いた親しみやすいワインを造る一方で、メルローやシャルドネといった欧州系品種を使った本格的なワイン造りにも取り組んでいる井筒ワイン。

伝統と革新、親しみやすさと本格志向という多面的な魅力を持つ井筒ワインは、これまでどのような歴史を歩み、どんな哲学を持ってワインと向き合ってきたのだろうか。

今回は、代表取締役社長の塚原嘉之さん、ワインメーカーの野田森(しん)さん、そして営業部の小田一成さんにお話を伺った。老舗ワイナリーが取り組むワイン造りの真髄に、さまざまな角度から迫っていきたい。

『井筒ワインの歴史 桔梗ヶ原と共に歩んだ90年』

最初に見ていくのは、井筒ワインの歴史について。桔梗ヶ原の地に生まれたワイナリーは、どのようにして日本有数のワインメーカーへと成長したのか。

井筒ワインの創業から現在までの歩みを、共に振り返ってみよう。

▶︎桔梗ヶ原の特産品を活用したワイン造り

井筒ワインがある塩尻市桔梗ヶ原では、古くからナイヤガラやコンコードといった生食用ぶどうが栽培されてきた。生食用としての販売に適さないぶどうを活用するために、農家たちが葡萄酒にしたのが、ワイン造りの始まりだ。

「当初はぶどう農家の組合がワイン造りをしていました。その後ワイナリーとして独立して今日に至ります」と、塚原社長は語る。

井筒ワインは創業以来、地場の特産である生食用ぶどうを大切にしてきた。自然で親しみやすい味わいのワインは、地酒として地域の人々に愛されてきたのだ。

▶︎欧州系品種の栽培に挑戦

ナイヤガラやコンコードを使った独自のワイン文化を築き上げてきた井筒ワイン。だが、井筒ワインの造り手たちには次第に、ワインの本場ヨーロッパのような本格的なワインを造りたいという思いが芽生えてきた。

造り手の夢を実現するため、井筒ワインは1962年に欧州系品種の栽培を開始。しかし、道のりは決して平坦なものではなかった。

「今でこそ地球温暖化で気温が上がってきていますが、かつての桔梗ヶ原は氷点下になるのが当たり前でした。そのため、桔梗ヶ原の気候でも育つ、耐寒性が高い欧州系品種を見極める必要があったのです。初期には多くの苦労があったと聞いています」と、塚原社長は振り返る。

厳寒地で欧州系品種を育てるためには、いくつもの品種を試験栽培して土地に適応可能なものを見つけ出さなければならない。気の遠くなるような試行錯誤の連続だった。

「当時はうちだけではなく、近隣のワイナリーも同様に試行錯誤していましたね。それぞれのワイナリーの企業努力で、栽培に適した品種を見極めてきたのです。弱い品種は淘汰されて、気候に適応したものだけが今に残っています」。

地域のワイナリーや栽培家のたゆまぬ努力が実り、桔梗ヶ原は今や日本を代表するメルローの産地となった。井筒ワインもまた、長い年月を費やした取り組みの中で、欧州系品種を用いた高品質なワインを生み出す現在のスタイルを確立してきたのだ。

『井筒ワインのぶどう栽培』

次に、井筒ワインのぶどう栽培について深堀りしていこう。伝統的な在来品種から欧州系品種まで幅広く手掛ける井筒ワインは、どのようなこだわりを持ってぶどう栽培をしているのだろうか。

井筒ワインの自社畑で栽培しているぶどうは、実に21品種にのぼる。ワイナリーの歴史を支えてきたナイヤガラとコンコード、欧州系品種ではシャルドネの植栽面積が最も多いという。ワインメーカーであり、栽培の指揮も執る野田さんにお話いただいた。

▶︎多様性ある自社畑

「ワイン専用品種としてメジャーなシャルドネですが、品種特性として繊細な側面があって栽培が難しいため、契約農家さんにはあまり人気がありませんね。収量を確保するために、自社栽培を増やしています」。

もちろん、塩尻を代表するメルローも主要品種のひとつだ。その他にもケルナー、ソーヴィニヨン・ブラン、ブレンド用として重要な役割を担うセミヨンなどを栽培している。自社畑の品種構成は、長年にわたる挑戦の結果だ。

「ここ30年弱の間に、気候変動などの影響で栽培が難しくなって継続を断念した品種もたくさんあります。試験栽培の結果、病気に弱かったり、冬が越せなかったりした品種もありました」。

土地に適した品種を探求するための試行錯誤は今も続いており、常に気候に合うぶどうを追求している井筒ワイン。

「シャルドネやメルローのみだとワイナリーとしての訴求力が弱くなってしまうため、ソーヴィニヨン・ブランなど、個性を表現できる品種も加えています。ソーヴィニヨン・ブランは、近年特に手応えを感じている品種です」。

▶︎畑の個性を生かした栽培

井筒ワインは、塩尻市内に合計28haもの広大な自社畑を有している。畑は標高700mほどの桔梗ヶ原地区を中心に点在しており、近年新たに標高800mの地区も開墾した。井筒ワインの強みは、エリアごとに個性がある土壌の特徴を生かした栽培管理だ。

「桔梗ヶ原の畑は粘土質土壌ですが、岩垂原(いわだれはら)という地区の畑は扇状地特有の土壌です。土の個性がそれぞれ異なるため、エリアごとに棚栽培と垣根栽培を使い分けて管理しています」。

桔梗ヶ原で伝統的におこなわれてきた棚栽培の畑がある一方で、新しく植えた欧州系品種には、省力化のために垣根栽培を採用しているそうだ。

「土質や栽培方法など、様々な組み合わせで育ったぶどうがワインになったときに、豊かな個性が生まれます。多様性あるぶどうを栽培していることが、私たちの強みのひとつですね」。

塩尻の微細なテロワールの違いが生みだすぶどうが、ワインの味わいに深みを与え、ラインナップを豊かに彩っているのだ。

▶︎ぶどう栽培におけるこだわり

ぶどう栽培におけるこだわりについても見ていこう。井筒ワインでは、品質と効率の両立を目指した栽培管理をおこなう。

品質面でのこだわりのひとつに剪定方法がある。垣根栽培では「ダブル・ギヨー仕立て」を採用。「ギヨー仕立て」には高度な剪定技術が要求され、省力化の面ではマイナスになるため難しい面もあるが、品質面を優先して選択しているのだ。

一方、広大な畑を管理するためには「省力化」も重要なテーマになる。井筒ワインでは、垣根栽培の比率を高めることで、効率よい栽培管理を可能にしている。

「棚栽培は、除草や防除のために機械を使うのが難しい栽培方式です。特に夏場の栽培管理には多くの人手が必要になるため、作業を機械化できるかどうかはとても重要です。その点、垣根栽培はトラクターなどを畑に入れて作業ができるため、省力化が可能なのです」。

面積あたりの収量は棚栽培の方が多い場合もあるが、垣根栽培の方が圧倒的に省力化ができるため、より必要な作業に注力できるのだという。また、病害への対策も垣根栽培の方が管理しやすいと野田さんは話す。

広大な畑を管理するのは、約20名のスタッフだ。目指すワインを造るための健全なぶどう栽培には、チームワークが欠かせない。

「繁忙期には、栽培スタッフだけでなく製造スタッフも全員畑に出て、力を合わせて管理をしています」。

標高が高い地域は日差しが強く、夏には30℃を超えることも多く過酷だ。高地の直射日光は作業者を苦しめる。野田さんは常に、できる限り日陰を選んで作業することや、体を一番に考えることを徹底してほしいとチームに呼びかけているという。

▶︎気候変動との向き合い方

ぶどうの生育においては成熟期の寒暖差が重要だが、近年の気候変動は桔梗ヶ原も例外ではなく、ぶどう栽培に大きな影響が出ている。

「夏場でも、夜温が20℃程度に下がるのが理想です。植物は夜間には光合成をしないため、できる限り気温が下がる方がよいのです」。

しかし近年、成熟期になっても夜温が下がらない年が増えているという。例えば2024年は、9月の最低気温が例年より4℃も高く、ぶどう栽培が非常に難しい年だった。さらに、温暖化は作業スケジュールにも影響を及ぼす。

「2015年以降、芽吹きの時期が目に見えて早くなってきました。発芽時期が早まると、その後の全ての作業が前倒しになり、もちろん収穫も早まります。結果として、夜温が十分に下がる秋より前に成熟期を迎えることになってしまうのです」。

気温の上昇に対応することは、ぶどう栽培にとって大きな課題だ。井筒ワインは、変わりゆく気候に対応しながら、これからも試行錯誤を続けていく。

『井筒ワインのワイン醸造』

続いては、井筒ワインのワイン醸造について見ていこう。さまざまな品種のぶどうから、どのようなワインを生み出しているのだろうか。

ワイン造りにおける哲学やこだわりについて、引き続きワインメーカーの野田さんにお話いただいた。見えてきたのは、「情熱」だけにとどまらない、極めて科学的で緻密なアプローチだ。

▶︎品種由来の味をストレートに表現する

井筒ワインのワインは、単一品種で仕込んだ「モノセパージュ」でのリリースが多い。そのため、醸造において最も重きを置いているのは「品種の持ち味をいかに引き出すか」という点だ。

例えばシャルドネであれば、「ストレートなシャルドネらしさ」を出すことを目指す。シャルドネはいわゆる「ニュートラル品種」の代表格だからこそ、「味わいの核」をしっかりと守るように醸造しているという。

「ストレートな表現」を実現するためには、栽培の段階から緻密な管理が必要となる。そのため井筒ワインでは、品種ごとに防除の方法を変えているのだ。品種ごとに使用する薬剤や防除のタイミングを、栽培チームに細かく依頼する。

細分化した管理は、なぜ必要なのだろうか。その理由は、各品種の持ち味を消さないため、そして「出てほしくない香りのニュアンス」を出さないためだという。野田さんの説明は、極めて科学的だ。

「例えば、ボルドー液が持つ『銅イオン』の成分は、ソーヴィニヨン・ブランが持つ柑橘系の香りの質を変えてしまうことがあります。品種特有の香り成分によって出る反応はそれぞれ異なるため、品種ごとに個別の管理が必要なのです」。

ソーヴィニヨン・ブランとブレンドするセミヨンにも、同様の配慮がおこなわれているそうだ。一方、シャルドネの場合はアプローチが全く異なる。

「シャルドネには、草のような香りなどを出さないための管理が必要です。ボルドー液の使用が有効ですよ」。

香り成分はぶどうの成熟度合いによっても刻々と変化するものだ。意図しない香りが出ることもあるため、使用する薬剤やブレンドする時の組み合わせ、成熟度など全ての要素を総合的に見て綿密に管理しているのだ。

「一定以上の品質を目指したいなら、情熱だけでは優れたワインは造れません。科学的な視点が必要不可欠ですね」。

井筒ワインの品質を支えているのは、熱い情熱と冷静で科学的な視点に基づいた徹底的な管理体制なのだ。

▶︎規模・品質を両立するために

井筒ワインについて語る時、特筆すべき点のひとつとして挙げられるのが、生産規模の大きさである。シーズンごとに仕込むぶどうは約800tにものぼり、年間約80万本のワインを生産。この規模で高品質なワインを造り続けるためには、スピードと効率が不可欠だ。ただし、「こだわりすぎ」へのブレーキは必要だという。

「例えば、こだわって細かくタンクを分けて醸造すると、作業そのものが回らなくなったり、ワイナリー全体として見た時の完成度が損なわれてしまったりする可能性があります」。

重要なのは、最終的な商品のイメージを明確にすることだ。ゴールまでの道筋を的確に組み立てれば、不要な行程を踏まず、効率的に品質の高いワインを造り上げることができる。具体的な取り組みとしては、マスカット・ベーリーAの仕込みの場合、27tを一度に仕込める大型タンクを活用しているそうだ。

井筒ワインでは、モノセパージュが12種類、その他にも多彩なブレンドワインがあり、幅広い商品ラインナップを誇る。それぞれのゴールに向かって適切な醸造をおこない、確かな技術と判断力で規模と品質を両立させることが、井筒ワインのワイン造りを支えているのだ。

▶︎企業努力の結晶「井筒ワイン セミヨン/ソーヴィニヨン・ブラン」

販売中の銘柄から、おすすめをいくつかを紹介しよう。まずは、2023年にファースト・ヴィンテージをリリースした「井筒ワイン セミヨン/ソーヴィニヨン・ブラン」。ボルドースタイルの白ワインで、セミヨンにソーヴィニヨン・ブランをブレンドした1本だ。

「井筒ワイン セミヨン/ソーヴィニヨン・ブラン」の最大の魅力は、コストパフォーマンスのよさだ。2024年ヴィンテージの販売価格はなんと1,740円。高品質な日本ワインでありながら、手に取りやすい価格を実現できているのは、ひとえに企業努力の賜物だ。野田さんは、この価格を実現できた背景を次のように語る。

「このワインのためだけに専用の畑を用意して、畑造りの段階から省力化・低価格化を実現するために考え抜きました。トラクターがぎりぎり通れる1.8mに垣根の幅を設定して、単位面積当たりの収量をしっかりと確保するよう目標を設定したのです」。

「新商品の主役にセミヨンを選んだのは、自社畑でこれまでセミヨンを垣根栽培した実績がなかったため、挑戦してみようと考えたからです。セミヨンは欧州系品種の中では房が大きく、十分な収量が確保できる品種のため、手頃な価格のワインに向いていると確信していました」。

消費者ファーストの考えに基づいた製品は、日本の家庭の食卓にワインがあることをより当たり前にしてくれる存在となるだろう。

「井筒ワイン セミヨン/ソーヴィニヨン・ブラン」は、ソーヴィニヨン・ブラン特有の柑橘の香りが豊かに立ち上がり、一般的なボルドーブレンドのワインとは一味違った爽やかさを持つ。

「一般的にセミヨンの味や質感はやや重めのイメージなのですが、塩尻のセミヨンは酸がシャープに出る傾向があります。そのため、ソーヴィニヨン・ブランの爽やかさを邪魔しない存在になりました。『塩尻らしさ』が強く感じられるワインですよ」。

「井筒ワイン セミヨン/ソーヴィニヨン・ブラン」とおすすめのペアリングは、「信州サーモンのカルパッチョ」。ポン酢とオリーブオイルを合わせたソースをかければ、ワインとソースの柑橘ニュアンスが優しく溶け合うだろう。

▶︎桔梗ヶ原の誇り「井筒ワイン メルロー[樽熟]」

井筒ワインを語る上で欠かせない銘柄が、「井筒ワイン メルロー[樽熟]」だ。桔梗ヶ原を代表する品種、メルロー100%の赤ワインである。「井筒ワイン メルロー[樽熟]」には、井筒ワインの強みである「多様なテロワール」が存分に生かされている。

「塩尻市内の自社畑や契約農家さんのメルローのうち、よい畑・よい生産者のぶどうだけを使ったワインです」。

桔梗ヶ原、奈良井川、岩垂原といったエリアごとにタンクを分けて仕込み、それぞれ18か月間の樽熟成をおこなった。土壌が違えば、同じメルローでもぶどうの個性は全く異なる。そのため、各エリアに合った繊細な調整を施しているそうだ。その後、ヴィンテージによる味わいの違いなどを考慮してブレンドした。

「例えば、岩垂原など礫質土壌のメルローは、果皮や種子を果汁に漬け込む工程である『マセレーション』の期間を短くすることで、香りに強い個性を付与しています。一方、粘土質土壌の桔梗ヶ原のぶどうはマセレーションを長めにすることで、種子からのタンニンもしっかりと抽出させ、引き締まったイメージを表現しました」。

今後は、自社管理する岩垂原地区のメルローの収量がさらに増えていくことを想定しているため、品種個性の追求がいっそう進みそうだ。「どのようなブレンドにしていくか、造り手としても今から楽しみです」と、野田さんは期待を込める。

「井筒ワイン メルロー[樽熟]」とのペアリングでおすすめなのは「牛すね肉の煮込み料理」。ポイントは、煮込みのソースに信州味噌を入れることだという。信州の風土を最大限に楽しめる組み合わせだ。

桔梗ヶ原のメルローをはじめとする日本ワインは、溶け合うような滑らかさと、さらりとした質感を持つため、和食全般に合わせやすい。さらに、「井筒ワイン メルロー[樽熟]」は樽熟成させているため、燻製などのスモーキーな料理にもしっくりと馴染む。幅広い料理との組み合わせを楽しめる「井筒ワイン メルロー[樽熟]」を、さまざまなシーンで楽しみたい。

『歴史を守り変革を目指す 井筒ワインのこれから』

最後に、井筒ワインの今後にフォーカスしたい。

創業90年を超える老舗ワイナリーはこれから先、何を目指して進んでいくのだろうか。今後のビジョンについて、それぞれの視点からお話いただいた。

▶︎井筒ワインとしての変わらぬ哲学

塚原社長が語るのは、井筒ワインとしての変わらぬ哲学だ。

「奇をてらうことや新しいことも、もちろん大切です。しかし最も重視すべきは、これまでつちかってきた『井筒ワインらしさ』を失わないことだと考えています」。

井筒ワインがずっと大切にしてきたのは、「ワインそのものの質」である。これからも実直に品質を求め、ぶどうの個性をまっすぐと伝えていきたいと塚原社長は言う。

「もちろん、『土地に根ざしたぶどう栽培』も不可欠ですね。自然環境や気候が変わる中でも、桔梗ヶ原ならではのぶどう栽培とワイン造りを続けていきたいと考えています」。

伝統を守りながらも変化に適応し、桔梗ヶ原という土地に根ざし続けることこそが、井筒ワインの未来を切り拓く力となるのだ。

▶︎「井筒ワインらしさ」を変革する

営業部の小田さんは、市場における井筒ワインのイメージについて次のように話す。

「井筒ワインは過去に『無添加ワイン』を市場に送り出し、『生ワイン』の大ヒットを作りました。県外のイベントに出ると、『井筒ワインといえば無添加だよね』と言われることが今も多く、『無添加ワイン』の知名度の高さと確固たるイメージが市場に定着していることを実感しています」。

だが、現時点で井筒ワインの造り手たちが力を入れているのは、欧州系のメルローやセミヨン、ソーヴィニヨン・ブランなどを使ったワインだ。「日本ワインコンクール2025」では、「井筒ワイン マスカット・ベリーA 2024」「井筒ワイン ソーヴィニヨンブラン2024」が金賞を受賞した。

「欧州系品種を使ったワインも高く評価いただいていますので、今後さらに伸ばしていきたいと考えています。『無添加ワイン』の知名度に負けないくらい、皆さんに知っていただきたいですね」。

小田さんは販売の面からこの課題にアプローチし、『井筒ワインらしさ』の変革をさらに推し進めていきたい考えだ。

▶︎「竜眼」の可能性を追求

ワインメーカーの野田さんは、より具体的にワイン醸造における目標を語ってくれた。

「まず、2,000円前後の中価格帯商品をしっかりと伸ばしていきたいですね。特に、生産数が多いメルローとシャルドネを、お客様にもっと選ばれるものにしていきたいと考えています」。

一方、高価格帯の銘柄では、さらなるこだわりを追求する。野田さんが注目しているのは、長野の伝統品種である「竜眼(りゅうがん)」だ。

「竜眼を『OIV(国際ブドウ・ワイン機構)』に品種登録にする動きが進行しています。契約農家さんが20t、自社で7〜8t程度栽培している品種のため、井筒ワインでも竜眼の可能性をさらに探っていきたいですね」。

老舗としての安定感と尽きない探究心を抱き、井筒ワインの挑戦はこれからも続いていく。

『まとめ』

90年以上の歴史を持つ老舗でありながら、歩みを止めることなく、常に未来を見据えてぶどう栽培とワイン造りに向き合う井筒ワイン。ワイン造りをおこなう中で、常に根底にあるのは、桔梗ヶ原という土地への深い敬意と、ワインの品質へのどこまでも実直な探求心だ。

人気の「無添加ワイン」から、緻密な理論に裏打ちされた欧州系品種のワインまで、多彩なラインナップは井筒ワインが挑んできた歴史そのものだ。

「料理と組み合わせて自由に楽しんでいただくだけでなく、ぜひワインそのものの味わいもじっくりと感じてみてください。ワイン単体で楽しんでいただけることは、我々としては非常に嬉しいですね」と、塚原社長。

桔梗ヶ原のワインを造り続ける醸造メーカーとして、土地に根ざしたワインの質と価値を追求してきた井筒ワインの、オリジナリティと価値を追求する取り組みに興味を持ったなら、ぜひ信州まで足を伸ばして欲しい。日本の銘醸地が生み出す美味しさは、やはり現地で味わうのがいちばんだ。

基本情報

名称井筒ワイン
所在地〒399-6461
長野県塩尻市宗賀桔梗ヶ原1298-187
HPhttp://www.izutsuwine.co.jp/
アクセスhttp://www.izutsuwine.co.jp/company/accessmap.html

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