日本のワイナリーの皆さまへ:“SAKURA” Japan Women’s Wine Awards(略称:サクラアワード)審査責任者 田辺由美氏

皆様、こんにちは!今回は、 “SAKURA” Japan Women’s Wine Awards (略称:サクラアワード)を主宰する田辺由美氏をお迎えし、日本のワイナリーの皆様へのメッセージをお届けします。

2025年 第12回となるサクラアワードは、過去最多となる世界36カ国からエントリーがあり、日本ワインのエントリー数も過去最多の479アイテムを記録。さらに、特に優れたワインに贈られる「ダイヤモンドトロフィー」を、4アイテムの日本ワインが受賞しました。

サクラアワードを通して感じる「日本ワインの現状」と「日本ワインならではの強み」、田辺氏が抱く日本ワインへの「想い」についてお話しいただきました。ぜひ最後までお読みください!

『田辺由美氏プロフィール』

北海道池田町生まれ。父は「十勝ワイン」の発案者、元池田町町長・元参議院議員の丸谷金保氏。
1986年 ワインアンドワインカルチャー株式会社設立
1992年「田辺由美のWINE SCHOOL」創立
2009年 フランス政府より「フランス農事功労賞シュヴァリエ勲章」授与
2014年 “SAKURA” Japan Women’s Wine Awards (略称:サクラアワード)主宰
2015年 一般社団法人日本ソムリエ協会より「名誉ソムリエ」叙任
2025年 フランス政府より「フランス農事功労章オフィシエ勲章」授与

  • 長野県原産地呼称管理委員会 ワイン官能審査委員
  • 北海道道庁主催「北海道ワインアカデミー」名誉校長
  • 十勝総合振興局「ワインアカデミー十勝」名誉校長
  • 北海道大学農学部大学院客員教授

世界のワイン産地を訪れ、執筆活動も精力的におこなう。主な著書に

『サクラアワードについて』

日本の女性ワイン専門家が審査する国際的なワインコンペティションとして2014年より始まり、現在ではアジア最大級、アジアで最も価値あるコンペティションと評価される。「家庭料理に合うワインを探す」「ワインの消費拡大」「ワイン業界で働く女性の活躍を促す」ことを目標に掲げ、日本ワイン市場の活性化やワイン文化の発展を目指す。

2025年は過去最多となる世界36カ国からのエントリーがあり、毎年4000アイテム近いエントリー数を誇る。中でも日本ワインのエントリー数は今年過去最多となった。

ソムリエ、ワイン醸造家、ワイン講師、ワインジャーナリストなど、ワインに関する幅広い知識と経験を持つ専門家が審査をおこなう。ブラインド・テイスティングにより、品種や醸造方法ごとに評価され、100点満点で「ダブルゴールド」「ゴールド」「シルバー」が選ばれる。「ダブルゴールド」の中でも最も優れたワインには「ダイヤモンドトロフィー」が授与される。また、日本ワインの中から、世界のワインと質を競い合い受賞したアイテムに「”グランプリ” ジャパニーズワイン賞」が与えられる。

『サクラアワード開催までの経緯』

ワインスクールを運営し多くのソムリエを輩出、また世界のワイン産地を訪れ執筆活動をおこない、日本を代表するワインの専門家として精力的に活動を続ける田辺由美さん。スクール運営を始めて数十年が経った頃、「これまでお世話になったワイン業界への恩返しがしたい」という思いを次第に抱くようになった。

日本のワイン業界の現状と未来について考え抜いた末に取り組むことにしたのが、ワインコンペティション「“SAKURA” Japan Women’s Wine Awards(以下サクラアワード)」の開催である。

2025年に第12回目の開催を迎えたサクラアワードが生まれた背景と、スタートまでの詳しい経緯について、田辺さんから詳しく伺った。

▶︎日本のワイン消費を伸ばしたい

第1回サクラアワードの開催は2014年だが、構想自体はそれよりもずっと以前から田辺さんがあたためていたものだった。

「日本におけるワイン消費を向上させたいと考えるうちに、サクラアワードの構想が自然と固まってきました。ワイン業界に長年携わってきた中で課題に感じていたことを解決に導こうというのが、そもそもの発端でしたね」。

長年、日本においてワインは「特別なお酒」という立ち位置だった。レストランやパーティーの場など「非日常の場面」のみで楽しむ存在で、日常生活にはなかなか浸透しない。そこで、国内のワイン消費を伸ばすために効果がある施策について模索したのだ。

▶︎ワイン業界で女性が活躍するために

また、ワイン業界で働く女性の地位を向上させたいという考えも持っていた田辺さん。

「レストランやホテル、流通、輸入会社など、ワインに関わる業界では実に多くの女性が働いています。しかし、当時、女性はアシスタント的な役割がほとんどでした。例えば、レストランでチーフソムリエを担当するのは男性で、女性はアシスタントとしてサーブを担当するといった具合です。レストランで提供するワインを決定する立場の女性は、ほとんどいませんでしたね」。

ワイン業界における男性優位の傾向は、実は日本だけのものではない。実際、現在でも海外のワインコンペティションの審査員は、男性が多数を占める。

しかし、ワインの購入者には女性が多いのも事実である。女性ならではの視点で見た「すぐれたワイン」が市場に出回れば、ワインの消費量はもっと底上げできるのではないか。

「『女性目線のワイン』を選ぶことは、ますます重要になってきました。法改正によって酒販免許の範囲が拡大され、2012年には年間販売数量の緩和も行われ、以前は酒販店にしか置けなかったワインをスーパーなどでも販売できるようになったからです。スーパーの買い物客の80%は女性です。また、日本の家庭料理を日常的に作り、味わう女性たちの視点は、“食卓に合うワイン”を見極める上でとても重要だと思うのです」。

▶︎女性から見た「日本の日常に寄り添うワイン」

「日本におけるワイン消費の拡大」「ワイン業界の女性が活躍できる機会の創出」というふたつの課題を解決するべく検討を重ねた末に田辺さんが行き着いたのが、「女性によるワインの審査会」だった。

「世界にはさまざまなワインのコンペティションがある中で、後発の日本が新しいコンペティションを作り、さらに世界中の生産者に認めてもらうには、独自の視点や軸となる構想が必要だと考えました」。

サクラアワード開催までの道のりは苦労の連続だったが、周囲の声は温かかったという。業界の男性たちも積極的に応援してくれた。「面白いことになるのではないか」と期待する人たちからの多くの賛同が、田辺さんの背中を押したという。

田辺さんのアイデアと熱意、行動力、さらにワイン業界の人たちの力強いサポートによって生まれた「女性が選ぶワインコンペティション」は、日本人にとって親しみ深い「桜」と、日本女性のイメージから「サクラアワード」と名付けられた。

▶︎海外生産者に伝えていること

サクラアワードは、世界中のワインを対象にしたコンペティションだ。田辺さんは、海外のワイン生産者にサクラアワードを説明する際に、次の点を強調している。

「女性目線でワインを審査する点と、日本の様々な料理に合わせて楽しめることが重要になる点をしっかりと説明しています。また、日本にワイン文化を広めるためには、『家庭料理を知っている日本人がワインを選ぶ必要がある』と理解してもらうことにも努めています」。

海外の生産者の多くは、「自分たちのワインは日本の食事に合うのだろうか」と気にしている。だが、海外の生産者が想像できる「日本食」は、寿司や天ぷらといったステレオタイプなメニューのみで、「日本の家庭料理」を想像することは難しい。

「『日本人は普段何を食べているのか』『どんなワインを日本に紹介すればよいのか』『自分たちのワインは日本で受け入れられるのか』など、海外の生産者から質問をいただくことが多かったですね。そのため、サクラアワードの開催は、日本のワイン市場にとって意味のある存在になると確信していました」。

今では、サクラアワードの受賞ワインを見れば「日本の料理と文化に合うワインのスタイル」が一目瞭然。サクラアワードは、海外の生産者が日本のワインマーケットを理解する上で貴重な情報をキャッチできる場でもあるのだ。

『2025年 第12回サクラアワード開催』

2025年2月、第12回サクラアワードの受賞結果が発表された。参加国数は36か国で、2024年の28か国から大幅に増加。また総アイテム数はなんと3,962点にのぼる。

エントリー国数が増えたことで、ワインの多様性も広がった。特に目を引いたのが、「スロバキア」「アゼルバイジャン」「チェコ」「ウクライナ」など、東欧や中央アジアからのエントリー数が増えたことだ。

「世界中の幅広いワイン生産地域にサクラアワードが知られるようになってきた、何よりの証だと思っています。嬉しいですね」と、田辺さんは笑顔を見せる。

世界のワインの傾向や今後の展望について、サクラアワードのエントリー、入賞の状況から読み取っていこう。

▶︎多様化するワインの選び方

最近のエントリーワインや受賞ワインの特徴から、田辺さんが感じている傾向がふたつある。ひとつは、「品種ありき」のワイン造り・ワイン選びから脱却しつつあるということだ。

「かつては、シャルドネやピノ・ノワールなど、いわゆる『国際品種』だけを消費者も輸入業者も追いかけていました。しかし、今は有名な品種だけにこだわらず、美味しいかどうかという判断でワインを選ぶ方に潮流が変化しています」。

もうひとつの傾向は、エレガントなワインが主流になりつつあることだ。過去を振り返ると、タニックなボルドースタイルが好まれたり、カリフォルニアやオーストラリアに代表されるようなアタックの強いワインがもてはやされたりした時代が長かった。しかし現在、「強いワイン」よりも「繊細でエレガント」なワインが好まれるようになってきた。「ゆっくりと食事に合わせて楽しめるワイン」を造る生産者が増えてきていることも関係しているのではと、田辺さんは分析する。

「ワインは料理とともに楽しむお酒です。世界的に『軽い味付けの料理』が好まれるようになっていて、レストランでも、塩分が控え目でヘルシーかつエレガントなスタイルの料理が増えています。それにあわせてワインの傾向が変わってきたのかもしれません」。
つくる側も飲む側も「品種の先入観」を取り払い、ワインそのものの繊細な味わいや料理との組み合わせを楽しむ方向へとシフトしつつあるのだ。

▶︎「低アルコール」「ノンアルコール」需要の増加

世界的な需要の高まりを受けて、サクラアワードでは2025年から「ノンアルコール」「低アルコール」カテゴリを新設した。

「ワイン大国フランスにおいても、近年ワインの消費量が減少しています。それは『量から質へ』という世界的な方向転換の表れだと認識しています。反面、低アルコールワインやノンアルコールワインの市場は拡大しています。こういった市場背景を踏まえ、新カテゴリとして試験的に導入しましたが、生産者からの反応も非常に大きく、思った以上にエントリーが集まりました」。

結果として、低アルコール部門には45アイテム、ノンアルコール部門に51アイテムの応募があったという。また、ノンアルコールワインで「ダイヤモンドトロフィー」を、低アルコールワインでは「ダブルゴールド」を受賞したアイテムがあり、質の高い低アルコールワインやノンアルコールワインが生まれていることがわかる。

「サクラアワードは、売り手と飲み手、両者のニーズに合ったコンペティションであることを、これからも大切にしていきます。新たなカテゴリが受け入れられるようであれば、来年以降も継続していきたいですね」。

▶︎受賞ワインを消費者の手元に届けることが使命

サクラアワードは、「ワインに賞を与える」だけのものではない。賞を渡すこと以上に「受賞したワインをどのようにして消費者の手元に届けるか」という点を重視しているのだ。

「我々はこれまで、受賞したワインを世の中に広めて、より多くの消費者に手に取ってもらうことへ力を注いできました。その甲斐あって、サクラアワードの受賞ワインを飲んだ方々からは『美味しいうえに、日本人の味覚や食卓によく合うワインを選んでくれる』という声が上がっているようです」。

受賞ワインのリピート購入率が高いことは、流通業界からも好評だ。サクラアワードが受賞ワインを消費者のもとに届け続けるためには、造り手だけでなく、流通業界や小売業界の方々の協力も不可欠である。

「日本人女性が選んだ美味しいワインとして、サクラアワードの受賞ワインが消費者の目に留まりやすいように店頭でアピールしていただけることに、非常に感謝しています」。

『サクラアワードから見る「日本ワイン」』

サクラアワードのスタート時には、日本ワインのエントリーは多くなかった。だが、2025年のサクラアワードにおける日本ワインのエントリーは、過去最多となる479アイテム。国別にして第3位のエントリー数だった。

エントリー数が増えただけでなく、品質の目覚ましい向上にも着目したい。今や日本は、ワイン生産国のひとつとして世界の銘醸地と同列に語られる存在になってきた。

サクラアワードを通して感じている「日本ワインの現状」と「日本ワインならではの強み」、田辺さんが抱く日本ワインへの「想い」をお話しいただいた。

▶︎日本ワインの素晴らしさとは

「日本ワイン業界が盛り上がっているのは、非常に嬉しいことですね。『ダブルゴールド」の中でも特に優れたワインに贈られる『ダイヤモンドトロフィー』。2025年のサクラアワードで、4アイテムの日本ワインが初めてこの栄誉を受けたのです」と笑顔を見せる田辺さん。

サクラアワードの審査員は、ブラインド・テイスティングでワインの点数を評価する。審査員に伝えられるのは、「品種」「ヴィンテージ」「アルコール度数」「残糖度」「製法」のみ。「国」「価格」は知らされずに審査している。

あらゆる国のワインの中からブラインド・テイスティングで日本ワインが選ばれたということは、日本ワインの味わいが評価されたということに他ならない。

「ワインの品質を平等に審査することが、サクラアワードのモットーです。国や地域が持つ先入観は評価に影響を及ぼす可能性があるので、審査員に開示していません。日本ワインの品質は、直近の10年ほどで目覚ましく向上しています。日本を代表する品種である甲州とマスカット・ベーリーAのワインが『ダイヤモンド・トロフィー』の中に入っていたことにも、大きな拍手を送りたいですね」。

2025年日本ワイン“グランプリ”は、以下が受賞した。

Diamond Trophy
株式会社エーデルワイン (岩手県)
ゼーレオオハサマ リースリング・リオン 冷凍果汁仕込 2023

Diamond Trophy
南三陸ワイナリー (宮城県)
デラウェア・オレンジ 2024

Diamond Trophy
まるき葡萄酒株式会社 (山梨県)
ラフィーユトレゾア 樽南野呂ベーリーA2022

Diamond Trophy
まるき葡萄酒株式会社 (山梨県)
いろ甲州2024

日本ワインのレベルが上がったことは、ワインに対して真剣に向き合う生産者が増えている証拠だ。技術力の向上や、海外での醸造経験を積む生産者が増えたことなどが理由ではないかと田辺さんは言う。国内だけではなく海外に目を向けて経験を積むことが、素晴らしいワインを造ることに役立っているのだ。

日本ワインのレベルが上がったもうひとつの理由として、「確固たるワイン哲学」を持つ生産者が増えたことも挙げられる。自らが目指すワインの風味だけでなく、ワイン造りにおけるこだわりや目標に基づいて醸造をおこなう生産者が活躍している。

「自分の土地のテロワールを考え、土壌や気候にあった品種を研究してぶどうを育てるワイン生産者さんが日本各地にいます。テロワールを生かした醸造を目指す姿勢が、これからの日本ワイン文化を作っていくのではないでしょうか」。

▶︎「ワインはこうあるべき」に囚われる必要はない

続いては、日本ワイン生産者の多くが抱える悩みである気候面での課題について、ワインに及ぼす影響や効果的な対策などについて尋ねてみた。

近年の温暖化や降雨量の増加により、生産者からは「糖度不足」「着色不良」「酸と糖のバランスをとるのが難しい」といった声が上がっている。

「『ワインはこうあるべき』という考えに囚われなくてもよい時代になったと思っています。例えば、糖分が低くアルコール度数が上がらない場合は、低アルコールのワインにするなど、柔軟に考えてもよいでしょう。今、低アルコールへのニーズも高まっていますから、『ワインはアルコール度数が12%以上なくては』といった既成概念も、取り払ってよい時代に入っているともいえるでしょう。ぶどうが持つ美味しさをそのままワインにするという発想でワインを生み出していくことが大事なのかもしれません」。

消費者は、低アルコールワインやビオワインなど、今までにない自由なスタイルのワインを受け入れつつある。つまり、日本のワイン生産者も、よりぶどうに素直なワイン造りをしてよいということだ。

「ぶどうが持っている価値やキャラクターを重視したワイン造りを極めていってほしいと思います。私自身も、飲むワインの幅が以前よりも広がってきているのを実感しています。飲み手であるワイン愛好者が広い視野でワインを語る事が、日本ワインのより自由な発想を応援することにもつながるのだと信じています」。

ワインを生産・販売するプロが惜しみなく情報を提供することで、ワイン愛好家の評価や意識も変化するはずだ。お互いのよい部分を取り入れ、日本ワインを盛り上げていきたい。

『ワインと料理のペアリングの大切さ』

最後のテーマは、料理とワインのペアリングについて。田辺さんは「ワインを飲む人にとって最も大切なのは料理と合わせることだ」と言う。ワイン愛好家にとって重視すべきポイントがペアリングなのであれば、生産者にとっても「ペアリング」は避けて通れないテーマになるはずだ。

ペアリングを探す際のポイントなどについて、詳しく伺ったので紹介しよう。

▶︎ワインと料理は切り離せない存在

ワインを料理と共に楽しむ消費者に向けて、生産者から積極的にペアリングの提案ができれば、日本におけるワイン文化はもっと身近なものになることだろう。ペアリングの見つけ方についてアドバイスいただいた。

「とにかく、さまざまな組み合わせを試すことに尽きます。ペアリングにセオリーはありますが、何よりも大切なのは、色々なメニューと合わせて試してみることです。相性を試す時には、料理とワインを同時に口に含んでみてください。料理を食べてワインを飲み、また料理を食べるのが一般的なワインの楽しみ方ですが、相性の良し悪しを判断する場合、同時に口に含むのが一番わかりやすいのです」。

相性がよくない組み合わせの場合、同時に口に含むことで、ワインの味に望まない風味や違和感が出ることがよくわかる。実際に味わって合うかどうかを判断するという経験を繰り返すことで、自分の中で『鉄板の組み合わせ』が自然に生まれるのだ。

▶︎マスカット・ベーリーAのペアリング

マスカット・ベーリーAは、幅広い料理に合わせられるのが魅力だと話す田辺さん。柔らかいタンニンときれいな酸があるため、和食全般に合うのはもちろん、トマトベースのイタリアンにもよく合う。明太子バターのパスタとの組み合わせも、田辺さんのお気に入りのペアリングのひとつだ。

近年のマスカット・ベーリーAの品質を高く評価している田辺さん。以前よく言われたような「キャンディ香」がするワインではなく、より上質で美味しいワインが誕生するようになったためだ。今やマスカット・ベーリーAは深い味わいを楽しめる品種としての存在感を増してきている。

「マスカット・ベーリーAは本当に色々な料理に合うので、皆さんもぜひ、ペアリングを試して見つけてみてください。ペアリングのバリエーションが増えれば、マスカット・ベーリーAのよさをより多くの消費者に伝えられると思いますよ」。

『まとめ』

サクラアワードの受賞結果から感じ取れるのは、日本ワインの品質の劇的な進化だ。日本のワイナリーは「生産者のワイン哲学を世界に知ってもらう」という、次なるステップに進むべき段階にあるのかもしれない。日本のワイナリーに向けて、田辺さんが呼びかけるのは、「マーケティングの大切さ」だ。

「栽培や醸造の作業が忙しくてなかなか手が回らないかもしれませんが、ぜひWebサイトやSNSを活用して、ワインのテクニカルシートと共にペアリングの提案を発信していただきたいです」。

ワインを飲む人は造り手のフィロソフィーやストーリーを知りたがっている。ワイナリーを訪ねたくても、遠方で行けない人も多い。自身のワインの価値を広く伝えるために、写真や文章、動画などを使って、手がけたワインの価値を高める方法を意識していきたい。

日本人は自分の考えを広く発信するなどおこがましい、恥ずかしいと考えがちだが、マーケティングにおいても「こだわりのワインを見合った価格で売るための戦略が必要だ」という田辺さんの言葉は、美味しいワインを造った先にある「伝えることの大切さ」を教えてくれる。最後に、読者へ向けた一言をいただいた。

「ワインには、『人と人をつなげる力』があります。サクラアワードを通じ、日本のワイン文化がもっと豊かに、もっと多様に育っていくことを心から願っています」。


2026年サクラアワードエントリーパンフレットはこちらから。


「Terroir.media」は、これからも日本ワインの普及を目指して、日本全国のワイナリーの紹介記事を掲載して発信していきます。
今後の記事もどうぞお楽しみに!

関連記事

  1. 【ついに公開!】Terroir.media 1周年記念特別対談動画 第1弾!

  2. 最もリアクション(Instagram)のあった記事のベスト10ワイナリー

  3. 【続報!】Terroir.medeia 1周年記念 特別対談

  4. 【発表!】Terroir.media 1周年特別記念企画!! ワイナリー対談

  5. ワイン造りを技術・環境面で支え、コンサルティングで日本ワインの質を底上げする『MOTHER VINES(マザーバインズ)』

  6. 【発表!】Terroir.media 1周年特別記念企画!