今回は、北海道を拠点にワイン総合コンサルタントとして活動する「F PLANNING LAB合同会社」代表の高橋克幸さんにインタビューした内容をお届けします。
高橋さんのもとに寄せられる、ワイナリーからのお悩みと解決の糸口とは?高橋さんが手がける「富良野ワインツーリズム」にリピーターの方が多く参加する秘密とは?ぜひ、最後までお読みください。
目次
- 高橋さんの現在の活動内容について
- コンサル業で大切にしていること
- 高橋さんのもとに寄せられるワイナリーからのお悩みトップ2
1.ぶどうの収量が上がらない
2.ワインが売れない - リピーターに選ばれる!富良野ワインツーリズムの秘密
- JR旭川駅の立ち飲みイベントが大盛況!〜ASAHIKAWA Tastation〜
- 「何が正しい情報か」自分で答えを見つけることが大切
高橋さんの現在の活動内容について
2000年から2024年まで「富良野市ぶどう果樹研究所(ふらのワイン)」にて栽培・醸造・販売を手がけていました。
2024年に富良野市を退職後「F PLANNING LAB合同会社」を立ち上げ、北海道を拠点にワイン総合コンサルタントとして活動しています。日本土壌協会認定 土づくりマスター、日本ソムリエ協会認定 シニアソムリエなどの保有資格を生かし、栽培・醸造・販売・プロデュース・テイスティングと幅広くアドバイスをしています。
ふらのバスが主催する、富良野エリアのワイナリーをバスで巡るワインツーリズムでは、私がバスガイド役を務め、リピーターの参加者にも新たな学びや驚きを提供できるよう工夫しています。北海道ワインアカデミーや塩尻ワイン大学で講師をしたり、北海道産のワインを盛り上げるイベントの企画・運営にも携わっています。
コンサル業で大切にしていること
必ず相談者と一緒に作業します。一緒に畑に出て、一緒に樹を見ながらさまざまな話をしていると、解決のヒントが見つかることがあるんです。
人に相談したり頼ることってなかなか難しいですよね。私のところに相談にきてくれる方も、「どうしていいか分からない」と一人で思い悩んでいた方が多い印象です。
私もこれまでたくさんの方に支えられ、助けていただきました。現在は会社のHPやSNSもなく活動していますが、ありがたいことに口コミや昔からのご縁でお仕事をいただいています。基本的に一人で活動しているので、私が相談者のもとを訪問し、状況を把握し、問題解決に向けて一緒に考えて答えを導きます。
高橋さんのもとに寄せられるワイナリーからのお悩みトップ2
1.ぶどうの収量が上がらない
「肥料をやってるのになかなかぶどうが大きくならない」というお悩みをよくいただきます。しかしぶどうが大きくならない原因は、土の硬さや保水力、水や空気の通りやすさといった「土の物理的な状態」に起因して、ぶどうの根がうまく張れていないケースが多いのです。
土を柔らかくしたり、土の中に空気が通るようアドバイスすることで、劇的に変わる畑もあるんですよ。土の中に空気が通るようにするには、「サブソイラー」という、土を破砕する農作業機を使ったりします。畝と畝の間の土を20〜30センチほどの深さまでサブソイラーを使ってナイフで傷つけるように掘り起こしていくと、ぶどうの根に近いところに空気が入り、根が呼吸しやすくなって元気になることがあるんです。
土壌は「固相」「液相」「気相」という3つの相から成り立っており、これらのバランスが保たれていることが大切です。
固相:土壌の粒子など
液相:土壌中の水分
気相:土壌中の空気
サブソイラーを使った作業をするのにベストな時期は、春先の、根の活動がまだ活発でない時期がおすすめです。
2.ワインが売れない
小規模ワイナリーが全国的に増えて、今後ワイナリー同士が競合することは免れないでしょう。ワインを造る前にまず、自社ワインをどう販売するかを真剣に考えることが、規模に関わらずどのワイナリーにも必要です。
まずはさまざまな方法で自社のワインを知ってもらうこと。そしてワインを飲んでもらい、さらには造り手についても知ってもらうことが大切ではないでしょうか。ワインとは、造り手の人柄が液体に表れるお酒です。これまでの苦労やこだわり、ワインに込めた思いを知ることで、「この人が造るワインを飲んでみたい!」と人は感じるものです。造り手の中には、人前に出ることに苦手意識を持つ方もいますが、自分自身やワインの魅力を飲み手に伝えることも大切です。
さらには、今から10年後、20年後の畑の環境を見据えることも大切です。地球温暖化は止まらないので、それにあった品種を選ぶ必要があります。ここ数年、北海道だけをみても、有効積算温度は大幅に上昇し続けています。10〜20年後、この畑を取り巻く環境はどんな状況で、どういうワインが人々に求められるのか。この土地、この環境でぶどうを栽培するなら何の品種がいいだろう、どういうスタイルのワインにしたら飲み手は喜んでくれるだろう、ということを、膨らませて考えることが必要ではないでしょうか。

リピーターに選ばれる!富良野ワインツーリズム「富良野・美瑛ワインツアー」の秘密 〜2026年は8月23日から8月25日の日程で開催〜
富良野エリアにある4箇所のワイナリーをバスで巡る旅をふらのバスと企画・運営し、2026年で4回目になりました。移動のバスの中では私がバスガイドを担当し、富良野エリアの歴史や地質など、参加者の興味のアンテナを刺激できる内容をお伝えしています。
「富良野・美瑛ワインツアー」では毎年、「学びの時間」を設けています。2026年は旭川の家具メーカー「CondeHouse(カンディハウス)」で新たに製造を開始した「ワイン樽」の製造工程を見学しました。家具製造の技術を活かし、北海道産資材を用いた樽作り。「樽作りを見学したのは初めてです!」と、ツアー後のアンケートでも高評価をいただきました。
参加者には、ワインをはじめ、お酒全般に興味をお持ちの方が多くいらっしゃいます。とりわけ知的好奇心の高い方が多く、ありがたいことに毎年リピートしてくださる方がいらっしゃいます。今年は3組のご夫婦が2回目の参加、うち1組は3年連続で参加されました。
毎年参加してくださる方がいるので、同じ企画はできません!ふらのバスの担当者、ふらの観光協会の担当者と私の3人で、企画内容をとことん話し合います。
テーマは2つ。「きめ細やかなおもてなし」と「また参加したいと思ってもらう」こと。
今年は、新富良野プリンスホテルにて夕食と富良野エリアのワインのペアリングをお楽しみいただきましたが、今回初めて「中華料理のフルコース」と富良野エリアのワインとのペアリングを堪能いただきました。
当初は「中華料理がワインより勝ってしまうのではないか」と懸念したのですが、料理人と話し合いを重ねた結果、富良野の繊細なワインに合う中華料理を楽しんでいただけました。
参加者の中にはあまりお酒を召し上がらない方もいらっしゃいますが、ワインやお酒を楽しめない方も必ず楽しんでもらえる仕掛けを提供しています。
2026年の参加者には、20代の方やお一人で参加の方、旅行業を営んでいて我々のワインツーリズムを体験したいと遠方から参加された方もいらっしゃいました。
富良野ワインツーリズムは2027年も開催予定で、これから内容を検討します。

JR旭川駅の立ち飲みイベントが大盛況!〜ASAHIKAWA Tastation〜
2025年の秋に「OTARU Tastation(小樽テイステーション)」というお酒の立ち飲みイベントがJR小樽駅で開催されました。
「Tastation(テイステーション)」という造語には、「お酒の飲み比べ(Tasting)を通じて、駅(Station)でお気に入りの一杯を見つけませんか」という思いが込められていて、JR北海道が企画したイベントです。
良い企画だと思い、「旭川駅でこのイベントをやったらたくさんの人が集まるに違いない!」と思ったんです。そこで「旭川駅でも Tastationをやりましょう!」と持ち込み、2026年1月に実現したのが「ASAHIKAWA Tastation」です。
旭川駅の一角を借りて、旭川市や富良野市はじめ23の市町村からなる上川管内エリアのお酒とおつまみを提供しました。地元のお酒には地元の食材が一番合う!ということをアピールしながら、プラスチック製の容器にエリア内のチーズや燻製をセットにして販売し、地元の日本酒・ワイン・クラフトビールにクラフトジンや焼酎を思い思いに楽しんでいただきました。
事後アンケートを見て驚きました。参加者は旅行者が多いかと思いきや、半分ほどが旭川市民の方だったんです。旭川の方たちはこういう場を必要としているということが分かりました。旭川市外から電車を乗り継いで参加された方もいて、駅で実施するお酒イベントの効果を実感できました。今後もこのようなイベントを企画していきます。

「何が正しい情報か」自分で答えを見つけることが大切
ぶどう栽培やワイン醸造で大切だと私が考えることのひとつに、「自分にとって正しい情報を自分で見つける」ということがあります。ある人にとっては「正しい」情報が、自分にとって必ずしも「正しい」とは限らないからです。
例えば「農薬を散布すると土の中の微生物が死滅し土が枯れてしまう」という意見を聞くことがあります。一方、農薬は土の中で分解されるように設計されていて、「半減期」という薬の効能が薄れる時期が決まっています。
除草剤や殺虫剤についても「強い薬なので使うとぶどうの木が枯れてしまう」と聞くことがありますが、昔のイメージの名残であったり、その方の思い込みであることも少なくありません。
社名「F PLANNING LAB」のLABには「人の話を鵜呑みにせず自分の目で見て確かめる」という意味が添えられています。私自身も調べることが億劫で情報を鵜呑みにしてしまうことが時々ありますが、何が正しい情報か、何が最適な答えか、相談者と一緒に見つけていきたいですね。
「大それた野望は特になくて、相談者の悩みに寄り添って一緒に解決していくことが、私の喜びです」高橋さんは終始穏やかな笑顔で語ってくれました。
日本ワインの未来を支える影の立役者、F PLANNING LAB 代表 高橋克幸さんの連絡先はこちらです。
メールアドレス: f.planning.lab@gmail.com
