日本のワイナリーの皆様へ:俺のフレンチ グランメゾン TOKYO 支配人兼コーポレートソムリエ 長谷川純一氏

皆様、こんにちは。
「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」「俺の割烹」など、東京を中心に全国に店舗展開する「俺の株式会社(以下「俺の」)」。今回は、「俺のフレンチ」の中で唯一「グランメゾン」を名乗る「俺のフレンチ グランメゾン TOKYO」にて、支配人兼コーポレートソムリエとして活躍する長谷川純一氏をお迎えし、日本のワイナリーの皆様へのメッセージをお届けします。

「俺のフレンチ グランメゾン TOKYO」では、日本航空株式会社(以下「JAL」)と連携し、「食」を通じて地域活性化を図ることを目的に「旅するメーカーズディナー」というディナーイベントを定期開催しています。長谷川さんは、「旅するメーカーズディナー」の企画から現地視察、当日のナビゲーターまでを務めています。

長谷川さんの素晴らしいパフォーマンスと料理とワインのマリアージュを体験した記事はこちらからお読みいただけます。

この春より、「俺の」グループは各店舗にて日本ワインのサービスを本格的にスタートしました。コーポレートソムリエである長谷川さんの日本ワインに対する思い、ワイナリーの皆様へのメッセージをお届けします。最後までぜひお読みください。

『長谷川純一氏 プロフィール』

俺のフレンチ グランメゾン TOKYO 支配人兼コーポレートソムリエ 
・「旅するメーカーズディナー」企画運営(2022年よりJALと連携し実施するディナーイベントで、これまでに16回開催)
・東京都優秀技能者「東京マイスター」(職種:飲食物給仕人)に2023年に選出される。現在、日本最高峰の称号である「現代の名工」の推薦を受け、審査に挑む
・「ワイン塾はせがわ」主催
・世界基準のレストランサービスコンクール「メートル・ド・セルヴィス杯全日本大会」優勝、国際大会準優勝、その他受賞歴多数


『サービスの最高峰を目指し走り続ける長谷川さんの歩み』

日本を誇るサービスパーソンとして第一線で走り続ける長谷川さん。まずは、長谷川さんが飲食の世界に足を踏み入れることになったきっかけと、これまでの歩みを振り返りたい。

▶︎ITの世界から「テーブルサービス」の世界へ

静岡県出身の長谷川さんは、海と山に囲まれた自然豊かな環境で育った。長谷川さんが学生の頃はちょうどインターネットが普及し始めた頃で、ITの世界に進むべく、情報工学を学んでいた。

学生時代にアルバイトとして携わった仕事が、長谷川さんの運命を大きく変えることになったという。

「ホテルのレストランでアルバイトをしていました。そこで、お客様の目の前で料理を取り分けたりソースをかけたりする、『アングレーズ(イギリス式サービス)』を経験したのです。学生の私でもお客様と直接対話ができ、喜んでいただけるという楽しさを知ってしまいました」。

ITの道に進むか、飲食の道に進むか。学士取得まで悩み抜いた末、長谷川さんは飲食の世界で生きて行く覚悟を決めた。お世話になったシェフからの「やるからには東京の最高峰でやりなさい」という言葉に背中を押され、有楽町にある老舗グランメゾン「APICIUS」の門を叩いた。

「APICIUSの当時の支配人が、私と同じ静岡出身だったというご縁もあり採用いただきました。最高の環境で多くの『本物』に触れ、ソムリエやチーズプロフェッショナルの資格も取得しました」。

「APICIUS」での経験が自身の礎となっていると語る長谷川さん。世界中の名だたるワインや最高級の食材、さらには一流の職人が作り出す作品に触れる中で、ソムリエ、チーズプロフェッショナル、マネージャーとして「本質を見極める力」を徹底的に磨き上げていった。

▶︎飲食事業を通じて地域社会へ貢献したい

「APICIUS」で一流のサービスを経験したのち、新たな挑戦の舞台として長谷川さんが選んだのが「俺の」グループだった。2013年の入社当時、「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」は、一流の職人が手掛ける料理を圧倒的なコストパフォーマンスで提供するスタイルで一世を風靡していた。店のオープンが16時にも関わらず、朝8時から店頭で待つ人がいるほどの人気を博した。

長谷川さんは「高級なフレンチやイタリアンを誰もが楽しめる日常にする」という「俺の」の挑戦に共感すると同時に、「飲食事業を通じて地域社会へ貢献する」という経営理念に強く惹かれたという。

「『俺の』では、ミシュランの星付きレストランやグランメゾンで経験を積んだ職人が作る本物の料理やワインを、日常的な価格で提供しています。よいものを手頃な価格で提供することで、多くのお客様に『本物』を知ってもらう機会を提供しているのです。さらに、食材選びには『俺の』職人自ら現地に赴き、生産者との会話から厳選することで、地域へ経済効果をもたらしています。我々は、フレンチの伝統的な技術と、現代のIT・映像技術を融合し、お客様に驚きと感動を提供するスタイルを確立しました。JALさんと共につくる『旅するメーカーズディナー』は、これまでの経験や思いが集大成した企画であり、各地の生産者さんはじめ多くの方に支えられてここまできました」。

長谷川さんは、会社名である「俺の」という印象的な名前についても話してくれた。

「『俺』とは、働く私たち自身のことでもあります。会社に属している社員一人ひとりが『俺の』会社なんだというプライドを持ち、お客様を幸せにするという思いで仕事に向き合う、という会社の信念が『俺の』という言葉に込められています」。

▶︎実力で掴み取った「東京マイスター」の称号

サービスパーソンとして常に高みを目指し続ける長谷川さんは、数々のコンクールに出場し、素晴らしい成績を収めてきた。

はじめのうちは何度も予選で涙を飲んだというが、「JALUX WINE AWARD」で準優勝を勝ち取ったことを皮切りに、「第16回メートル・ド・セルヴィス杯全日本大会」で優勝、続く国際大会では準優勝という功績をあげた。

さらには、食の現場の最前線に立ち続ける妥協ない姿勢と卓越した技能が認められ、2023年、東京都知事により認定される「東京都優秀技能者(東京マイスター)」に選出された。

飲食業界人が「東京マイスター」の称号を受けるには、協会などの組織に属し、コンクールで実績を積み推薦を受けるのが通例だという。

一方長谷川さんは、特定の組織に頼らず、現場での「叩き上げ」としてキャリアを築いてきた。

「『東京マイスター』の称号をいただくにあたり、『旅するメーカーズディナー』でご一緒するJALさんから推薦をいただきました。現在は『東京マイスター』として、全国各地で食に関するイベントを開催しています。『東京マイスター』の看板を背負う以上、東京から日本全国の食文化を発信していく責任があり、地方と都市を食で繋ぐことに大きなやりがいを感じています」。

長谷川さんの襟元には、「技」という文字が刻まれた「東京マイスター」の勲章が輝く。長谷川さんの挑戦はとどまることを知らない。現在長谷川さんは、厚生労働大臣から卓越した技能者に贈られる日本最高峰の称号「現代の名工」への推薦を受け、その先を見据えている。

『俺の日本ワイン応援』

長谷川さんは、ワインを通じて「我々はお客様にあえて非効率な時間を提供しているのです」と語る。
「ワインは色を愛で香りを楽しみ、食事と合わせてゆっくりと楽しむお酒です。せわしない現代において、ワインを楽しむ『手間暇』こそが、人の心を動かします。ワインを通して人々が繋がり、語り合う時間を提供することが、レストランの原点なのではないでしょうか」。

現在、全国に66店舗のレストランを展開する「俺の」グループでは、この春より全店舗で日本ワインの提供を開始した。日本ワイン導入に踏み切った長谷川さんの思いと、長谷川さんがワインを選ぶ際の興味深い「基準」について伺った。

▶︎コンセプトは「俺の日本ワイン応援」

「俺の」グループが日本ワインの提供を始めた目的は「多くの方に日本ワインの素晴らしさを知ってもらうため」という、シンプルで真っ直ぐな思いだ。さらに「俺の」グループが日本ワインを提供することには「意義」があると長谷川さんは語る。

「『俺の』グループの存在意義は、よいものを手頃な価格で提供し、お客様に『本物』を知ってもらうきっかけを提供することです。昨今、日本ワインはたいへん人気が高まってきましたが、日本国内でもまだまだ認知される余地があり、成長性を秘めたお酒です。我々が多くのお客様に日本ワインの進化を伝えることで、日本ワインをさらに盛り上げ、地域へ経済効果をもたらすきっかけになればと考えています」。

「俺の」グループでは、「俺の」グループならではの仕掛けで、お客様に驚きと感動を提供する。

「お客様に日本ワインを知ってもらうからには『より良いもの』を知ってもらいたい、という思いがあります。『より良い日本ワイン』を知ってもらい、『日本ワインって美味しい』と認知してもらう必要があるからです。そこで我々は、時には『より良い日本ワイン』を原価とほぼ変わらない価格で提供し、お客様に『こんなにいいものがこんなに安い価格でいいの?』と驚いてもらうという仕掛けも考えています」。

「儲け」を度外視した価格設定を「投資」ととらえ、日本ワインの魅力をお客様に印象づけるという試みには、最強のコストパフォーマンスで長年お客様に驚きと感動を与え続ける「俺の」グループの信念が息づいている。

今後は、現地から生産者を呼んでイベントやフェアを開催するなど「コト体験」として、日本ワインを浸透させたいと語る長谷川さん。「特別な体験」を通じて地方の魅力を発信し、現地へ訪れるきっかけや人の流れをつくり、過疎化など社会課題解決に貢献したい考えだ。

「我々は日本ワイン販売を通じて、地域社会を元気にしたいんです。コンセプトは『俺の日本ワイン応援』ですね」。

▶︎「俺の縁」で選ぶワイン

長谷川さんがワインを選ぶ基準は興味深い。通常、ソムリエは原価率や小売価格、収益性をエクセルシートで計算しながら店のワインリストを埋めていく。一方、長谷川さんのシートには「俺の縁」という特別な項目が存在するそうだ。

「ワインは『人の縁』を繋ぐお酒だと思っています。『俺の縁』の項目には、それぞれのワインが、誰と、どのような『縁』により導かれたかを入力しています。生産者との出会いや、酒販店さん、大切なお客様からのご紹介など、ワインとの出会いには必ず何かしらの縁がベースにあります」。

どれだけ収益が見込めるワインでも「俺の縁」のセルが埋まらない限り、店頭に置くことはないそうだ。

「縁は、日々の人との交流の中から自然と生まれるものです。生産者さんの顔を見ながら対話を重ねるうちに『この人が造るワインを多くのお客様に知ってもらいたい』という思いが湧き上がります。生産者さんの思いを乗せて提供するからこそ、お客様の心にも伝わるのではないでしょうか」。

『日本ワインがより進化するために』

世界のワインに精通し、日々お客様に驚きと感動を提供し、日本の食文化の魅力を全国へ広める活動をおこなう長谷川さん。長谷川さんは世界のワインと日本ワインをどのように捉えているのだろうか。

サービスの世界大会において世界を舞台に戦った経験を持つ長谷川さんからのメッセージは、きっと心に響くものであろう。

▶︎「自信」と「ダイナミックさ」が必要

「今や芸術においても食においても、日本人が表現するエレガンスさ、繊細さは世界トップレベルと認められています。日本ワインにおいては、とりわけ美しい酸が唯一無二の武器といえるでしょう。日本ワインが数々の世界のコンクールで評価されたということは、『日本の地が評価された』ということであり、『日本人が評価された』ということだと考えています」。

さらには世界中の嗜好や気候の変化が、日本が生み出す繊細なワインにとって追い風になっていると語る。

一方で世界のワインと比較した時に、日本ワインに足りないものがあるとしたらそれはなんだろうか。

「『思い切り』『ダイナミックさ』『力強さ』ではないでしょうか。それはタンニンの強さなどといったことではなく、奥行きであったり、ワインの楽しみ方であったり、いわば『世界観』としてワインの深みを伝えていくことだと思います。ヨーロッパにはワインの長い歴史があり、人々の『本能』の中にワインが定着しています。繊細さとエレガンスさだけでは、ヨーロッパにはかなわない。そこに力強さやダイナミックさ、思い切り、チャレンジ、といったものを加えることによって、躍動感が生まれるのではないでしょうか」。

具体的にそれはどんなことなのか?さらに長谷川さんに問うと「自分を信じること」という言葉が返ってきた。世界大会に挑戦した長谷川さんが自分に足りないと痛感したことは、「自信とダイナミックさ」であったと。

▶︎造り手とお客様の「橋渡し」をする「ソムリエ」という存在

「不安が生まれると考え過ぎてしまい、力を出しきれず終わってしまう。それはとても残念なことです。日本ワインは世界的に高く評価されているのです。日本はもはや、『アウェイ』ではありません。『ホーム』として戦っていいのだと思います。自分たちがやっていることを、とにかく信じて突き進んでほしいと思っています」。

だからこそ「自分を信じること」と「ダイナミックさ」が必要だと長谷川さんは繰り返す。

「自信」と「ダイナミックさ」が情熱を生み、お客様の心に響き、感動に繋がるのだと。

「そこでソムリエという『伝え手』の役割が重要になるのではないでしょうか。ソムリエたちが造り手から日本ワインを学び、日本ワインの将来性を理解する必要がある。そうすれば『この日本ワインは繊細ですが余韻もタンニンもしなやかで、日本で造ったからこそこのような仕上がりになるのです』とお客様に説明ができる。お客様はソムリエという伝え手を通じて、日本ワインの魅力を知ることができるのです」。

長谷川さんは、サービスを提供する「ソムリエ」が、日本ワインの「今」を正しく理解し、消費者に伝えることが大切だと強調する。消費者と造り手を繋ぎ、橋渡しする「ソムリエ」がどのような橋を渡すかが、日本ワインの未来に影響を及ぼす。

造り手は、「自信」と「ダイナミックさ」でソムリエの心を動かし、自社のワインを消費者に届けてほしいと長谷川さんは願っている。

『まとめ』

長谷川さんはワイン講師の顔も持ち、月に1回、東京・表参道で「ワイン塾はせがわ」を主宰している。中でも人気の「俺のワイン講座」は、まもなく開催100回を迎える人気講座だ。毎年6月には「日本ワインセミナー」を開催するという。あえて6月に開催することには、長谷川さんの日本のワイナリーへの応援メッセージが込められていた。

「海外の生産者に日本ワインの印象を聞くと、『梅雨がある日本ではワイン造りは難しいだろう』と言われることが多いですね。多湿な環境のぶどう栽培には大きな苦労が伴うからこそ、一番大変な『梅雨』の時期に日本ワイン応援の思いを込めて開催しています」。

長谷川さんが主宰する「ワイン塾はせがわ」では、ワインと共にチーズプロフェッショナルの資格を持つ長谷川さんが厳選したチーズも楽しめる。気になる方はぜひ問い合わせてみてほしい。

ヨーロッパの人は「ドーン」とゴールを決める「自信」と「ダイナミックさ」を兼ね備えていると言う長谷川さん。長谷川さんの決めたいゴールはなんですか?と聞くと、「日本ワインをより多くの方に知ってもらうことが、私の目指すゴールの一つです」と答えてくれた。

長谷川さんの挑戦は始まったばかりだ。長谷川さんの言葉は、全国で挑戦を続けるすべての生産者にとって、心強い追い風となるに違いない。


基本情報

名称俺のフレンチ グランメゾン TOKYO
所在地〒100-0004
東京都千代田区大手町1-7-2 東京サンケイビル B2F
アクセス・大手町駅下車 E1・A4出口【直結】
地下鉄:丸ノ内線、半蔵門線、千代田線、東西線、都営三田線
・JR:東京駅 丸の内北口より【徒歩圏内】
HPhttps://www.oreno.co.jp/restaurant/grandmaison_oreno_otemachi

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