『サンクゼールワイナリー』おだやかな大人の時間と造り手の愛情に満ちたぶどう畑が広がる丘 

長野県飯綱町にあるサンクゼールの丘。ここには、まるでフランスの田園にワープしてしまったようなおだやかな世界が広がっている。
どこまでもつづくぶどう畑と丘から見下ろす田舎の村を眺めれば、日常が遠いことのように思えるような、のんびりとした時間の流れを感じることができる。

サンクゼール・ワイナリーは、ワイン造り・シードル造りへの熱い思いと、ワインを楽しむ文化を広めることへの信念を持っている。 長野のワイン文化・食文化に誇りを持つ人達が作り出す、成熟した大人の時間を満喫できるワイナリーだ。

『ワインへの思いとワイナリー創業のきっかけ』

サンクゼール・ワイナリー創業には、サンクゼール創業者である久世良三会長がたどった事業の歴史が大きく関わっている。

サンクゼールがワインに込める思いと、ワイナリーが始まるまでのきっかけについて見ていこう。

▶ワインで成熟した文化を提供する

サンクゼールがめざしているのは、成熟した大人の文化のためのワインを造ることだ。ワインという商品を売ることだけを目標としているのではない。

大切な人との食卓には必ずワインがある、というフランスの価値観。この価値観に、創業者の久世会長が感動したことから、ワイナリーの構想が生まれた。現在のサンクゼールも、このスピリットを強く受け継いでいる。

地元長野の農産物、地元の食事とともにあるワイン。これを、創業の長野の地で提供していくのが、サンクゼールのスタイルなのだ。

▶サンクゼール・ワイナリーができるまで

成熟した文化のためのワインを造りたい。この思いが生まれるまでの歴史を紹介する。

サンクゼールは、最初からワインの販売をしていた訳ではない。
ペンション経営、ジャム販売、そしてフランス見聞を経てワイナリー経営にいたるのだ。

▶長野でのペンション経営とジャム販売

久世良三会長は、幼い頃からの信州山暮らしへの憧れが高じてペンションの経営をスタート。
サンクゼールと長野との関係はここから始まるのである。

ペンション経営のさなか、農家から分けてもらったリンゴを使って会長の奥様が作った自家製ジャムが大好評。
宿泊客からは「ゆずってほしい!」「作り方をおしえてくれない?」などの声が大きくなっていき、後にジャム販売を企画する事業を開始することになる。

▶旅行で行ったフランスの田園風景が伝えたものとは

ジャムの企画販売が軌道に乗り始めた頃、久世良三会長夫妻は遅めの新婚旅行でフランスの田舎町に滞在する。
旅行先は、リンゴが名産のノルマンディー地方。そしてワインで有名なブルゴーニュ、ボルドー地方だった。

会長夫妻がフランス旅行で強く感銘をうけたこと。それは、農業を生業としながら経済的に自立し人生を謳歌する、フランス農家の精神的な豊かさだった。

訪れたレストランでは、地元のワインやシードルとともに郷土料理が振る舞われた。そこに、成熟した大人の文化を感じたのである。

▶フランスで得た着想を現実に。田園風景広がる長野でワイナリーを始める

久世会長がフランスで感じたワイン文化を形にしたものが、現在のサンクゼール・ワイナリーだ。

勤勉に働くことを美徳とし、生活の質が軽視されがちな日本だからこそ、フランスの田園的な食卓や生き方が必要とされるはずだ。久世会長にはそんな直感があったという。

フランスの田園のような、自然あふれる空間を拠点にしたい。その土地の食べ物、その土地のお酒を造って、お客様に振る舞いながら、心を豊かにするワイン文化を広めたい。

その思いから、緑あふれる長野の地にワイナリーが造られたのだった。

『こだわりの自社畑とぶどう』

国税庁のデータによると、自社畑のぶどうから造られた日本ワインは、日本ワイン全体の13%程しかない。(※1)

フランスでは当たり前のように存在する自社畑を持ったワイナリー、実は日本のワイナリーにおいては一般的でないのである。

そんな中、サンクゼール・ワイナリーでは、長野の自社畑でぶどうを生産しワインを醸造している。

サンクゼール・ワイナリーが持つ畑やぶどうの特徴、こだわりについて見ていこう。
(※1)2020年日本ソムリエ協会教本より

▶飯綱町の自社畑

サンクゼール・ワイナリーでは、長野県飯綱町の広大な土地に約10haもの自社畑を持つ。この自社畑で、テロワール(ぶどうの味わいに影響する、栽培地の土壌・地勢・気候のこと)を意識したワイン用ぶどうの栽培が行われているのだ。

サンクゼールが持つぶどう畑の特徴は、夜の気温がぐっと冷える寒暖差と、粘土質の土壌だ。
気候の寒さは、ぶどうに豊富な酸をもたらす。サンクゼールの自社畑は、豊かな酸を持続させつつ、完熟まで持っていくことができる環境なのだ。
畑の土壌は粘土質の砂壌土。この土壌が、味わい豊かなぶどうを作り上げる。

こういった畑の特徴が、サンクゼール・ワイナリーで生産するワインの特徴を形作っている。

サンクゼール・ワイナリーにおけるメイン栽培品種である「自社畑のシャルドネ」を使用したワインを飲めば、特にはっきりとテロワールを感じられることだろう。

▶もうひとつの地域の畑

自社畑は、長野県飯綱町の他に信濃町にも存在している。

現状、ワイン用ぶどう栽培で中心となっているのは飯綱町の畑。
あとから作られた信濃町の畑では、ワインに使うための新たなぶどうの栽培研究が行われている。

飯綱町と信濃町は、となりあった地域だ。にもかかわらず、2箇所のテロワールは全く異なる。

飯綱町では「シャルドネ」を中心とした西洋ぶどう品種と相性がよい一方、信濃町の畑では日本古来のヤマブドウ系品種が育っているのだ。

信濃町は飯綱町に比べ北に位置し、雪深く寒さが厳しい地域。もともと果樹が育たない場所だともいわれている。

そんな中、耐寒性のあるヤマブドウに着目し、栽培を開始している。ヤマブドウ以外にもこの土地に合うブドウ品種の試験栽培を行っていて、ワインの持つ新たな可能性を探っている最中だ。

▶日本でのぶどう栽培の難しさとは

美味しいワインは健全なぶどうから生まれる、とサンクゼール・ワイナリー醸造責任者の野村さんは言う。

サンクゼール・ワイナリーでは、ぶどうが病気にならないための防除に力を入れており、質の高い健全なぶどうの栽培が行われている。

健全なぶどうを育てるためには病気にならないように栽培する必要があるが、高温多湿の日本ではそれがとても難しい。ワイン用ぶどうは乾燥した気候に適しており、湿度の高い日本では病気になりがちなのである。

雨や湿度の管理を徹底し、日々ぶどうの観察を欠かさないこと。菌の防除を定期的に行うことで、難しい環境でも健康的で質の高いぶどうの栽培を可能としている。

『サンクゼール・ワイナリーで育つぶどう品種』

サンクゼール・ワイナリーの自社畑で栽培されている代表的なぶどう品種には、次のようなものがある。

  • シャルドネ
  • メルロー
  • カベルネ・フラン
  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • ピノ・ノワール

▶サンクゼール・ワイナリーのシャルドネ

サンクゼール・ワイナリーで最も多く生産されているぶどうが、白ワイン用ぶどうであるシャルドネだ。

シャルドネは、テロワールや醸造方法が味に反映されやすい。造り手によって、全く異なる個性を出すのが面白いぶどうだ。

サンクゼール・ワイナリーのシャルドネは、自社畑のテロワールをしっかりと反映する。その品質の高さから、国内外で数々の賞を受賞している。

長野の自社畑で生産されたシャルドネは、キリッとした酸と豊かな余韻が特徴だ。 夜がぐっと冷える寒さはシャープな酸味を保たせ、寒暖差や土壌からくるどっしりしたボディが厚みのある味わいをもたらしてくれている。

▶ぶどう栽培にかける思い

サンクゼール・ワイナリーのぶどう栽培は、毎年レベルアップし続けている。
ぶどう栽培の基礎を一から学ぶため、外部の講師を呼んで技術の向上に励んでいるのだ。

独りよがりにならずに学び続けてより良いものを作りたい、と久世良太社長は言う。多くの作業をつきつめて考え、チーム一丸となってぶどうに向き合う。造り手たちの熱意と努力によって、質の高いぶどうが生み出されているのだ。

また、サンクゼールではぶどう栽培で学んだ技術や知識を、契約農家に還元している。地域がレベルアップすることで、長野ワイン全体が盛り上がってほしいという思いからだ。

ワインだけではなく、ワイン文化全体を作っているサンクゼール。創業者の思いは、確実に次世代にも受け継がれている。

『サンクゼールのワイン』

サンクゼールが目指しているのは「食事と合わせるワイン」。
会話をしながら人と飲むことを目的とした、食中酒としてのワインだ。

サンクゼールワインのキーワードである、「酸と余韻」が感じられるワインは、重すぎず軽すぎず、あらゆる料理に合う食卓のパートナーと言える。

ワインリストには、骨格ある酸を含み、余韻をしっかりと感じられる味わい深いワイン・シードルがそろっている。

特別な日の食事には、フラッグシップである「サンクゼールシャルドネ」を。家族や友人との食卓には「シードル」を。あらゆるシーンにぴったりのワインばかりだ。

▶ワインづくりへのこだわり

サンクゼールのワイン造りで、強みとしていることが2つある。
ひとつは、とことん「ぶどう」にこだわっていること。
もうひとつは、30年の歴史で培ってきた技術や思いがつまっていることだ。

ワインは、ぶどうだけでできている。

だからこそ、「ぶどうに対して徹底的にこだわることが、良いワインを生む」というのが、サンクゼールの考え方だ。サンクゼール・ワイナリーでは、その年に採れたぶどうの状況をみながら、ブレンドや熟成期間を変えて醸造している。

こういった技術や経験も、30年の歴史の中で培われてきたものだ。先人の経験や技術すべて使って、今できる最高のものを作ること。30年の思いがつまったワインを生み出せることが、サンクゼールワインの強さだ。

▶去年を超えるワインをつくる

サンクゼール・ワイナリーでは、「おいしさの追求」を掲げてワイン造りをしている。

その年のワインを造るときには、前のヴィンテージを飲み比べながら、ブレンドを試行錯誤する。
目指すのは、前のヴィンテージを超えるワインを造り続けることだという。

ワインに関わるチーム全員が、「飲む人の笑顔を作りたい」という熱い思いを持ってレベルアップに励んでいるそうだ。

そこにあるのは、飲む人を裏切らないという強い信念。サンクゼールでは、造り手たちの情熱がつまったワインが生産されているのだ。

▶ワインを通してお客様と交流する

サンクゼール・ワイナリーでは、訪れる人との交流を大切にしている。

お客さまの声、笑顔、楽しんでいる姿が、造り手たちのチカラやアイデアになるのだという。

サンクゼールは、直営店での販売が中心であり、ネットショップでの直販も行っている。サンクゼールの丘でのワインイベントも豊富だ。ワインを通じて飲む人と直接交流する方法が非常に多いのである。

「おいしかった」「この味はこうしてほしい」といった意見も全体で共有され、ワイン造りに活かされる。

イベントの中には、造り手たちがワインをサーブする企画がある。そこでは熟成したワインが振る舞われ、造り手と飲み手でワインの話ができるのだ。

ただワインを販売するだけではなく、「大人の文化としてのワイン」を提供するのがサンクゼール・ワイナリー。今後も、ワイナリーを訪れる人と造り手が深く交流する機会を増やしていくそうだ。

現在検討されているのは、ワイン祭の開催やぶどう畑までのトレッキングツアー、キャンプファイヤーを囲みワインラバーと造り手が語り合う時間など、魅力的なものばかり。

造り手と飲み手の交流を大切にするサンクゼール・ワイナリーが展開するイベントの発表に、今後ますます目が離せない。

『料理とワインのおすすめペアリング』

「食事とあわせるワイン」を銘打つサンクゼールのワインは、幅広い料理とのペアリングが楽しめる。

代表的な3つのワインのペアリングについて紹介しよう。

▶サンクゼールシャルドネのペアリング

自社畑シャルドネ100%の、自慢の一品である「サンクゼールシャルドネ」のおすすめペアリングは、きのこ入りのクリームグラタンだ。

樽熟成による香ばしいロースト香と、グラタンの焦げが絶妙にマッチする。ワインの豊かな余韻と、香り高いきのこはピッタリの組み合わせだ。

白ワインは夏に飲みたくなるイメージもあるが、ホクホクのグラタンとの冬のペアリングで温まってみてほしい。ワインは冷やしすぎず、12度くらいの温度でサーブするのが最適だ。

家族で過ごすクリスマスディナーなど、あたたかい食事風景になじむ組み合わせとなるだろう。

また、自社畑のサンクゼールシャルドネは、粘土質土壌からくる濃密な力強さを持ち、その昔海だった土地だからかかすかにヨード香とよばれる海のミネラル感を感じる。

そのため、のりや貝など和の食卓にも違和感なくマッチしてくれる。
「食事と合わせてほしいワイン」であるサンクゼールの思いを感じ、日本人ならではの和食とあわせて楽しむのもいいだろう。

▶日々の食卓に、シオンのペアリング

シオンは、「シャルドネ・デュ・モンド」で銀賞を受賞したこともある白ワイン。長野の契約農家と、自社畑で収穫されたシャルドネをブレンドして造られている。

シオンは、軽さと骨格のバランスが素晴らしい。若干の甘みとほろ苦さもあり、味覚のバランス感覚が秀逸なワインだ。どんな好みの人にでもおすすめしたい、フレンドリーな白ワインである。

カキフライと合わせてみたところ、とてもいい。フレッシュな酸が、揚げ物にもピッタリだ。カキフライにレモンをかけるイメージでマッチする。地に足ついたボディもあり、カキの濃厚なミルキー感ともがっちり手をつないでくれる。

気取らない料理にぴったりなシオン。味噌を使った和食や、てりやきの魚などとも合わせてみたいワインだ。日常の食卓に並べて、ピッタリの組み合わせ探しを楽しむことをおすすめしたい。

▶いいづなシードルのペアリング

いいづなシードルは、ブラムリー(イギリス原産の青りんご。豊富な酸が特徴)とふじをブレンドさせて造った、こだわりの瓶内二次発酵シードルだ。

瓶内二次発酵とは、シャンパーニュを代表とする伝統的なスパークリングの製造方法だ。炭酸ガスを添加せず、自然発酵の力だけで炭酸を発生させる方法である。

瓶内二次発酵で造ったスパークリングは、酵母の旨味と繊細な発泡のすばらしい炭酸になる。そして、いいづなシードルはまさしく瓶内二次発酵の素晴らしさが体感できるシードルとなっている。

いいづなシードルは、シルキーで肌に溶け込むような発泡だ。もぎたてリンゴを思わせるフレッシュな香りと、舌全体に広がる旨味で、飲んでいる人を幸せにしてくれる。

相性のよいペアリングを探していたのだが、なんといいづなシードルはカレーによく合う。

辛味と甘味が優しくマッチし、いつものカレーをワンランク上の仕上がりに変えてくれる。その上旨味が強いので、シードルの味がカレーに負けないのである。
ぜひ試してみてほしいペアリングだ。

『サンクゼール・ワイナリー今後の展望』

サンクゼールでは、常に新しい挑戦が続いている。現実化に向けて動いている構想を紹介する。

▶新しいワインとシードルの開発

信濃町にある自社畑では、日本古来の品種であるヤマブドウを使ったオリジナルワインが研究されている。現在、何種類かの品種でテストを重ねている段階だ。
オリジナリティのあるもので、今の時代にあったワインの楽しみ方をしてほしい、という思いで開発がすすめられている。

また、「ベルドボスクープ」というリンゴを使った、新しいシードルを醸造中だ。ベルドボスクープは、洋梨のような甘く芳醇な香りを持つ、日本ではあまり見ないリンゴ品種である。
このベルドボスクープのシードルは、来年発売予定とのことだ。
(2020年10月現在)

▶サンクゼールの丘の未来

久世良太社長が構想しているのは、サンクゼールの丘を一日中楽しめる新しい施設を造っていくことだ。

サンクゼールの訪問客からは、宿泊して一日中サンクゼールを満喫したい、という声が出ることが多い。

コテージ型の宿泊施設を造り、昼は農業体験やぶどう収穫を。サウナで汗を流し、夜はワインを持ち帰って部屋飲みで楽しんでもらう…。
サンクゼールの丘に、こんな場所を提供したいと考えている。

久世社長が提供したいのは、ゆったりと満喫できる時間と、農業とワインがつなげるコミュニティの場だ。
構想が実現すれば、「大切な人と、食事とワインで豊かな時間を過ごしたい。」そんな思いを持った人々があつまる、さらに魅力あふれるワイナリーとなるだろう。

『まとめ』

サンクゼールは、日本でも数少ない「自社畑100%のワイン」がある、ぶどうへの愛とこだわりがつまったワイナリーだ。

人とのつながりや、謙虚に学び続けることを大切にしており、おだやかな雰囲気ながらも確固たる信念を感じ取ることができる。

サンクゼールが作っているのはワインやシードルといった「商品」だけでは無い。「ワインを楽しむ時間や人々とのつながり」そのものを提供しているワイナリーなのである。

ぜひサンクゼールの丘を訪れ、歴史や人々の思いがつまったワインを、ゆったりと流れる時間とともに満喫してほしい。

サンクゼールの丘
https://www.stcousair.co.jp/valley/

基本情報

名称サンクゼール ワイナリー
所在地〒389-1201
長野県上水内郡飯綱町芋川1260
アクセス牟礼駅(北信濃線)からタクシーで10分。信州中野ICから車で15分
HPhttps://www.stcousair.co.jp/valley/

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